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2013年 10月 14日

平壌で見かけた台湾人観光客たち(万寿台創作社レストラトランにて)

平壌では多くの中国人観光客を見かけました。外国人客の泊まるホテルは限られており、ぼくの滞在していた高麗ホテルには、ヨーロッパ人客もずいぶんいました。エレベーターに乗り合わせた外国人に片っ端から「Where are you from?」を繰り返したところ、イギリス、ニュージーランド、フィンランド、ロシアなどの観光客が確認できました。純粋な観光客もいましたが、我々のような招待旅行、学術研究の会議の出席者など、いろんなタイプの旅行者がいます。
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今回、平壌では台湾客も見かけました。北朝鮮が海外向けに朝鮮絵画や陶器などの美術品を制作販売している万寿台創作社(→「北京の朝鮮万寿台創作社美術館のアーティストたち」)の経営するレストランでのことです。
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彼らの食事をする個室では、朝鮮の女の子たちによる歌と踊りのショーが繰り広げられていて、我々も一緒に観ることになったのです。
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このレストランには画廊が併設されています。朝鮮の陶器や国内の名勝を描いた風景画などが展示販売されていました。台湾客たちの中には何枚か絵を購入している人もいました。
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ぼくは風景画にはあまり興味がないのですが、何枚か朝鮮の現代の姿を描いた作品もありました。一点は現在の首都平壌を描いた作品。実際の夜はこんなに明るくはないけど……というつっこみはともかく、もう一点は、いつぞや話題となった朝鮮美女軍団を描いた作品です。真っ赤なポロシャツにキャップのロゴはナイキ。ところで、ここに描かれている女の子は、みんな同じ顔に見えてしまうのは気のせいでしょうか。
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ところで、2013年10月14日の朝日新聞朝刊に「北朝鮮貿易博 台湾が初出展」という小さな記事がありました。

「中国・遼寧省丹東市で14日まで開催中の北朝鮮貿易の博覧会で、初めて台湾の中小企業6社が出展した。電子機器や化粧品、自転車のほか特産の高山茶などを売り込み、会場そばには約20店の台湾飲食店も並んだ。中国に生産拠点を広げる台湾企業は、北朝鮮の安い労働力に注目している」とのことです。

「国連の厳しい経済制裁下にある北朝鮮に対して、台湾は日韓のようにすべての貿易を禁じておらず、染料などの化学製品や医療機器などを輸出している」

「中朝両国が北朝鮮領内で進める経済開発区の関係者によると、すでに台湾系の大手電子機器メーカーに区画が割り当てられているという。別の関係者は『視察は中国企業に次いで台湾企業が多い』と明かす」

レストランで台湾客を見かけたとき、「あれっ(中国本土客が多いのはわかるけど、台湾客も来ているんだ…)」と一瞬意外な感じがしたのですが、こういう事情であれば、平壌で台湾人観光客に出くわすのは当然でしょう。

