ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 01月 15日

境港の普通の楽しさをまだクルーズ客は知らない

これまで何回かに分けて鳥取県境港の話をしてきたわけですが、だいたい境港がどこにあるかと聞いて、正確に地図で示すことのできる日本人はたぶん5人に1人、いや10人に1人といったところではないでしょうか。

それでも、そこが『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるの生まれ故郷で、まち全体がいまや水木ワールドと化しているといえば、けっこう多くの人が「知ってる」と答えてくれることでしょう。

JR境港駅の東に延びる水木しげるロードがこのまちの散策のポイントです。水木しげる作品に登場する妖怪たちのブロンド像がこの通りに最初にできたのは1993年だそうですから、もう20年以上前のことです。
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※この地図、上が南です。

水木しげるロード
http://www.sakaiminato.net/site2/page/guide/point/miru/mizuki/mizuki/

約800mの通りには、水木ワールドを体現するキャラクター商品をこれでもかと並べる商店や飲食店が並んでいます。その徹底ぶりはここまでくるとすごいものだと思います。
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本町アーケード商店街の中に水木しげる記念館があります。
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水木しげる記念館
http://www.sakaiminato.net/mizuki/

ここに来るといつも思い出すのは、2011年11月、北京で開催された国際マンガサミットの会場に、鳥取県の平井伸治知事が来て、翌年鳥取で開催された「まんが王国とっとり」のPRイベントを見たときのことです。

「まんが王国とっとり」ブースと平井伸治知事(国際マンガサミット北京大会2011報告 その3)
http://inbound.exblog.jp/17567974/

鳥取県は、大御所の水木しげるを筆頭に、『名探偵コナン』の青山剛昌、もうひとりは渋いところで、ドラマ化された『孤独のグルメ』で知られる谷口ジローなど、多くの漫画家を輩出しています。

ぼくの北京の知り合いに、日本の妖怪アニメのファンで、大学の卒論をそのテーマで書いたという女性がいます。本当は彼女のようなコアなアニメ好きにこそ、境港には来てもらいたいものです。実際のクルーズ客には若い世代も多いのですが、必ずしもそのようなタイプの人たちではなさそうですし、仮にそういう人がいても、わずか数時間の上陸観光で水木ワールドを堪能するのは無理というものでしょう。

中国政府が知らないアニメ消費の実態 (国際マンガサミット北京大会2011報告 その6 )
http://inbound.exblog.jp/17612235/

境港には、もうひとつぜひ足を運んでもらいたい場所があります。それはDBSクルーズフェリーの出航する現在の国際旅客ターミナルの近くにある境港水産物直売センターです。
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境港にはもうひとつ同じような海鮮市場(境港さかなセンター)があるのですが、ここは新しい国際旅客ターミナルができる予定の竹内埠頭にあり、観光客向けの場所です。一方、境港水産物直売センターはカニを水揚げする港のそばにあり、地元の人たちでにぎわっています。
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大半のクルーズ客がバスに乗って上陸観光してしまうと、これら地元のスポットは通り過ぎてしまいます。実際、あれだけ多くの人たちを直売センターに送り込もうとすると、市場内は大混雑で大変なことになるでしょうから無理もないのですが、クルーズの上陸観光によって地元にお金を落とさせるというのは、意外に難しいものだというのは、おそらくどの寄港地でも共通の課題だと思われます。
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by sanyo-kansatu | 2016-01-15 13:24 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 12月 30日

タトゥーが入っていてもOKの日暮里「斉藤湯」でひと風呂浴びてみた

先日のとある午後、タトゥーが入っていても入浴OKで知られる斉藤湯でひと風呂浴びてきました。場所はJR日暮里駅から徒歩3分。住宅街のちょっとわかりにくい場所にあります。80年前の創業だそうですが、今年4月に改装したばかりのきれいな銭湯でした。
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斉藤湯
http://saito-yu.com

なぜこの銭湯がタトゥー客OKだと知ったかというと、以下のネット情報からです。

タトゥー入っててもOKな温泉・銭湯・プールまとめ【関東編】(Find Travel)
http://find-travel.jp/article/18883

訪日外国人の増加で全国の温浴施設やプール、海水浴場でタトゥーを入れた外国人観光客と管理者の間で入店・入場をめぐってトラブルが起きているようです。その問題に関する報道は以前、本ブログでも紹介しています。

入れ墨・タトゥーの外国人の入浴、やっぱり気になりますか?
http://inbound.exblog.jp/25180252/

そんな事情もあり、都内でタトゥーOKをうたう銭湯というのはどんなところなのか、気になっていたのです。

午後2時開店とほぼ同時にぼくは斉藤湯に入りました。すでに2、3人の利用客はいて、その後も続々入店してきます。この銭湯の売りは、高濃度人工炭酸泉と超微細粒気泡がシルクのように身を包む露天風呂です。ぼくはまず通常のお湯風呂に浸かって、常連の誰かにこの銭湯について尋ねることにしました。

しばらくすると、映画『テルマエ・ロマエ』の銭湯シーンで見かけたちょっとふやけたスルメのような(ごめんなさい!)おじいさんが隣に入ってきました。映画を思い出し、笑いをこらえつつ、聞いてみました。

―あのぉ、こちらの常連さんですか。
「そうだよ。でも、最近はたまにだけどね」
―この銭湯、外国人がよく来るんですか?
「そうなの? 俺は知らないね。家族連れはよく来るよ。いろんな風呂があるからね。ここは昔からある銭湯だから」。

あまりご存知ないようです。そこで、次にシルキー風呂に行ってみました。天井には屋根がありますが、露天気分を味わえます。ひとりの若い男性がいたので声をかけてみました。

―この銭湯、外国人が多いんですか?
「どうかなあ。ぼくは週末しか普段は来ないから」
―なんでもタトゥーを入れた外国人さんもこの銭湯は入浴OKだと聞いて、どんなところだろうと思ってきたんです。
「ああその話ね。ここ、改装する前からずっと入れ墨OKでしたよ」
―あっ、そうなんですか。

どうやら日暮里という土地柄で古くから銭湯を営んできたことから、外国人観光客うんぬんとは関係なく、その筋の人も含め、ずっとOKだったようです。実際、ここの客層は中高年のおじさんおばさんを中心に子供連れなど、昔ならではの光景です。たまにその筋の人が見えても、皆さん普通にお風呂に入っているのでしょう。

