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2020年 04月 27日

スペインのサンティアゴ巡礼路から学べること(インバウンド壊滅の時代を考える その2)

新型コロナウイルス被災が強いる人の移動の制限は、インバウンドに限らず、ツーリズムのあり方に大きな変更を迫るだろう。

“withコロナの時代”のツーリズムのかたちは、まだあまりにおぼろげで見えていない。

ひとつのヒントとなるのが「歩く旅」かもしれない。

かつて寂れていたスペインのサンティアゴ巡礼路は、21世紀に入り、巡礼者が増えているという。理由は「歩く旅」が世界的なトレンドになっているからだ。なぜ人は街道へと旅立つのか。ひとりの巡礼者に話を聞いた。

※※※

1993年にユネスコの世界文化遺産に登録されたスペインのサンティアゴ巡礼(正式名「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路:カミノ・フランセスとスペイン北部の道」)は、主にフランス各地からピレネー山脈を経由して、スペイン北部に通じ、キリスト教の三大聖地のひとつ、サンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう巡礼路である。


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スペイン北部のサンティアゴ巡礼路を歩く若者(写真:鈴木章弘氏)


十二使徒のひとりでスペインの守護聖人、聖ヤコブの墓があるとされ、1000年以上の歴史のある約800kmの街道は、20世紀に入ると巡礼者の数が減り、廃れていた。ところが、21世紀になると、右肩上がりで増えているという。しかも、キリスト教圏の人たちだけでなく、韓国や台湾などアジアの人たちも見かけるほど、巡礼者の国籍も多様化している。歩くだけでなく、自転車で巡礼路を走る人たちも現れたという。

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サンティアゴ・デ・コンポステーラには世界中から巡礼者が集まる(写真:鈴木章弘氏)


※サンティアゴ巡礼者数の推移

1972年:67人⇒ 2002年:6万8952人⇒ 2012年:19万2488人⇒2018年:32万7328人⇒2021年(予想):46万4000人


■「歩くことで人と出会う」

なぜ21世紀に入って巡礼者が増えたのだろうか。また、現代の巡礼者とはどのような人たちなのか。


フリー編集者の鈴木章弘さんは、これまでサンティアゴ巡礼に5回出かけたという。彼は自分が何度も巡礼を続ける理由について「巡礼路を歩くのが楽しいから」と話す。

「なぜなら、歩くことで人と出会うから。歩くことには多くの効用があり、創造性を高めるのにもっともシンプルで安上がりな方法といえる」という。


鈴木さんの旅の装備は、身の回りの品を入れたわずか4.7kgのバックパックと貴重品入りのショルダーバックだけだ。1日の歩行距離は日によって違うが、15~40km。使うお金も、宿泊代5~15ユーロ、食事・飲み物代10~30ユーロ(1ユーロ=約116円)。「歩くことが第一義の旅なので、必要最小限度の装備と費用で十分」なのだという。「これは自分が特別質素なのではなく、多くの巡礼者も同じ」らしい。


なぜ鈴木さんはこのような旅が「楽しい」というのだろう。彼はこう話す。


「現代の旅は、交通や宿のアレンジが基本的に必要で、何時までにどこに移動しなければならないなど、時間が縛られる。もし誰かと出会っても、時間通りに移動しなければならないなら、せっかくの出会いをふいにしなければならず、これほど残念なことはない。でも、歩く旅なら、急ぐ必要はない。それが巡礼の旅の醍醐味なのです」。


旅の本質は、人と出会うことにあり、それを実現する方法は「歩く旅」にあるというのだ。こうした思いは、現代の多くの巡礼者に共通するものだという。


■予約なしで泊れるスペインの巡礼宿


とはいえ、今日のサンティアゴ巡礼の事情を知らない人には、鈴木さんの話はなかなか理解しにくいかもしれない。彼はそれが「楽しい」理由について、こう話す。


「巡礼者はどのような場所に泊まっていると思いますか。サンティアゴ巡礼路には、彼らを支える宿泊システムがあります」。


鈴木さんの説明によると、スペインで「アルベルゲ」と呼ばれる巡礼宿の運営主体は、市町村や州政府など公的なものと修道院や教会、巡礼者協会、支援団体など、そして個人やNPO法人が経営するものがある。宿泊料金は2タイプあり、1泊5~15ユーロ程度に設定されている宿と、任意の寄付に頼るものもある。


一般に、巡礼宿は大部屋(2人から90人以上の場合も)で、男女の区別はない。宿泊には「クレデンシャル」と呼ばれる巡礼手帳が必要で、連泊は基本的にできないことになっている。

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寄付で泊る公営の宿では、マットレスを敷いただけの部屋もある
(写真:鈴木章弘氏)


これらの宿のルールとして、公営アルベルゲは予約不可で、早く着いた順に泊れる。朝8~10時までに出発しなければならない。「ホスピタレイロ」と呼ばれる管理人が常駐しているとは限らず、ボランティアスタッフであることも多い。また、寝具やタオルなどは自分で用意し、キッチンで自炊ができる。

一般のホテルとは違い、民営の場合も営利を主たる目的とはしておらず、宿泊側も「お客さま」という考えはないし、泊る側も「泊めさせてもらう」という認識が必要だ。世界中から集まる巡礼者との出会いと人間的な交流の場となっていることが、最大の特徴だという。


「スペインの巡礼宿は予約なしで泊れるから、道中で魅力的な人物と出会ったとき、別れを惜しむことなく、自由に旅程を変えることができる。これがどれほど価値のあることか」と鈴木さんは語る。


鈴木さんの話は「人はなぜ旅をするのか」という問いかけに対するひとつの回答といえるだろう。さらにいうと、日本を訪れる多くの外国人、とりわけ中山道の街道を歩くようなウォーカーたちhttps://inbound.exblog.jp/30022862/は、実際にサンティアゴ巡礼の経験があるなしに関わらず、こうした旅の醍醐味を理解している人たちだというべきだろう。だとしたら、受け入れる側も、その意味を理解しておかないと、彼らをガッカリさせることになるのではないだろうか。


■住人との語らいも旅の思い出


これまで「歩く旅」の魅力を旅人の側からみてきたが、街道沿いの住人にとってはどうだろう。鈴木さんはこう話す。


「その後、私は四国のお遍路も歩くようになりましたが、そこではスペイン同様、旅人同士の出会いがあるだけではなく、地元のご老人に声をかけられて、話す機会が増えました。彼らは道端に所在なく立っていたり、ぼんやり座り込んでいて、話しかけられるのを待っているようなのです。彼らはお遍路さんと話をしたいのだと思いました」。


お遍路や旧街道はたいてい過疎化の進む地方の町である。そこに現れる街道ウォーカーの存在は、地元の老人にとって大切な話し相手というのである。これは地域の活性化を目指すインバウンドの観点からみて貴重な出来事といえまいか。


実は、筆者も今回、同じような体験をした。馬籠峠を越える手前の街道で、ひとりのおばあさんに声をかけられたのだ。見ず知らずの自分に「コーヒーでも飲んでいきなさい」という。桃の節句の時期だったので、彼女の家にはきれいな雛飾りがあった。


そのとき、ふと思ったのは、先ほど追い越したカナダ人の夫婦のことだ。彼らに雛飾りを見せてあげてはどうか。しばらくすると、彼らが来たので、おばあさんの家に呼ぶことにした。彼らは雛飾りとおばあさんの写真を撮って喜んでいた。おばあさんもしばし自分語りを始め、筆者はそれを通訳した。

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街道沿いに住むおばあさんと雛飾り


玄関から半身を出し、街道をじっと眺めていたおばあさんが望んでいたであろうことに自分なりに応えられてよかったと思った。カナダ人夫婦にとっても、ひとつの思い出になったとしたら、うれしいものである。こうしたことが起こりうるのも「歩く旅」ならではの魅力だと感じたのだった。

■「歩く旅」を支えるシステムづくり


こうした「歩く旅」の魅力を広く伝えるために、街道ウォーカーのコミュニティ「みちびと」を設立したのが、街道コンシェルジュの渡辺マサヲさんだ。



彼はJICA職員として海外各地の地域コミュニティ開発や研修員受入れ、人材育成事業に携わってきたが、2004年頃から日本の旧街道を歩く旅を始めた。「これまで私は世界の途上国を訪れ、それなりに強烈な体験もしてきましたが、もっと本質的な旅をしてみたいと思うようになりました。それを突き詰めて考えると、歩く旅ということでした」。

中山道をはじめとした旧街道で「歩く旅」のプロデュースを始めた渡辺さんは「江戸時代のように、各地の街道を旅人が往来する光景を再現することが夢」と語っている。


外国人の街道ウォーカーが増えたことで、すでに馬籠と妻籠間の街道沿いに新しいサービスがいくつも誕生している。たとえば、休憩スポットにおけるWi-Fi
コーナーや手荷物運搬サービスだ。案内所から案内所まで荷物を運んでもらうことで、身軽になって街道ウォークを楽しんでもらおうというものである。

数百kmの道のりを数十日かけて歩くサンティアゴ巡礼とは同じではないけれど、中山道は歴史と自然を同時に体感できるという意味で、国内でも貴重な「歩く旅」を外国客に提供できる観光インフラといえるだろう。こうした街道ウォーカーを支えるシステムづくりをさらに街道沿線に拡大していけないだろうか。

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Wi-Fiスポットでは街道で撮った写真をSNSで世界に発信できる

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手荷物運搬サービス(Baggage Transfer Service)の告知(馬籠宿)


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古来人は歩いて旅をしてきた。その原点を体現する「歩く旅」(写真:鈴木章弘氏)


前述の鈴木さんは、21世紀になってサンティアゴ巡礼者が増えた理由について「人の価値観が『モノを得る喜び』から『精神的な充実感による喜び』へと移りつつあることのひとつの証ではないか」と話している。


【追記】
これを書いたのは3月上旬で、いまほど世間には事態の深刻味が感じられない頃でした。今日の状況は感染防止のため、「人の出会い」すら自粛しなければならないわけで、大いに困惑を覚えざるを得ません。答えはすぐには出ませんが、自由にモノを考える想像力だけは温存しておかなければならないと思います。



by sanyo-kansatu | 2020-04-27 10:06 | 最新インバウンド・レポート
2020年 04月 26日

インバウンド壊滅の時代に考えるべきこと~なぜ中山道の宿場町を訪れる西洋人ウォーカーが増えたのか

新型コロナウイルス被災で、日本のインバウンドは大きく停滞しそうだ。いや、このままでは壊滅してしまいかねない事態を迎えている。


ツーリズムは人の移動をポジティブに捉え、喜びや幸せと結びつけて考えられてきた。国境を超えた人の移動のかたちとして軍隊があるが、目的やふるまいがまったく別物である。ツーリズムは誰もが自由に参加できることから歓迎されてきたといえる。

ところが、人の移動が制限され、問題視されてしまうことで、その前提条件が一気に崩れてしまった。これはなかなか厄介な事態である。


でも、こんなときこそ、インバウンドの本質を見直すべきいい機会ではないかと思う。ぼくは、2010年代の日本のインバウンドの好況の時代のなかで、常に不満を抱えていた。それはメディアも含めて、日本の大半の論客が、若手も含めて、インバウンド=中国人の「爆買い」=経済効果の話として真顔で語っていたことである。要はそういうことでしょう、と。


本気で言っているの? 違うでしょ!