by sanyo-kansatu | 2013-10-14 09:33 | 朝鮮観光のしおり
2013年 10月 14日

2013年版 北朝鮮のグルメ~5泊6日食事14回のすべて【後編】

北朝鮮5泊6日、計14回の食事の内容の続きです(→前編)。

8)4日目の朝食(金剛山ホテルレストラン)
金剛山ホテルの朝食はブッフェではなく、すべての料理がテーブルに運ばれてきます。鶏肉料理もそうですし、とぐろを巻いたマントウがあるところなど、いかにも中国風の朝食です。雑穀のお粥もありました。
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9)4日目の昼食(金剛山の麓のモンラン館)
この日は朝早く起き、金剛山登山に出かけたので、下山した頃にはすっかりお腹が空いていました。料理は焼き肉です。牛と豚と鴨肉から選べます。ブルーの制服を着た女の子が肉を焼いてくれました。渓流を眺めながらの食事は気分がいいです。最後にビビンバが出てくるところなど、かつて韓国客が多くこの地を訪れた名残でしょうか。今回朝鮮でビビンバを食べたのはこのときだけでした。
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10)4日目の夕食(外金剛ホテル中華レストラン)
韓国が投資した現代的な外金剛ホテルの中華料理店での夕食。中国東北料理風の野菜の和え物の前菜、豚肉&鶏肉料理、ホタテのグラタン風、チャーハンなど、中朝洋折衷とでもいえばいいのか。あるいは、中韓洋折衷なのか。ヨーロッパ人客たちを少し意識したメニューなのかもしれません。
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11)5日目の朝食(金剛山ホテルレストラン)
前日とだいたい同じでした。ポテトをパイのように焼き上げた、ちょっと凝った西洋風の一品もありました。
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12)5日目の昼食(高麗ホテルレストラン)
バスで長時間かけて平壌に戻り、少し遅めの昼食です。おなじみのニシンの煮つけや鶏団子、野菜炒めなど。
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13)5日目の夕食(万寿台創作社の経営するレストラン)
この日の夕食は、北朝鮮が海外向けに朝鮮絵画や陶器などの美術品を制作販売している万寿台創作社(→「北京の朝鮮万寿台創作社美術館のアーティストたち」)の経営するレストランへ。
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料理は最後の日ということで、刺身の舟盛りが出てきました。朝鮮名物というジャガイモの皮の黒い餃子もあります。見た目はいちばん豪華でした。ただ刺身は冷凍もので、口の中でしゃりしゃりしました。これは日本人客だけのサービスだったとあとで聞きました。朝鮮産の瓶詰マッコリもあり、1本10元相当でした。
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店の前にはチマチョゴリの美人さんもいて、美女軍団の歌のショーもありました。
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【動画】平壌万寿台創作社レストランのショー(2013年8月)

14))6日目の朝食(高麗ホテルレストラン)
おなじみのブッフェです。朝鮮では中国でほとんど見かけない揚げ物がけっこう出てきます。炒めものの調理法も、中華より日本食に近い気がします。もちろん、中華料理もたくさん出てくるのですが、基本的に中国とは調理法や味の好みが違うように思います。
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今回、朝鮮でいろんな料理を供されたわけですが、その味の水準はともかく、内容の中朝洋折衷ぶりは、もしかしたら参加者の国籍比率と微妙にシンクロしているのかもしれないと、こうして写真を並べてみて思いました。参加者の人数のうち、7割5分が中国本土、2割が欧米系、5分が日本人でした。これは実際の北朝鮮を訪問する外国人観光客の比率とほぼ近いといえそうです。料理の内容も、その比率に合わせるのは、外国客へのもてなしという観点でみれば、ごく自然なことでしょう。

一点、残念だったことがあります。以前このブログで北朝鮮の発行する旅行ガイドブックの20年間の内容の変遷について書いたことがありますが(→「2012年版北朝鮮旅行ガイドは20年前に比べこんなに変わっていた」 )、その最新版には平壌市内の21軒のレストランが紹介してありました。なかにはイタリア人経営の本場イタリアンがあると書いてあったので(実際、現地ガイドの話では平壌にはイタリアンが3軒あるそうです)、ぜひ行きたいと思ってリクエストしたのですが、予定に入っていないという理由で却下されてしまいました。

なんでもヨーロッパの多くの国が大使館を置く平壌では、各国の外交官たちが数少ない西洋レストランを利用したがるため、直前ではなかなか予約が入らないそうです。少なくともガイドからはそう言い訳されました。専用のピザの焼き釜もあるそうですから、一度は平壌でワインとピザを味わってみたいものです。

※その他、いまどきの北朝鮮事情については「朝鮮観光のしおり」をご覧ください。

なお、2014年版 北朝鮮のグルメ5泊6日のすべて【前編】をアップしました。
http://inbound.exblog.jp/23948946/

by sanyo-kansatu | 2013-10-14 00:22 | 朝鮮観光のしおり
2013年 10月 13日

2013年版 北朝鮮のグルメ~5泊6日食事14回のすべて【前編】

8月下旬、ゆえあって北朝鮮を訪ね、5泊6日滞在しました。その報告をこれから少しずつしていくつもりです。

さて、どの話題から始めようかと考えたのですが、実は昨年6月、ぼくは咸鏡北道の羅先を訪ねています。本ブログでもその報告をすでにしていますが、いくつか書いたうち、アクセス件数が最も多かったのが「羅先(北朝鮮)のグルメ~1泊2日食事4回のすべて」でした。

北朝鮮の食糧事情に関する深刻な報道が多いなか、いったいかの国を訪ねた外国人にはどんなものが供されるのか、気になるところでしょう。

というわけで、これから5泊6日、計14回の食事の内容をお見せすることにしようかと思います。ただし、今回のぼくの北朝鮮訪問は、旅行会社が募集した一般のパッケージツアーではありません。旅行業界の専門用語でいうところのインセンティブツアー(報奨旅行)に当たります。要は、北朝鮮の政府観光局に招待された旅行なのです(詳細は別の回で)。