風呂上りに入浴客のおじさんたちにならってビールを注文し、オーナーの奥さんに話を聞いてみました。

―こちらは外国人のお客さんが多いんですか。
「まあそうね。けっこういらっしゃいますよ。夏休みなんか、家族連れで韓国や中国の人たちが来て、ここはどこなのかしらという感じになります。でも、普段はふつうの銭湯ですよ」
―インターネットでこちらは入れ墨やタトゥーのお客さんの入浴もOKと聞きました。
「ここは下町だから。昔からねえ、そうなんですよ」

奥さんは「中国の人」と言っていますが、たぶん台湾や香港の個人客なのでしょう。彼らが多く宿泊している上野のホテル街に近いことから、彼らも利用しやすいと考えられます。

オーナーの息子さんが英語で紹介する以下の動画をYOU TUBEで発信していることも影響があるに違いありません。

Visiting a japanese bath house
http://saito-yu.com/publicBath.html

いまや日本人のよく知らないラーメン屋がトリップアドバイザーなどで外国人に広まり、行列ができる時代です。この銭湯が外国人であふれるようになってしまうと、地元のお客さんは困ってしまいますが(たぶん、そんなことにまではならないでしょう)、タトゥーうんぬんの問題も、土地柄しだいでクリアできる面もあるのだと思いました。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-30 16:50 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 12月 15日

入れ墨・タトゥーの外国人の入浴、やっぱり気になりますか?

最近、訪日外国客の受け入れをめぐる報道が増えてきたと感じます。昨年くらいまで日本のメディアが好んで扱うのは「外国人の消費による経済効果」の話ばかりだったことを思えば、いいことだと思います。それだけ一般の日本人も訪日外国客と日常的に接触する場面が増えており、ただ経済効果の話として説明するだけではすまない社会の変化が生まれているからでしょう(実際、一部の小売店を除けば、経済効果なんてぴんとこない話ですから)。

今日の朝日新聞の朝刊で報じられたのが、「入れ墨・タトゥーの外国人の入浴」をめぐる話題です。以下、転載します。

入れ墨お断り、見直す動き 外国人増え「隠せばOK」も(朝日新聞2015年12月14日)
http://www.asahi.com/articles/ASHD346LTHD3UTIL014.html

入れ墨・タトゥーの方の利用はお断りします――。公衆浴場や旅館で、こうした表示を見直す動きが出ている。風習やおしゃれで彫る外国人や若者が増えているからだ。観光庁も海外の風習を周知する考えだ。

「タトゥーのある方の利用を試験中」。さいたま市の温浴施設「おふろcafe utatane」は入り口に貼り紙を出した。フロントで200円のシール(約13×18センチ)を買い、入れ墨に貼って隠せば入浴できるようにし、8月から月10人前後の利用がある。

広報担当の野村謙次さんは「日本人と外国人観光客が半々。2020年の東京五輪を前に、若者のファッションや外国人の文化としてのタトゥーを受け入れる必要がある」と話す。

高級旅館を運営する星野リゾートも10月、一部の温泉旅館で同様の試みを始めた。「タトゥーに抵抗感があるお客様に安心してもらう狙い。半年間試行して続けるか決める」という。

対応に悩む施設もある。河口湖温泉(山梨県)の観光案内には年9万人近くの外国人が訪れるが、ホテルや旅館は入れ墨禁止。「何でだめなの」との問答も時にある。河口湖温泉旅館協同組合の功刀(くぬぎ)忠臣事務局長は「タトゥーを認めなければ時代に追いつかないが、クレームもある。行政がルールを示して欲しい」。

一方、北海道恵庭市の温泉施設は、あごに入れ墨をしたニュージーランドの先住民族の女性の入浴を一昨年断り、「時代遅れ」と抗議を受けたが、今も同じ対応だ。「国際化も大切だが常連客を犠牲にできない」と話す。

入れ墨はいつから嫌われるようになったのか。

関東弁護士会連合会が昨年出した冊子によると、入れ墨は江戸時代まで黙認されたが、明治時代に禁止された。軽犯罪法の前身の「警察犯処罰令」に規定され、1948年の同令廃止まで規制された。

一般社団法人・日本温泉協会によると、公衆浴場法に入れ墨に関する規定はないが、禁止する施設は「衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない」の条文を踏まえている。

約500万円かけて全身に蛇などの図柄を彫った元暴力団員の40代男性は「入れ墨の男がいれば周りは怖いと思う。時間帯によってはOKにするといったやり方もあるんじゃないか」。

東京を観光していたポーランド人のクジェストフ・ベプフアさん(34)も両腕や背中にタトゥーがびっしり。来日後、温泉の入れ墨禁止を聞いてがっかりした。「日本の文化を尊重しルールは守る。でも、タトゥーは子どもの誕生記念や親への思いをこめたものでもある」と訴えた。

3度目の来日というイタリア人古物商エミリアーノ・ロレンツィさん(38)も左腕の手首近くまでタトゥーがある。「最初は温泉に入れず戸惑ったが、今は入れ墨と日本のマフィアの関係が深いことも理解している」。松山市の道後温泉に行く前にネットで入浴できる施設を調べるという。(岩崎生之助、後藤遼太)

日本政府観光局によると、昨年の訪日外国人は10年前の約2倍の1341万人。観光庁の1~3月の外国人への調査で「最も期待していたこと」は日本食、ショッピングに次いで温泉入浴が3位だった。

観光庁は6月、温泉や旅館など3768施設にアンケートし、581施設が回答。入れ墨がある人に対し、325施設(56%)は入浴を断り、178施設(31%)は受け入れていた。シールで隠すなど条件付き許可は75施設(13%)だった。

断る経緯について59%が「風紀・衛生面で自主的に」、13%は「業界・地元事業者で申し合わせた」と答えた。入れ墨をした人の入浴でトラブルがあったと回答したのは19%だった。

田村明比古長官は「観光立国を目指す中、一律お断りがいいのか。それぞれの事情に配慮があってもいい」と述べた。同庁は今後、業界団体と連携し、タトゥーはファッションや宗教的慣習の一つと周知する方針だ。(中田絢子)