とはいえ、この期に及んでその話を蒸し返しても仕方がない。“withコロナの時代”を迎えたとされるいま、人の移動のかたちも変わらざるを得ないのだとしたら、どんなあり方がありうるのか。

そういう観点から、近年世界的なトレンドといわれていた「歩く旅」の現場を訪ねてみたい。


※※※


3月上旬の早朝、岐阜県中津川市にある中山道の旧宿場町、馬籠の石畳の通りには、新型コロナウイルスの影響で、人の姿は見られなかった。それでも、隣の宿である長野県南木曽町の妻籠を目指して馬籠峠を越える木曽杉のトレイルを歩き出すと、何人もの街道ウォーカーとすれ違った。

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中山道の妻籠宿から馬籠宿を目指して歩くオランダ人夫婦


そのうちひとりの中年男性を除くと、すべて西洋人だった。


約9㎞、所要約3時間の街道ウォークで出会ったのは、カナダ、イギリス、フランス(ただし、香港在住)、オランダ、オーストラリアなどの人たちだ。比較的年配のカップルが多く、のんびり自分たちのペースで木曽路の自然を満喫しているようだった。


■馬籠峠越え、3人に2人は外国人


江戸時代の五街道のひとつ、中山道を歩く西洋人ウォーカーが増えている。2019年度(19年4月~3月)は2月までの11カ月間で前年を超える3万7000人の外国人が馬籠峠越えをした。国内客も含めると5万5300人なので、3人に2人は外国人になる。

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中山道の馬籠峠を越えるハイカー調査(上:総通行者数、下:外国人)「妻籠を愛する会」調べ


馬籠峠を歩く外国人の姿が見られるようになったのは、2000年頃からだという。2009年には5000人を超えたが、2016年には2万人を超え、ついに日本人を上回った。


なぜこれほど多くの外国人、それも西洋人が中山道を訪れるようになったのか。


とつのヒントとなる映像がある。


2016年に放映されたBBCの旅番組「ジョアンナ・ラムレイが見た日本」で、英国の人気女優ジョアンナ・ラムレイさんが日本を訪ねるドキュメンタリー紀行だ。彼女は北海道から沖縄まで全国各地に足を運んだが、そのひとつが妻籠からの馬籠峠越えだった。

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DVD「ジョアンナ・ラムレイが見た日本」(丸善出版)


中山道のシーンが流れる約10分間の映像は、彼女が木曽路の古地図を見るところから始まる。何度も映像にはさまれる江戸時代の街道の風景や参勤交代の絵図、幕末に徳川家に嫁ぐため江戸に向かった皇女和宮の写真などを通して、歴史ある街道「サムライトレイル」であることが彼女と視聴者の頭にインプットされる。


中山道を撮影のため訪ねたBBCのスタッフとジョアンナ・ラムレイさん

そして、彼女は梅の花咲く街道を歩き出す。渓流沿いのトレイルを抜け、古い祠を訪ね、江戸時代の風情とともに人の暮らしが感じられる家並みの前でたたずむ。さらに杉並木を歩くと、古いあずまやに出合う。現在、街道ウォーカーのための休憩所となっている一石栃立場茶屋だ。囲炉裏端に腰掛ける彼女を出迎えた老人は、木曽節を歌って聴かせる。まるで絵に描いたような演出だが、この茶屋は実在している(筆者も彼女と同じようにお茶でもてなされた)。

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馬籠峠から妻籠に向かう杉並木の自然道

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妻籠と馬籠の中間地点にある空き家を休憩用の茶屋にした一石栃立場茶屋


■「観光地化されていない」道が選ばれた理由


西洋人による近年の馬籠峠越えブームをつくったといわれるこの番組にも出演している公益財団法人「妻籠を愛する会」の藤原義則理事長は、彼らがこの地を訪れるようになった理由のうち、ふたつのポイントを強調する。


同会の調査レポート「欧米人はなぜ馬籠峠をテクテクで超えるか」(2019年9月)によると、同年6~8月に妻籠宿を訪れた外国人(127人 複数回答可)に来訪動機についてアンケートしたところ、1位「伝統的な町並みを楽しむ(115人、91%)」、2位「観光地化されていない町並みを楽しむ(108人、85%)」だったのだ。


「伝統的」という理由はわかるとして「観光地化されていない」町並みが彼らを惹きつけたというのはどういうことだろう。


BBCの映像をみると、その理由もうなずける。彼女が歩いた妻籠から馬籠までの道中で、英国の制作者が編集の過程で選んでいるのは、馬籠峠から妻後方面の街道だけだった。


おそらく理由として考えられるのは、彼らにとって魅力的に映ったのは、妻籠側の街道で、そこは馬籠側のような整備された石畳の道ではなく、自然のままの姿が残るトレイルだったということだ。「妻籠を愛する会」の調査レポートが物語るとおり、「観光地化されていない」道が好まれたのである。


■50年前の先見の明が実を結ぶ


ではなぜ同じ街道でこのような明暗が分かれたのだろうか。その点について「昭和以降の木曽路の観光開発と集落保存の歴史が関係する」と藤原理事長は話す。


馬籠は文豪島崎藤村の生家があることで、昭和40年代後半から若い女性のひとり旅のはしりだった「アンノン族」が訪れ、にぎわった。その後、日本はバブル経済に向かい、馬籠は、多くの地方都市がそうであったように、時代の波に乗って観光開発を行った。一方、妻籠は時代とは一線を画し、集落保存こそ大事だと考えたという。


※アンノン族…1970年代半ばから80年代にかけてファッション誌やガイドブックを片手にひとり旅や少人数で旅行する若い女性(「anan」と「non・no」の頭文字から命名)。


昭和40年代から今日に至る妻籠宿の来訪者統計から(1990年代半ば以降、減少している。特に国内客の減り方が大きい)「妻籠を愛する会」調べ

今日、なぜ妻籠に海外から多くの街道ウォーカーが訪れ、2016年以降は日本人より外国人が多くなったのか。その背景には、50年以上前に始まった集落保存の取り組みがあった。


先導したのは、御年91歳の小林俊彦さんという町役場の元職員だった。「当時、妻籠はすでに限界集落となっていた。高度経済成長期を迎え、全国各地でゴルフ場開発や大型旅館の建設が進められたが、小林さんは当時から『古いものを残しておくと、いずれ文化財になる。江戸時代から残る宿場町の集落保存をすることが観光化につながる。でも、博物館のようではいけない。生きたままの状態で残すべき』と話していた」と藤原理事長は語る。

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50年以上かけて集落保存に尽力した妻籠宿


そのためのさまざまな取り組みが行われたが、特筆すべきは、住民の理解と協力が必要と考えて始めた「妻籠冬期大学講座」という住民主体の勉強会である。昭和52(1977)年に始まっている。「妻籠宿保存50周年記念事業」記念誌(2018)の中の「妻籠冬期大学講座のあゆみ」と題されたリストをみると、全国の大学やメディアから識者を呼び、どれだけ多様なテーマの講義が行われたかわかる。


小林さんは、1970年代の日本列島改造論の時代から「集落保存をしていれば、いずれ青い目の人たちがやって来る」と話していたという。西洋人による街道ウォークのブームが起きたのも、小林さんの先見の明があったからなのである。


ここから我々は教訓として何を学べるだろうか。インバウンドの取り組みは、地域の生き残りのためにあること。そのときどきの時代のムードに流されるのではなく、物事の本質を見極める姿勢を忘れてはいけないことではないか。


ここでいう本質をインバウンドの現場に置き換えていえば、「人はなぜ旅をするのか」という問いかけに応えることだと思う。


そして、もうひとつ確認しておきたいのは「歩く旅」が世界的なトレンドになっていることだ。これも中山道に多くの外国人が訪れる理由といえるだろう。


やまとごころ
特集レポート2020年3月23日





by sanyo-kansatu | 2020-04-26 14:20 | 最新インバウンド・レポート
2018年 04月 19日

『地球の歩き方Platウラジオストク』が発売されました

気がつくと、本ブログはずいぶん長くお休みしていたものです。

すべてをそのせいにするつもりはありませんが、今年の1月から3月上旬くらいまで、ひさしぶりに手がけたロシアの旅行書の編集作業でそこそこ忙しくしていたせいです。

で、本日『地球の歩き方Platウラジオストク』(ダイヤモンド・ビッグ社)が発売の運びになりました。昨年11月に現地取材に行った内容をメインにまとめたものです。

『地球の歩き方Platウラジオストク』が発売されました_b0235153_15370473.jpg
ウラジオストクってどんなところ? その姿については日本ではほとんど知られていないと思いますが、想像する以上にヨーロッパです。おいしいものもたくさんありますし、バレエも観られるし、市場もあるし、2泊3日の旅行で十分楽しめます。成田からのフライトはわずか2時間半、だから「日本からいちばん近いヨーロッパ」と言っているのです。


