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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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カテゴリ:“参与観察”日誌( 247 )


2011年 11月 30日

ガイドブックでわかる旅行市場の成熟度(トラベルマート2011 その5)

ここ数年、外国人観光客向けのフリーペーパーが多数発行されるようになったことにお気づきの方も多いと思います。空港やホテルによく置かれていますね。もともと英語版がメインだったのですが、最近では中国語版(繁体字、簡体字)も増えています。

トラベルマートの会場にも、フリーペーパーを発行する制作会社がいくつか出展していました。以前、ぼくは
やまとごころ.jpの連載で、現在発行されている外客向けフリーペーパーの問題について指摘したことがあります。そこでは「本当に外国人観光客に読まれているのか?」という根本的な疑問を呈しています。そうした残念な現状があるなか、ちょっと面白い会社のブースを見つけました。

その会社はインフィニティ・コミュニケーションズ株式会社といいます。東アジア(韓国、台湾、香港など)で発行されている現地メディアと、観光客の来店を期待する日本のクライアントをつなぐ広告出稿業務を行なう代理店です。秋葉原などでよく見かける外客向けマップ「東京導遊図」の発行元でもあります。この地図は年間250万部以上発行しており、中国語版フリーペーパーとしては国内最大級の媒体だそうです。

同社のサイトには、東アジアで広告出稿業務を行なっているメディアが多数紹介されています。『旅游天地』や『新民晩報』など、中国でもおなじみの媒体ばかりです。

なぜこの会社が面白いと思ったかというと、彼らが外客向け情報発信メディアを自分たちの手で作るのではなく、現地メディアの編集者や記者に作らせるというスタイルを取っていることです。

一般に日本で発行される外客向けフリーペーパーは、日本人が作ってそれを翻訳する場合が多いようです。もともと日本の情報誌などを編集していた人たちが、同じ要領で取材し、デザインしているわけですが、実はこれが外国人に読まれないいちばんの理由といえます。なぜなら日本の編集者たちは、外客のニーズや嗜好をよく理解していないうえ、基本的に日本側のクライアントの広告に頼るビジネスモデルですから、読者不在の媒体が量産されてしまうという構造にあります。

インフィニティ・コミュニケーションズの女性担当者に話を聞いたのですが、彼女はその弊害をよく理解していました。同社のやり方はこうです。たとえば、台湾で発行されている情報誌やガイドブックの記者の来日時に、彼らの取材協力をしながら、日本のクライアントの広告をねじ込んでいく。記者側も取材経費の軽減につながる広告出稿は望むところです。しかし、クライアントに関わるページ以外は、自分たちの編集方針や取材の中身に日本側から口を出してもらいたくはない。

実は、これがいちばん重要なことなのです。海外の記者たちは、自分で見つけた日本の魅力的なスポットを自分なりの表現で自国の読者に紹介したいと考えるものです。その情熱こそが、読者を刺激し、誘客効果を生むのです。このやり方は、日本の旅行ガイドブックや雑誌などが海外取材する際の作法とまったく同じです。大事なのは、押しつけではなく、彼ら自身に発見させ、彼らの好む表現で自由に魅力を伝えさせること。日本側はそのお手伝いをするというスタンスに徹すること。それが賢いやり方なのです。

一口に東アジアといっても、観光客の特性は大きく違います。たとえば、中国と台湾でどのくらい違うかを理解するうえで、現地で発行されているガイドブックに表現されるコンテンツの比較は参考になります。

先日、北京の西単の新華書店で購入した2冊の旅行ガイドブックを紹介しましょう。一つは、台湾で発行されたガイドブックを中国の出版社がそのまま簡体字に変えただけの『东京攻略完全制覇』(2010年6月発行 人民郵電出版社)と、中国オリジナルの『东京好吃好玩真好买』(2011年10月発行 中国旅游出版社)です。
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左が『东京攻略完全制覇』(2010年6月発行 人民郵電出版社)で、右が『东京好吃好玩真好买』(2011年10月発行 中国旅游出版社)