〈著書「いれずみの文化誌」がある皮膚科医の小野友道さんの話〉 反社会的とみなされてきた入れ墨と、ファッションや文化としてのタトゥーが混在し、線引きが難しい。シールのように大きさで区別するのは一つの手だ。東京五輪を控えて外国人が増える中、温かい目で見る必要がある。「入浴お断り」ではなく「お断りすることもあります」と表現を変えるだけで印象が違う。

〈暴力団に詳しいフリージャーナリストの鈴木智彦氏の話〉 暴力団員のうち入れ墨持ちは7割くらいの印象。近年は減少傾向だ。現役でも入れ墨が無ければ公衆浴場に入れるし、逆に暴力団から足を洗っても入れ墨持ちだと入れないなど、一律入浴禁止のルールは現実的でない面もある。入れ墨を背にした暴力団員が威嚇していた過去は覚えておくべきだが、彼らにいつまで我慢させるのだろうか。

ちょっとLGBT(性的少数者)をめぐる議論と似ているようにも感じるこの話題を朝日新聞が取り上げたのは、記事中にもありますが、観光庁が今年10月に公表した以下の宿泊施設に対する調査結果を受けてのものだと思われます。

入れ墨客の入浴、56%が拒否=外国人増で宿泊施設調査-観光庁(時事通信2015/10/21)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201510/2015102100737&g=eco

観光庁は21日、温泉や大浴場への入れ墨(タトゥー)客の入浴を認めるかについて、全国の宿泊施設を対象としたアンケート調査の結果を公表した。外国人観光客が入浴を断られるケースがあるためで、56%の施設が拒否していることが分かった。一方で、31%が許可、13%が入れ墨をシールで隠すなどの条件付きで認めていた。

近年はファッション感覚で入れ墨をする外国人が増えているほか、民族の慣習で入れる場合もあるという。観光客の入浴を一律に断ることについては議論があり、実態を調べていた。

アンケートはホテルや旅館など3768施設を対象に実施し、回答率は15.4%だった。入れ墨客の入浴に関するトラブルは19%の施設で発生。また、一般客から入れ墨に関する苦情を受けたことがある施設は47%だった。同庁は実態をより詳しく把握し、今後の対応を検討する。

「入れ墨・タトゥーの外国人の入浴」をめぐる議論は、実はずいぶん前から国内の宿泊&温浴施設関係者らの間で起きていました。

今年5月、外国客に人気の新宿区役所前カプセルホテルの小川周二経営企画室室長に話をうかがったときも、当然のようにこの話題が出てきました。小川室長はこの件について、以下のようにお答えになっていました。

「タトゥーの方はチェックイン時にお断りしています。これを外国の方に説明するのが難しいですね。刺青のもつ社会的な意味が日本と外国では違うからです。外国の方にとってはおしゃれとしてタトゥーをしてらっしゃるのでしょうが、日本のお客さまにはアレルギーのようなものもあり、これは日本政府観光局でも、どう外国客に説明していくべきか検討していると聞きます」

※いまどきの都心のカプセルホテルがどんなことになっているかについては、以下をご参照ください。

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24526002/
カプセルホテルのどこが外国客に人気なのだろうか?
http://inbound.exblog.jp/24532753/
時代はサラリーマンからツーリストへ(新宿区役所前カプセルホテルの顧客が変わった理由)
http://inbound.exblog.jp/24532781/

同じ問題は、ホステル系の宿泊施設だけではなく、高級温泉旅館でも起きていたことを知ったのは、最近トマムリゾートを買収した中国の投資会社トップが失踪したことで話題となった星野リゾートの以下の取り組みでした。

温泉旅館ブランド「界」では タトゥーカバーシールの試験運用を開始いたします(星野リゾート ニュースリリース2015年4月15日)
http://www.hoshinoresort.com/information/release/2015/04/9362.html

2015年10月1日より、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」の全施設で、タトゥーカバーシールを試験的に使用することにいたしました。

日本では社会通念として、タトゥーのある方が大浴場を利用することを制限しているケースが多いのが現状です。しかし、国内外の若い世代では、ファッションとしての小さなタトゥーが容認されてきており、温泉旅館の大浴場をご利用になったお客様から、タトゥーのある方と一緒に入浴することへのご不満をいただくこともあります。

このような状況から、一つの試みとして8cm✕10cmのシール1枚でタトゥーをカバー出来る場合に限り、入浴を可能とすることを10月より行い、今後の方針を考えていく契機にいたします。タトゥーカバーシールは、ご希望の方に無料で配布いたします。

海外顧客の増加に伴い、ニュージーランドのマオリの方々のような事例にあるように、民族文化としてタトゥーのある方が温泉入浴を希望されるケースが増えてきております。今回の試みが契機となり、このような方々にも日本の温泉文化を楽しんでいただける、新しいルールの模索に発展して行くことを願っております。


この取り組みについては、朝日新聞もすでに報道していました。

小さなタトゥー、隠せば入浴OK 星野リゾートの旅館(朝日新聞2015年4月16日)
http://www.asahi.com/articles/ASH4H51JPH4HULFA01K.html

小さな入れ墨(タトゥー)ならシールで隠せばお風呂に入れます――。高級旅館チェーンの星野リゾートは15日、自社で運営している13の温泉旅館で、小さな入れ墨がある人の大浴場への入浴を試験的に認めると発表した。

静岡県の熱海などにある高級温泉旅館「界」で、10月から6カ月間試行する。旅館が用意する白色の8センチ×10センチのシールで隠れる大きさなら入浴を認める。

「暴力団関係者のシンボルで、ほかの客に恐怖心を与える」などとして、日本では多くの宿泊施設や公衆浴場で入れ墨がある人の入浴を禁止している。ただ、若者の間でタトゥーがファッションとして広がり、民族や文化的な理由で入れている外国人も多い。星野佳路(よしはる)代表は「旅館や観光庁、温泉ファンも含め、ルールのあり方を考える契機にしたい」と話す。(土居新平)

さらには、産経新聞も埼玉県の温浴施設でのタトゥーシール導入の取り組みをすでに報じていました。

タトゥー隠せば入浴OK さいたまの浴場、11月まで試験運用 海外客増、認識も進む(産経新聞2015.9.15)
http://www.sankei.com/region/news/150915/rgn1509150025-n1.html