さて、この本の刊行を記念して、知人が以下のイベントを企画してくれました。人前で話をするのはあまり得意ではないのですが、この際がんばってウラジオストクの魅力についてお話したいと思います。

≪2時間半で行けるヨーロッパ~ウラジオストクの知られざる魅力≫

★日時 2018年5月26日(土)14:00~16:00(13:40受付開始)

★ゲスト:中村正人さん(ボーダーツーリスト・編集者&ライター)
A.アレックスさん(ミュージシャン、シェフ、通訳、翻訳者)※アレックスさんのご登壇はご本人のご都合で予定とします

★定員:15名

★会場:土屋グループ銀座ショールーム
〒104-0061東京都中央区銀座3丁目8-10 銀座朝日ビル3F

☎0120-406-211/03-5579-9981
https://www.hometopia.jp/branch/ginza/

★参加費:4,000円(税込)≪(紅茶+お菓子付き)≫

※お申込みはメール(tokokitani@yahoo.co.jp)にて、「ウラジオストク旅」申し込みと明記した上、お問い合わせください。メール到着後、申し込み方法をご返送いたします。参加費振込完了で参加決定となります。キャンセル料は3日前から発生しますので、ご注意ください。


★ゲスト/プロフィール
中村正人(なかむら・まさと) 
ボーダーツーリスト(国境観光の専門家)。おもなフィールドは日本の近隣の国々(ロシア、中国、モンゴル、朝鮮半島など)で、情報サイト『ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう』(border-tourism.jp)を主宰。『地球の歩き方Platウラジオストク』(ダイヤモンド社)の著者。好評発売中!


ゲスト(予定)
A.アレックス
1990年ウラジオストク生まれ。ミュージシャン、シェフ、通訳、翻訳などマルチな活動を展開中。昨年公開された二宮和也主演の『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶』(last-recipe.jp)でロシア語監修を担当し、シェフ役でも出演。モルドバワインのPRも手がける。


≪中村正人さんから一言≫
成田からフライト2時間半。「日本にいちばん近いヨーロッパ」こと、極東ロシアのウラジオストク旅行がいまひそかに盛り上がっています。今年はロシアで開催されるサッカーワールドカップの年でもありますが、いまなぜ注目かといえば、昨年8月からウラジオストクへの空路と航路で電子簡易ビザの発給が始まったからです。


この町には以下の6つの魅力があります。

①日本海に面した港町
②ヨーロッパの町並み
③多民族とミックスカルチャーの町
④グルメと文化の町
⑤1年を通して豊富なイベント
⑥郊外に広がる大自然


でも、なぜこんなに近くにヨーロッパが…? 実は、その謎解きがウラジオストク旅行の本当のテーマといえるかもしれません。セミナーでは、そんなウラジオストクの魅力をお話したいと思っています。



by sanyo-kansatu | 2018-04-19 15:46 | 日本に一番近いヨーロッパの話
2017年 12月 27日

日本の紅葉はなぜ外国人観光客の心をつかむのか?

日本政府観光局(JNTO)の統計によると、ここ数年、秋に日本を訪れる外国人が増えている。理由のひとつは紅葉だ。桜と同様、日本を彩る魅力である紅葉は、なぜ外国人観光客の心をつかむのか。海外で日本の紅葉はどのように伝えられているか。外国人向けの正しい紅葉の伝え方とは。

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9月下旬、中国語通訳案内士の水谷浩さんがガイドを務めるマレーシアからの華人グループは大雪山系にいた。「札幌から入ってトマムや富良野、旭川をめぐる。紅葉の見どころは富良野や大雪山。日本でいちばん早く紅葉が見られるのがポイント」だという。

水谷さん率いる中国語通訳のプロ集団で形成される彩里旅遊株式会社では、中国本土や華僑として海外に在住しているVIP華人の訪日旅行手配を扱っている。ここ数年、9月下旬から10月中旬にかけては北海道でのガイド業務の引き合いが多い。紅葉を見たいという華人客が増えているからだ。

訪日客が多く訪れるのは、春より秋⁉

これまで訪日外国人旅行市場は繁忙期と閑散期に分かれ、春や夏が多いとされていた。ところが、ここ数年、秋や冬に日本を訪れる外国人が増えており、1年を通して満遍なく彼らの姿を見かけるようになっている。日本政府観光局(JNTO)によるこの5年間の月別外客数のトップ3を調べると、以下のとおりである。

◆月別訪日外客数トップ3(2012年~16年)※外客数と( )は前年同月増比

<2016年>
1位 7月 2,296,451人(19.7%) 
2位 10月 2,135,904人(16.8%)
3位 4月 2,081,697人(18.0%) 
※11月は1,875,404人(13.8%)で11位

<2015年>
1位  7月 1,918,356人(51.07%) 
2位 10月 1,829,265人(43.87%)
3位  8月 1,817,023人(63.87%) 
※4月は1,764,691人(43.37%) で5位、11月は1,647,550人(41.07%)で6位

<2014年>
1位 10月 1,271,705人(37.07%)
2位  7月 1,270,048人(26.67%)
3位 12月 1,236,073人(43.07%) 
※4月は1,231,471人(33.47%)で4位、11月は1,168,427人(39.17%)で5位

<2013年>
1位  7月 1,003,032人(18.47%) 
2位 10月  928,560人(31.67%) 
3位  4月  923,017人(18.47%) 
※11月は839,891人(29.57%)で10位

<2012年>
1位 7月 847,194人(50.97%) 
2位 4月 779,481人(163.57%) 
3位 8月 774,239人(41.77%)
※10月は705,848人(14.67%)で4位、11月は648,548人(17.67%)で11位

月別では、東アジアの国々が夏休みに入る7月がほぼトップを占めているが、中華圏が春節休暇に入る1月~2月、桜の開花や欧米のイースター休暇が重なる4月よりも10月が多いことがわかる。10月は中国の国慶節休暇に入るので、訪日客数トップの中国客が全体の数を押し上げるとはいえ、肌感覚でいうと街に外国人観光客があふれていることを強く感じる桜のシーズンより多いのだ。年々月別の数の差が縮まり、年間を通じた平準化が進んでいる。

紅葉が外国人観光客を魅了する⁉

では、なぜ秋に日本を訪れる外国人観光客が増えているのだろうか。

訪日外国人の団体から個人への移行が進み、とりわけアジアからのリピーターが増えたことから、繁忙期の夏ではなく、日本旅行の時期を秋にズラす層が現れていることが考えられる。日本人が8月ではなく、9月以降に遅めの夏休みを取るというのと同じだ。近年、日本の夏は相当蒸し暑いので、旅行に適しているとはいいにくい。アジアの国から訪れる旅慣れた人たちは、できれば涼しい日本を体験したいだろう。

もうひとつの理由は、海外で日本の紅葉の魅力が広く伝わったことが考えられる。

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↑河口湖もみじ回廊のライトアップ河(HIS提供)

「万葉集」や「源氏物語」などの古典や「百人一首」でもおなじみのように、日本人は古来もみじ狩りを楽しんできた。

紅葉が見られるのは落葉樹だけで、日本など東アジアの沿岸部やヨーロッパの一部、北アメリカの東部に限られるという。なかでも日本は落葉広葉樹の種類が多く、紅葉の見どころが多いのだ。

人気の紅葉バスツアーは河口湖

では、訪日客はどのような紅葉ツアーを楽しんでいるのだろうか。

日本の旅行大手クラブツーリズムは、2009年から、YOKOSO Japan Tourという外国人向けの国内バスツアーを催行しており、10月下旬から11月にかけては日帰りの紅葉ツアーが人気という。

CLUB TOURISM YOKOSO Japan Tour
http://www.yokoso-japan.jp

同社のツアー客の国籍のトップは香港で、次いで台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、最近はインドネシアが増えているという。これらアジア客をメインとした約20万人のメルマガ会員がいて、リピーターも多い。

担当者によると「以前は中華圏の旧正月時期や4月~5月が圧倒的に多く、秋は閑散期だったが、ここ数年はすごい勢いで増えている」という。実際、10月~12月のツアー客数が年々倍々ゲームで、「2017年10月~11月の予約数は前年同月比200%前後、同12月は300%強」だ。

なかでも人気があるのが、英語や中国語のわかる添乗員が同乗する河口湖への日帰りツアーだ。
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↑英名:Departure guaranteed! Mt. Fuji & 5-Storied Pagoda “Arakurayama Sengen Park”・Sagamiko Illumillion・Koro-kaki no Sato (Village of Dried Persimmons)・Autumn Leaves in Lake Kawaguchi
全日程保證出發! 富士山&新倉山淺間公園 五重塔・相模湖霓虹燈秀・曬柿子之里・河口湖賞楓
http://www.yokoso-japan.jp/tc/05522.html

日程は以下の通り。

ホテルグレイスリー新宿(8:10発)→新宿ワシントンホテル(8:30発)→<首都高・中央道>→(10:00)シャトー勝沼(10:30)【買い物・試飲30分】→ころ柿の里(10:50)【散策】→信玄館(12:20)【昼食】→(13:30)新倉山浅間公園(14:40)【散策70分】→(15:00)河口湖(16:00)【紅葉鑑賞60分】→<中央道>→(17:00)さがみ湖プレジャーフォレスト(18:00)【イルミネーション鑑賞60分】→<中央道・首都高>→新宿(19:00予定)

ツアー料金は、大人8900円、子供8600円、幼児5000円だ。

担当者によると「メインビジュアルは新倉山浅間神社。五重塔と富士山と紅葉という外国人が好む風景の組み合わせがポイント。昼食に松坂牛のローストビーフとほうとう鍋をつけているのも人気の理由」という。

日本人向け紅葉ツアーを外国人にも展開、アジアを中心に一躍大人気に!