表紙をひと目見ただけでも、台湾で作られたガイドブックは日本の媒体に限りなく近いことがわかると思います。さらに中身を見ると、その違いは歴然としています。お台場を紹介するページを見比べてみましょう。
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『东京攻略完全制覇』の紹介する物件数の豊富さや情報の細かさは、日本のガイドブックと比べても遜色ありません

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『东京好吃好玩真好买』は物件数も少ないうえ、解説の文章も写真のクオリティも残念のひとこと

両者の違いを見て何をお感じになったでしょうか。なにもぼくは中国のガイドブック編集者を貶めるためにこの2冊を比べてみせたのではありません。かつて台湾にも、中国と同じような時代があったはずです(それをいうなら、日本もそうでした)。

ここで読み取るべきなのは、東京という高度に発達した消費社会に対する両者の理解の深さの違いです。それはすなはち、両者の旅行者の成熟度の違いを意味しています。台湾からの観光客は地方から上京してきた日本人とさして変わらない感覚で東京を歩き、豊富な体験ができるのに対し、中国からの観光客の大半は、彼らのガイドブックに表現されているようなざっくりとした世界しか認知できていないということです。同じ東京にいても、見ている世界がまったく違うのです。そのタイムラグはおそらく20年以上はあるといえるでしょう。

であれば、台湾向けと中国本土向けの情報発信は、まったく中身を変えるべきなのです。そうしないとまったく相手に伝わらないからです。ところが、たいていの日本の中国語版フリーペーパーでは、繁体字版と簡体字版は文字こそ違っても、同じ内容になっています。

インフィニティ・コミュニケーションズの女性担当者はこう話してくれました。「中国客は基本団体ツアーですし、彼らに台湾や香港と同じような細かいガイドブック的な情報を発信しても意味がないので、いまは現地の高所得者向け雑誌に日本の自治体のイメージ広告を出稿することが多いです。それでも、最近中国側からカメラマンや記者を招聘するケースが増えています」。

同社では、単にインバウンド外客メディアの広告代理だけではなく、日本企業が現地に進出する際の現地媒体を使ったPR広告なども手がけているそうです。実は、そちらのほうがビジネスとして可能性が大きい気もします。いずれにせよ、現地メディアに直接アピールする取り組みはもっとあっていいと思います。

by sanyo-kansatu | 2011-11-30 18:54 | “参与観察”日誌
2011年 11月 28日

日本の景観は値踏みされている(トラベルマート2011 その4)

トラベルマートの初日を終え、その日は横浜に泊まることになったのですが、パシフィコ横浜の外に広がるみなとみらいと横浜港の夜景がとてもきれいでした。
b0235153_21164341.jpg観覧車の前で記念撮影に興じる外国人バイヤーの姿も見られます。その瞬間、ぼくはハッとしました。昼間繰り広げられていたインバウンド商談会では、ぼくの目の前にある横浜の夜景もそうですが、自然景観から食、伝統文化、都市の魅力、サブカルチャーに至るまで、あらゆる日本のバリューが外国人の目によって値踏みされているという現実にあらためて気づいてしまったからでした。

観光庁長官もアピールしたように、横浜の夜景は悪くないとぼくも思いますが、外国人記者やバイヤーの頭の中では、他の国々の都市の夜景と比較され(たとえば、シドニーや香港、シンガポールと比べるとどうかしら?)、同時にコスト面や交通の利便性、付帯するショッピングやアミューズメントの質などの観点から検討され、横浜の優位性は何なのか、自国の消費者の嗜好や特性を勘案しながら品定めされているのです。

そういう目で日本の景観が見られていると考えると、インバウンドってなんて残酷な世界なのだろうと思います。地元の人間にしてみれば、自分の愛する街のよさは自分がいちばん知っている。よその土地との比較なんてどうでもいい話でしょう。ところが、観光客は「あそこはよかった、ここは悪かった」と無邪気に評定し、すべてが比較の対象となるのです。それは自分が観光客になったとき、無意識のうちにしていることでもあるわけです。