入浴施設の大半が「タトゥー(入れ墨)お断り」を掲げる中、さいたま市北区の温浴施設「おふろcafe utatane」で、小さなタトゥーならシールを貼って隠すことで入浴を受け入れる取り組みが始まっている。8月1日から1カ月間の試験的な運用だったが、「新しい層の来客があり、既存利用者の方からの批判的な意見もない」として11月末まで期間を延長した。県は「全国的にも珍しい取り組み」として注目している。

同店を運営する温泉道場(ときがわ町玉川)は、「おふろから文化を発信する」をモットーに県内3カ所で温浴施設を運営。中でも約2年前にオープンした同店は、宿泊施設を備えて駅に近いため、若者や外国人の利用が多いという。

シール導入の背景には、若い世代に小さなタトゥーがファッションとして認識されつつあることや、文化としてタトゥーを施す外国人旅行客の増加がある。大手宿泊事業会社「星野リゾート」が10月からの導入を決めたことも後押しし、「今まで店を利用したことのない人にも楽しんでもらおう」とスタートした。

シールは縦12・8センチ、横18・2センチのB6サイズで、申し出を受けるか、スタッフがタトゥーを見つけた際に声をかけ、1枚200円で販売。1枚以内で隠しきることが条件で、数カ所にタトゥーがあってもシールを切り分けて隠せれば問題ない。利用者には男女それぞれのスタッフが脱衣所まで同行し、シールからタトゥーがはみ出していないかをチェック。隠しきれない場合は入浴を断っている。

1カ月間で利用者は20人ほどだったが、「20年ぶりに大衆浴場に入れてうれしい」など好意的な意見が多かったほか、「術後の傷を隠せてありがたい」と想定外の利用者もいたという。

店を利用した同市の女性(41)は「タトゥーが見えないなら入っていても気にならない。外国人が利用できるのはいいかも」と理解を示した。一方、母親(68)は「やっぱりタトゥーには怖い印象がある。これも時代の流れなのかな」と話していた。

県生活衛生課などによると、県内の銭湯や公衆浴場は26年度で666カ所(暫定値)。多くの施設でタトゥーがある人の入浴を禁止しているが、県の条例や公衆浴場法では規制する法令はなく、あくまで浴場運営業者の判断という。

温泉施設は減少傾向にあるが、「これまでの利用者も納得できて、新たなニーズを取り入れようという工夫は応援したい」と同課。同店は「取り組みの過程でタトゥーに対するイメージや感覚が変わってくる可能性もある。試験の結果次第では本格的な導入も検討したい」と話している。(川峯千尋)

外国人に入浴してもらうために、タトゥーをシールで隠しちゃおうというこのアイデア。このシールをめぐっては、「縦12・8センチ、横18・2センチでは小さすぎる(からすべてを隠せない)」とかいろいろ議論があるそうです。関係者らが大真面目に考えたことだと思うので、笑っちゃいけないのかもしれないけれど、外国人がシールを貼ってお風呂に入っている様子を想像すると……。

だいたい彼らも、日本人客の気持ちを理解して、こころよくシール貼ってくれるものなのでしょうか。自分が貼る側だとしたら、面倒くさい気がします。それ以上に、なぜ日本人がタトゥーを好まないかについて個別の外国人一人ひとりに理解させることはそんなに簡単なことではないのでは。この問題は日本人の感情だけでなく、外国人の気持ちも考えたうえでの相互理解が必要なように思えます。つまり、どう周知させるかについても双方に対して丁寧に行う必要がありそうです。

ところが、ネットでこの種の議論の意識調査をすると、このとおり。ネットの特性がもろに出てしまいますね。「ここは日本なんだから、郷に入れば郷に従え」。そう言いたくなる人の気持ちもわからないではありませんが…。

Yahoo!意識調査
「タトゥー・入れ墨のある外国人を入浴拒否」どう思う?

現在の総投票数252,462,630票(2015年12月15日現在)
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/domestic/17462/result

日本人も外国人も入浴拒否にすべき 59.9% 232,099票
日本人も外国人も入浴拒否にすべきではない 18.6% 72,221票
外国人については許可すべき 17.0% 65,981票
どちらでもない/わからない 4.5% 16,975票

それでも、世の中にはいろんな情報が発信されているようです。

タトゥー入っててもOKな温泉・銭湯・プールまとめ【関東編】(Find Travel)
http://find-travel.jp/article/18883

このサイトの記事では、関東のタトゥーOKな温泉・銭湯・プールのうち以下の8軒を紹介しています。

日暮里 斉藤湯
成田の命泉 大和の湯
伊香保石段の湯
ふくの湯
元町公園プール
千歳温水プール
本牧市民プール
目黒区民センタープール

実際、どんな感じなのか見てみたいものですね。

こんなサイトもありました。

Tatto Spot
http://tattoo-spot.jp/

「タトゥースポットは、近年厳しくなってきている"刺青お断り"ではないお店を掲載しているサイトです。タトゥーや刺青が入っていてもお店に入ることができ、各種施設を使うことができる店舗のみが全国のタトゥーユーザー達から投稿されるサイトです。

タトゥースポットでは、全国のタトゥーユーザーや、海外からの旅行者の方などが各店舗様のルールにのっとってご利用できるよう常に情報提供をお待ちしております」。

訪日外国客の増加は、我々の社会に、たとえば共同風呂に入るというような、きわめて個人的な生活の一場面の中で、外国人との相互理解をはかる必要を迫られることも意味しています。あんまり優等生的な発言はしたくないのですが(誰だって目の前に大きなタトゥーが現れたらびっくりしますから!)、なるべくこのような場面に出くわしても、穏健に対処する心構えというか、心の弾力性を身につけておきたいものだと思います。

もしそういう場面に出くわしたときは、映画『テルマエ・ロマエ』で阿部寛が扮するルシウス・モデストゥスが見せた爆笑お風呂シーンを思い起こして、気を紛らせてみたりすることは有効ではないでしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-15 07:53 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2015年 10月 23日

ムスリム・ジャンピング・ガール目撃!? ようこそ、21世紀の新宿御苑へ

仕事がうまくはかどらず、無気力症候群に陥ってしまうことってありませんか? ぼくはよくそうなります。そんなとき、新宿御苑の芝生の上にごろりとしに行きます。仕事場から近いせいで、逃避グセがついてしまいました。困ったものです。でも、きっとぼくみたいな人も多いんじゃないかな、などと心の中で言い訳しながら、新宿門をくぐると、今日もたくさんの人たちが芝生に寝そべっていました。
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ふと見ると、西洋人のカップルがいます。新宿御苑では見慣れた光景です。その向こうには、子連れのママさんグループがいて、ハロウィンに近いせいか、オレンジのかぼちゃの衣装を着せられた赤ちゃんもいます。意外にひとりでやって来ている若い女性も多いです。

