ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 12月 28日

瀬戸内国際芸術祭とLCC拡充で高松市内に海外の若者向けゲストハウスが急増中

ある仕事で2016年の香川県の県外からの観光客入込数を調べたところ、936万8000人(前年比1.8%増)で2年連続で増加しています。これは、香川県にとって過去最大だった瀬戸大橋が開通した昭和63年の1035万人に次ぐ2番目の入込数となっているとか。

一方、入込数ではなく、観光庁が香川県の延べ宿泊者数を調べた宿泊旅行統計調査(平成28年)をみると、興味深いデータがうかがえます。

香川県 2016年延べ宿泊者数 3,779,900人(前年比 -7.3%) 全国37位
    同外国人延べ宿泊者数 358,360人(前年比+70.3%) 全国23位
    (台湾27% 中国15% 香港12% 韓国11% アメリカ3%)

これをみると、2016年に香川県を訪れた観光客全体は増えているのに、延べ宿泊者数は若干減少している一方、外国人の延べ宿泊者数は前年比70.3%と大幅増を見せており、全国23位となっています。国内客を含めた延べ宿泊者数が全国37位と下位にある香川県は、外国人の宿泊者数では全国で中位にいることがわかります。つまり、香川県を訪れる観光客のうち、外国人の比率は全国的にみて高いといえます。

香川県や高松市の関係者によると、2016年の香川県への県外からの入込数増加、特に外国人宿泊者数が大幅に伸びた理由は「瀬戸内国際芸術祭2016」の開催年だったことにあると分析されています。

瀬戸内国際芸術祭
http://setouchi-artfest.jp/

興味深いことに、外国人観光客の伸びは、芸術祭の開催されていない2017年にも見られます。

以下、2017年の香川県の外国人延べ宿泊者数と国籍比率の6月~10月までの推移です。

2017年6月 38,640人(+69.4%) 全国20位
(台湾32% 香港16% 中国16% 韓国11% アメリカ2%)

2017年7月 39,250人(+19.3%) 全国 17位
(台湾30% 中国18% 香港12% 韓国11% アメリカ3%)

2017年8月 32,470人(-9.5%) 全国24位
(台湾27% 中国17% 香港14% 韓国7% 欧州4%)

2017年9月 39,250人(+19.3%) 全国21位
(台湾30% 中国18% 香港12% 韓国11% アメリカ3%)

2017年10月 51,120人(+2.1%) 全国20位
(台湾29% 中国15% 韓国15% 香港13% アメリカ2%)

ここでは8月こそ、昨年芸術祭が開かれた時期(3月2日~4月17日、7月18日~9月4日、10月8日~11月6日)とまるまる重なっていることから前年比マイナスになっていますが、それ以外の月は増加しています。

これは何を意味するのでしょうか。瀬戸内国際芸術祭が香川県のインバウンド市場に大きな影響を与えたことは明らかでしょう。

では、どんな影響を与えたのか。

香川県瀬戸内国際芸術祭推進課の関守侑希さんによると「瀬戸内国際芸術祭2016の総来場者数は約104万人でしたが、アンケート調査によると、外国からの来場者の割合は13.4%。前回開催の13年と比較して大きく伸びています(2013年は、総来場者約107万人の2.6%が外国人)。芸術祭が回を重ねるごとに海外での知名度を向上させたことが考えられます」とのこと。

※瀬戸内国際芸術祭2016における外国人来場者数は、多い順に台湾(37.2%)、香港(13.8%)、中国(11.4%)、フランス(6.2%)、アメリカ(4.6%)となっている。

この国籍別来場者数は、高松空港の国際路線とほぼ重なっています。2017年12月現在の高松空港への国際路線は以下のとおり。※( )内は就航年。

高松空港国際線(2017年12月)
ソウル線(1992年) エアソウル週5便
上海線(2011年7月) 春秋航空週5便
台北線(2013年3月) チャイナエアライン週6便
香港線(2016年7月) 香港エクスプレス週4便
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香川県交流推進部観光振興課国際観光推進室の池浦健太郎さんも「香川県の2016年の訪日外国人延べ宿泊者数をみると、国際定期路線の就航先である韓国、中国、台湾、香港からの割合が高くなっており、高松空港の国際定期路線の拡充が大きな要因となっていると考えられます」といいます。

高松空港の国際線の特徴として、台北線を除く3路線がLCCであること。また前回の瀬戸内国際芸術祭が開催された2013年のチャイナエアラインや16年の香港エクスプレスの就航と、台湾や香港の来場者数トップ2になっていることには大きな関係がありそうです。

瀬戸内国際芸術祭の開催は、地元の宿泊事業者にも影響を与えています。とりわけ海外の若い旅行者を香川県に呼び込むことに大きく貢献しており、高松市内に若者向けのリーズナブルな宿泊施設であるゲストハウスが急増しています。

現在、高松市内には10数軒のゲストハウスがあります。

国内のゲストハウス事情に詳しく、『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)の著書もある松鳥むうさんによると「私が定宿にしている『ゲストハウスちょっとこま』は2013年の瀬戸内国際芸術祭の年に開業しました。ここは高松で最初にできたゲストハウスです。ある都市に1軒ゲストハウスができると、一斉に同じエリアに開業ラッシュが起こることはよくありますが、高松市内も類にもれず、2014年以降、一気に増えました」と話します。

ゲストハウスちょっとこま
http://chottoco-ma.com/

2016年8月に高松市内にゲストハウス「瓦町ドミトリー」を開業した山本梨沙さんもそのひとり。わずか10室のユニークなカプセルホテル風宿泊施設ですが、「宿泊客の4割が国内客で、同じく4割がアジア客、残り2割が欧米客。圧倒的に若い世代が多い」そう。

瓦町ドミトリー
http://kawaramachi-domitory.kuku81.com/

山本さんによると「台湾人をはじめとする中華圏の若い世代が香川県を訪れるようになった背景に、ひとりの台湾人作家による瀬戸内国際芸術祭を紹介した本の影響があった」そうです。
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『小島旅行』(林凱洛著・啟動文化出版社 2013年10月刊)
http://www.books.com.tw/products/0010612250

同書は瀬戸内国際芸術祭の主な舞台である香川県の直島を中心とした体験旅行記です。「この本が2013年秋に出版され、台湾で大きな話題となり、香港でも同時発売され、その2年後中国でも簡体字版として発売されたことで、中華圏における香川県の知名度が一気に高まりました」(山本さん)。

こうして台湾や香港の若い世代が香川県を訪れるようになりましたが、彼らの旅行スタイルはとても気軽で自由です。

前述の松鳥むうさんも「この前私が『ゲストハウスちょっとこま』に泊ったときも、香港から仕事で神戸に来ている20代女子(日本語ペラペラ)がいて、自由時間が1日あったので泊りに来たと話していました。翌朝彼女はアートの島(直島)に行くと言って宿を出ていきました」とか。

こうした高松市における若い外国人旅行者の増加をふまえ、新しいトレンドも生まれています。今年3月30日、高松市駅前に自転車王国・台湾の大手自転車メーカーのジャイアントがレンタサイクルサービスを開始しました。

ジャイアントストア高松
http://giant-store.jp/takamatsu/

ジャイアントストアは現在、全国7都市(仙台、前橋、びわ湖守山、松江、尾道、今治、高松)でレンタルサイクルサービスを展開しています。なかでもしまなみ海道のゲートウェイとなる尾道と今治には、多数の自転車が待機していて、夏はすべて出払うほどの人気だそう。しまなみ大橋をサイクリングで渡るのがブームとなっているからです。

ジャイアントストアのレンタサイクルはスポーツ自転車がメインで、今年中国から進出してきたシェアサイクル大手の提供するシティサイクルとはターゲットが違います。今後も全国各地に展開する計画のようです。

今年夏、ジャイアントの関係者一行がPRを兼ねて自転車で四国を一周したそうです。なんでも四国一周は台湾一周とほぼ同じ約1000kmだそうで、「台湾を自転車で一周したら、次は四国を一周しよう」というのがPRのポイントだそうです。
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by sanyo-kansatu | 2017-12-28 10:37 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 12月 27日

新しい中国人観光客像の5つの傾向とは?