ただし、その比較検討の基準や観点はそれぞれの国によって違いますから、絶対的な評価はありえないともいえる。ある国と比べて優位性となることが、他の国からみればかえって弱点になることもある。外客誘致を始めるということは、そんな相対的な価値の比較の世界に自らを投げ込むことにほかならないことをある程度覚悟しなければなりません。

トラベルマートが招請するのは、ビジット・ジャパン・キャンペーン事業の対象15市場(韓国、台湾、中国、香港、タイ、シンガポール、インド、マレーシア、米国、カナダ、フランス、英国、ドイツ、ロシア、オーストラリア)のバイヤーです。その業者の選定と承認は日本政府観光局が行っています。

本ブログでは行きがかり上、中国インバウンドの動向を中心に追いかけていますが、日本の自治体やサプライヤーにとっては、何も中国ばかりが商談相手ではありません。自分に見合った相手探しをすることが本来あるべき姿です。相手は常に我々のバリューを品定めしているのですから、こちらも受身ではなく、相手を知り、我々の価値をどう認めてくれるのか、探っていく姿勢が必要でしょう。

by sanyo-kansatu | 2011-11-28 21:17 | “参与観察”日誌
2011年 11月 28日

マルチビザ発給後の沖縄現地事情

今回のトラベルマートでは、沖縄のインバウンド関係者と面会することができました。今年7月1日より沖縄1泊が条件という変則的なルールで始まった中国人の個人観光マルチビザ(3年間有効)発給後の沖縄への中国人観光客の動向が気になるところでしたから、実際に現地で何が起きているのか、担当者に直接話を聞いてみたかったのです。
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中国の旅行会社向けに沖縄県が作った個人観光マルチビザ発給の広報資料


以下が沖縄のインバウンド関係者とのやりとりです。

――7月以降中国の個人ビザ客は増えていますか?
「これについては公式の見解と本音の部分の話があります。2009年7月に始まった中国人の個人観光ビザ発給は昨年の条件緩和をへて今年のマルチビザ発給に至るわけですが、沖縄に来る個人ビザ客は前年度の20倍以上になりました。これだけ聞けば、順調に伸びているといえる。しかし、いかんせん母数が小さい。昨年まで毎月50名程度だったのが、1000名を超えるようになったという話です。本音でいえば、ビザ効果でもっと爆発的に増えるだろうと思っていたが、それほどでもなかったといえます」

――7月末に海南航空の北京・那覇線(週2便)が新規就航したものの、傘下のCAISSA社による独占販売で、いきなり沖縄4泊5日4000元という激安ツアーが登場。中国側の関係者からも、沖縄が激安観光地に位置付けられることを懸念する声がありました(やまとごころ.jp)「中国人の日本ツアーはメイド・イン・チャイナである【前編】」沖縄側の反応はどうですか?

「我々もなぜそんなに安く売るのかとCAISSA社に申し入れましたが、聞き入れられませんでした。当初は同社を支援するつもりだったのですが、やめました。ただ来年1月から中国国際航空の北京・那覇線(週2便)が就航するため、市場が開放されることを期待しています。また上海・那覇線はすでに週6便飛んでいます。

沖縄はリピーターに支えられているという統計があります。国内客の80%以上はリピーター。一方現在中国客の大半は団体ツアーです。彼らの占めるシェアは全体から見ればまだとても小さいのですが、今後リピーターになってもらうことが大事だと考えています」

――ただせっかくマルチビザ発給の条件というインセンティブを得たのに、激安ツアーしか来ないというのでは、東京・大阪ゴールデンルートと同じ轍をふんでしまったのではないかという気もしますが……。