しばらくすると、頭にスカーフを巻いたマレー系と思われるカップルも来ました。お約束の自撮り棒を手にしています。新宿門の入口あたりでは、広東語も聞かれました。やはり、パッと見でわかるのは、西洋人とムスリムの人たちで、中国や韓国などの東アジアの人たちは話し声を直接聞かない限り、もう日本人の中に溶け込んでいます。ここは団体客が来るようなスポットではないので、香港やシンガポールなどの中華系の人たちものんびり過ごしているようです。

新宿御苑は外国人ツーリストが多いことで有名です。なにしろトリップアドバイザーによる新宿区の観光部門でトップにランキングされているくらいですから。
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新宿御苑 トリップアドバイザーによる「新宿区の観光」で 114 軒中 1 位
http://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g1066457-d479258-Reviews-Shinjuku_Gyoen_National_Garden-Shinjuku_Tokyo_Tokyo_Prefecture_Kanto.html

それにしても、若いマレー系のカップルを見ていると、時代は変わったなあとあらためて思います。彼らはノービザで日本に来ているのです。

これは20世紀の東京には見られなかった光景といえるでしょう。なぜなら、当時アジアから来日する人たちの多くは、留学生(厳密にいうと外交官やビジネスマンも)を除くとほぼ出稼ぎ目的だったからです。

都内の公園でくつろぐ外国人の光景について、いまでも思い出すのが、1980年代後半のある時期、毎週日曜になると、代々木公園にイランやパキスタン、バングラディシュなどのイスラム圏の人々が集まり、エスニック料理を出す露店が出てにぎわっていたことです。当時は、かの国々と日本の間で相互ビザ免除協定が残っていた関係で、多くのイスラム圏の若者が日本に出稼ぎに来ていたのです。彼らの多くは不法就労だったため、数年後、ビザ免除協定を日本政府が打ち切ると、帰国していきました。

しかし、いま我々が見ているのは、アジアの人たちが日本に遊びに来ている光景です。すでに海外旅行に出かけられる所得を有するミドルクラスがアジアには大勢生まれていて、気軽に日本旅行を楽しめるようになったのですね。

ようこそ、21世紀の新宿御苑へ。思わず、そんな言葉が口をついて出てきてしまいました。せっかく来たんだから、楽しんで帰ってくださいな。ぼくは彼らの姿を見ていると癒されるところがあります。
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ちなみに、この写真は今年の春、新宿御苑に来ていた若いマレー系のグループが記念撮影に興じていたワンシーンです。なぜだか彼女らはピョンと飛び上がって宙に浮いた瞬間をカメラに収めてもらいたいようで、何度もジャンプを繰り返していました。

ぼくは彼女のことを「ムスリム・ジャンピング・ガール」と命名しました。

一般にアジアの人たちは、カメラの前で過剰なポーズを取りたがるようですが、これは新しいバージョンなのかもしれません。それぞれの国で流行のポーズがあるのでしょう。
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by sanyo-kansatu | 2015-10-23 15:09 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)
2015年 10月 01日

北朝鮮マニアの熱いリクエスト「こんな観光してみたい」、その実現可能性は?

9月上旬、「北朝鮮観光ファンミーティング」(仮称)なるイベントが都内某所で開催されました。主催しているのは、2003年以降、訪朝8回を重ねるというT氏です。

実は、ぼくも9月中旬に訪朝を計画していたものですから、最新の話が聞けるものと思って参加することにしました。

会場には、約20名のいわゆる北朝鮮マニアの皆さんが集結していました。ミーティングの内容は、今年4月に訪朝したT氏の旅報告を中心に、現在北朝鮮ツアーを催行している国内外の旅行会社の紹介や、平壌便のフライトスケジュール情報(現在、北京、上海、瀋陽、延吉、ウラジオストクから運航)、参加者による「こんな朝鮮観光してみたい!」という意見交換会がありました。

この種のイベントに参加するのは初めてだったので、マニアの皆さんの話を聞くのは面白かったです。いまや年間100余名にまで落ち込んだ日本人訪朝観光客の実情を思うとき、こうした皆さんの存在は貴重です。

以下、会場から拾ったリクエストをいくつか書き出してみます。一見他愛なく思えるものからかなり専門的な内容までいろいろあります。マニアの皆さんは、純な方たちが多いとお見受けしました。

a 「市民が普段利用している市場で買い物してみたい」
b 「平壌のプールで市民と一緒に泳いでみたい」
c 「市民と一緒に公園や海でバーベキューしたい」
d 「路面電車に乗ってみたい」
e 「モランボン楽団の演奏を聴いてみたい」
f 「平壌で朝鮮語の短期語学研修を受けたい」
g 「市民の家にホームステイしてみたい」
h 「新義州にあるという日本統治時代の建築、史跡を見たい」
i 「鉄道を使ったローカル旅行をしてみたい」
j 「旧型ソ連機に乗りたい」

さて、このうちどれだけ実現可能なのでしょうか。会場には、今年開業したり、旅行事業を再開した北朝鮮専門旅行社2社の社長がいて、一部回答してくれました。また一部はぼく自身がこれまで調べた結果を報告します。実現可能は「◎」、一応可能だが、事前に相談が必要なのは「○」、基本的に難しいが、特例的に可能性がある場合は「△」、不可能は「×」で表示しますね。

KJナビツアー(旧モランボンツーリスト)
http://www.mrt.co.jp/
JS TOURS
http://js-tours.jp/

a 「市民が普段利用している市場で買い物してみたい」 △

平壌ではまだ難しそうです。外国人向けのレストラン兼お土産店には案内されますが、一般市民の世界を覗くのはハードルが高いようです。

個人的には、昨年羅先の市場に案内されたことがあります。そこには大量の中国商品があふれていましたが、市民の買い物客の姿は少ないようでした。撮影はNGでした。市場を日本人に見せてもいいという判断は、羅先が海外からの投資を求めている貿易特区だからではないかと思います。ガイドは「羅津市場の参観は、日本人だけに特別に許可された」などと、ずいぶんもったいぶった言い方をしていましたから。

b 「平壌のプールで市民と一緒に泳いでみたい」 ○

これは可能だそうです。ただし、事前予約が必要でしょう。

c 「市民と一緒に公園や海でバーベキューしたい」 ○

これも可能。平壌の市民は休日になると、公園でバーベキューをよくするそうです。

個人的には、2年前の夏、元山の海水浴場でバーベキューに興じる市民の姿を見たことがあります。すごく楽しそうでした。もちろん、食材の調達などもあるので、事前に旅行会社への相談が必要でしょう。