今年もトップを走る訪日中国人は過去最高の年間700万人を大きく超えそうな勢いだ。訪日外国人の4人に1人を占める彼らの日本旅行の内実は、我々の理解が追いつかないほどの多様化と先進化を見せている。従来どおりの古いイメージだけで見ていると、対応にも間違いを起こしがちだ。日本を訪れた彼らのさまざまな声を聞いてみたい。

12月上旬、中国黒龍江省新世紀国際旅行社日本部の呼海友部長は、映画『男はつらいよ』の舞台である葛飾区柴又にいた。
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↑柴又駅前の寅さん像と今年3月にできたばかりのさくら像

彼は毎年この時期、東京に1週間ほど出張に来て、旅行会社回りの営業をするかたわら、訪日旅行のテーマ探しをするのがもうひとつのミッションになっている。なぜ彼は柴又に視察に訪ねることにしたのだろうか。「お定まりのコースしかない格安弾丸ツアーに飽きた中国の中高年のお客さんを寅さんの町に連れて来たいから」という。

寅さんの自由な生き方は平和な日本の象徴

訪れたのが朝9時と少し早かったせいか、帝釈天の参道は人通りも少なく、まるで映画のセットのようだった。境内の裏手の『邃渓園』と呼ばれる日本庭園で和み、中国には少ない法華経の説話を描いた帝釈堂の木彫りを鑑賞後、寅さん記念館に足を運んだ。
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↑さくらの主人の博が勤めるタコ社長の印刷所のセット

館内には、寅さんの実家である「くるまや」の店内セットやミニチュア模型など、映画を構成する象徴的なシーンが再現されている。中国の人たちは、寅さん映画のどんなところが面白いと思っているのか。

呼部長はこう話す。「寅さんがいつもあちこち旅をし、自由に生きているところです」。

いまの40代以上の中国人にとって寅さんは善良で平和的な日本人のイメージを象徴しているという。この映画が中国で観られるようになったのは1980年代以降だが、それまでの「日本といえば日本兵」という悪のイメージを払拭し、相対化するうえで、この映画が果たした役割は大きかったといえる。

今日、中国の若い世代が日本のアニメ作品『君の名は。』(岐阜飛騨市)や『スラムダンク』(神奈川県鎌倉市)のロケ地を訪ねる話はよく聞くが、中高年の中国人がよく知る日本人は寅さんであり、彼らにとっての「聖地巡礼」でもあるというのだ。

「中国にはこんな静かでのどかな下町はない」と呼部長はいう。「帰国したら、少人数で柴又を訪ねるツアーを企画します。中国にはファンが多いですから」。

新しい中国人観光客像に見られる5つの傾向

中国人の訪日団体旅行が解禁された2000年から10数年、これまで我々が思い描いていた中国人観光客のイメージを大きく変えなければならなくなっている。それは世間でよくいう「モノからコトへ」「買い物から体験に移っている」という話でもあるが、実際には、もっと中身は深化している。

今年、中国人観光客に見られた新しい傾向として以下の5つのポイントが挙げられる。

1.特定の文化的テーマで目的地を選ぶ
2.日本の田舎を楽しみたい
3.女子旅から親子旅へ
4.日本より進んだSNSによる濃密な情報環境の実現
5.肌で感じる日本社会の中国人嫌いに対する不安


それぞれについて、これから解説していく。

旅行体験共有会が個人旅行客の情報収集の場に

まず、「1.特定の文化的テーマで目的地を選ぶ」について。背景にはリピーターの増加にともなう日本に対する理解や関心の深まりがある。彼らがいま日本にどんな関心を持っているかについては個人によって千差万別で、ひと口では言えない。それを知るには、たとえば日本政府観光局(JNTO)や全国の自治体が中国各地で開催している旅行体験共有会がひとつの参考になる。

旅行体験共有会(中国語「旅游体验分享会」)は、普段はゆるいSNSで結ばれた特定の旅行テーマに関するファンたちが集まるオフ会で、個人化の進む中国におけるプロモーションとしてよく採用される手法のひとつだ。そこで集まるファンたちが核になり、SNSを通じて情報や話題が伝播されていくことで、日本国内のまったく無名の場所でさえ、誘客の効果が生まれているのだ。

日本のパワースポットめぐりを楽しむ中国のOLも

11月下旬、上海で開催された中部地方(東海、中央高地、北陸の9県)の旅行体験共有会では、この地域を実際に旅した3名の中国人がスピーカーとして登壇し、50名の参加者たちとの質疑応答が繰り広げられた。
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↑11月に上海で開催された旅行体験共有会「深体験 魅力遊 日本中部旅行分享会」

会場にいた上海在住OLの張麗さん(仮名)によると、面白かったのは『櫻追う』というブロガー名の女性の話。彼女は桜の季節に日本を訪れ、Yahoo!アプリで桜の開花した場所を調べて各地を旅して回ったという。「私のようなOLは自由に休みが取れないから、彼女のように無計画な旅ができるのがうらやましい。この会に来ると、いろんな旅をしている人の話が一度に聞けるから面白い」。

張さん自身も日本旅行のリピーターで、神社が好きという。「中国のお寺と違って、神秘的な雰囲気が魅力。2015年に伊勢神宮でご朱印を手にしたことをきっかけに、今年は諏訪神社と穂高神社に行きました。来年は出雲大社を訪ねる計画です」。

ここで注意したいのは、いま中国で日本のパワースポットめぐりが流行っているという話ではないことだ。個人化した中国人はさまざまな個別の動機と目的を持って日本国内のあらゆる場所に出没しているのである。

LCC深夜便を活用して訪日する上海の若い女性たち

なかでも今日の訪日中国客の主役は若い女性の個人客だ。

ある上海のアパレル企業に勤めるOLは、スカーフのおしゃれな巻き方を身につけるコーディネイターの資格を取るため日本に旅立った。中国にないこの種の日本の資格は、仕事の現場に活きるからだという。このようにレジャーや買い物目的を超えた個人的な趣味や職業上のスキルアップまで含めたさまざまな訪日動機が生まれており、情報収集にも余念のない一定層のリピーターがすでに存在しているのだ。

こうしたOLたちの気軽で多彩な訪日旅行を支えているインフラのひとつが、羽田空港や関西空港への中国からの格安深夜便の増加である。

たとえば、羽田・上海深夜便は、日系のピーチアビエーションに加え、春秋航空や上海航空、吉祥航空が運航している。これらの便は多くの場合、往復ともに深夜便なので、金曜夜に上海を発てば、土曜早朝に羽田に着き、1泊して日曜夜に羽田を発てば、月曜早朝に上海に戻れる。彼女らのアクティブな行動力には驚くばかりだ。
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左:ピーチアビエーションの羽田・上海の深夜便は中国客の利用も多い
右:上海浦東空港から日本に向かう中国人の女子旅

中国の若い世代が思い描く「日本の田舎」とは?

そうはいっても、「余暇を過ごす」ために日本を訪れるという中国人は若い世代ほど多い。最近、彼らに「日本のどこに行きたいか」と聞くと、たいてい最初に出てくる言葉が「日本の田舎」である。

彼らがそう語る真意はどこにあるのか。

中国の若い世代の「日本の田舎」志向を理解するうえで参考になる本がある。1986年生まれの史詩さんというブロガーが書いた日本を個人旅行するためのガイド書『自游日本(自由旅行日本)』(南海出版公司 2015年1月刊)だ。
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↑『自游日本(自由旅行日本)』は16年、17年と3冊目が出ている人気シリーズだ

今日中国では多くの旅行書が刊行されているが、同書が類書と異なるのは、彼女が自分の足で訪ねた日本の名所旧跡や日常食が写真入りで細かく紹介されていること。

一方、買い物に関する情報がほぼないのも特徴といえるだろう。

ここでいう「日常食」とは、日本人がふだん食べているカレーやラーメン、とんかつ、天ぷら定食といった料理のこと。基本的に冷めた食事を好まない中国人らしからず、駅弁と鉄道旅行の情報が詳しいのもユニークだ。

安全だからこそ楽しめる、地方の列車旅

この本の表紙として選ばれた一両きりのローカル線の車両と高く広がる青空の写真から、彼女の世代の想いが読み取れる。林立する高層ビルの中でストレスフルな競争社会を生きるいまの中国人にとって癒しとなるのは、こういう日本の澄み切った青空に違いない。

彼らの「日本の田舎」志向の背景にはもうひとつの理由がありそうだ。前述した張さんは「ローカル列車で若い女性が旅に出られるのも、日本が安全だから。中国で同じような地方の列車の旅に出る勇気は私にはない」。いかにも都会育ちの若者的な発言だが、日本の事情に精通したリピーターたちは日本と中国の社会の違いを知りぬいている。

「女子旅」から「親子旅」へ、子連れ旅行を指南する若い母親ブロガー

最近、都内の繁華街でベビーカーを押して歩く外国人ファミリー客の姿を日常的に見かけるようになった。当然、その中には中国客もいる。「3.女子旅から親子旅へ」についても見ていこう。

個人客として日本を訪れる中国の若い女性たちは一人っ子政策の申し子であり、すでに多くは母親になっている。

彼女たちの指南書として刊行されたのが、子連れ旅行ブロガーの王晶盈さんが書いた『日本东京亲子游(日本東京親子旅行)』(人民邮电出版社2017年1月刊)だ。
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↑『日本东京亲子游(日本東京親子旅行)』は姉妹編の関西版もある

同書は、親子で楽しめる東京の遊園地や動物園、水族館、レストラン、ホテル、キッズ&ベビー用品店、児童書店といった情報が満載だ。

体調が変わりやすい小さな子供を連れて日本を旅行する際の留意点や公共交通機関でのベビーカーの利用方法なども書かれている。

母親ブロガーが、親子旅行の様子を共有

2017年3月、上海で開催された長崎県主催の旅行体験共有会のテーマも「親子旅行」だった。登壇したのは、女性旅ブロガーの柳絮同学さん。

3歳の息子と一緒に長崎県に旅行に出かけた体験の報告だった。彼女は東京や大阪なども子連れで訪ねており、2回目の旅行先が九州。息子を連れて長崎県内の動物園を訪ねたり、天草でイルカをウォッチングしたり、日本旅館に泊まって手作り団子の体験をしたりと親子旅行を満喫したという。

日本は中国に比べ、小さな子連れ旅行をしやすい環境が整っていると彼女はいう。中国にはまだない便利なサービスやインフラも多い。彼女は日本を訪れて知った経験の数々をブログに紹介している。そこには中国人から見た日本の隠れた魅力や発見があふれている。
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左:長崎の日本旅館に泊まった柳絮さんと息子さん
右:上海で開催された、長崎県の旅行体験共有会に参加したみなさん