ですから、今回供された食事の内容は、ぼくと同じように招待された海外の人たち、とりわけヨーロッパや中国から来た関係者を接待することに重きを置いています。彼らは日本よりはるかに多くの観光客を北朝鮮に送り込んでいるからです。その意味については、おいおい説明していくとして、ひとまず5泊6日の簡単な行程を以下記し、時系列で食事の内容を公開していくことにしましょう。

1日目 北京から平壌へ
2日目 平壌(朝鮮国際旅行社創立60周年記念パーティ。実は、これが今回の訪朝の目的。マスゲーム観覧)
3日目 平壌から金剛山へ
4日目 金剛山観光
5日目 平壌に戻り、市内観光
6日目 平壌から瀋陽(中国遼寧省)へ

1)1日目夕食(高麗ホテルレストラン)
平壌の最初の食事は、宿泊先の高麗ホテルのレストランにて。ニシンの朝鮮風煮つけ、鶏肉入りスープ、水餃子、野菜炒めとキムチにごはんとミソチゲいう内容でした。派手さはありませんが、中華料理と違って油っこさがないぶん口に合います。水餃子をメニューに入れているのは、中国人参加者が多数を占めているからでしょうか。
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2)2日目朝食(高麗ホテルレストラン)
高麗ホテルの朝食はブッフェです。メインのおかずはニシンと大根の煮つけや中華風ジャガイモ千切り炒め、肉野菜炒めなど。あとはキムチとミソチゲとごはんですが、トーストや揚げパンもありました。お粥も2種類ありました。
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3)2日目昼食(玉流館)
平壌冷麺で有名な玉流館にて。大同江沿いにある巨大なレストランで、一度に2000名は食事ができるそう。我々外国人客と朝鮮の人たちが食事をする場所は分けられていますが、店の前に大勢の人たちが並んでいました。暑い日だったので、さっぱりした冷麺は食が進みました。味については、韓国と比べるとどうだとか、いろいろ意見はありそうです。
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トウモロコシのパンケーキや鶏肉料理などがついた定食メニューでした。
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最後にデザートでアイスクリームが出てきました。これは悪くなかったです。
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4)2日目夕食(高麗ホテルレストラン)
実は、この日の夕食が朝鮮国際旅行社創立60周年記念パーティでした。ここではヨーロッパ人たちに合わせたのか、西洋式のフルコースでした。前菜はポテトサラダで、クロワッサンとキムチが一緒に置かれていました。料理はまず白身魚のクリームソースかけ、肉団子のスープ、そしてこれが主菜だったのに写真を撮るのを忘れてしまったのですが、牛肉のステーキでした。味は……、正直なところ、やっぱり朝鮮料理のほうがずっとおいしいなと思いました。
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会場では、白いジャケット姿の男性とピンクのチマチョゴリを着た給仕の女性たちがかいがいしく皿をテーブルに運んできます。なかには日本語を話す給仕の男性がいて、「どうですか。わが国ではこんなに高級な西洋料理も出せるんですよ」という気負いのようなものを感じないではありません。