同じく旅行大手のHISも外国人向けバスツアーを催行しているが、同社のイチ押しツアーも英語添乗員付きの河口湖への日帰りツアーだ。

日本の紅葉はなぜ外国人観光客の心をつかむのか?_b0235153_544133.jpg

↑Mt.Fuji Autumn Leaves Light-up Festival & Shosenkyo Gorge Bus Tour!(山梨の紅葉いいとこどりっ☆昇仙峡と河口湖もみじ回廊ライトアップ&ラストシーズン!秋めく富士山五合目)
http://www.hisgo.com/j1/Contents/OptionalTour/DetailOptionalTour.aspx?TourCd=TYO1166&lang=en
(日本語:https://bus-tour.his-j.com/tyo/item/?cc=A1041

コースは以下のとおり。

新宿→昇仙峡(秋めく渓谷美を観賞)→影絵の森美術館(世界初の影絵美術館で光と影のアートを鑑賞)→富士山五合目(ラストシーズン!標高2,305mの絶景散歩)→富士河口湖紅葉まつり(幻想的な河口湖もみじ回廊ライトアップの観賞)→新宿

ツアー料金は7990円~8490円だ。

HISの担当者によると「ポイントは幻想的な河口湖もみじ回廊のライトアップ。訪日客に定番人気の富士山5合目や今後人気が出てきそうな昇仙峡、影絵の森美術館など最新のスポットを入れている」とのこと。ツアーのハイライトである「もみじ回廊」の滞在時間はたっぷり約1時間半あるという。

どちらのツアーも1万円を切る手頃な料金で、日本人が普通に参加しても十分楽しめる内容だ。実際、日本人と外国人が一緒にバスに混載するツアーもあるという。日本の旅行会社は、これまで国内客向けに格安でバラエティ豊かなバスツアーを企画してきた。それをそのまま外国客向けに提供したところ、アジア客にウケたという話なのだ。日本人が感じるお得感は、彼らにも伝わるのだろう。

ただし、クラブツーリズムの担当者は「欧米客への訴求は同じようにはいかない」ともらす。旅に対する考え方が違うせいなのか、今後の検討課題だという。

外国人観光客は、紅葉の時期やスポットに関する情報どう得ているのか

桜に次ぐもうひとつの日本観光の売りである紅葉について、海外の人たちはどうやって情報を得ているのだろうか。

訪日旅行シーンの先駆けを走る香港や台湾の旅行会社では、8月中頃から日本の紅葉をテーマとしたツアーを募集している。以下のサイトをみると、人気の目的先や料金の相場がわかる(10月中旬現在の情報)。

◆EGLツアーズ@香港

香港で訪日送客数トップの旅行会社であるEGLツアーズでは、すでに紅葉ツアー販売は終盤で、日本のみならず韓国や中国の紅葉スポットを訪ねる商品も企画しているようだ。

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http://www.egltours.com/travel/showIndex

◆KKday@台湾

一方、台湾のオンライン旅行会社であるKKdayも、日本情緒たっぷりのデザインで紅葉ツアーを募集している。

日本の紅葉はなぜ外国人観光客の心をつかむのか?_b0235153_5452229.jpg

https://www.kkday.com/zh-tw/home/index2

これらのサイトに掲載されるツアーの内容をみると、香港や台湾の人たちがもうほとんど日本人と変わらない旅をしていることがわかる。

◆HISバンコク支店@タイ

昨年の訪日客数でアメリカに次ぐ6位となったタイの場合はどうだろう。タイではHISがバンコク市内に多くの店舗を構え、タイ人を日本に送り出している。

日本の紅葉はなぜ外国人観光客の心をつかむのか?_b0235153_5454340.jpg
https://th.his-bkk.com/HIS

バンコク支店のサイトをみると、やはりこの時期、紅葉ツアーがメイン商品となっている。

日本国内各地を3泊5日で5000バーツ(約17万円)相当のツアーが販売されている。
タイでは、台湾と同様、日本のテレビ番組が普通に見られるだけでなく、自らも日本に関する番組を制作している。YouTubeで探すと、WabisabiTVやSUGOI JAPANといったサイトで日本旅行をテーマにした動画がいくつも見つかる。タイ人はこうした豊富な情報源を通して自由に日本旅行を計画しているのだ。

WabisabiTV
https://www.youtube.com/user/WABISABITV1
SUGOI JAPAN
http://www.sugoijp.com/

◆欧米向けメディア

欧米の人たちはどうだろう。日本在住の欧米人たちが発信する日本の観光&生活情報サイトのTokyo Cheapoでは、この時期、東京や日本各地の紅葉スポットを紹介するレポートを載せている。

Tokyo Cheapo
https://tokyocheapo.com/
Koyo: 10 Places to See Autumn Leaves In and Around Tokyo(東京とその近郊の紅葉スポット10)
https://tokyocheapo.com/lifestyle/outdoors/koyo-autumn-leaves-in-tokyo/

海外発としては、トリップアドバイザーの傘下で、全世界の現地発ツアーを扱うviatorでも、東京や富士山は人気の旅行先の上位に入っている。

viator
https://www.viator.com/

同サイトでは、日光をはじめ袋田の滝(茨城県)、長瀞の滝(埼玉県)、富士山と河口湖、びわ湖バレイと鶏足寺、小豆島(香川県)、香嵐渓(愛知県)などの日帰り紅葉ツアー(発地は東京や京都、大阪などいろいろ)が海外からネット予約できるようになっている。

旅行の最先端を歩む、香港と台湾における日本の紅葉情報

日本を訪れる外国人が事前にさまざまな紅葉情報を入手し、ツアーや目的先を選んでいることをみてきたが、なかでも香港と台湾の人たちの情報集力は他の国・地域に比べ群を抜いている。

香港では例年、8月下旬から9月上旬にかけて、新聞やネット報道でその年の日本の紅葉の見ごろ時期の予想を取り上げている。こうした関心の高さの背景には、株式会社KADOKAWAが現地で発行してきたタウン情報誌や日本情報誌があるといっていい。
香港で2007年11月に創刊された『香港ウォーカー』は「旅慣れた香港の人々をも満足させる日本情報が満載」の月刊誌だ。

台湾には1999年創刊の現地情報誌『台北ウォーカー』があり、早い時期から日本情報を発信してきた。15年8月に創刊された『Japan Walker』は台湾で唯一の日本情報誌だ。

海外には日本の観光情報を伝えるフリーペーパーはたくさんあるが、市販の雑誌は珍しい。これらが隠れたトレンドメーカーとなって香港や台湾の人たちに与えた影響は大きい。


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上記2誌の、台湾・香港現地での立ち上げに関わった編集者の鈴木夕未さん(株式会社KADOKAWA)によると「両誌ともに日本の紅葉特集は定番企画」だという。香港と台湾の違いや彼らの日本に対するニーズについて、より詳細に話を聞いた。

―香港や台湾の人たちにとって日本の紅葉の魅力とは何か。

「日本のようなはっきりした四季がない台湾、自然が少なく高層ビルに囲まれた環境に暮らす香港の人たちにとって、紅葉に触れることで季節感を感じられるのがいちばんの魅力だろう。これは桜と同様だ。

なかでも彼らが強く魅力を感じるポイントは、紅葉の色の艶やかさと日本的な情緒の組み合わせにあると思う。紅葉と滝や寺社仏閣、お城など。その風景をバックに自分が写り込む写真を撮るのが好きで、“インスタ映え”を気にしている。最近では湖面に映る紅葉など、さまざまなバリエーションが生まれている」

実際、クラブツーリズムの河口湖ツアーを募集するサイトのトップの写真は、富士山と新倉山浅間神社の五重塔と紅葉の組み合わせだった。紅葉に日本的情緒が感じられるアイテムが加わることで、彼らの気持ちをグッとつかんでいるわけだ。

―『香港ウォーカー』や『Japan Walker』ではどんな紅葉特集をやっているのか。

「香港と台湾では、それぞれ読者の求める嗜好やニーズが違う。昨年、台湾の『Japan Walker』では<秋季賞楓微旅行(秋のもみじ狩りプチ旅行)>という特集をやったが、紅葉×鉄道、紅葉×温泉、紅葉×日本庭園の3つのテーマに分けて各地を紹介した。

一方、『香港ウォーカー』の最新号(10月号)の特集は、”秋の京都 紅葉単車遊(サイクリングでもみじ狩り)”だ」

―台湾と香港では何が違うのか。

「香港人はアクティブで、いまサイクリングブームだ。街で自由に自転車に乗れる環境にはないため、日本で体験したいという人が多い。香港はストレス社会なので、日本では自然の中でのんびりリラックスして過ごしたいようだ。最近、香港では日本でグランピング(グラマラス×キャンピングの造語でラグジュラリーなアウトドア体験)を楽しみたいという人も増えている。

一方、台湾人の鉄道好きは有名だ。日本全国の観光列車に乗りたい人は多く、できれば紅葉の時期に行ってみたい。温泉や日本庭園など、日本文化に対する憧れは、香港人より強い。

こうしたことから、香港と台湾では同じ情報誌でも誌面づくりが違う。香港の場合はビジュアル優先で、情報は少なめでいいという考え方だ。香港の人に聞くと『情報はスマホで探せるから必要ない。行ってみたいと思わせる写真やイメージがあればいい』と答える。一方、台湾の読者はそれぞれのスポットに関する細かい情報やアクセスなどがきちんと書き込まれている誌面を求めている」

隣国の香港と台湾でも、嗜好や求める情報がこんなにも違うことは、とても興味深い。

日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃない

冒頭で紹介した中国語通訳案内士の水谷浩さんが案内するマレーシア華人の北海道旅行に話を戻そう。彼らは日本の紅葉をどのように楽しみ、何を感じているのか。10月中旬まで北海道にいた水谷さんに話を聞いた。

―マレーシア客は日本の紅葉についてどんなイメージを持ち、何に魅力を感じているのか。

「非日常感ではないか。彼らは熱帯に暮らしているから、冷たく張りつめた新鮮な空気と艶やかな色彩に包まれた場所で写真を撮って、そこに自分が写り込みたいという願望が強い。だから、いちばんいい状態の紅葉を見せたいが、これが難しい。散り際が真っ赤に染まって美しいし、写真を撮るには晴天がいい。太陽の光の向きも重要だ。紅葉のピークは同じ場所でも天候によって変わってくる」

―桜もそうだが、紅葉も年によって見ごろの時期は変わる?