「外客受け入れという観点でいうと、沖縄には中国客の前に台湾客の問題があったんです。かつて台湾の方にとって初めての海外団体ツアーは沖縄という位置づけで、やはり激安だった。それを変えていくためにいろんな手を講じてきた経緯があるんです。まず『台北ウォーカー』などの若者向け情報誌で沖縄のビーチリゾートとしての側面をPRしました。台湾の方が沖縄でレンタカーを利用してもらうプランも打ち出しました。団体ではなく、個人客を増やしたかったのです。現在、台湾客の個人旅行は一般化しています。中国客にも今後同じような手を打っていくことになると思います」
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「アジアと日本文化が融合したリゾートアイランド沖縄」と題された沖縄県の映画やテレビドラマの誘致を図る広報資料。2011年は日中台合作のテレビドラマ『陽光天使』のロケが沖縄で行なわれたばかり


――なるほど、沖縄はすでにアジア客受け入れの初期段階に起こる苦い経験を、台湾客を通して知っているわけですね。アジアインバウンド市場は、団体客中心の時代から個人客へというプロセスをたどるのが常ですが、沖縄以外の自治体や観光業者をみていると、台湾からのツアーが今日の中国ツアーと同じように問題とされていた1980~90年代の事情を知っている人は少ないようです。当時は観光立国としてインバウンド振興を進めるという時代ではなかったからでしょうが、やはり沖縄は外客受け入れの難しさをよく知っているという意味でも、インバウンド先進県ですね。

「沖縄には観光しかないですからね。それでずっとやってきたのです。しかし、いま我々は強い危機感を持っています。内地からの旅行者が減少しているからです。

今回の個人マルチビザをめぐっても、いくつかの問題があります。沖縄1泊という条件も、実際どこまで守られているのか。関空経由で沖縄に寄って帰るツアーもありますが、ビザ発給時点で沖縄に立ち寄るスケジュールを組んでいたとしても、本当にその人が沖縄に立ち寄ったのかチェックする公的機関はないからです」

――えっ、私は勘違いしていました。今回の条件では最初の入国地を沖縄にしなければならないのでは?

「違います。1泊立ち寄るだけでいいんです。今回のマルチビザ発給は政府の急ごしらえの施策で、中国にある日本領事館では膨大な発給数を処理するだけでも大変な作業、対応に苦慮していると聞きます。近い将来、個人マルチビザの沖縄1泊という条件ははずされることでしょう。つまり、全国に解禁される。沖縄はそれまでが勝負といえます」

沖縄のインバウンド関係者の話からもわかるように、沖縄に立ち寄ったかどうかチェックを云々というような問題が起こること自体、今回のマルチビザ発給がいかに「急ごしらえ」の施策であったかを物語っています。

今回の施策をめぐって、当初中国側の一部から「どうして日本の地域振興のために沖縄に1泊しなければならないのか」というイチャモンがあったそうです。彼らにすれば、もっともな話ではないでしょうか。こうした中国側の受けとめ方と、かの国の富裕層の沖縄に対する認識については、以前「北京ラビオン社周社長の語る沖縄マルチビザ発給の訪日促進効果について」で書いています。

これは別の機会に考えるつもりですが、こうした「急ごしらえ」の施策も、日本のインバウンド市場の法整備に関わる政策担当者の圧倒的な経験の不足が背景にあると思います。もっとも、経験がないのは政策担当者に限った話ではなく、日本の大半の人たちがアジアインバウンドの時代を経験するのは初めてのことですから、無理もないといえる。そういう意味でも、沖縄の経験は貴重です。これからももっと耳を傾けていきたいと思います。

by sanyo-kansatu | 2011-11-28 21:11 | “参与観察”日誌
2011年 11月 27日

沖縄や北海道の関係者と面会(トラベルマート2011 その3)

トラベルマートには全国からインバウンド関係者が集まってきますから、普段電話取材でしかお話したことのない方にも会えるのはありがたいことです。

今回、沖縄と北海道という日本の最北・最南端の関係者とお会いすることができました。

日本のインバウンドは、実のところ、日本の両極で最も新しい動きが起きているということをぼくらは知らなければなりません。

<沖縄事情>
マルチビザ発給後の沖縄現地事情
<北海道事情>
北海道ニセコにSir Gordon Wu 現わる

by sanyo-kansatu | 2011-11-27 17:28 | “参与観察”日誌
2011年 11月 26日

外国人記者説明会(トラベルマート2011 その2)