朝鮮を訪ねた外国人が、う~んと口ごもってしまうのは、こういうときです。彼らはいつでも自信たっぷり気に見えるからです。でも、本当のことを朝鮮の人たちに言ってしまうと、彼らを傷つけるとわかっているから、みんな黙ってしまうだけなのですが……。
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朝鮮産のワインもふるまわれたので、一杯口にしたのですが、10年以上前の中国産のワインに似た甘さが口に残りました。
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5)3日目の朝食(高麗ホテルレストラン)
2日目と変わり映えのしない内容でしたが、今日だけのメニューとしては麻婆豆腐がありました。味付けは、山椒が強く利いていないところが日本の中華料理に近い気がします。
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キムチと朝鮮餅とパンが一緒に並んでいるのが、いまどきの朝鮮風かもしれません。
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6)3日目の昼食(元山東明ホテルレストラン)
この日は平壌からバスで約5時間かけて日本海側の港町の元山に来て、海沿いのホテルで昼食をとりました。ここでもポテトサラダが出ました。日本海沿いらしく、かれいの素揚げや千切りポテトとエビをからめて揚げた、ちょっと凝った料理も出ました。フライドチキンにはちょっぴりケチャップがかかっていました。
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チャーハンはどちらかというとリゾットのようにべとべとで、中国風に強火で炒めて米粒がぱらぱらという感じではありません。これは朝鮮の中華料理の特徴かもしれません。韓国でも中華は本場とはずいぶん違いますものね。
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レストランからの海の眺めは素晴らしかったです。港の対岸に新しいホテルを建設中とのことでした。
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7)3日目の夕食(金剛山三日浦タンプン館)
金剛山の東にある三日浦という美しい湖畔にあるレストラン「タンプン館」での夕食となりました。ところが、食事の内容がこれまでになく寂しい感じでした。なにしろこれ(写真)でワンテーブルの8人分だからです。いったいどうしたのでしょうか。韓国客が金剛山に来なくなってから久しいため、これだけ多くの外国人客(約80名)の接客をするのが難しかったのか……。皆さん、「こりゃひどいねえ」とぶつぶつ言っていました。我々と同席だった一部の中国客たちは、ビールをひと口飲んだだけで、料理には箸もつけずに出ていきました。相変わらず、彼らはやることがはっきりしていますね。
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すでに日が暮れていたので、目の前の湖は漆黒の闇と静寂に包まれていました。昼間来たらきっとすばらしい眺めでしょう。
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さて、4日目以降は後編で。

※もしよろしければ、ナイトライフの話もどうぞ。→「北朝鮮のナイトライフ~カラオケで地元ガイドが歌った意外な曲は?」。その他、いまどきの北朝鮮事情については「朝鮮観光のしおり」をご覧ください。

なお、2014年版 北朝鮮のグルメ5泊6日のすべて【前編】をアップしました。
http://inbound.exblog.jp/23948946/

by sanyo-kansatu | 2013-10-13 22:49 | 朝鮮観光のしおり
2013年 10月 02日

24回 この夏、日本の独壇場だった『タイ・トラベルフェア』レポート

8月中旬、タイのトラベルフェア(Thai International Travel Fair #13)に行ってきました。日程は、8月15日(木)~18日(日)。会場はバンコクのシリキット国際会議場(Queen Sirikit National Convention Center)です。
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TITF(ただし、サイトの内容はすでに来年春の告知に更新)http://www.titf-ttaa.com/
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タイのトラベルフェアは毎年2月と8月の年2回、開かれます。タイの旅行シーズンは4月のソンクラーン(旧正月)と10月のスクールホリデー(夏休み。タイでは10月がいちばん暑い!)なので、それを当て込んで2ヵ月前に催されるのです。

出展会場がそのまま旅行商品の一大即売会となるのが、タイのトラベルフェアの特徴です。単に観光局や旅行関連の展示ブースが並ぶだけでなく、航空券やホテルの宿泊券、パッケージツアーなどが特別価格で販売されるのです。当然会場は、この機を逃すまいと足を運ぶ一般客の姿であふれることになります。これは日本や中国のトラベルマートと大きく違うところです。

9月下旬現在、来場者数は集計中ということで発表されていませんが、参考までに昨年8月の同旅行フェアの主催者発表を挙げると、30万人だそうです。総売上も集計中ですが、昨年は3億バーツ(約9.3億円 1バーツ=3.1円)でした。

総出展ブース数もまだですが(昨年8月は597ブース)、今年2月の来場者は約80万人、売上も30億円規模でした。このことからタイのトラベルフェアは2月がメインで、8月はサブ的な位置付けであることがわかります。

※追記/その後、現地の英字紙の調べで、今回の来場者数は約40万人、売り上げは4億バーツ(約12.4億円)であることがわかりました。ただし、若干誇張された数字ではないかという感じもしますけど。