「メディアのみなさんにお願いがある。日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃないと伝えてほしい。なぜなら、一般に旅行会社やメディアが発信する日本の紅葉は真っ赤に染まった写真を使うことが多い。インパクトがあるせいだと思うが、外国のお客さんはそれを期待して日本に来る。ところが、実際には黄色や緑も多く、必ずしも赤一色ではない。それでガッカリされる人がけっこういるからだ。

もちろん、私はその方たちに日本の紅葉は赤だけではなく、黄色や緑など色とりどりの美しさがあると説明するのだが、先入観があるぶん、腑に落ちない気分になるようだ。

実際には、中国語でいう“五彩缤纷”(たくさんの色が豪華絢爛で豊かに見える様)というべき。最初からそのように伝えれば、ガッカリされることもないと思う」

この点、欧米のメディアは比較的バランスが取れていて、紅葉=赤一色という伝え方はしていない。たとえば、前述した現地発ツアーサイトのviatorでは、東京発の紅葉ツアーのトップページに以下のような写真を使っており、日本の紅葉についても次のように「赤やオレンジ、黄色」と説明している。



The season for fall colors typically kicks off in mid-September and lasts until December, with red, orange, and yellow colors lasting in a single location for as long as five weeks.

人一倍こだわりを持つ富裕層に満足してもらうために必要なこととは?

紅葉は漢字で「紅」と書くから、中国語圏の人たちは赤一色と思いがち。でも、ガッカリするのは期待値の高さからともいえる。日本特有の自然現象である紅葉について、もっと我々自身が深く理解し、説明することばを持たなければならないだろう。

なぜなら「こうした説明の大切さは、相手が富裕層であれば、なおさらだ」と水谷さんは言う。

「海外のVIPほど、旅に対するこだわりが強い。彼らはそれがいいか悪いかは常に自分で判断したがる。気に入らないと『不要(いらない)』とはっきり言う。食事も高級な料理店に連れて行けば満足するというのではない。状況や気分によって地元の庶民的な場所で食事がしたいと言い出すかと思えば、逆のときもある。

そのぶん、きちんと合理的な説明ができれば、彼らも納得する。そのためには、相当の知識と経験が必要。いったん満足してくれると、次回もまたお願いしたいという話になる。その結果、彼らのネットワークを通して別のお客さんを呼んでくれる。それが富裕層旅行の世界だ」

彩里旅遊株式会社は顧客の要望に合わせて一からコンテンツを組み立てる企画旅行が専門。口コミで同社の評判を聞いた海外の華人から「日本の極上の紅葉が見たい。水谷、案内してほしい」と直接指名がかかるそうだ。

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↑大雪山系は10月上旬には早くも紅葉は散り、雪に覆われる

まもなく本州にも紅葉前線が南下し始めるだろう。「日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃない」。今後は肝に銘じて、情報発信するよう努めたい。

秋の紅葉シーズンは、時期や場所が日本全国をまたぎ、今後もさらなる発展の可能性が高い。大切に育てていきたい観光コンテンツだ。

彩里旅遊株式会社
http://www.ayasato.co.jp/

※やまとごころ特集レポート第61回 2017.10.24 より
https://www.yamatogokoro.jp/report/8272/



by sanyo-kansatu | 2017-12-27 05:51 | 最新インバウンド・レポート
2017年 12月 24日

中国シェアサイクル路上廃棄問題をマナーと結びつけるのは偏向報道だと思う

昨日、テレビ朝日が以下の中国シェアサイクルの路上廃棄問題を伝えました。
中国シェアサイクル路上廃棄問題をマナーと結びつけるのは偏向報道だと思う_b0235153_1147212.jpg

人気の「シェア自転車」 路上に放置で「歩けない」(テレ朝ニュース2017/12/23)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000117350.html

(一部抜粋)町で気軽に自転車を借りたり、乗り捨てたりできるサービス「シェアサイクル」。日本でも無料通信アプリの「ライン」が、来年前半をめどにこのサービスを始めると発表しました。しかし、発祥の地とされている中国では、マナーの悪さなどが社会問題となってきています。

このニュース、いまごろ?という感じの新鮮味のない情報であることもそうですが、同局のアナウンサーがやたらと中国人の「マナーの悪さ」を強調しているのは大いに疑問です。そもそも「どこでも乗れて乗り捨て自由」という中国のシェアサイクルのルール自体に問題があったというべきで、こうなることは最初からわかっていたと思います。物事の本質を隠し、固定化したイメージを視聴者に植えつけようとする偏向報道といってもいいのではないでしょうか。

そもそも日本ではこんなルール考えられませんが、もし仮にそうなったとしたら、同じことは日本でも起こるでしょう。すでに駅前の駐輪問題が起きているわけですから。

テレ朝のアナウンサーが煽るべきは中国人の「マナー問題」ではなく、なぜこのようなことが起きているのか、その背景を伝えることでしょう。

今月に入ってようやく日本のメディアも、中国ではすでに報道されていたシェアサイクル企業倒産のニュースを報じています。

中国のシェア自転車、廃棄車両の山 破綻や経営悪化続く(朝日新聞2017年12月5日)
https://www.asahi.com/articles/ASKD141DZKD1UHBI00T.html

中国で爆発的にヒットしたシェア自転車の運営が曲がり角を迎えている。一部は日本など海外にも進出を果たすほどだが、現地では過当競争で利益が上がらず、破綻(はたん)や経営悪化が相次ぐ事態に。大手も例外でなく合併が話題に上る。無秩序な駐輪に頭を痛める地方政府が規制を始め利便性も減少。交通の邪魔になる車両は「墓場」と呼ばれる保管場に運び込まれている。

「大変申し訳ない。終始薄氷を踏むようだった」

青色の車体で親しまれた小藍単車(ブルー・ゴー・ゴー)の創業者李剛氏は11月半ば、公開書簡で倒産を表明した。外国進出も果たしたが、サービス開始から1年での退場。競争の厳しさを切々とつづった。

業者の倒産が相次ぐようになったのは、今年半ばからだ。背景には、収益性の構造的な低さがある。

シェア自転車は利用料と利用データの販売という二つの収益源がある。だが利用料は、草分けで大手の摩拝単車(モバイク)でさえ30分0・5元(約8・5円)からと格安。競争力の低い他社では無料をうたうケースもある。そのうえ、データも地方政府の都市計画に使える程度といい、収益力は強くない。経営悪化で、登録時に払った保証金がユーザーに返らない問題が頻発している。

経営の難しさは大手も例外ではない。モバイクともう1社の大手ofoの合併説が根強く流れている。中国イノベーションの旗手として投資を集めた両社が収益を上げる手っ取り早い手段が合併というわけだ。

地方政府による自転車の駐輪規制も影を落とす。急速な広がりと過当競争で自転車が街角にあふれ、通行の妨げになった問題を重く見た。だが、どこでも止められる利便性が普及に大きな役割を果たしたため、規制が厳しければ魅力を損なうことになる。

「環境にいい」という印象に傷がつく事態も起きている。交通の邪魔になる車両を地方政府が回収し、保管場に次々と運び込んでいる。その結果、各地の保管場は、シェア自転車の「墓場」と呼ばれている。
日本でも広がりつつあるシェア自転車。だが一大市場となった中国での持続性には今、大きな疑問が投げかけられている。(北京=福田直之)


実際、シェアサイクル大量放棄問題は、今年夏くらいから中国のネット上では問題提起されていました。日本ではようやく中国のシェアサイクルの先進性が広く話題になり始めていた頃の話です。

こんなネット記事もありました。

厦门出现壮观“共享单车”山丘:ofo亮了(アモイに出現した壮観なシェアサイクルの山)
https://mbd.baidu.com/newspage/data/landingsuper?context=%7B%22nid%22%3A%22news_9780158454380636161%22%7D&n_type=0&p_from=1
中国シェアサイクル路上廃棄問題をマナーと結びつけるのは偏向報道だと思う_b0235153_11491450.jpg

これは中国福建省アモイのシェアサイクル廃棄場をドローンかなにかで撮ったものでしょう。すごいことになっていますね。

ここまでに至る背景には中国人の「マナー問題」があったというより、このシェアサイクル事業のビジネスモデルとともに、中国政府の姿勢(あるいは読みの甘さ)があったというべきでしょう。

その点について、ぼくは以下のForbesJapanの記事で少し解説しています。

日本のシェアサイクルはツーリスト向けに徹するべき?(ForbesJapan2017/11/08)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18335

最初に言っておくと、この記事は「盛況が伝えられる中国のシェアサイクルを日本はどう受けとめればいいだろうか」という観点から書いたものです。

(一部抜粋)では、この画期的な中国式シェアサイクル事業は日本で支持されるだろうか。

まず中国企業はどうやって収益を得ているのか。中国の友人によると「最初に利用者から預かる保証金の金利ビジネスですよ」とのこと。これほど安価でサービスを提供するビジネスが超スピードで拡大したのも、どれだけ利用者を集められるかに事業の成敗がかかっていたからだという。昨今の中国では投資規模が破格だからこそ実現できたわけだが、低金利の日本ではちょっと考えにくい。

さらにいえば、いまの中国の経営者の考え方も強く反映されている。新興企業の経営者は新しい市場が生まれると、いち早く参入し、そこそこのシェアを獲得しておけば、どこかの時点で大企業に買収してもらえると考えているふしがある。そうすれば、事業自体に利益が出ていなくても、売り抜けてひと財産築ける。