どの自治体も外国人ファミリー客向けの情報発信やサポートはまだ十分とはいえないが、自らの子連れ体験を発信する中国人がそれを補ってくれているのだ。

行先や目的を超えて行われる、SNS上での濃密な情報交換

これまで以上に、個人旅行化が進む中国人旅行客。彼らがいつどこで何をしているか、実際のところつかみようがない。そんな彼らを相手に、これまでと同様にパンフレットやサイトをつくって多言語化するだけのプロモーション手法では通用しなくなりつつある。微博(ウェイボー)や微信(ウィーチャット)といったSNSのアカウントを開設しても、ただ一方的に情報を発信するだけでは効果はない。

では、諦めるしかないのだろうか。実はそうではない。日本を訪れた彼らのニーズを捕捉するためのひとつの手がかりを与えてくれるのが、中国の海外渡航者用Wi-Fiルーターレンタルサービス事業者「北京環球友隣科技有限公司(Beijing Ulink Technology Co., Ltd. 、以下ULINK)」が採用しているグループチャットの運営である。

北京環球友隣科技有限公司 http://www.uroaming.com.cn 

同社のサービスがユニークで他社を圧倒しているのは、出発日ごとにまとめられた微信のグループチャットを運営していることだ。

このグループチャットに参加しているのは、たまたま同じ日に中国各地から日本各地へ向かう見ず知らずの個人客同士で、目的地も宿泊先も行動も違う。
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↑誰かが質問を投げると、すぐに誰かが答えてくれる

グループチャット上で飛び交う質問はあらゆる内容に及ぶ。

たとえば「関空にどうやって行くの?」「どのコンビニでアリペイが使える?」「SUICAはどこで買える?」など。なかには「SUICAの余ったお金はどうする?」といった具体的な質問も多い。

確かに、成田や羽田のJRトラベルサービスセンターはいつも外国人観光客で長蛇の列。多くの中国人観光客はSUICAの存在を知っており、もっと簡単に買える方法を知りたいというのだ。

「タビナカ」の中国人への情報提供が可能に

日々交わされるチャットの内容をみていると、いま彼らの周辺で何が起き、何に困っているのか。何をどこで買いたいのかといったことが具体的に見えてくる。

実は似たようなサービスを中国のいくつかのオンライン旅行社も実施しているが、北京環球友隣科技有限公司のグループチャットが優れているのは、本社サイドに管理人がいて、1日100通を超えるチャットの整理を行うかたわら、日本のクライアントからのPR情報の提供も随時行っている。
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↑管理人が随時、日本の小売店や飲食店などの特典情報を伝えている

同社の営業代理店である株式会社日本遊の田熊力也部長は「微博や微信のアカウントを開設している日本企業や自治体は多いが、それだけでは個人客の動向をグリップすることはできない。弊社ではこのグループチャットにお得なクーポン券などの情報をいま日本にいて、まさに観光や買い物をしている中国の個人客に提供できる」と力説する。

このような、不特定対数の同胞同士による「SNSを通じた海外でのリアルタイムの情報交換」の存在を知る日本人は多くはない。「4、日本より進んだSNSによる濃密な情報環境の実現」というのは、そういうことだ。

団体から個人へ、旅行形態の変化とともに発生する様々な課題

いま日本を訪れる中国客の地域的構成をみると、地方在住で団体ツアーでしか日本に旅行する手段のない人たちの比率が年々減少して約4割。残りの6割以上は、これまで見てきたようなツアーに参加する必要のない上海や北京、広州などの経済先進地域の個人客だ。

背景には、今秋中国政府が一部地域で始めた日本を訪れる団体客への渡航制限もある。現地関係者の声をまとめると、対象となっているのは黒龍江省や遼寧省、山東省などだ。これらの省では、まだ団体客が多く、かつての「爆買い」を思い起こさせる購買意欲の高さから、当局は各旅行会社に年間の取扱客数の上限を通達している。これが中国の観光行政の実態の一面である。

こうした事情に加え、より自由に個人で旅行したいという中国人のニーズの高まりから、今後もますます個人化やリピーター化に拍車がかかるだろう。

中国客の個人化は、その一方で在日中国人による「白タク」や違法民泊(※これは中国人に限らない)を増加させた。多くのメディアが報じるとおりである。外国人観光客の増加が日本の社会にもたらすのは経済効果のような良いことばかりではないことを多くの人が知ることになった1年だった。

中国人旅行客の民泊志向が高い理由

なぜこうしたことが起こるのか、中国の旅行関係者に聞いてみた。

前者の「白タク」については、日本の社会が中国に比べてライドシェアが遅れており、リーズナブルで利用しやすい移動手段がないため不便を感じていること。日本のドライバーには中国語が通じないため、同胞が運転する「白タク」のほうが安心なのだ。また、後者の民泊についてはどうだろうか。旅行形態の個人化に伴い、一都市の滞在日数が延びたことで、ホテルより使い勝手のいい民泊に流れがちであることだという。

前述の呼部長(黒龍江省新世紀国際旅行社)も「一カ所に連泊する場合、毎日外食だと飽きてしまうので、キッチンがあると便利。ホテルより民泊を選びたいと考える中国人は多い」と話す。ここ数年の大都市圏のホテル価格の高止まりの影響もあるだろう。これらの問題は来年にも持ち越されることは必至で、日本のインバウンド市場の健全な促進にとって懸念材料となっている。

「中国人は嫌われている!?」

気になる声もある。それは「5、肌で感じる日本社会の中国人嫌いに対する不安」である。

ある中国の旅行関係者は、今年中国人観光客を連れて数回大阪を訪ねたが、数年前に比べて日本人の中国人に対する風当たりの強さにショックを受け「中国人は嫌われている!?」という不安を感じることが増えているという。「私が初めて出張で日本に来たのは2000年だが、当時日本の方は本当に優しかった。道に迷っていると、どこまでも案内してくれる親切な人も多く、お世話になった。だが、最近は商店街を歩いているだけで、中国人に対して厳しい目つきや言葉を浴びせる人が多くなったと感じている」と話す。

彼女はなおも言う。「理由はわからないではない。かつて自分たちより貧しいと思っていた中国人が豪勢に買い物をしているのをみて面白くないのだろう。実は、同じことは中国にもある。不動産開発によって一部の農村の人たちが急に金持ちになって都会に遊びに来るようになったが、このような人たちをマナーが悪いと都会の中国人も嫌っている」。

日本をよく理解した旅行関係者だからこそ、こうした日本社会の変化とその理由に気づいているが、初めて日本を訪れる観光客は彼女と同じようには受けとめないだろう。

別の関係者はさらに気になる指摘をする。最近、関西方面の繁華街で中国客を狙ったスリが増えているというのだ。ある大阪心斎橋にあるビジネスホテルの中国人スタッフは言う。

「中国のお客様が外出する際には必ずスリに注意するよう呼びかけています。東南アジア系の外国人による中国客を狙った事件が増えているからです」。
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↑大阪心斎橋商店街は外国人観光客であふれているが、新たな問題が起きている

こうした実情は日本人には見えにくいが、ホテルやコンビニエンスストアで働く中国人らによる口コミで中国客の間では相当広まっているようだ。

こんな指摘をする中国の旅行関係者もいる。最近、ホテルの退出後に忘れ物が出てこないケースが増えているというのだ。

「あるお客様が日本で購入した高価な美顔器を洗面室に忘れて帰ったことに空港で気がついたのでホテルに連絡したところ、見つからないと言われました。以前なら、日本のホテルはお客様の忘れ物は預かっていたはずで、そんなことはあり得なかった」と話す。

一般に日本のシティホテルでは、ゲストの退出後、ゴミ箱に入っているもの以外はすべて一定期間預かっておくというのが常識だった。原因を特定するのは難しいが、外注の清掃業者へのチェックを怠ってはいないだろうか。そう前述の関係者は指摘する。

これらの好ましくない日本の評判は気がかりである。これまで日本は治安がいい、おもてなしの国だと言われてきたが、さすがにこれだけ外国人観光客が増えると、その評判を貶めるさまざまな問題が起きてくるのも当然かもしれない。

訪日客が抱える「不便解消」のための対応も必要

最後に、もうひとつだけ、新しい中国人観光客を理解するうえで知っておくべきことに触れておきたい。

これは多くの中国の旅行関係者が口を揃えて言うことだ。「多くの日本人は日本を訪れる外国人は日本が好きだから来てくれたと思うかもしれない。でも、必ずしもそうとはいえない。今日中国人は世界中どこにでも海外旅行に出かけており、日本はそのひとつの国に過ぎない。誰もが日本を好きだから来るわけではない」。

これも言われてみれば当然の話かもしれない。日本に来るのは日本好きなリピーターばかりではないのだ。だとすれば、モバイル決済への対応や免税店化促進など、彼らに気持ちよくお金を使ってもらえるような利便性の追求だけでなく、移動を快適化するためにSUICAや公共交通機関の1日乗車券などの入手場所を増やしたり、日本の事情に合ったライドシェアを進めるなど、彼らがいま、日本で不便に感じていることの解決に努めたいものだ。これは中国人観光客相手に限った話ではないが、彼らの声にどれだけ早く気づき、対応できるかが問われる時代になっている。

※やまとごころ特集レポート第70回 2017.12.24
https://www.yamatogokoro.jp/report/20489/
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by sanyo-kansatu | 2017-12-27 06:20 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)
2017年 12月 27日

日本の紅葉はなぜ外国人観光客の心をつかむのか?