会場から見えてくるタイ人の海外旅行の現在形

では、会場を眺めていきましょう。

会場は各国の政府観光局、エアライン、ホテルといった展示が中心のブースと、旅行会社の展示即売、旅行グッズやガイドブックなどの物販ブースに分かれています。

「NTO(国家観光局)ゾーン」には、今回出展した中国や台湾、マレーシア、フィリピン、インドネシア、日本などのブースが並んでいました。珍しいところでは、ブータンのブースもありました。レンタカーやアウトドア関連の物販、クレジットカードの入会受付など、旅行にまつわるあらゆる商品のブースもあります。これらを眺めているだけでも、タイ人の海外旅行シーンの現在形が見えてきます。
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旅行会社の展示即売ブースでは、各社ともパネルにツアー料金のリストを大きく貼り出し、チラシやパンフレットを大量に用意してその場に特設カウンターを設け、ツアーを販売しています。来場客はいくつもの会社をめぐり、ツアー商品の中身と料金を見比べ、これぞと思うツアーを見つけると、その場で予約申し込みをします。なぜなら、前述したように、各社はこの会期中限定のスペシャル料金で売上を競い合っているからです。
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特設ステージも設置されていて、常時各国のプロモーションイベントやショーが繰り広げられています。タイのトラベルフェアにはお国柄がよく表れていて、お祭りのような楽しさにあふれていました。

※TITF会場の出展ブースの様子については、中村の個人blog「8月中旬、タイのトラベルフェアに行ってきました(TITF報告その1)」を参照。

圧倒的に盛況だったジャパンゾーン

今回のタイのトラベルフェア(TITF)で最もにぎわいを見せていたのは、ジャパンゾーン(日本の出展ブース)だったといっていいと思います。実際、他国のブースと比べても、日本は出展数が多く規模が大きいというだけでなく、力の入れよう、やる気がまるで違っているように見えました。日本の関係者の皆さんはいつも通りの生真面目さで、日本観光のPRにいそしんでおられました。それはまさに日本の独壇場といった光景でした。
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では、ジャパンゾーンを見ていきましょう。まず、ジャパンゾーンを束ねている日本政府観光局(JNTO)の「VJブース」です。ここには、来場客からの日本旅行に関する質問に答えるためにタイ人のスタッフが常駐しています。

今回ジャパンゾーンには、日本から24団体が参加しています。タイ人が最近急増している北海道。「昇龍道」というゴールデンルートに代わる特設ルートを設定し、広域連携する中部や北陸。タイ人誘客を模索している九州、沖縄などが、目を引きました。
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さらに、ジャパンゾーンとは別の場所で、H.I.SとJTBのバンコク支店がツアー販売を行っていました。彼らは地元の旅行会社と競合しながら、日々タイで営業を行っている現地法人です。

さて、TITFでは別会場で商談会やビジネスセミナーが行われます。今回日本側が強くアピールしたかったのは、8月16日の午後に行われた在タイ日本国大使館による査証免除に関するプレゼンテーションでした。今年7月1日よりタイ人に対する観光ビザの免除が実施されたことに対する広報PRが目的です。
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JNTOバンコク事務所によると、「今回は8月のTITFとして日本から過去最大の出展数(24団体)となりました。タイ人にとって日本は憧れの国です。ですからビザ免除は、現地メディアでも大きく報道されました。タイの人たちは、今回の決定で自分たちは日本に認められたのだと喜んでいます」とのことです。

同事務所がまとめた「TITF速報」によると、訪問地に関する来場客の問い合わせは、東京~大阪ゴールデンルートに含まれるエリアが最も多かったものの、これに北海道、高山・白川郷が続いたこと。また、これまで問い合わせの少なかった中国・四国地方などに関する質問も寄せられ、FITを中心としてタイ人の興味が全国に拡大していることが実感されたこと。旅行内容については、10月をターゲット時期とする旅行フェアのため、紅葉に関する質問が相次いだこと。鉄道パスやレンタカー等の移動手段やWiFi等の携帯利用に関する質問、温泉や食・レストランに関するものが多かったそうです。

これらの報告を見る限り、タイの訪日客はずいぶん成熟していることを実感します。質問内容からも、彼らが個人旅行の意欲にあふれていることもうかがえます。この夏実施された観光ビザ免除は、両国にとってきわめて好タイミングだったといっていいのでしょう。