一方、資金力のある大企業も、最初は利益度外視で市場拡大にひた走る。そのうち大半の中小企業はふるい落とされ、結局は大手の寡占状態となるから、利益を取るのはそれからでいい……。このように中国のビジネスシーンが展開していくさまは、一時は群雄割拠だった配車アプリも「滴滴出行」が一強になったことからわかるだろう。


要するに、昨今の金余り中国での投資依存のビジネス手法が背景にあること。さらにいえば、世界に自らの先進性を誇りたい中国政府が、今年3月上旬に開かれていた全国人民代表大会の記者会見で「共享単車(シェアサイクル)」の支持を強く表明していたように国家の後押しがあったことも、もし批判されるとすればされるべきでしょう。
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それからもうひとつ、このテレ朝のニュースを見て思ったことがあります。確かに上海などの大都市圏では過剰な自転車の配給によって日常的に路上駐輪問題が起きているのですが、地方のもっと小さな都市ではどうかというと、たとえば吉林省朝鮮自治区延吉では、ようやく10月下旬にシェアサイクルが始まったと聞きます。そのような地方都市も多いのです。ですから、「中国では」とひと括りにすることは偏向報道になりやすいのです。

中国の国土は広く、投資マネーが集まりやすい大都市では問題が起きていますが、地方ではほどほどの感じでシェアサイクルが進んでいく可能性もあります。つまり、ビジュアル的にインパクトの強い、野放図な廃棄自転車問題が中国の大都市で起きているからといってシェアサイクルビジネス自体が頓挫してしまうかというと、そうとはいえないのです。

前述のForbesJapanの記事で、ぼくは以下のように書いています。

今年7月までに中国全土で1600万台もの自転車が街に投入されたというから、街頭での自転車の氾濫を引き起こしていることも確か。だが、中国はかつての「自転車大国」。通りも広く、自転車専用道路もそこそこあり、歩道上に駐輪用スペースも多く設けられている。我々に比べ「小さなことは気にしない」彼らの感覚ではそれほど深刻な問題でもなさそうだ。

我々に比べて「小さなことは気にしない」彼らの感覚とあえて書いたのは、ためしに身近な中国の知人にこの件について尋ねてみてはどうでしょう。おそらく彼らの多くは「でも、どこでもそうではありません。シェアサイクルは便利ですよ」と答えるかもしれません。そして、心の中で「また日本のメディアは中国の悪いところばかり報道している」と感じているに違いないでしょう。

さて、以上のことをふまえたうえで、考えたいのは、日本においてシェアサイクルをどう進めていけばいいかということです。

以下の記事は、日中のシェアサイクルの現状の違いをとてもわかりやすく説明しています。

シェア自転車、なぜ中国は急増、日本は停滞?(サステナブル・ブランド ジャパン2017.11.16)
http://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1189521_1534.html

この記事が指摘する中国シェアサイクル盛況のポイントは「料金と使いやすさ」「SNSで利益度外視のキャンペーン」「自治体が積極的に後押し」「中国の投資ブームと『走りながら考える』メンタリティ」です。

それをふまえ、ぼくが思うのは、日本のシェアサイクルは中国のような住民向けではなく、国内外のツーリスト向けに特化した方が動き出すのではないか、ということです。

今年、中国のシェアサイクル大手が鳴り物入りで日本に参入しましたが、彼らは中国式のビジネス手法を持ち込むだけで、法律も都市環境も異なる日本で、誰のためにサービスを提供しようとしているのかよくわからないところがあります。でも、もし国内の観光地にあるホテルや(場合によっては)民泊先で、中国式のシェアルサイクルが気軽に使えたら、外国人観光客にとってもそうですし、日本人にとっても便利です。要は、訪日外国人の数が世界でいちばん増えているというインバウンド成長大国である日本の事情に合わせたルールづくりをしたうえで、中国式の“いいとこ取り”だけするのが賢いやり方です。

そんな国内外のツーリストをターゲットに絞り、全国の宿泊施設に導入できるシェアサイクルサービスをはじめたのが、ツアーバイク社です。

ツアーバイク
http://www.tourbike.jp/

先日、同社の営業担当者と会う機会があったのですが、彼らは中国大手とは違い、国内の宿泊施設や民泊オーナーを対象にシェアサイクルを提供しようとしています。今後の彼らの動きに注目しています。

by sanyo-kansatu | 2017-12-24 11:55 | 気まぐれインバウンドNews
2017年 12月 23日

ハルビン、氷点下30 度の絶景

毎年1月5日から2月下旬まで黒龍江省ハルビンで開催される氷雪祭は、札幌の雪まつり、ケベック(カナダ)のウィンターカーニバルと並び称される世界3大雪祭りのひとつ。この時期、街の至るところで氷や雪の彫刻が並び、国内外の観光客が押し寄せる。日本からわずか3 時間弱のフライトで出合える氷点下の絶景をレポートする。(写真/佐藤憲一)
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↑氷雪大世界のモニュメントは日が暮れるトワイライトの瞬間がいちばん美しい

人生一度は行ってみたい
ハルビン氷雪祭の夜


2月初旬、夕闇が訪れる直前のハルビン氷雪大世界の入口は人ごみでごったがえしていた。

ようやく入場口を抜けると、目の前に現れたのは巨大な氷の建造群だった。色とりどりのLED電飾を埋め込まれた氷のモニュメントが薄暮の空に光彩を放ち、きらめいている。夢うつつに見る桃源郷のようだが、氷の壁に手で触れると指先がちくりと痛い。
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↑氷塊に埋め込まれた電飾の色が刻々と変わり、幻想的な効果を生み出している

札幌の雪まつり、ケベック(カナダ)のウィンターカーニバルと並び称される世界3大雪祭りのひとつとして知られるハルビン氷雪祭が開催されたのは1985年から。年々イベント色が強まり、2008年から松花江の中州である太陽島に特設会場を設置。氷雪祭のメイン施設であるハルビン氷雪大世界が誕生した。毎年1月5日から国内外の、特に雪を見たことのない中国南方からの旅行客が「一生一度は行ってみたい」とハルビンに押し寄せる。
 
氷のモニュメントのうち代表的なのは、摩天楼のような氷雪世紀塔やハルビンらしくタマネギ屋根のロシア風宮殿、北京の天壇など。これらの建築素材となるのが、松花江で切り出される氷塊だ。松花江は例年11月下旬には氷結するので、12月に入るとすぐに1000人以上の労働者が氷塊の切り出しと運搬に従事する。地元紙によると、16万立方メートル分の氷を切り出すという。
 
1時間もあれば会場内は歩いて回れる。子供も楽しめる巨大な氷の滑り台や暖を取れるコーヒーショップ、食堂もある。凍てつく外気は零下30度に限りなく近くても、最初はこの感じなら案外大丈夫だと思った。出発前に買い込んだヒートテックの上下2枚重ねで身を包み、耳あて付き防寒帽をかぶり、ネックウォーマーで顔を覆っていたからだ。
 
だが、日暮れ後は何時間も外にいられるものではないことがだんだんわかってくる。身体の芯がこちこちに硬くこわばってくるような変化を感じてくるのだ。氷雪大世界では視覚的な絶景に魅了されるが、さらに面白いのは、非日常ともいうべき氷点下の低温環境に身を置くことで生じる身体的、心理的な異体験にあるのではないかと思えてくる。これは中国南方の人たちにも共通するだろう。
 
会場を出て市内に戻ると、まず駆け込んだのは火鍋屋である。寒さで縮こまった身と心を温めるにはこれしかない。香辛料の利いた東北風の羊鍋だ。ぐつぐつ煮えた鍋をつついていると、全身の毛穴から汗が吹き出してきた。それがうれしくてたまらない。

店を出ると、熱を取り戻した身体にわざと冷気を当てたくなった。頬がひりひりして気持ちいい。こんな感覚は日本では味わえない。濡れたハンカチを広げると、一瞬で煎餅のようにパリパリに固まったのもおかしかった(……風邪を引く前にホテルに戻ろう)。
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↑ハルビン氷雪大世界の入場券売り場は大混雑。2018年の入場券は330 元 
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↑会場のシンボルのひとつ、ハルビン氷雪世紀塔 
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↑世界遺産の北京の天壇は実物大の迫力 
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↑赤い光に包まれた氷の宮殿の回廊を歩く 
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↑会場をバックに若者たちが記念撮影に興じている 
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↑中国の冬の風物詩、サンザシ(山査子)の水飴も凍りついている 
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↑会場の外に放置された松花江の氷板 
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↑昔ながらの石炭式鍋で煮えたぎる火鍋が食欲を刺激する

寒中水泳とアイスキャンディ
氷の都のおもしろ風物詩


早朝、松花江を訪ねると、遊覧船が氷に閉じ込められていた。昨夏訪ねたときの水辺の光景は様変わりし、川面は厚い氷と雪で覆われ、冬の間だけの臨時アミューズメントパークになっていた。寒風が肌を刺す氷上で、ヨットのように風を切って走るウィンドサーフィンや浮き輪乗りなど、子供たちが大喜びで真冬のレジャーを楽しんでいた。
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↑重量級のおばさんも果敢に氷のプールに飛び込む

元気なのは子供だけではない。氷結した松花江の一角の氷を切り開け、プールにして泳いでいる一群の人たちがいた。その多くはハルビンのご隠居世代である。おかしなことに、老人たちの寒中水泳は有料(30元)の見世物になっている。趣向はこうだ。寒空の下、音楽とともに水着姿のおじさんおばさんが登場。おじさんたちはプロレスラーに扮して殴り合うという爆笑寸劇を始め、次々とプールに落ちていく。一方、おばさんたちはプールを一周しながらダンスを始め、ついには勢いよくプールに飛び込み始めるのだ。泳ぎを見せるのはなぜか女性ばかりなのだが、彼女らは見事25mほどのプールを泳ぎきるのだった。
 