日本政府観光局(JNTO)の統計によると、ここ数年、秋に日本を訪れる外国人が増えている。理由のひとつは紅葉だ。桜と同様、日本を彩る魅力である紅葉は、なぜ外国人観光客の心をつかむのか。海外で日本の紅葉はどのように伝えられているか。外国人向けの正しい紅葉の伝え方とは。

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9月下旬、中国語通訳案内士の水谷浩さんがガイドを務めるマレーシアからの華人グループは大雪山系にいた。「札幌から入ってトマムや富良野、旭川をめぐる。紅葉の見どころは富良野や大雪山。日本でいちばん早く紅葉が見られるのがポイント」だという。

水谷さん率いる中国語通訳のプロ集団で形成される彩里旅遊株式会社では、中国本土や華僑として海外に在住しているVIP華人の訪日旅行手配を扱っている。ここ数年、9月下旬から10月中旬にかけては北海道でのガイド業務の引き合いが多い。紅葉を見たいという華人客が増えているからだ。

訪日客が多く訪れるのは、春より秋⁉

これまで訪日外国人旅行市場は繁忙期と閑散期に分かれ、春や夏が多いとされていた。ところが、ここ数年、秋や冬に日本を訪れる外国人が増えており、1年を通して満遍なく彼らの姿を見かけるようになっている。日本政府観光局(JNTO)によるこの5年間の月別外客数のトップ3を調べると、以下のとおりである。

◆月別訪日外客数トップ3(2012年~16年)※外客数と( )は前年同月増比

<2016年>
1位 7月 2,296,451人(19.7%) 
2位 10月 2,135,904人(16.8%)
3位 4月 2,081,697人(18.0%) 
※11月は1,875,404人(13.8%)で11位

<2015年>
1位  7月 1,918,356人(51.07%) 
2位 10月 1,829,265人(43.87%)
3位  8月 1,817,023人(63.87%) 
※4月は1,764,691人(43.37%) で5位、11月は1,647,550人(41.07%)で6位

<2014年>
1位 10月 1,271,705人(37.07%)
2位  7月 1,270,048人(26.67%)
3位 12月 1,236,073人(43.07%) 
※4月は1,231,471人(33.47%)で4位、11月は1,168,427人(39.17%)で5位

<2013年>
1位  7月 1,003,032人(18.47%) 
2位 10月  928,560人(31.67%) 
3位  4月  923,017人(18.47%) 
※11月は839,891人(29.57%)で10位

<2012年>
1位 7月 847,194人(50.97%) 
2位 4月 779,481人(163.57%) 
3位 8月 774,239人(41.77%)
※10月は705,848人(14.67%)で4位、11月は648,548人(17.67%)で11位

月別では、東アジアの国々が夏休みに入る7月がほぼトップを占めているが、中華圏が春節休暇に入る1月~2月、桜の開花や欧米のイースター休暇が重なる4月よりも10月が多いことがわかる。10月は中国の国慶節休暇に入るので、訪日客数トップの中国客が全体の数を押し上げるとはいえ、肌感覚でいうと街に外国人観光客があふれていることを強く感じる桜のシーズンより多いのだ。年々月別の数の差が縮まり、年間を通じた平準化が進んでいる。

紅葉が外国人観光客を魅了する⁉

では、なぜ秋に日本を訪れる外国人観光客が増えているのだろうか。

訪日外国人の団体から個人への移行が進み、とりわけアジアからのリピーターが増えたことから、繁忙期の夏ではなく、日本旅行の時期を秋にズラす層が現れていることが考えられる。日本人が8月ではなく、9月以降に遅めの夏休みを取るというのと同じだ。近年、日本の夏は相当蒸し暑いので、旅行に適しているとはいいにくい。アジアの国から訪れる旅慣れた人たちは、できれば涼しい日本を体験したいだろう。

もうひとつの理由は、海外で日本の紅葉の魅力が広く伝わったことが考えられる。

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↑河口湖もみじ回廊のライトアップ河(HIS提供)

「万葉集」や「源氏物語」などの古典や「百人一首」でもおなじみのように、日本人は古来もみじ狩りを楽しんできた。

紅葉が見られるのは落葉樹だけで、日本など東アジアの沿岸部やヨーロッパの一部、北アメリカの東部に限られるという。なかでも日本は落葉広葉樹の種類が多く、紅葉の見どころが多いのだ。

人気の紅葉バスツアーは河口湖

では、訪日客はどのような紅葉ツアーを楽しんでいるのだろうか。

日本の旅行大手クラブツーリズムは、2009年から、YOKOSO Japan Tourという外国人向けの国内バスツアーを催行しており、10月下旬から11月にかけては日帰りの紅葉ツアーが人気という。

CLUB TOURISM YOKOSO Japan Tour
http://www.yokoso-japan.jp

同社のツアー客の国籍のトップは香港で、次いで台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、最近はインドネシアが増えているという。これらアジア客をメインとした約20万人のメルマガ会員がいて、リピーターも多い。

担当者によると「以前は中華圏の旧正月時期や4月~5月が圧倒的に多く、秋は閑散期だったが、ここ数年はすごい勢いで増えている」という。実際、10月~12月のツアー客数が年々倍々ゲームで、「2017年10月~11月の予約数は前年同月比200%前後、同12月は300%強」だ。

なかでも人気があるのが、英語や中国語のわかる添乗員が同乗する河口湖への日帰りツアーだ。
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↑英名:Departure guaranteed! Mt. Fuji & 5-Storied Pagoda “Arakurayama Sengen Park”・Sagamiko Illumillion・Koro-kaki no Sato (Village of Dried Persimmons)・Autumn Leaves in Lake Kawaguchi
全日程保證出發! 富士山&新倉山淺間公園 五重塔・相模湖霓虹燈秀・曬柿子之里・河口湖賞楓
http://www.yokoso-japan.jp/tc/05522.html

日程は以下の通り。

ホテルグレイスリー新宿(8:10発)→新宿ワシントンホテル(8:30発)→<首都高・中央道>→(10:00)シャトー勝沼(10:30)【買い物・試飲30分】→ころ柿の里(10:50)【散策】→信玄館(12:20)【昼食】→(13:30)新倉山浅間公園(14:40)【散策70分】→(15:00)河口湖(16:00)【紅葉鑑賞60分】→<中央道>→(17:00)さがみ湖プレジャーフォレスト(18:00)【イルミネーション鑑賞60分】→<中央道・首都高>→新宿(19:00予定)

ツアー料金は、大人8900円、子供8600円、幼児5000円だ。

担当者によると「メインビジュアルは新倉山浅間神社。五重塔と富士山と紅葉という外国人が好む風景の組み合わせがポイント。昼食に松坂牛のローストビーフとほうとう鍋をつけているのも人気の理由」という。

日本人向け紅葉ツアーを外国人にも展開、アジアを中心に一躍大人気に!

同じく旅行大手のHISも外国人向けバスツアーを催行しているが、同社のイチ押しツアーも英語添乗員付きの河口湖への日帰りツアーだ。

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↑Mt.Fuji Autumn Leaves Light-up Festival & Shosenkyo Gorge Bus Tour!(山梨の紅葉いいとこどりっ☆昇仙峡と河口湖もみじ回廊ライトアップ&ラストシーズン!秋めく富士山五合目)
http://www.hisgo.com/j1/Contents/OptionalTour/DetailOptionalTour.aspx?TourCd=TYO1166&lang=en
(日本語:https://bus-tour.his-j.com/tyo/item/?cc=A1041

コースは以下のとおり。

新宿→昇仙峡(秋めく渓谷美を観賞)→影絵の森美術館(世界初の影絵美術館で光と影のアートを鑑賞)→富士山五合目(ラストシーズン!標高2,305mの絶景散歩)→富士河口湖紅葉まつり(幻想的な河口湖もみじ回廊ライトアップの観賞)→新宿

ツアー料金は7990円~8490円だ。

HISの担当者によると「ポイントは幻想的な河口湖もみじ回廊のライトアップ。訪日客に定番人気の富士山5合目や今後人気が出てきそうな昇仙峡、影絵の森美術館など最新のスポットを入れている」とのこと。ツアーのハイライトである「もみじ回廊」の滞在時間はたっぷり約1時間半あるという。

どちらのツアーも1万円を切る手頃な料金で、日本人が普通に参加しても十分楽しめる内容だ。実際、日本人と外国人が一緒にバスに混載するツアーもあるという。日本の旅行会社は、これまで国内客向けに格安でバラエティ豊かなバスツアーを企画してきた。それをそのまま外国客向けに提供したところ、アジア客にウケたという話なのだ。日本人が感じるお得感は、彼らにも伝わるのだろう。

ただし、クラブツーリズムの担当者は「欧米客への訴求は同じようにはいかない」ともらす。旅に対する考え方が違うせいなのか、今後の検討課題だという。

外国人観光客は、紅葉の時期やスポットに関する情報どう得ているのか

桜に次ぐもうひとつの日本観光の売りである紅葉について、海外の人たちはどうやって情報を得ているのだろうか。

訪日旅行シーンの先駆けを走る香港や台湾の旅行会社では、8月中頃から日本の紅葉をテーマとしたツアーを募集している。以下のサイトをみると、人気の目的先や料金の相場がわかる(10月中旬現在の情報)。