JNTO関係者によると、来年2月のTITFの日本からの出展団体はさらに増えるだろうと予測しています。

※ジャパンゾーンの様子については、中村の個人blog「圧倒的なにぎわいを見せたジャパンゾーン。その理由は?(TITF報告その2)」を参照。

FIT仕様に進化するタイの日本旅行案内書

会場内には、旅行関連商品を扱う物販ゾーンもあり、タイ語の旅行ガイドブックが多数販売されていました。

正直なところ、タイで個人旅行のためのガイドブックがこれほど充実しているとは思っていませんでした。ぼくは中国の旅行書籍の事情にかなり精通していますが、実用書としての出来栄えを見る限り、明らかにタイは中国より進んでいます。誌面を通じて実際に日本を旅行している「タイ人読者=個人旅行者」の存在をうかがわせる企画内容や、実用に則したさまざまな編集的な仕掛けや工夫が見られるからです。これだけの書籍が存在する以上、成熟した旅行者がこの国には存在している。そう確信するに至りました。
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なかでも印象的だったのが、タイ人女性カメラマンのBAS(バス:ペンネーム、オラウィン・メーピルン:本名)さんの書いた旅行ガイドブック『ひとりでも行ける日本の旅』です。

このガイドブックは日本全国31か所の観光地について、アクセス情報も含めて、詳しく説明しています。同書の特徴は、東京や大阪などの主要都市から離れた日本語の標記しかない地方の観光地についても、地名標記の写真を掲載したうえ、タイ語に翻訳して説明してあるなど、日本語ができないタイ人でも、ひとりで日本旅行できるよう工夫を凝らさています。女の子らしいイラストも豊富に使われていて、楽しく読みやすいデザインになっています。タイの日本旅行案内書が、FIT仕様に進化していることがわかります。

実は、この本は今年2月に在タイ日本国大使公邸で開催された“Reception for Japan-bound Tourism Promotion”において、訪日旅行の促進に貢献した旅行ガイドブックとして「Japan Tourism Award in Thailand」を受賞しています。

※TITF会場で見つけた豊富な日本旅行案内書の世界については、中村の個人blog「タイで発行される日本旅行ガイドブックはよくできている(TITF報告その3)」を参照。

なぜ日本ブースはにぎわったのか

それにしても、今回のトラベルフェアでは、なぜジャパンゾーン(日本の出展ブース)がにぎわいを見せることができたのでしょうか。あらためて考えてみたいと思います。

まず考えられるのは、今年が「日本アセアン友好協力40周年」で、「(アセアン客)訪日100万人プラン」という観光庁の明快な目標が掲げられていたことがあるでしょう。それに加え、会場で会った多くの関係者から共通して聞かれたのは「円安とビザ緩和に対する期待の高さが主な理由だろう」という声でした。

もっともこんな声もありました。ローカルブースに出展していたあるタイ在住の日本関係者は、はっきりこう言います。「こんなに日本からの出展が増えたのは、中国問題にある。中国で痛い目に遭ったから、タイしかないというムードになったにすぎないのでは」。

日タイ関係を長く見てきた現地邦人たちは今回のジャパンブース盛況の理由を意外に冷静に見ているようです。確かに、日本側がこれほど積極的だったのは、昨年以降、中国に対する嫌厭感からにわかに進んだ日本経済の東南アジアシフトの機運と同調しているように思われます。そして、彼はこう付け加えました。

「今後、日本の皆さんが期待するほどのタイの訪日旅行マーケットの爆発が起こるとは限らない。それは事前に了解しておいてほしいと思います」。
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タイはここ数年、目覚ましい経済成長を遂げています。少なくともバンコクにいて、巨大なショッピングモールに繰り出すタイ人たちの旺盛な消費力を目にしていると、この国に多くの海外旅行者が現れても、なんら不思議ではないと感じたことは確かです。

タイではここ数年、政変や洪水など、経済成長にブレーキをかける事態が頻発しました。それでも、現地関係者によると「タイの海外旅行市場は、2011年後半(10月末から12月前半)の大洪水の影響で12年度前半は落ち込みが見られました。しかし、後半は持ち直し、最終的には12年全体の統計で、タイ人の海外旅行者数は前年度比6%増の572万人になりました」とのことです。

タイの海外旅行者数は、2012年時点で572万人という規模です(しかも、数では国境を接したマレーシアなどが上位を占めます)。そのうち、訪日したのは26万人。たとえば、同じ年の中国の海外出国者数は8300万人で、訪日は140万人。確かに、インバウンド振興において重要なのは市場規模がすべてではありません。むしろ市場の分散の必要こそが、昨年の教訓です。しかし、市場規模の違いは歴然としています。タイの人口は約6600万人ですが、広東省の人口だけで約9000万人いるのです。