トラベルマートの初日午前には決まって外国人記者を集めた説明会があります。主催者である観光庁が外国メディアに向かって訪日旅行促進のための日本政府の考え方やプロモーション活動について広報する場です。
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今回外国人記者たちが注目していたのは、今年10月観光庁が打ち出した外国人1万人の訪日無料チケットの提供(Fly to Japan事業)に関する詳細でした。日本政府が本当に無料航空券を提供してくれるとなれば、外国人記者たちが「次号のトップページの見出しはこれだな」と期待をこめるのも当然です。

外国人1万人に無料航空券…観光庁11億円予算
ところが、説明会の担当者である観光庁国際交流推進課の課長さんの口は実に重かったのでした。本来であれば、外国人記者の最大の関心事である「無料チケット」情報の発表は、この説明会を成功裏に終えるための格好のアピールポイントだったはずです。ドカーンと鳴り物入りで発表したっていいくらいの大ネタです。

それなのに、担当官氏はその実施時期をめぐって「12月の国会審議が通って、うまくいけば来年4月にプロモーションが始まるだろう」などと内輪の事情を真正直に明かしてしまったのです(そんなこと、外国の皆さんに知らせる必要があったでしょうか)。本来広報とは相手に伝えなければならないメッセージをどこまで明快かつ印象的に伝えられるかが勝負のはずです。

担当官氏の英語力に関しては、同じ日本人として追及するのは控えたいと思いますけど、せめて説明会で想定される質問にどう答えるべきか事前にシュミレーションするなり準備はしてほしいものです。今回呆れたのは、事前に外国人記者から用意してもらった質問を、氏は順番に読み上げ、それに答えるという一人芝居を始めてしまったことです。

なぜその場であらためて質問記入者に声をかけ、質問の意図を披露してもらった後で、それに答えるというようなインタラクティブな演出ができなかったのか。

ここ何年か、外国人記者説明会に出席しているぼくからすると、観光庁側の準備不足が目に余ります。せっかくのPRの場が台無しです。

こんな無味乾燥な説明会がさして問題とならないのは、理由があります。観光庁側のスピーチ担当者は毎年コロコロ変わりますが、来日する外国人記者の半分くらいは常連なので、説明会の中身のなさについては、彼らも想定内だからです。

ぼくはすでに何人かの外国人記者とは顔見知りで、彼らとは冗談を言い合ったりする関係です。ひとりの日本人として、日本のお役人さんの仕事ぶりに情けない思いをしていることを、いつの日か気がついてもらいたいものです。

by sanyo-kansatu | 2011-11-26 18:21 | “参与観察”日誌
2011年 11月 26日

インバウンド商談会って何?(トラベルマート2011 その1)

今週火曜日(11月22日)、パシフィコ横浜で開かれた「VISIT JAPAN トラベルマート2011」に行ってきました。
VISIT JAPAN トラベルマート

トラベルマートは、日本政府(観光庁)が主催するインバウンド商談会です。海外から日本ツアーを造成するバイヤー(大半は旅行会社)が来日し、国内からは彼らに旅行素材を提供するサプライヤー(セラーともいう。ランドオペレーターやホテル、観光地のアトラクション施設、全国の自治体など実に多彩)が集結。一堂に介して訪日旅行市場を盛り上げていこうという年に一度のイベントです。

ぼくにしてみれば、海外はもちろん全国各地からインバウンド関係者が集ってくるまたとない取材チャンスです。中国で知り合った関係者もそうですし、地方取材でお目にかかった現場の担当者にまとめてお会いできるので、こんなにありがたいイベントはありません。