◆EGLツアーズ@香港

香港で訪日送客数トップの旅行会社であるEGLツアーズでは、すでに紅葉ツアー販売は終盤で、日本のみならず韓国や中国の紅葉スポットを訪ねる商品も企画しているようだ。

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http://www.egltours.com/travel/showIndex

◆KKday@台湾

一方、台湾のオンライン旅行会社であるKKdayも、日本情緒たっぷりのデザインで紅葉ツアーを募集している。

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https://www.kkday.com/zh-tw/home/index2

これらのサイトに掲載されるツアーの内容をみると、香港や台湾の人たちがもうほとんど日本人と変わらない旅をしていることがわかる。

◆HISバンコク支店@タイ

昨年の訪日客数でアメリカに次ぐ6位となったタイの場合はどうだろう。タイではHISがバンコク市内に多くの店舗を構え、タイ人を日本に送り出している。

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https://th.his-bkk.com/HIS

バンコク支店のサイトをみると、やはりこの時期、紅葉ツアーがメイン商品となっている。

日本国内各地を3泊5日で5000バーツ(約17万円)相当のツアーが販売されている。
タイでは、台湾と同様、日本のテレビ番組が普通に見られるだけでなく、自らも日本に関する番組を制作している。YouTubeで探すと、WabisabiTVやSUGOI JAPANといったサイトで日本旅行をテーマにした動画がいくつも見つかる。タイ人はこうした豊富な情報源を通して自由に日本旅行を計画しているのだ。

WabisabiTV
https://www.youtube.com/user/WABISABITV1
SUGOI JAPAN
http://www.sugoijp.com/

◆欧米向けメディア

欧米の人たちはどうだろう。日本在住の欧米人たちが発信する日本の観光&生活情報サイトのTokyo Cheapoでは、この時期、東京や日本各地の紅葉スポットを紹介するレポートを載せている。

Tokyo Cheapo
https://tokyocheapo.com/
Koyo: 10 Places to See Autumn Leaves In and Around Tokyo(東京とその近郊の紅葉スポット10)
https://tokyocheapo.com/lifestyle/outdoors/koyo-autumn-leaves-in-tokyo/

海外発としては、トリップアドバイザーの傘下で、全世界の現地発ツアーを扱うviatorでも、東京や富士山は人気の旅行先の上位に入っている。

viator
https://www.viator.com/

同サイトでは、日光をはじめ袋田の滝(茨城県)、長瀞の滝(埼玉県)、富士山と河口湖、びわ湖バレイと鶏足寺、小豆島(香川県)、香嵐渓(愛知県)などの日帰り紅葉ツアー(発地は東京や京都、大阪などいろいろ)が海外からネット予約できるようになっている。

旅行の最先端を歩む、香港と台湾における日本の紅葉情報

日本を訪れる外国人が事前にさまざまな紅葉情報を入手し、ツアーや目的先を選んでいることをみてきたが、なかでも香港と台湾の人たちの情報集力は他の国・地域に比べ群を抜いている。

香港では例年、8月下旬から9月上旬にかけて、新聞やネット報道でその年の日本の紅葉の見ごろ時期の予想を取り上げている。こうした関心の高さの背景には、株式会社KADOKAWAが現地で発行してきたタウン情報誌や日本情報誌があるといっていい。
香港で2007年11月に創刊された『香港ウォーカー』は「旅慣れた香港の人々をも満足させる日本情報が満載」の月刊誌だ。

台湾には1999年創刊の現地情報誌『台北ウォーカー』があり、早い時期から日本情報を発信してきた。15年8月に創刊された『Japan Walker』は台湾で唯一の日本情報誌だ。

海外には日本の観光情報を伝えるフリーペーパーはたくさんあるが、市販の雑誌は珍しい。これらが隠れたトレンドメーカーとなって香港や台湾の人たちに与えた影響は大きい。


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上記2誌の、台湾・香港現地での立ち上げに関わった編集者の鈴木夕未さん(株式会社KADOKAWA)によると「両誌ともに日本の紅葉特集は定番企画」だという。香港と台湾の違いや彼らの日本に対するニーズについて、より詳細に話を聞いた。

―香港や台湾の人たちにとって日本の紅葉の魅力とは何か。

「日本のようなはっきりした四季がない台湾、自然が少なく高層ビルに囲まれた環境に暮らす香港の人たちにとって、紅葉に触れることで季節感を感じられるのがいちばんの魅力だろう。これは桜と同様だ。

なかでも彼らが強く魅力を感じるポイントは、紅葉の色の艶やかさと日本的な情緒の組み合わせにあると思う。紅葉と滝や寺社仏閣、お城など。その風景をバックに自分が写り込む写真を撮るのが好きで、“インスタ映え”を気にしている。最近では湖面に映る紅葉など、さまざまなバリエーションが生まれている」

実際、クラブツーリズムの河口湖ツアーを募集するサイトのトップの写真は、富士山と新倉山浅間神社の五重塔と紅葉の組み合わせだった。紅葉に日本的情緒が感じられるアイテムが加わることで、彼らの気持ちをグッとつかんでいるわけだ。

―『香港ウォーカー』や『Japan Walker』ではどんな紅葉特集をやっているのか。

「香港と台湾では、それぞれ読者の求める嗜好やニーズが違う。昨年、台湾の『Japan Walker』では<秋季賞楓微旅行(秋のもみじ狩りプチ旅行)>という特集をやったが、紅葉×鉄道、紅葉×温泉、紅葉×日本庭園の3つのテーマに分けて各地を紹介した。

一方、『香港ウォーカー』の最新号(10月号)の特集は、”秋の京都 紅葉単車遊(サイクリングでもみじ狩り)”だ」

―台湾と香港では何が違うのか。

「香港人はアクティブで、いまサイクリングブームだ。街で自由に自転車に乗れる環境にはないため、日本で体験したいという人が多い。香港はストレス社会なので、日本では自然の中でのんびりリラックスして過ごしたいようだ。最近、香港では日本でグランピング(グラマラス×キャンピングの造語でラグジュラリーなアウトドア体験)を楽しみたいという人も増えている。

一方、台湾人の鉄道好きは有名だ。日本全国の観光列車に乗りたい人は多く、できれば紅葉の時期に行ってみたい。温泉や日本庭園など、日本文化に対する憧れは、香港人より強い。

こうしたことから、香港と台湾では同じ情報誌でも誌面づくりが違う。香港の場合はビジュアル優先で、情報は少なめでいいという考え方だ。香港の人に聞くと『情報はスマホで探せるから必要ない。行ってみたいと思わせる写真やイメージがあればいい』と答える。一方、台湾の読者はそれぞれのスポットに関する細かい情報やアクセスなどがきちんと書き込まれている誌面を求めている」

隣国の香港と台湾でも、嗜好や求める情報がこんなにも違うことは、とても興味深い。

日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃない

冒頭で紹介した中国語通訳案内士の水谷浩さんが案内するマレーシア華人の北海道旅行に話を戻そう。彼らは日本の紅葉をどのように楽しみ、何を感じているのか。10月中旬まで北海道にいた水谷さんに話を聞いた。

―マレーシア客は日本の紅葉についてどんなイメージを持ち、何に魅力を感じているのか。

「非日常感ではないか。彼らは熱帯に暮らしているから、冷たく張りつめた新鮮な空気と艶やかな色彩に包まれた場所で写真を撮って、そこに自分が写り込みたいという願望が強い。だから、いちばんいい状態の紅葉を見せたいが、これが難しい。散り際が真っ赤に染まって美しいし、写真を撮るには晴天がいい。太陽の光の向きも重要だ。紅葉のピークは同じ場所でも天候によって変わってくる」

―桜もそうだが、紅葉も年によって見ごろの時期は変わる?

「メディアのみなさんにお願いがある。日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃないと伝えてほしい。なぜなら、一般に旅行会社やメディアが発信する日本の紅葉は真っ赤に染まった写真を使うことが多い。インパクトがあるせいだと思うが、外国のお客さんはそれを期待して日本に来る。ところが、実際には黄色や緑も多く、必ずしも赤一色ではない。それでガッカリされる人がけっこういるからだ。

もちろん、私はその方たちに日本の紅葉は赤だけではなく、黄色や緑など色とりどりの美しさがあると説明するのだが、先入観があるぶん、腑に落ちない気分になるようだ。

実際には、中国語でいう“五彩缤纷”(たくさんの色が豪華絢爛で豊かに見える様)というべき。最初からそのように伝えれば、ガッカリされることもないと思う」

この点、欧米のメディアは比較的バランスが取れていて、紅葉=赤一色という伝え方はしていない。たとえば、前述した現地発ツアーサイトのviatorでは、東京発の紅葉ツアーのトップページに以下のような写真を使っており、日本の紅葉についても次のように「赤やオレンジ、黄色」と説明している。



The season for fall colors typically kicks off in mid-September and lasts until December, with red, orange, and yellow colors lasting in a single location for as long as five weeks.

人一倍こだわりを持つ富裕層に満足してもらうために必要なこととは?