その点について、別の在留邦人はこう指摘しています。「タイを訪れる日本人は1990年代に入り急増しましたが、2000年代に一時停滞しました。それでもここ数年の東南アジア経済の成長で持ち直し、最近はだいたい年間120~30万人で落ち着いています。

つまり、渡航者数には頭打ちとなる時期があるのです。では、訪日タイ人数の落ち着きどころはどのくらいか? こればかりは誰にもわかりませんが、私はだいたい50万人くらいではないか、と考えています。根拠があるわけではないですが、タイの人口や経済規模からいって、そのくらいに見積もるのが妥当という考えです」

タイの訪日旅行市場の伸び率は現状では高く見えるけれど、伸びしろは限りがあるのではないか。

昨年、中国問題で傷ついた日本の関係者の多くは、あらゆる面で好意的なムードと環境に恵まれたタイに来て癒されたのではないか、と思います。実は、ぼく自身まったくそうでした。その気持ちはわかるけれど、ムードだけで大挙して押し寄せても、どれだけの成果を得られるか、冷静に検討する必要があるだろう、という現地の声もあるのです。

食のプロモーションで連動しよう

タイで富裕層向け訪日旅行のフリーペーパー『The Cue Japan』を発行するO2 Asia Travel Design Co.,Ltd.の吉川歩代表取締役社長は、こう分析しています。

「タイの訪日旅行市場の規模を考えるポイントはふたつあります。まず、すでにいるリピーターがあと何回日本に来てくれるか? そして、初めて来日するタイ人旅行者があとどれだけ残っているか?」

我々日本側が新しく“発見”したと思っていたタイという優良な訪日旅行市場も、現地の感覚ではすでにかなり成熟しているというのです。こうした現地側の客観認識をふまえ、これからタイ市場に対して何をすべきなのか。吉川さんはこう提言します。

「まず大事なのは、リピートできる都市を増やすことでしょう。現在、東京、大阪、札幌などがそれに当たると思いますが、もっと候補がないとリピーターを増やすことはできません。では、タイ人が1回しか訪れてくれない都市と何度もリピートしてくれる都市との違いは何か。それは食にあると思います」

タイ人の日本食好きについては、本コラムでもこれまで何度か紹介してきましたが、やはり誘致のカギは食にあるというのです。

「タイ人の訪日誘致は観光だけでは十分ではないと思います。地元の食の魅力をいかに印象的に打ち出せるかが、知名度を上げることにつながります。おいしいものを食べてみたいという動機だけで、その土地に訪れたいと思うのがタイ人です。もっとそれぞれの地域が地元の食を前面に出してアピールすべきです。

そのためには、今回のトラベルフェアのような場でも、観光PRだけでなく、食のプロモーションと連動させるべきではないでしょうか」

実は、『DACO』(http:www.daco.co.th)という日本人の発行するタイ人向け情報誌の8月号に、茨城県の食の物産展の広告が載っていました。そこには、いかにもタイ人が好きそうなイチゴやメロンなどのフルーツや地元特産品が写真入りで紹介されていました。

バンコクではこうした日本の自治体の物産展がよくあるそうですが、残念ながら同県はTITFには出展していませんでした。

つまり吉川さんは、こうした食の物産展と観光誘致を連動させてPRすることが知名度を上げることにつながる。それがタイの訪日旅行市場の開拓にとって重要だというのです。これはすべての国で当てはまる手法ではないかもしれませんが、少なくともタイでは有効なのです。とても貴重な提言だと思います。

※やまとごころ.jp  http://www.yamatogokoro.jp/column/2013/column_140.html

by sanyo-kansatu | 2013-10-02 13:36 | 最新インバウンド・レポート
2013年 10月 02日

新旅游法の施行で中国団体客はどうなるか?(ツアーバス路駐台数調査 2013年10月)

中国の国慶節がやってきました。中国メディアはこの時期、盛んに国内外に繰り出す中国人旅行客の盛況ぶりを喧伝しています。実際、お隣の国、韓国には中国客が大挙して訪れています。はたして日本へはどうなのか。

さらに気になるのは、10月1日から施行された新旅游法によって中国人の海外旅行はどう変わるか、という点です。新旅游法とは、簡単にいうと、これまで「安かろう悪かろう」といわれた中国人の海外ツアーにおいて、ガイドによる現地での追加費用の徴収が禁止されるというものです。