元山松涛園海水浴場とビーチパラソル、踊る朝鮮娘たち
http://inbound.exblog.jp/22565164/

d 「路面電車に乗ってみたい」 ○

これも可能。ただし、市民と一緒に乗るのはNGで、路面電車をチャーターすることになるそうです。事前に予約が必要ですが、1台チャーターするとコストがかかるので、なるべく人数を集めたほうがいいでしょう。
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e 「モランボン楽団の演奏を聴いてみたい」 △

2012年7月、衝撃的な(!?)なデビューを果たした北朝鮮の「ガールズグループ」こと、モランボン楽団の演奏を外国客が聴くことはできるのか。聨合ニュースによると、以下のような公演内容だったようです。

北朝鮮の「ガールズグループ」異色公演1回きり (聨合ニュース2012/12/30)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2012/12/30/0300000000AJP20121230000200882.HTML

会場では、旅行会社2社の関係者からは特に実現可能かどうかについての発言はありませんでした。簡単ではなさそうです。

f 「平壌で朝鮮語の短期語学研修を受けたい」 ○

これは希望者があれば可能性はあるそうです。

g 「市民の家にホームステイしてみたい」 △

朝鮮国内で外国人がホームステイできるのは、現在のところ、わずか一箇所のようです。それは昨年ぼくが訪ねた七宝山の海岸線にある海七宝民泊宿所です。昨年の段階では日本人とアメリカ人はNGでしたが、今年はどうか。確認が必要です。

朝鮮でホームステイ その奇妙な世界
http://inbound.exblog.jp/24779269/

KJナビツアーの権社長によると、以前同社で平壌市内の一般家庭に約30名の日本人がホームステイするツアーを企画催行したことがあるそうです。とても面白い試みで、参加者からは好評だったそうですが、その後国からの指導でNGになったそうです。

h 「新義州にあるという日本統治時代の建築、史跡を見たい」 △

今年に入って、中国遼寧省丹東市から新義州の日帰り観光が日本人にも解禁されたそうです。

大連金橋国際旅行社では、以下のツアーを今年9月から催行しています。同社には宮崎さんという日本人社員が在籍していて、彼が日本マーケットを担当しているので、やりとりも安心です。以下、同社のサイトより抜粋。

※2015年9月から丹東発着の新義州日帰り観光手配を始めました。(朝鮮観光はGB-TRAVELが改革を起こす!史上初の日本人対象のツアーです!)

ZXXW8 丹東発着新義州1日観光
最小催行人員6名
実施可能日=火水木金(丹東前泊必要)、「土日月及び中国の祝日」は実施できません。
旅行代金お一人様=45000円(丹東前泊、ビザ、添乗員付)一人部屋追加代3000円加算
訪問予定地=青年広場、革命事跡館、歴史博物館、教育機関、昼食

大連金橋国際旅行社
http://www.gbt-dlcjp.com
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このツアーの詳細について同社の宮崎さんに聞いたところ、以下の回答が届きました。「鉄道以外で鴨緑江大橋を渡り、新義州に入国した日本人は現時点ではまだいないため、中国出国時にトラブルの可能性がありますので、当分は宮崎が添乗として丹東前泊から同行します。国境都市の性質上、訪問先のリクエストはできません。また鴨緑江大橋口岸は、土日祝はCIQがストップし、橋を渡ることができないので、日程に制限があることをご了承ください」。

どうやら「日本統治時代の建築、史跡を見たい」というリクエストには対応してもらえそうもありませんね。たまたまバスでそばを通り過ぎることはあるかもしれませんが、事前に位置を確認しておく必要があり、かなり難度の高い話となりそうです。残念です。 

さて、ここまではわりと簡単に答えることができたのですが、残りのふたつは、ちょっと長めの説明が必要です。しかし、実現は可能で、すでに英国系の旅行会社2社で企画催行されています。

i 「鉄道を使ったローカル旅行をしてみたい」 ◎
j 「旧型ソ連機に乗りたい」 ◎

このふたつのツアーについては、後日紹介しましょう。

明日(10月2日)、北朝鮮のローカル鉄道ツアーが出発します
http://inbound.exblog.jp/24951297/

北朝鮮の航空マニア向け旧型ソ連機搭乗ツアーの中身
http://inbound.exblog.jp/24952047/

ちなみに、これまで紹介した以外の朝鮮ツアーを扱う国内の旅行会社は以下のとおりです。

中外旅行社
http://www.chugai-trv.co.jp/
スリーオーセブンインターナショナル
http://www.307.co.jp
シルクロードトラベル
http://www.silkroad-travel.com/
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by sanyo-kansatu | 2015-10-01 11:37 | 朝鮮観光のしおり | Comments(2)
2015年 08月 12日

羅先の観光アトラクションといえば工場見学です

経済貿易特区である羅先特別市は、海外から投資が呼び込みたいのですが、思うように進まないのが現状のようです。

そのため、観光で訪れる日本人に対しても、ガイドらは投資の話ばかりします。投資を呼び込みたいなら、どれだけ市場の将来性があるのか、投資者にどんなメリットがあるのか、本来そういう話をしなければならないはずなのに、彼らはただただ「投資をするなら、自分に連絡してほしい」と言うだけです。

そんなことでは話にならないと素人でも思うのですが、Googleで「羅先」を検索すると、なんだか景気がよさそうなネタが拾えます。たとえば、以下のようなものです。

北朝鮮の対外窓口、羅先市に集まる海外企業(東洋経済オンライン2014年9月13日)
http://toyokeizai.net/articles/-/47785

中国マネーで活気づく街 北朝鮮の経済特区、羅先(共同通信ニュース2014/05/12)
https://www.youtube.com/watch?v=1JmESl2zIrQ