紅葉は漢字で「紅」と書くから、中国語圏の人たちは赤一色と思いがち。でも、ガッカリするのは期待値の高さからともいえる。日本特有の自然現象である紅葉について、もっと我々自身が深く理解し、説明することばを持たなければならないだろう。

なぜなら「こうした説明の大切さは、相手が富裕層であれば、なおさらだ」と水谷さんは言う。

「海外のVIPほど、旅に対するこだわりが強い。彼らはそれがいいか悪いかは常に自分で判断したがる。気に入らないと『不要(いらない)』とはっきり言う。食事も高級な料理店に連れて行けば満足するというのではない。状況や気分によって地元の庶民的な場所で食事がしたいと言い出すかと思えば、逆のときもある。

そのぶん、きちんと合理的な説明ができれば、彼らも納得する。そのためには、相当の知識と経験が必要。いったん満足してくれると、次回もまたお願いしたいという話になる。その結果、彼らのネットワークを通して別のお客さんを呼んでくれる。それが富裕層旅行の世界だ」

彩里旅遊株式会社は顧客の要望に合わせて一からコンテンツを組み立てる企画旅行が専門。口コミで同社の評判を聞いた海外の華人から「日本の極上の紅葉が見たい。水谷、案内してほしい」と直接指名がかかるそうだ。

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↑大雪山系は10月上旬には早くも紅葉は散り、雪に覆われる

まもなく本州にも紅葉前線が南下し始めるだろう。「日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃない」。今後は肝に銘じて、情報発信するよう努めたい。

秋の紅葉シーズンは、時期や場所が日本全国をまたぎ、今後もさらなる発展の可能性が高い。大切に育てていきたい観光コンテンツだ。

彩里旅遊株式会社
http://www.ayasato.co.jp/

※やまとごころ特集レポート第61回 2017.10.24 より
https://www.yamatogokoro.jp/report/8272/


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by sanyo-kansatu | 2017-12-27 05:51 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)
2017年 12月 24日

中国シェアサイクル路上廃棄問題をマナーと結びつけるのは偏向報道だと思う

昨日、テレビ朝日が以下の中国シェアサイクルの路上廃棄問題を伝えました。
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人気の「シェア自転車」 路上に放置で「歩けない」(テレ朝ニュース2017/12/23)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000117350.html

(一部抜粋)町で気軽に自転車を借りたり、乗り捨てたりできるサービス「シェアサイクル」。日本でも無料通信アプリの「ライン」が、来年前半をめどにこのサービスを始めると発表しました。しかし、発祥の地とされている中国では、マナーの悪さなどが社会問題となってきています。

このニュース、いまごろ?という感じの新鮮味のない情報であることもそうですが、同局のアナウンサーがやたらと中国人の「マナーの悪さ」を強調しているのは大いに疑問です。そもそも「どこでも乗れて乗り捨て自由」という中国のシェアサイクルのルール自体に問題があったというべきで、こうなることは最初からわかっていたと思います。物事の本質を隠し、固定化したイメージを視聴者に植えつけようとする偏向報道といってもいいのではないでしょうか。

そもそも日本ではこんなルール考えられませんが、もし仮にそうなったとしたら、同じことは日本でも起こるでしょう。すでに駅前の駐輪問題が起きているわけですから。

テレ朝のアナウンサーが煽るべきは中国人の「マナー問題」ではなく、なぜこのようなことが起きているのか、その背景を伝えることでしょう。

今月に入ってようやく日本のメディアも、中国ではすでに報道されていたシェアサイクル企業倒産のニュースを報じています。

中国のシェア自転車、廃棄車両の山 破綻や経営悪化続く(朝日新聞2017年12月5日)
https://www.asahi.com/articles/ASKD141DZKD1UHBI00T.html

中国で爆発的にヒットしたシェア自転車の運営が曲がり角を迎えている。一部は日本など海外にも進出を果たすほどだが、現地では過当競争で利益が上がらず、破綻(はたん)や経営悪化が相次ぐ事態に。大手も例外でなく合併が話題に上る。無秩序な駐輪に頭を痛める地方政府が規制を始め利便性も減少。交通の邪魔になる車両は「墓場」と呼ばれる保管場に運び込まれている。

「大変申し訳ない。終始薄氷を踏むようだった」

青色の車体で親しまれた小藍単車(ブルー・ゴー・ゴー)の創業者李剛氏は11月半ば、公開書簡で倒産を表明した。外国進出も果たしたが、サービス開始から1年での退場。競争の厳しさを切々とつづった。

業者の倒産が相次ぐようになったのは、今年半ばからだ。背景には、収益性の構造的な低さがある。

シェア自転車は利用料と利用データの販売という二つの収益源がある。だが利用料は、草分けで大手の摩拝単車(モバイク)でさえ30分0・5元(約8・5円)からと格安。競争力の低い他社では無料をうたうケースもある。そのうえ、データも地方政府の都市計画に使える程度といい、収益力は強くない。経営悪化で、登録時に払った保証金がユーザーに返らない問題が頻発している。

経営の難しさは大手も例外ではない。モバイクともう1社の大手ofoの合併説が根強く流れている。中国イノベーションの旗手として投資を集めた両社が収益を上げる手っ取り早い手段が合併というわけだ。

地方政府による自転車の駐輪規制も影を落とす。急速な広がりと過当競争で自転車が街角にあふれ、通行の妨げになった問題を重く見た。だが、どこでも止められる利便性が普及に大きな役割を果たしたため、規制が厳しければ魅力を損なうことになる。

「環境にいい」という印象に傷がつく事態も起きている。交通の邪魔になる車両を地方政府が回収し、保管場に次々と運び込んでいる。その結果、各地の保管場は、シェア自転車の「墓場」と呼ばれている。
日本でも広がりつつあるシェア自転車。だが一大市場となった中国での持続性には今、大きな疑問が投げかけられている。(北京=福田直之)


実際、シェアサイクル大量放棄問題は、今年夏くらいから中国のネット上では問題提起されていました。日本ではようやく中国のシェアサイクルの先進性が広く話題になり始めていた頃の話です。

こんなネット記事もありました。

厦门出现壮观“共享单车”山丘:ofo亮了(アモイに出現した壮観なシェアサイクルの山)
https://mbd.baidu.com/newspage/data/landingsuper?context=%7B%22nid%22%3A%22news_9780158454380636161%22%7D&n_type=0&p_from=1
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これは中国福建省アモイのシェアサイクル廃棄場をドローンかなにかで撮ったものでしょう。すごいことになっていますね。

ここまでに至る背景には中国人の「マナー問題」があったというより、このシェアサイクル事業のビジネスモデルとともに、中国政府の姿勢(あるいは読みの甘さ)があったというべきでしょう。

その点について、ぼくは以下のForbesJapanの記事で少し解説しています。

日本のシェアサイクルはツーリスト向けに徹するべき?(ForbesJapan2017/11/08)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18335

最初に言っておくと、この記事は「盛況が伝えられる中国のシェアサイクルを日本はどう受けとめればいいだろうか」という観点から書いたものです。

(一部抜粋)では、この画期的な中国式シェアサイクル事業は日本で支持されるだろうか。

まず中国企業はどうやって収益を得ているのか。中国の友人によると「最初に利用者から預かる保証金の金利ビジネスですよ」とのこと。これほど安価でサービスを提供するビジネスが超スピードで拡大したのも、どれだけ利用者を集められるかに事業の成敗がかかっていたからだという。昨今の中国では投資規模が破格だからこそ実現できたわけだが、低金利の日本ではちょっと考えにくい。

さらにいえば、いまの中国の経営者の考え方も強く反映されている。新興企業の経営者は新しい市場が生まれると、いち早く参入し、そこそこのシェアを獲得しておけば、どこかの時点で大企業に買収してもらえると考えているふしがある。そうすれば、事業自体に利益が出ていなくても、売り抜けてひと財産築ける。

一方、資金力のある大企業も、最初は利益度外視で市場拡大にひた走る。そのうち大半の中小企業はふるい落とされ、結局は大手の寡占状態となるから、利益を取るのはそれからでいい……。このように中国のビジネスシーンが展開していくさまは、一時は群雄割拠だった配車アプリも「滴滴出行」が一強になったことからわかるだろう。


要するに、昨今の金余り中国での投資依存のビジネス手法が背景にあること。さらにいえば、世界に自らの先進性を誇りたい中国政府が、今年3月上旬に開かれていた全国人民代表大会の記者会見で「共享単車(シェアサイクル)」の支持を強く表明していたように国家の後押しがあったことも、もし批判されるとすればされるべきでしょう。
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それからもうひとつ、このテレ朝のニュースを見て思ったことがあります。確かに上海などの大都市圏では過剰な自転車の配給によって日常的に路上駐輪問題が起きているのですが、地方のもっと小さな都市ではどうかというと、たとえば吉林省朝鮮自治区延吉では、ようやく10月下旬にシェアサイクルが始まったと聞きます。そのような地方都市も多いのです。ですから、「中国では」とひと括りにすることは偏向報道になりやすいのです。

中国の国土は広く、投資マネーが集まりやすい大都市では問題が起きていますが、地方ではほどほどの感じでシェアサイクルが進んでいく可能性もあります。つまり、ビジュアル的にインパクトの強い、野放図な廃棄自転車問題が中国の大都市で起きているからといってシェアサイクルビジネス自体が頓挫してしまうかというと、そうとはいえないのです。

前述のForbesJapanの記事で、ぼくは以下のように書いています。

今年7月までに中国全土で1600万台もの自転車が街に投入されたというから、街頭での自転車の氾濫を引き起こしていることも確か。だが、中国はかつての「自転車大国」。通りも広く、自転車専用道路もそこそこあり、歩道上に駐輪用スペースも多く設けられている。我々に比べ「小さなことは気にしない」彼らの感覚ではそれほど深刻な問題でもなさそうだ。