こうした動機で会場をうろついているぼくとは違い、参加した関係者の皆さんにとっては真剣な商談の場であり、これほど収穫の多い海外の関係者とのマッチングの場はないといえます。

トラベルマートの初日には恒例の開会式があります。今年も溝畑宏観光庁長官のあいさつから始まりました。
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溝畑長官は日本人にしては珍しいオーバーアクションで、一部週刊誌に取り上げられたこともある個性的な人物です。今回も最初は原稿を読みながらの退屈な英語のスピーチでしたが、場が沈んでいることに気がついたからでしょうか。若かりし頃、当時付き合っていた彼女と横浜(トラベルマートの開催地)にデートに来た話をアドリブで紹介し、得意のアクションを披露していました。実際はかなり微妙な反応でしたが、一部外国人記者にはウケていたようです。

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それから何人かの関係者のスピーチのあと、2011年ミスジャパンの谷中麻里衣さんによるあいさつがあり、テープカットとなりました。やはり日本を世界に売り込む場には、着物の女性がつきものですね。彼女、慶応の学生だそうです。

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2011年度ミス日本グランプリの谷中麻里衣さん

会場に戻ると、すでに日本のサプライヤーと海外のバイヤーによる商談が始まっていました。日本のサプライヤーが幅2m×奥行き1.5m×高さ2.4mの出展ブースに支払う参加料は5万2500円。2日間にわたって海外のバイヤーと各20分間のマッチングタイムを利用して商談するチャンスを手にします。

とはいえ、相手は外国人ですから、限られた時間で商談を成立させるためには周到な準備が必要です。通訳は頼めばトラベルマート側が用意してくれますが、やはり売り込みのためには、自らの商材を外国人バイヤーにきちんと伝えられるスタッフの存在が不可欠です。
b0235153_1815661.jpg一方、海外のバイヤーは、自国の消費者に売り込む価値のある日本の商材の提供者と出会うことを望んでいるわけです。実際には双方の思惑がマッチすることはそれほど多くありません。日本のサプライヤーが売りたいものと海外のバイヤーが買いたいものが一致するとは限らないからです。

トラベルマートではインバウンド商談会以外にも、ファムトリップといって、外国人記者や海外のバイヤーを国内観光地の視察に招待するツアーもあります。今回は以下のコースが設定されていました。

1. 北海道2泊3日:(札幌・小樽・ニセコ・富良野・旭川) 定員:30名
2. 関東近郊2泊3日:(鬼怒川・日光・スカイツリー) 定員:70名
3. ゴールデンルート2泊3日:(東京・大阪・京都) 定員:40名
4. 九州3泊4日:(熊本・ハウステンボス・長崎) 定員:30名
5. 沖縄本島3泊4日  定員:30名
6. FIT・ニューツーリズム1泊2日(箱根・都内) 定員:70名
7. メディア推奨コース3泊4日(東京・大阪・京都) 定員:30名限定
8. 東北応援コース2泊3日(平泉・松島) 定員:30名

日本の新しい魅力を海外の関係者に発掘してもらうため、毎年コースの内容は変えていますが、今年目を引くのはやはり「東北応援コース」でしょうか。日光とスカイツリーというのもありますね。

トラベルマートは日本の魅力を海外に売り込むビッグチャンスの場なのです。

by sanyo-kansatu | 2011-11-26 18:16 | “参与観察”日誌
2011年 10月 27日

北京ラビオン社周社長の語る沖縄マルチビザ発給の訪日促進効果について

北京ラビオン社の周社長と会食しました。同社は中国の富裕層約1000名を抱える会員制旅行会社で、スイスのアンチエイジングツアーをはじめ、高品質な少人数制の海外ツアーを催行して注目されています。

北京名仕优翔国际旅行社(ラビオン社)