北朝鮮側の意向を代弁するとこうなるのでしょうね。

こうしたことから、とりたてて観光スポットのない羅先では、ほとんど唯一の観光アトラクションといえば工場見学なんです。今回ぼくは4つの工場を案内されました。連れていかれるままに訪ねた4ヵ所を紹介してしまいましょう。

最初に訪ねたのが、スチェンボン水産加工工場でした。ここでは年間8000トンのイカや貝類の冷凍加工品を生産し、中国の琿春に送るそうです。1985年創業。15年前にはMさんという日本人がウニの加工を指導するために長く滞在していたこともあるそうです。
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COSCO大连中远国际货运有限公司の冷凍トラックに多くの地元労働者たちが冷凍加工品を運びこんでいました。
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COSCO大连中远国际货运有限公司
http://www.cosfredl.com/

その光景が目に入ったとたん、ここでの視察はNGとなってしまいました。確かに、見ると、労働者たちは素手で冷凍イカの固まりを運びこんでいました。こういう光景は外国人には見せたくないのでしょう。

次に訪れたのが、ヘソン貿易会社という縫製工場でした。
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工場内に入ると、若い女性労働者がミシンの前に座り、真剣に仕事に打ち込んでいます。まるで2000年代前半の広東省の裁縫工場のような世界でした。かの地ではこの種の労働は東南アジアに奪われ、多くの若い労働者が解雇されていることでしょうが、朝鮮では今や時代の最先端。真剣なまなざしの若い女性たちが仕事に向かっています。
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ワイシャツやズボン、厚手のジャケットなど、発注に応じて対応するそうです。輸出先の1位は韓国で、2位はアメリカ、3位は日本といいます。日本という場合、日本アパレルメーカーが直接発注しているわけではなく、仲介業者として中国企業が入っているものと思われますが、彼らにすれば、自分たちのつくった製品の最終消費地がどこかという話をしているわけです。
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約300人の女性労働者がいて、平均月収は800元といいますから、羅先では高給取りといえます(羅先では公務員でも月給は300元と言っていましたから)。この縫製工場自体は1956年からあるそうですが、現在のように海外からの発注で仕事を請けるようになったのは、2000年代に入ってからだそうです。
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工場長の洪世峯氏によると、最近日本からの発注が増えているそうです。
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3つ目が羅先製靴工場でした。
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ここでも女性労働者たちの真剣な仕事ぶりが見られました。男性もいましたが、少数派です。
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工場長によると、革靴やスポーツシューズなど、年間5万~10万足を製造しているそうです。70%は国内向け、30%が輸出向けだそうです。
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たいてい発注は中国企業からで、サンプルが送られ、それに合わせて製造するそうです。もしや、ここがニセモノ大国中国の製造拠点のひとつなんじゃないか…なんてことも思いましたが、彼らは注文に合わせてつくっているだけなのでしょう。
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労働者の賃金は500~800元とのこと。労働者数は約100名。工場長は「もっと注文がほしい。何でも言ってほしい」と日本向けを意識したものと思われるメッセージを残してくれました。
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最後に連れてこられたのが、またもや水産加工工場のテフン貿易会社でした。2001年創業で、羅先最大の規模。在日同胞が投資しているようです。
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さすがは在日同胞が投資しただけあって、単に水産加工品だけでなく、マツタケ焼酎など、さまざまな製品をつくっていました。工場も併設されています。
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朝鮮に行くと、やたらとたくさんの種類の焼酎が売っていますが、このマツタケ焼酎は在日同胞の工場でつくられていたんですね。確かにパッケージなど、他の国内産に比べると洗練されています。

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またこの工場では、生簀があって魚を選んで調理してもらえるレストランもあるようです。ロシア人観光客がいました。
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このふたりは、オーナー夫人と娘だそうです。

ただし、この工場は規模に比べて生産量が足りないため。経営上大きな問題を抱えているとガイドが話していました。なんでそんなことをぼくに言うのだろうと思うのですが、朝鮮東海の漁獲量が激減している影響が大きいからだそうです。これは深刻な話ですね。

はてさて、羅先の4つの工場見学を終えて、みなさん何を思うでしょうか。これで投資をしてくれといわれても、困ってしまいますね。とはいえ、朝鮮には若くて優秀な労働者はそこそこいそうです。そのため、中国吉林省の図們や琿春では、北朝鮮労働者を呼び込み、工場労働をさせているようです。朝鮮側も外貨獲得の手段として、労働者を積極的に送り込んでいます。彼らは工場と寮のある敷地内から外には出られないそうです。

2000年代前半に広東省で見られた女工哀史の物語がタイムラグを経て、延辺朝鮮族自治州でいま始まっているようです。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-12 21:02 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 08月 12日

鏡城温堡温泉(朝鮮)は日本式の温泉郷ではなく、ロシア式サナトリウムでした

清津から七宝山に向かう途中に鏡城というまちがあり、その少し北に温堡温泉があります。休火山である白頭山系に属する七宝山の周辺には温泉が多く、戦前期から知られる朱乙温泉のような温泉街もあるはずですが、外国人に開放されているのはここだけのようです。
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そこは日本式の温泉郷ではなく、ロシア式サナトリウム(温泉療養所)でした。

館内に入ると、温泉の入り方や効能など図解と説明が延々書かれています。
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朝鮮側の提供する資料によると、泉質は水素炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムを含む鉱物質希薄珪土泉。効能は関節炎、神経痛、高血圧、婦人病、ガスおよび鉛中毒、慢性大腸炎、手術後遺症、十二指腸潰炎、胃炎などと書かれています。「ガスおよび鉛中毒」というのがよくわかりませんが、飲用もされるようです。

湯船は個室に分かれていて、こんな感じです。情緒はまったくありませんが、お湯は源泉そのものでとても良かったです。湯上り後は、身体の内側からホクホクしてくるような湯の力を感じました。
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これは中国東北地方でも同じですが、かつて日本が大陸や朝鮮半島につくった温泉は日本の温泉郷のような遊興地でした。いまでも現存する遼寧省鞍山にある湯崗子温泉や丹東の五龍背温泉には、日本時代の温泉施設が残っていますが、解放後、ソ連軍が入ってきてから、一部を残しながら、大半はロシア式のサナトリウムに変わってしまいました。これはいい悪いの話ではなく、この地域の覇権が日本からロシアに移ったためで、現在の北朝鮮の温泉地はたいてい療養地になっています。唯一違うのが、金剛山に1990年代後半につくられた韓国資本の温泉施設でしょうか。こうして朝鮮半島の南北で温泉の形態が異なっているというのは、面白いですね。