氷の都ハルビンの冬の風物詩はほかにもある。氷雪大世界の会場で、フルーツ串(外気に触れるだけで凍ってしまう)や氷飴と化したサンザシ(山査子)の水飴を中国の若者たちが口にしていたのには驚いた。彼らは冬空の下でアイスキャンディを食べるのも好きなようだ。中央大街にあるクラシックホテル「モデルン」のアイスキャンディは地元で有名で、夏と同様行列ができている。食べ歩きをしている人が大勢いたが、見ているだけで身震いしてしまった。夏はビヤホールとしてにぎわう屋台も、客がいるからだろう、営業を続けていた。尋常ではない寒さにあえて極冷をぶつけるかに見えるこの現象についてハルビンの友人に聞くと「寒いところで冷たいものを食べるなんてめったにできない。中国の南方から来た人たちは寒さという未知の体験を味わいにハルビンに来ている」という。
 
ところで、氷雪祭が開かれるハルビンは、19世紀末にロシア人によって造られた都市だ。この百十数年で松花江沿いの小さな漁村は人口600万人もの大都会へと変貌した。
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↑中央大街の並木にイルミネーションが施され、輝くばかりの美しさ

実をいうと、この氷のイベントは20世紀前半から行われていたことが記録に残っている。当時ハルビンに住んでいたロシア人や日本人も多く、今日と同様、この時期氷の彫刻が街を彩っていたのだ。それをハルビン市が1985年に復活させたのだった。さらにいうと、冬の街頭に氷灯を飾る文化はこの地の先住民族だった満洲族(女真族)の伝統だった。起源は遼金時代にさかのぼるという。ずいぶん現代化してしまったかに見える氷雪祭だが、川の氷を切り出し、彫刻とする文化風習は古来この地で見られたものなのである。
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↑夏は川に浮かんでいた遊覧船が氷の上にちょこんと乗っている 
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↑車に引かれて松花江の氷上を走る浮き輪乗りが大人気 
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↑街角で売られる毛で包まれた防寒帽の最近のトレンドは角付きデザイン? 
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↑太陽島には雪彫刻芸術博覧会もあり、会場内には雪の彫刻が多数並ぶ 
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↑氷上をすいすい走る自転車は決して倒れない構造 
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↑ウィーンにあるヨハン・シュトラウスの像を模したと思われる氷の像 
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↑中央大街の脇道につくられた氷の滑り台
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↑どんなに寒くても屋台は営業しているのがすごい

by sanyo-kansatu | 2017-12-23 08:34 | 日本人が知らない21世紀の満洲
2017年 12月 11日

寅さんが結ぶ日中民間人の縁をあらためて実感しました

週末は朝から柴又帝釈天に行きました。

中国でいつもお世話になっているハルビンの黒龍江省新世紀国際旅行社の呼海友さんを案内することになったのです。

彼は毎年この時期、東京に1週間ほど出張に来て、旅行会社回りをしています。彼はいまとなっては数少ない日本からの黒龍江省や内モンゴル自治区を中心としたツアーの企画と受け入れをやっています。もっとも、いまでは日本を訪れる中国人の数のほうが圧倒的に多いため、訪日旅行の企画のためのテーマ探しがもうひとつの重要なミッションです。

呼さんはクラシック音楽とコーヒーが好きという物静かな人で、東京に来ると、個人的に名曲喫茶やCDショップなどに足を運ぶのを楽しみにしているそうです。ぼくも何度か彼を案内したことがありますが、渋谷の老舗名曲喫茶の『ライオン』が気に入ったそうで、今回もひとりで訪ねたと話していました。

中国のクラシック音楽ファンも気に入ってくれた名曲喫茶ライオン (2014年12月02日)
http://inbound.exblog.jp/23821487/

そんな彼がなぜいま『男はつらいよ』の舞台、柴又に行きたいと言い出したのか?

そう尋ねると、彼は「格安弾丸ツアーに飽きた中国の中高年をぜひ連れて来たい」と言います。彼は中国のネットで事前に柴又についていろいろ下調べしていて、実際に歩いてみたかったのでした。

朝9時に京成金町線の柴又駅の前で待ち合わせました。そこには有名な寅さんの像があるのですが、今年3月、その向かいにさくらさんの像ができました。寅さんの目線の先にさくらさんが立っていて、心配そうに兄の姿を見つめているというものです。なんとも泣かせる構図じゃないですか。こんな銅像、あまりお目にかかったことがありません。
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帝釈天の参道は、少し早めに来たせいか、人通りも少なく、まるで映画のセットのようでした。参道の店はたいてい10時が開店だそうです。呼さんは熱心に写真を撮っています。
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この老舗団子屋の『とらや』は、初期の作品で実際に撮影に使われたそうです。
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帝釈天の門が見えてきました。
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実は、ぼくは初めて柴又に来たのですが、想像していたよりこじんまりとした境内だと感じました。まだそれほど参拝客もおらず(写真は10時過ぎのもの)、とても静謐な雰囲気だったのですが、しばらくすると、突然境内に『男はつらいよ』のテーマソングが流されたのには、ちょっと興ざめというか、苦笑せざるを得ませんでした。
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境内には自動おみくじ機があり、200円を入れると、獅子舞が動き出し、おみくじを取り出してくれます。こういうの、絶対中国人は好きだと思います。
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今回初めて知ったのですが、帝釈天の裏には『邃渓園』と呼ばれる日本庭園があります。入場料400円で、長い床を歩いて庭を四方から眺められます。お茶を飲むスペースもあり、和めました。池には錦鯉がいました。
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この入場料で、帝釈堂の精巧な木彫りはギャラリーを観ることができます。お堂の裏手がガラスで囲われていて、そこに法華経の説話を描いた10枚の木彫りが施されています。中国には石彫りは多いですが、木彫りは珍しいそうです。
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これだけの散策で約1時間ほど。帝釈天から歩いて5分ほどの場所に寅さん記念館があります(入場料500円)。

寅さん記念館
http://www.katsushika-kanko.com/tora/

この記念館は渥美清が亡くなった1996年の翌年にできています。つまり、今年は開業20周年でした。

これはさくらさんの旦那の博さんが勤めるタコ社長の印刷所です。活版印刷機がどーんと置かれています。このように、記念館の中は映画の象徴的なシーンのセットが再現されています。
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これは寅さんの実家である「くるまや」のミニチュア模型。2階のたたみ間にごろんと寝ころがっている寅さんが見えます。
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参道の商店街の再現された町並みです。昭和30年代の設定だそうです。
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笑ったのが、寅さんの全財産を詰めたカバンの展示でした。荷物の中に高島暦がちらっと見えたので、呼さんが言いました。「中国でも高島暦を持っている人がいますよ。あれはよく当たるからと」。「へえ、そうなんだ」。
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そして、歴代マドンナと寅さんの出会いシーンの映像集も楽しいです。たまたま最後の48作目のボタンを押すと、後藤久美子との再会のシーンが出てくるのですが、彼女が「なんで寅さん、こんなところにいるの?」と聞くと、「なんでだろうなあ。俺にもわからないんだ」ととぼけて答えるところで、吹き出してしまいました。そう、彼はいつも自分がなぜそこにいるのかわからないような生き方をしている。まさに“ふーてんの寅”です。
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「中国の人は、寅さん映画のどんなところが面白いと思っているんですか?」。そう呼さんに聞いたところ、彼はこう答えました。

「寅さんがいつもあちこちに旅をし、自由に生きているところです」。

いまの40代以上の中国人にとって寅さんは善良で平和的な日本人のイメージを象徴しています。この映画が中国で観られるようになったのは1980年代以降ですが、それまで中国政府が熱心に自国民に対して叩き込んできた「日本といえば日本兵」という悪のイメージを払拭し、相対化するうえで、この映画が果たした役割は大きかったのです。

呼さんと柴又を訪ね、寅さんが結ぶ日中民間人の縁というものを、あらためて実感しました。

実をいえば、ぼくはこれまで『男はつらいよ』シリーズをちゃんと観たことはほとんどありませんでした。若い頃は特にそうですが、ベタな昭和コメディというイメージが強く、まともに観る気がしなかったからです。渥美清も自分の親よりひとまわり近く年上でしたし、およそ自分とは関係のない時代の話だと感じていたからです。

今回記念館に行って知ったのですが、このシリーズの第一作は昭和44年(1969年)。それから最後の作となった平成7年(1995年)まで48作品が上映されるのですが、当時はまだ昭和を懐かしむには早すぎたのでしょう。その後、2000年代に入って『ALWAYS 三丁目の夕日』をはじめとした昭和レトロブームが起こり、そこで多くの日本人が過去の時間にまどろむことに淫してしまった(とぼくは思います)ことで、日本社会は国際社会の変化に追いつけなくなってしまったわけですが、平成の世がまもなく終わろうとするいま、あらためて中国の中高年以降の人たちが好ましく受けとめてくれたこの物語の価値に、ぼくも気づかされたといえます。

記念館の裏は江戸川の堤防になっていて、天気のいい日は富士山が見えます。残念ながら、ぼくらが行ったときは、雲で富士山が隠れていたのですが、この情報を教えてくれたのは、記念館のボランティアのおじさんでした。「朝方はきれいに見えたんだけどね。お客さんが来たとき、その話をしたろ。だから、確認しに行ったら、見えなくなっていた。残念だったねえ」。
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このボランティアのおじさんはとても人懐っこくて、まるで寅さん映画に出てくる人物のようです。彼はぼくらが記念館に入館する前に富士山の話をしたものだから、展示を観ている間に、わざわざ確認に行ってくれていたのでした。

帰り際、帝釈天のわき道を歩いていると、偶然玉垣に倍賞千恵子さんの名前が彫られているのを見つけてびっくり。
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お昼は参道の老舗の「川千家」で蒲焼のランチ。行き帰りに乗るわずか2駅しかない京成金町線もいい味です。
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「中国にはこんな静かでのどかな下町はない」と呼さんは話しました。「帰国したら、柴又を訪ねるツアーを企画します。中国にはファンの人が多いから」。彼のように、自分の足で歩いてツアをー企画する中国の旅行関係者ほどありがたい存在はありません。「これからも何でも知りたいことは聞いてくださいね」。そう彼に話しました。