これまで中国の海外ツアーでは、募集時にはツアー料金を不当に安く設定する代わりに、海外渡航先で多額の追加料金を「オプション」と称して徴収するのが常だったからです。現地徴収という帳尻合わせがなければ、現地の旅行を手配するランドオペレーターは、ホテルやバス会社、食事代を支払うにも赤字になってしまうという、まるで博打みたいなビジネスがまかり通っているのです。

気の毒なのは、中国のツアー参加者です。このため、ツアーに参加した消費者の苦情が旅游局に多数寄せられ、中国政府もついに消費者保護に着手したというわけですが、これで本当にコスト度外視の激安ツアーは一掃できるのか?(抜け穴はないのか?)現地で旅行費用の不足分を追加徴収できなければ、ツアー料金に事前にそのぶんを組み込まなければならないことから(本来それが常識なのですが、中国ではそうでなかったのです)、ツアー価格は当然上がることが考えられます。それは中国の海外旅行市場にどんな影響を与えるのか……。その行方が気になるところです。

※このカテゴリでは、2011年11月から始めた御苑大通り新宿5丁目付近におけるアジアインバウンドバスの路駐台数(≒中国客の動向)を記う録しています。

1日(火)12:30 4台、19:40 2台
2日(水)12:40 4台、18:00 5台
※今日も雨の中、新宿5丁目には中国団体客の姿が大勢見られました。
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3日(木) 12:40 4台、18:10 3台
4日(金) 12:30) 12:40 3台、17:20 3台
6日(日) 12:40 4台
7日(月) 13:50 1台、 18:10 5台(ただし、そのうち3台はミニバス)
※国慶節の休みも終わりました。新法が施行される10月1日以前に中国を出発したツアーはほぼ帰国したと思われます。今週くらいからは、新法以後の新しい価格帯のツアーとなりそうです。今日のお昼はわずか1台。さて、明日以降バスは来るのか?

8日(火) 12:40 1台(※ただしミニバス)、19:10 0台
※今日は珍しく「林園」のネオンもついていませんでした。

9日(水) 12:40 1台(※ただしミニバス)、18:00 2台
10日(木) 12:30 0台、18:00 1台
※この日、御苑大通りを歩いていると、伊勢丹ビューティーパークの前に東南アジア系の外国客を10数名乗せたミニバスが一時停止しているのを見かけました。なんだろうと近づいてみると、数人の客が降りて、すぐにバスは発車してしまいました。そのバスの運転席の脇の車窓にこう書かれたプレートが置いてありました。

「Shiseido Professional Beauty Inovator Tokyo Tour」

なんだろうと思ってネットを検索してみると、こんなサイトが見つかりました。

BEAUTY INNOVATOR AWARD2013
http://www.pro.shiseido.co.jp/campaign/beautyinnovatoraward2013/

資生堂が主催する「ヘアスタイルのみならず、ヘア、メーキャップ、コスチュームなどのトータルな表現によるクリエーティブな作品」を日本とアジア各国(タイ、マレーシア、シンガポール、香港、中国、台湾、韓国)から応募を募り、アワードを与えるフォトコンテストのようです。おそらくバスに乗っていたのは、マレーシアかシンガポールあたりのビューティサロンにお勤めのアーティストのようです。皆さん、とてもおしゃれな雰囲気でしたから。でも、話しているのはタイ語ではなかったんです。訪日旅行といってもいろいろで、こういうツアーもあるという話でした。

11日(金)12:40 0台 、18:40 1台(ただしミニバス。また主催旅行社はsun travelとあり、中国系ではなさそう。「林園」のネオンも消灯)
12日(土)12:50 0台
13日(日)未確認
14日(月)未確認
15日(火)19:40 1台
16日(水)17:20 1台
17日(木)18:00 1台

18日~21日まで台湾出張のため未確認。

22日(火)18:20 1台
23日(水)15:30 2台
24日(木)12:40 1台、18:10 3台
25日(金)未確認
26日(土)未確認
27日(日)未確認
28日(月)12:30 1台、19:10 5台
※この日の夜は、久しぶりに多くのバスが停車していました。「林園」のネオンもついています。あるバスの団体客は「林園」の地下食堂に吸い込まれていきました。
29日(火)12:50 1台、19:30 0台(ただし「林園」のネオンは点いてます)
30日(水)16:00 1台
31日(木)17:40 1台

by sanyo-kansatu | 2013-10-02 12:58 | 定点観測ツアーバス調査