我々に比べて「小さなことは気にしない」彼らの感覚とあえて書いたのは、ためしに身近な中国の知人にこの件について尋ねてみてはどうでしょう。おそらく彼らの多くは「でも、どこでもそうではありません。シェアサイクルは便利ですよ」と答えるかもしれません。そして、心の中で「また日本のメディアは中国の悪いところばかり報道している」と感じているに違いないでしょう。

さて、以上のことをふまえたうえで、考えたいのは、日本においてシェアサイクルをどう進めていけばいいかということです。

以下の記事は、日中のシェアサイクルの現状の違いをとてもわかりやすく説明しています。

シェア自転車、なぜ中国は急増、日本は停滞?(サステナブル・ブランド ジャパン2017.11.16)
http://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1189521_1534.html

この記事が指摘する中国シェアサイクル盛況のポイントは「料金と使いやすさ」「SNSで利益度外視のキャンペーン」「自治体が積極的に後押し」「中国の投資ブームと『走りながら考える』メンタリティ」です。

それをふまえ、ぼくが思うのは、日本のシェアサイクルは中国のような住民向けではなく、国内外のツーリスト向けに特化した方が動き出すのではないか、ということです。

今年、中国のシェアサイクル大手が鳴り物入りで日本に参入しましたが、彼らは中国式のビジネス手法を持ち込むだけで、法律も都市環境も異なる日本で、誰のためにサービスを提供しようとしているのかよくわからないところがあります。でも、もし国内の観光地にあるホテルや(場合によっては)民泊先で、中国式のシェアルサイクルが気軽に使えたら、外国人観光客にとってもそうですし、日本人にとっても便利です。要は、訪日外国人の数が世界でいちばん増えているというインバウンド成長大国である日本の事情に合わせたルールづくりをしたうえで、中国式の“いいとこ取り”だけするのが賢いやり方です。

そんな国内外のツーリストをターゲットに絞り、全国の宿泊施設に導入できるシェアサイクルサービスをはじめたのが、ツアーバイク社です。

ツアーバイク
http://www.tourbike.jp/

先日、同社の営業担当者と会う機会があったのですが、彼らは中国大手とは違い、国内の宿泊施設や民泊オーナーを対象にシェアサイクルを提供しようとしています。今後の彼らの動きに注目しています。
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by sanyo-kansatu | 2017-12-24 11:55 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 12月 23日

ハルビン、氷点下30 度の絶景

毎年1月5日から2月下旬まで黒龍江省ハルビンで開催される氷雪祭は、札幌の雪まつり、ケベック(カナダ)のウィンターカーニバルと並び称される世界3大雪祭りのひとつ。この時期、街の至るところで氷や雪の彫刻が並び、国内外の観光客が押し寄せる。日本からわずか3 時間弱のフライトで出合える氷点下の絶景をレポートする。(写真/佐藤憲一)
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↑氷雪大世界のモニュメントは日が暮れるトワイライトの瞬間がいちばん美しい

人生一度は行ってみたい
ハルビン氷雪祭の夜


2月初旬、夕闇が訪れる直前のハルビン氷雪大世界の入口は人ごみでごったがえしていた。

ようやく入場口を抜けると、目の前に現れたのは巨大な氷の建造群だった。色とりどりのLED電飾を埋め込まれた氷のモニュメントが薄暮の空に光彩を放ち、きらめいている。夢うつつに見る桃源郷のようだが、氷の壁に手で触れると指先がちくりと痛い。
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↑氷塊に埋め込まれた電飾の色が刻々と変わり、幻想的な効果を生み出している

札幌の雪まつり、ケベック(カナダ)のウィンターカーニバルと並び称される世界3大雪祭りのひとつとして知られるハルビン氷雪祭が開催されたのは1985年から。年々イベント色が強まり、2008年から松花江の中州である太陽島に特設会場を設置。氷雪祭のメイン施設であるハルビン氷雪大世界が誕生した。毎年1月5日から国内外の、特に雪を見たことのない中国南方からの旅行客が「一生一度は行ってみたい」とハルビンに押し寄せる。
 
氷のモニュメントのうち代表的なのは、摩天楼のような氷雪世紀塔やハルビンらしくタマネギ屋根のロシア風宮殿、北京の天壇など。これらの建築素材となるのが、松花江で切り出される氷塊だ。松花江は例年11月下旬には氷結するので、12月に入るとすぐに1000人以上の労働者が氷塊の切り出しと運搬に従事する。地元紙によると、16万立方メートル分の氷を切り出すという。
 
1時間もあれば会場内は歩いて回れる。子供も楽しめる巨大な氷の滑り台や暖を取れるコーヒーショップ、食堂もある。凍てつく外気は零下30度に限りなく近くても、最初はこの感じなら案外大丈夫だと思った。出発前に買い込んだヒートテックの上下2枚重ねで身を包み、耳あて付き防寒帽をかぶり、ネックウォーマーで顔を覆っていたからだ。
 
だが、日暮れ後は何時間も外にいられるものではないことがだんだんわかってくる。身体の芯がこちこちに硬くこわばってくるような変化を感じてくるのだ。氷雪大世界では視覚的な絶景に魅了されるが、さらに面白いのは、非日常ともいうべき氷点下の低温環境に身を置くことで生じる身体的、心理的な異体験にあるのではないかと思えてくる。これは中国南方の人たちにも共通するだろう。
 
会場を出て市内に戻ると、まず駆け込んだのは火鍋屋である。寒さで縮こまった身と心を温めるにはこれしかない。香辛料の利いた東北風の羊鍋だ。ぐつぐつ煮えた鍋をつついていると、全身の毛穴から汗が吹き出してきた。それがうれしくてたまらない。

店を出ると、熱を取り戻した身体にわざと冷気を当てたくなった。頬がひりひりして気持ちいい。こんな感覚は日本では味わえない。濡れたハンカチを広げると、一瞬で煎餅のようにパリパリに固まったのもおかしかった(……風邪を引く前にホテルに戻ろう)。
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↑ハルビン氷雪大世界の入場券売り場は大混雑。2018年の入場券は330 元 
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↑会場のシンボルのひとつ、ハルビン氷雪世紀塔 
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↑世界遺産の北京の天壇は実物大の迫力 
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↑赤い光に包まれた氷の宮殿の回廊を歩く 
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↑会場をバックに若者たちが記念撮影に興じている 
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↑中国の冬の風物詩、サンザシ(山査子)の水飴も凍りついている 
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↑会場の外に放置された松花江の氷板 
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↑昔ながらの石炭式鍋で煮えたぎる火鍋が食欲を刺激する

寒中水泳とアイスキャンディ
氷の都のおもしろ風物詩


早朝、松花江を訪ねると、遊覧船が氷に閉じ込められていた。昨夏訪ねたときの水辺の光景は様変わりし、川面は厚い氷と雪で覆われ、冬の間だけの臨時アミューズメントパークになっていた。寒風が肌を刺す氷上で、ヨットのように風を切って走るウィンドサーフィンや浮き輪乗りなど、子供たちが大喜びで真冬のレジャーを楽しんでいた。
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↑重量級のおばさんも果敢に氷のプールに飛び込む

元気なのは子供だけではない。氷結した松花江の一角の氷を切り開け、プールにして泳いでいる一群の人たちがいた。その多くはハルビンのご隠居世代である。おかしなことに、老人たちの寒中水泳は有料(30元)の見世物になっている。趣向はこうだ。寒空の下、音楽とともに水着姿のおじさんおばさんが登場。おじさんたちはプロレスラーに扮して殴り合うという爆笑寸劇を始め、次々とプールに落ちていく。一方、おばさんたちはプールを一周しながらダンスを始め、ついには勢いよくプールに飛び込み始めるのだ。泳ぎを見せるのはなぜか女性ばかりなのだが、彼女らは見事25mほどのプールを泳ぎきるのだった。
 
氷の都ハルビンの冬の風物詩はほかにもある。氷雪大世界の会場で、フルーツ串(外気に触れるだけで凍ってしまう)や氷飴と化したサンザシ(山査子)の水飴を中国の若者たちが口にしていたのには驚いた。彼らは冬空の下でアイスキャンディを食べるのも好きなようだ。中央大街にあるクラシックホテル「モデルン」のアイスキャンディは地元で有名で、夏と同様行列ができている。食べ歩きをしている人が大勢いたが、見ているだけで身震いしてしまった。夏はビヤホールとしてにぎわう屋台も、客がいるからだろう、営業を続けていた。尋常ではない寒さにあえて極冷をぶつけるかに見えるこの現象についてハルビンの友人に聞くと「寒いところで冷たいものを食べるなんてめったにできない。中国の南方から来た人たちは寒さという未知の体験を味わいにハルビンに来ている」という。
 
ところで、氷雪祭が開かれるハルビンは、19世紀末にロシア人によって造られた都市だ。この百十数年で松花江沿いの小さな漁村は人口600万人もの大都会へと変貌した。
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↑中央大街の並木にイルミネーションが施され、輝くばかりの美しさ