同社では、2009年より大阪の聖授会OCATクリニックと提携し、がん検診と観光を組み合わせたツアーで実績を上げています。ツアー価格は1名200万円相当といいますから、一般に中国の旅行会社が催行している激安ツアー(東京・大阪5泊6日5000元)の世界とは大違いです。ホテルも大阪ならリッツカールトンか帝国ホテル、東京はペニンシュラかシャングリラという5つ星外資が当たり前。検診を1日ですませると、京都や東京、北海道などで観光とショッピングを楽しんで帰るというラグジュアリーなツアーです。

ぼくは、去年ビジネス誌『プレジデント』の医療観光取材で同社を訪ねて以来、北京に立ち寄ると、たいてい一度は同社のスタッフに会うことにしています。富裕層を顧客に持つ同社の動向は、とても気になるからです。

多忙な周社長に今回会えたのはラッキーでした。彼に会うのは2度目です。案内された中国料理店のテーブルにつくやいなや、彼は言いました。「なんでも聞いてください」。

ぼくが聞きたかったのは、今後のラビオン社の日本での医療観光の新たな展開と、今年7月1日からスタートした沖縄1泊を条件にしたマルチビザ発給が富裕層の訪日旅行の促進にどれだけ効果がありそうか、ということでした。

前者については、震災後一時ストップしたがん検診ツアーも、夏ごろから再会しているとのこと。今後は検診だけでなく、治療も行なえる病院との提携をじっくり検討していきたいよう。ただし、ぼくが思うに、中国の富裕層は独特の価値観を持ち、好みもうるさいため、一般的な民間病院では提携はなかなか難しそうです。

一方、沖縄マルチビザ発給による訪日促進の効果について、彼はこうきっぱり言いました。
「沖縄マルチビザは、ラビオン社の顧客のような富裕層にはまったく関係ない。もともと彼らにはビザの問題などないからだ(簡単に取得できるため)。むしろ中流層やビジネス客にとってありがたいことなのだろう」。

「御社は沖縄をツアー先として考えるつもりはないのか」との問いに対しても、次のような厳しいひと言。「中国人にとって沖縄は魅力がない。沖縄のリゾートホテルはそれほど豪華ではない。うちの顧客は世界の5つ星クラスのビーチリゾートを体験しているため、沖縄は彼らが満足できる水準にはありません」。

どうやらこれが中国富裕層の本音らしいです。なんにもわかっちゃいないなあ……、沖縄にはローカルなカルチャーの魅力や世界的に知られるダイビングスポットなど、いろいろあるのに、とぼくは思いますが、まだぶっちゃけ成金=中国富裕層に成熟した旅の楽しみ方を満喫せよなんて無理な話かもしれません。

彼らの大半は、わずかな時間で個人資産が100倍から1000倍に急上昇して(それはスゴイことですけど)、まだ10年たったかどうかという人たちが大半です。香港の資産家とは違うのです。

問題なのは、北京で催行されている一般の沖縄ツアーが4泊5日4000元という激安ツアーしかないことです。ビザ取得が目的の参加者も多いと聞きます。すでに沖縄は「安かろう悪かろう」のデスティネーションとして位置づけられてしまいました。競合先は海南島やプーケットだそうです。これではまた同じ轍をふんでいると思わざるを得ませんでした。

そもそもこの沖縄マルチビザ発給をめぐって、当初中国の一部からイチャモンがありました。日本の政府高官が「ビザ発給を沖縄の地域振興につなげたい」という主旨の発言したことに対し、「なぜ日本の地域振興のために我々が沖縄に行かなければならないんだ」というわけです。

わざわざ中国側がそう言いたくなるのは、日中のビザ協定における不平等があるからでしょう(日本人はノービザだが、中国人はビザが必要)。そうはいっても、中国の都市部と農村の格差などの国情を考えれば対等なんて無茶だということは彼ら自身も知っています。ただ自己主張したいさかりですからね、最近の中国の皆さんは。国内問題はともかく、インバウンド関連の施策に関しては、政府も国内向けだけではなく、海外での受けとめ方も目配りした発言をしないといけないと思います。

by sanyo-kansatu | 2011-10-27 18:00 | “参与観察”日誌