いま彼が考えているのは、10名くらいのお客さんを案内するツアーだそうです。実際、柴又には団体バスを停めるような場所はなく(実際には、さくらさんと博さんの披露宴の場所として有名な蒲焼屋『川甚』は日本のバスツアーを受け入れており、駐車スペースがありますが、あくまでも食事のお客さん専用です)、銀座や浅草のように大挙して訪れられては困ります。

記念館の人に聞くと、柴又を訪れる外国人は日本通の台湾人くらいだそうです。呼さんには、いい感じのお客さんを連れて来てほしいと思います。



by sanyo-kansatu | 2017-12-11 09:31 | “参与観察”日誌
2017年 11月 03日

103 長白山には快適な山岳リゾートホテルがある

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長白山には、2010年頃から国際的な山岳リゾートホテルがいくつもできている。西坡にあるホライズン・リゾート(長白山天域度假酒店)は、館内に温泉施設もあり、快適な滞在が楽しめる。しかも、長白山空港から車で5分、山門まで10分の好ロケーション。(撮影/2012年7月)

※長白山の麓には5つ星の外資系ホテルもいくつかできています。このホテルは中国資本ですが、客室はラグジュアリータイプで申し分ありません。

ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう(長白山編)
http://border-tourism.jp/changbaishan/
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by sanyo-kansatu | 2017-11-03 12:22 | ボーダーツーリズム(国境観光)
2017年 10月 31日

102 長白山北坡の天文峰展望台

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長白山登山のレジャー化は1990年代から始まったが、それが可能となったのは、北坡の天文峰展望台への自動車道路が整備されてから。展望台の下の駐車場に見えるランドクルーザーの台数やドライバーなどすべては吉林省の長白管理委員会が運営管理している。(撮影/2014年7月)

※日本の富士登山道のひとつ「富士スバルライン」が開通したのは1964年。五合目まで車で登れるようになったことが、富士登山客を急増させました。同じことが中国では1990年代に始まったのです。

ボーダーツーリズム(国境観光)を楽しもう(長白山編)
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by sanyo-kansatu | 2017-10-31 07:54 | ボーダーツーリズム(国境観光)
2017年 10月 30日

日本のシェアサイクルはツーリスト向けにサービスを特化したほうがいいのでは

今夏、中国のシェアサイクル大手のMobike(摩拝单车)やofoが日本に進出するニュースが流れ、話題になりました。

自転車シェア中国「モバイク」、日本で10カ所展開へ
23日から札幌でサービス (日本経済新聞2017/8/22)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22HZZ_S7A820C1EA2000/

ソフトバンクとの協業で日本進出するケースもあります。

ソフトバンクC&S、Ofoと共同でシェアバイク事業を開始――まずは東京・大阪で9月から
http://jp.techcrunch.com/2017/08/09/20170809ofo-softbank-japan-dock-less-bikesncidmobilenavtrend/

中国語で「共享单车」と呼ばれるシェアサイクルは、確かに中国の都市部を中心に驚くほどのスピードで普及しました。去年の秋ごろから一気にです。

今年3月に上海に行ったときも、街中でシェアサイクルが走っている光景を見て、かなり驚きました。
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南京でも同様の光景を見かけました。
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外国人も利用していました。思うに、この種のサービスは外国人やよその土地から来た人にとって重宝するもので、出張中のぼくも利用したいと思ったのですが、中国に銀行口座をつくり、WeChatPayのような決済アプリと紐づける必要があり、時間がないので断念しました。
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これらのシェアサイクルには、QRコードが付いていて、利用者はスマホでスキャンして鍵を開けます。
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興味深いのは、中国では都市の一般住民が利用していることです。地下鉄駅から職場までの「最後の1km」が合言葉で、そのようにちょい乗りされることが多いそうです。いちばん驚くのは「好きな場所で借りて、どこでも乗り捨てできる」ことです。
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その仕組みは、中国の人たちの意識を変えるとも言われています。なぜなら、すべての自転車の位置と利用者の情報を配車アプリ企業は握っている以上「盗んでも意味がない」ため「悪いことはできないから」です。

中国を席巻するハイテク「シェア自転車」~仕組みで意識を変える試み(NECwisdom2017年02月02日)
https://wisdom.nec.com/ja/business/2017020201/index.html
中国で「シェアエコノミー」が大爆発中のワケ
「シェア自転車」人気の背後には何があるのか(東洋経済オンライン2017年06月14日)
http://toyokeizai.net/articles/-/175441

ほかにも中国でシェアサイクルが普及した理由はいろいろありそうですが、個人の自転車を路上に置くと、鍵をかけても悲惨な状況になりがちで、だったらシェアサイクルのほうがいいや、となるのかもしれません。
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このサービスを支えるために、夜になると、大型トラックが自転車の再配置のために市内を走りまわっているようです。より利用の多い地区に、夜のうちに自転車を運び去ってしまうとは。ここまでやるというのはすごいと思いました。
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こうしたことから、世界に自らの先進性を誇りたい中国政府も、ちょうど3月上旬に開かれていた全人代で「共享单车」ビジネスの支持を表明していました。
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上海で見かけたシェアサイクルは以下の5社でした。大手はMobikeとofoです。日本に進出したMobikeは日本語サイトもあります。
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Mobike(摩拝单车) https://mobike.com/cn/
Mobike Japan https://mobike.com/jp/
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ofo http://www.ofo.com/
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享骑电单车 http://www.xqchuxing.com
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小鸣单车 https://www.mingbikes.com/
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永安行单车 https://www.youonbike.com/

それぞれ保証金(利用の登録時に最初に払うデポジット)や料金が違います。また自転車のデザイン性ではofoが人気だとか、料金の安さでは小鸣单车(0.1~0.5元/30分)とか、電動自転車の享骑电单车だとか、微妙に差別化しながら個性を競い合っています。

それにしても、このようなサービスでどうやって企業は利益を得ているのでしょう。中国の友人によると「最初に利用者からもらう保証金(99元~299元)の金利ビジネスですよ」とのこと。これほど安価なサービスを提供するビジネスが超スピードで拡大したのも、どれだけ利用者を集められるかに事業の成敗がかかっていたからでもあるのです。低金利の日本ではちょっと考えられません。

さらにいえば、いまの中国の経営者の考え方も反映されていて、新しい市場が生まれると、いち早く参入し、そこそこの市場シェアを獲得しておけば、どこかの時点で大企業に買収してもらえる。そうすれば、事業自体に利益が出ていなくても、売り抜けてひと財産築ける。大企業側も最初は資金力を活かして利益度外視で市場拡大にひた走る。そのうち大半の中小企業はふるい落とされ、結局は大手の寡占状態となる。利益を取るのはそれからでいい…。このようにビジネスシーンが展開していく例は、配車アプリでいま「滴滴」が一強になったことからもわかるでしょう。

もっとも、市場の拡大は街への自転車の氾濫を引き起こします。今年7月までに、すでに1600万台の自転車が街に投入されたというのですから。

中国のシェア自転車、急増で「悲惨な運命」(WSJ2017 年 4 月 4 日)
http://jp.wsj.com/articles/SB10352219306287233570804583063854080347428

中国はかつて「自転車大国」で、通りも広く、自転車専用道路もそこそこあるため、大きな問題にはなっていないといえるのかもしれませんが、このサービスを日本に導入するのはかなり難しいだろうと言わざるを得ません。

その点について、中国事情に詳しいルポライターの安田峰俊さんも指摘しています。

シェア自転車の"上陸"を阻む日本特有の壁
福岡で"モバイク"が始まらない理由(プレジデントオンライン2017.10.24)
http://president.jp/articles/-/23406

同じことは台湾にもいえるようで、シンガポールのシェアサイクル企業が進出したところ、迷惑駐輪が多発しているそうです。

台湾各地に進出の「oBike」、迷惑駐輪多発 台北市が法整備へ/台湾(フォーカス台湾2017/07/11)
http://japan.cna.com.tw/news/atra/201707110001.aspx

そもそも日本の一般の人たちにとってシェアサイクルはどれほどのニーズがあるのでしょうか。たいてい自分の自転車は持っていて、生活圏ならそれを利用するでしょうし、職場の近くでは…そりゃあったら便利とはいえるでしょうけれど、いつ乗ればいいのでしょう。先日、都心のオフィス街でサラリーマン風の男性がレンタルサイクルに乗って横断歩道を渡っている光景を見ましたが、ちらほら見かけるというのがせいぜいです。
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むしろ、このサービスはツーリスト向けではないかと思います。外国人もそうですが、日本人だって旅行先で自転車に乗って観光地をめぐれたら楽しいものです。中国と日本の社会の違いを考慮せず、そのまま同じサービスを導入しようとしても、うまくはいかないものです。それはお互い様です。

ですから、これは進出してきた中国企業に限らず、日本のすでに始まっているシェアサイクル事業に関しても、いち早くツーリスト向けのサービスに特化していくような発想の転換をすることが利用者の支持を広げることにつながるのではないかと思えてなりません。そのためには、多言語化うんぬんもそうですが、外国人にも日本人にも徹底してわかりやすいレンタルシステムを提供する必要があります。

その意味で、中国の仕組みは(モバイル決済の普及が前提となっていますが)非常にわかりやすく、優れているといえるでしょう。日本の現状のレンタサイクルはポート式とならざるを得ないため、自転車を返却しようとしたらポートが埋まっていてできなかったり、ポートに行っても自転車がすべて使われていたりで、GPS連動で1台単位で管理し、決済もスマホのみで完結する中国式には利便性ではとても及びません。

日本の場合、GPS連動やモバイル決済はすぐには無理でも、せめて全国ネットで地方の観光地を同じプラットフォームで管理でできれば、利便性も上がると思います。つまり、東京で登録すれば、地方都市でも使える。そうなれば、プロモーション費用の効率化やシステムの共有化につながり、シェアサイクルの促進に貢献するのではないでしょうか。

by sanyo-kansatu | 2017-10-30 10:35 | “参与観察”日誌