実をいうと、この氷のイベントは20世紀前半から行われていたことが記録に残っている。当時ハルビンに住んでいたロシア人や日本人も多く、今日と同様、この時期氷の彫刻が街を彩っていたのだ。それをハルビン市が1985年に復活させたのだった。さらにいうと、冬の街頭に氷灯を飾る文化はこの地の先住民族だった満洲族(女真族)の伝統だった。起源は遼金時代にさかのぼるという。ずいぶん現代化してしまったかに見える氷雪祭だが、川の氷を切り出し、彫刻とする文化風習は古来この地で見られたものなのである。
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↑夏は川に浮かんでいた遊覧船が氷の上にちょこんと乗っている 
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↑車に引かれて松花江の氷上を走る浮き輪乗りが大人気 
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↑街角で売られる毛で包まれた防寒帽の最近のトレンドは角付きデザイン? 
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↑太陽島には雪彫刻芸術博覧会もあり、会場内には雪の彫刻が多数並ぶ 
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↑氷上をすいすい走る自転車は決して倒れない構造 
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↑ウィーンにあるヨハン・シュトラウスの像を模したと思われる氷の像 
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↑中央大街の脇道につくられた氷の滑り台
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↑どんなに寒くても屋台は営業しているのがすごい
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by sanyo-kansatu | 2017-12-23 08:34 | 日本人が知らない21世紀の満洲 | Comments(0)
2017年 12月 11日

寅さんが結ぶ日中民間人の縁をあらためて実感しました

週末は朝から柴又帝釈天に行きました。

中国でいつもお世話になっているハルビンの黒龍江省新世紀国際旅行社の呼海友さんを案内することになったのです。

彼は毎年この時期、東京に1週間ほど出張に来て、旅行会社回りをしています。彼はいまとなっては数少ない日本からの黒龍江省や内モンゴル自治区を中心としたツアーの企画と受け入れをやっています。もっとも、いまでは日本を訪れる中国人の数のほうが圧倒的に多いため、訪日旅行の企画のためのテーマ探しがもうひとつの重要なミッションです。

呼さんはクラシック音楽とコーヒーが好きという物静かな人で、東京に来ると、個人的に名曲喫茶やCDショップなどに足を運ぶのを楽しみにしているそうです。ぼくも何度か彼を案内したことがありますが、渋谷の老舗名曲喫茶の『ライオン』が気に入ったそうで、今回もひとりで訪ねたと話していました。

中国のクラシック音楽ファンも気に入ってくれた名曲喫茶ライオン (2014年12月02日)
http://inbound.exblog.jp/23821487/

そんな彼がなぜいま『男はつらいよ』の舞台、柴又に行きたいと言い出したのか?

そう尋ねると、彼は「格安弾丸ツアーに飽きた中国の中高年をぜひ連れて来たい」と言います。彼は中国のネットで事前に柴又についていろいろ下調べしていて、実際に歩いてみたかったのでした。

朝9時に京成金町線の柴又駅の前で待ち合わせました。そこには有名な寅さんの像があるのですが、今年3月、その向かいにさくらさんの像ができました。寅さんの目線の先にさくらさんが立っていて、心配そうに兄の姿を見つめているというものです。なんとも泣かせる構図じゃないですか。こんな銅像、あまりお目にかかったことがありません。
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帝釈天の参道は、少し早めに来たせいか、人通りも少なく、まるで映画のセットのようでした。参道の店はたいてい10時が開店だそうです。呼さんは熱心に写真を撮っています。
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この老舗団子屋の『とらや』は、初期の作品で実際に撮影に使われたそうです。
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帝釈天の門が見えてきました。
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実は、ぼくは初めて柴又に来たのですが、想像していたよりこじんまりとした境内だと感じました。まだそれほど参拝客もおらず(写真は10時過ぎのもの)、とても静謐な雰囲気だったのですが、しばらくすると、突然境内に『男はつらいよ』のテーマソングが流されたのには、ちょっと興ざめというか、苦笑せざるを得ませんでした。
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境内には自動おみくじ機があり、200円を入れると、獅子舞が動き出し、おみくじを取り出してくれます。こういうの、絶対中国人は好きだと思います。
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今回初めて知ったのですが、帝釈天の裏には『邃渓園』と呼ばれる日本庭園があります。入場料400円で、長い床を歩いて庭を四方から眺められます。お茶を飲むスペースもあり、和めました。池には錦鯉がいました。
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この入場料で、帝釈堂の精巧な木彫りはギャラリーを観ることができます。お堂の裏手がガラスで囲われていて、そこに法華経の説話を描いた10枚の木彫りが施されています。中国には石彫りは多いですが、木彫りは珍しいそうです。
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これだけの散策で約1時間ほど。帝釈天から歩いて5分ほどの場所に寅さん記念館があります(入場料500円)。

寅さん記念館
http://www.katsushika-kanko.com/tora/

この記念館は渥美清が亡くなった1996年の翌年にできています。つまり、今年は開業20周年でした。

これはさくらさんの旦那の博さんが勤めるタコ社長の印刷所です。活版印刷機がどーんと置かれています。このように、記念館の中は映画の象徴的なシーンのセットが再現されています。
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これは寅さんの実家である「くるまや」のミニチュア模型。2階のたたみ間にごろんと寝ころがっている寅さんが見えます。
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参道の商店街の再現された町並みです。昭和30年代の設定だそうです。
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笑ったのが、寅さんの全財産を詰めたカバンの展示でした。荷物の中に高島暦がちらっと見えたので、呼さんが言いました。「中国でも高島暦を持っている人がいますよ。あれはよく当たるからと」。「へえ、そうなんだ」。
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そして、歴代マドンナと寅さんの出会いシーンの映像集も楽しいです。たまたま最後の48作目のボタンを押すと、後藤久美子との再会のシーンが出てくるのですが、彼女が「なんで寅さん、こんなところにいるの?」と聞くと、「なんでだろうなあ。俺にもわからないんだ」ととぼけて答えるところで、吹き出してしまいました。そう、彼はいつも自分がなぜそこにいるのかわからないような生き方をしている。まさに“ふーてんの寅”です。
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「中国の人は、寅さん映画のどんなところが面白いと思っているんですか?」。そう呼さんに聞いたところ、彼はこう答えました。

「寅さんがいつもあちこちに旅をし、自由に生きているところです」。

いまの40代以上の中国人にとって寅さんは善良で平和的な日本人のイメージを象徴しています。この映画が中国で観られるようになったのは1980年代以降ですが、それまで中国政府が熱心に自国民に対して叩き込んできた「日本といえば日本兵」という悪のイメージを払拭し、相対化するうえで、この映画が果たした役割は大きかったのです。

呼さんと柴又を訪ね、寅さんが結ぶ日中民間人の縁というものを、あらためて実感しました。

実をいえば、ぼくはこれまで『男はつらいよ』シリーズをちゃんと観たことはほとんどありませんでした。若い頃は特にそうですが、ベタな昭和コメディというイメージが強く、まともに観る気がしなかったからです。渥美清も自分の親よりひとまわり近く年上でしたし、およそ自分とは関係のない時代の話だと感じていたからです。

今回記念館に行って知ったのですが、このシリーズの第一作は昭和44年(1969年)。それから最後の作となった平成7年(1995年)まで48作品が上映されるのですが、当時はまだ昭和を懐かしむには早すぎたのでしょう。その後、2000年代に入って『ALWAYS 三丁目の夕日』をはじめとした昭和レトロブームが起こり、そこで多くの日本人が過去の時間にまどろむことに淫してしまった(とぼくは思います)ことで、日本社会は国際社会の変化に追いつけなくなってしまったわけですが、平成の世がまもなく終わろうとするいま、あらためて中国の中高年以降の人たちが好ましく受けとめてくれたこの物語の価値に、ぼくも気づかされたといえます。

記念館の裏は江戸川の堤防になっていて、天気のいい日は富士山が見えます。残念ながら、ぼくらが行ったときは、雲で富士山が隠れていたのですが、この情報を教えてくれたのは、記念館のボランティアのおじさんでした。「朝方はきれいに見えたんだけどね。お客さんが来たとき、その話をしたろ。だから、確認しに行ったら、見えなくなっていた。残念だったねえ」。
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このボランティアのおじさんはとても人懐っこくて、まるで寅さん映画に出てくる人物のようです。彼はぼくらが記念館に入館する前に富士山の話をしたものだから、展示を観ている間に、わざわざ確認に行ってくれていたのでした。

帰り際、帝釈天のわき道を歩いていると、偶然玉垣に倍賞千恵子さんの名前が彫られているのを見つけてびっくり。
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お昼は参道の老舗の「川千家」で蒲焼のランチ。行き帰りに乗るわずか2駅しかない京成金町線もいい味です。
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「中国にはこんな静かでのどかな下町はない」と呼さんは話しました。「帰国したら、柴又を訪ねるツアーを企画します。中国にはファンの人が多いから」。彼のように、自分の足で歩いてツアをー企画する中国の旅行関係者ほどありがたい存在はありません。「これからも何でも知りたいことは聞いてくださいね」。そう彼に話しました。

いま彼が考えているのは、10名くらいのお客さんを案内するツアーだそうです。実際、柴又には団体バスを停めるような場所はなく(実際には、さくらさんと博さんの披露宴の場所として有名な蒲焼屋『川甚』は日本のバスツアーを受け入れており、駐車スペースがありますが、あくまでも食事のお客さん専用です)、銀座や浅草のように大挙して訪れられては困ります。

記念館の人に聞くと、柴又を訪れる外国人は日本通の台湾人くらいだそうです。呼さんには、いい感じのお客さんを連れて来てほしいと思います。


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by sanyo-kansatu | 2017-12-11 09:31 | “参与観察”日誌 | Comments(0)