明治の文豪も訪ねた満洲三大温泉はいま
http://inbound.exblog.jp/23954021/

そばには日本時代のものを思われる給水塔が建っていました。この周辺の水はミネラル分が高いということで、水を汲みにくる地元の人たちの姿も見ました。
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この温泉療養所の近くに温泉ホテルがあります。蔦に覆われた外観が印象的です。
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客室には個室風呂があり、温泉です。これもいいお湯です。
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温堡温泉の周辺は美しい並木に囲まれた避暑地のようです。そこにはいわゆる革命跡地になっています。その話は次回に。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-12 10:28 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 08月 07日

七宝山(チルボサン)は金剛山とは似て非なる朝鮮の名峰

昨年7月上旬、ぼくは北朝鮮咸鏡北道にある七宝山を訪ねています。
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朝鮮東海岸の港湾都市・清津の南方の海岸沿いに広がる山岳景勝地です。朝鮮の国家観光総局のつくった案内書によると、こう説明されています。

「昔から『咸北金剛』の名で呼ばれる朝鮮6大名山の一つ。金、銀、銅をはじめ七つの宝物が埋まる山という意味でから七宝山と呼ばれる。面積は約250㎢。

今から約100万年前の新生代第3期に白頭火山脈から噴出した岩石が冷え固まった流紋岩、玄武岩などの火成岩が雨風に削られ形成された。

他では例を見ない独特な山岳美と渓谷美、海の景色を同時に楽しめる名山。

地理的位置と地形、寄港風洞が特異なため動植物相が豊富かつ多様である。

地域的には内七宝、外七宝、海七宝に大別される。

開心寺など歴史の古い遺跡がある。

七宝山の周辺には黄津温泉をはじめ、明川、万戸、沙里、宝村などたくさんの温泉が点在する」(『朝鮮観光』2012年 朝鮮観光宣伝社刊 より)

2013年夏に訪ねた朝鮮随一の名山である金剛山にたとえて「咸北金剛」などと呼ばれるようですが、実際の見た目の印象はずいぶん違います。上記説明にあるように、火山岩によって形成されているため、むき出しになった岩肌がどれも赤茶けた色に見えるからです。この独特の色味が七宝山の第一印象です。
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内七宝 五鋒山系

2013年、金剛山観光はどうなっているのか?
http://inbound.exblog.jp/22561895/

雨風に削られ、奇妙な形をした岩山が多く、こういう世界が好きな人には面白いと思います。同行したガイドらが「あれはピアノを女性が弾いているのに似ているからピアノ岩」「あれは男女が××しているのにそっくりだから××岩」など、それぞれ名前が付いているようです。
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ピアノ岩
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夫婦岩
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礼門岩

そういう意味では、七宝山は金剛山とは似て非なる名峰といえると思います。

金剛山が水墨画で描かれるような中国の仙境のイメージに近いのに対し、成り立ちがそもそも違うので、この表現は適当ではないかもしれませんが、七宝山はどこかグランドキャニオン的なのです。少なくとも東洋的な山岳イメージはあまり感じません。ただし、植生は松類が豊富で、秋になるともみじの紅葉で赤茶けた岩肌の周辺が真っ赤に染まるそうですから、夏のイメージとはかなり変わるかもしれません。七宝山は秋がいちばんだそうです。秋になるとマツタケも相当採れるそうで、かつては日本に高く売るため、地元の人たち総出で山に入ったと聞きました。
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金剛山とのもうひとつの違いは、七宝山の場合、ほとんどの場所が車で行けるように登山道が整備されていることです。整備されているといっても、舗装されているわけではないのですが、実際、車のおかげで、1泊2日でほとんどの場所を訪ねることができました。金剛山にはいくつもの登山コースがあって、すべてを踏破しようとすると、4泊も5泊もして歩き続けなければならないのに比べ、なんともお手軽な登山です(もちろん、時間をかけて徒歩で登山することもできるのですが)。
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絶景を眺めるための展望台がいくつか整備されている一方、中国のようにお土産物屋や行楽施設などはまったくないため、とても清々しい景勝地といえます。はっきり言って、朝鮮観光の魅力は開発の手がほとんど及んでいないこと。今日のグローバル資本がすみずみまで行き渡ってしまった海外の観光地ではありえない稀に見る状態にあるといってもいかもしれません。
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いかんせん、アクセスが不便なため、外国客もまだ少ないようです。たまに欧米人ツーリストが平壌から漁郎空港まで飛んできて七宝山を登るようですが、実際のところ、週に何便飛んでいるのか。最近になって、中国吉林省の図們から鉄道でふもとの明川まで来て登山する3泊4日のツアーも始まっているようです。もちろん、中国国籍のみのツアーです。
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展望台に行くと、この種の記念写真の撮影サービスのパネルが置かれているのですが、周辺にカメラマンの姿はいません。朝鮮にはこのような中国の行楽地の物まねのような見せかけも多いですが、面白いのは写真に写っている人たちの妙に明るい風情です。抱き合っているカップルも写っていたりします。こういう感覚、彼らは大好きなんですね。

なお七宝山にある宿泊施設は、この外七宝山荘です。客室数10数室の小さな山荘ですが、館内は清潔で十分快適です。ただし、随時営業しているわけではなさそうで、おそらく我々のようなツーリストが来るときだけ、清津からスタッフや食材などがここに運ばれ、営業となるようです。
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今回載せた写真は、すべて「内七宝」の景勝地のものです。次回は開心寺という高麗時代の寺院や「外七宝」「海七宝」を紹介しようと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-07 15:14 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)
2015年 07月 15日

ラブホテル? いえ、レジャーホテルで、いま外客の取り込みひそかに進行中

ここ数年、訪日客の増加で東京や大阪などの大都市圏のホテルの需給がひっ迫しています。とりわけ大阪は客室不足が深刻なため、市は外客向けに市内のラブホテルの活用をまじめに検討したそうです。「交通の要所である京橋や天王寺などのラブホテル街を対象拡幅などの設備更新に補助金を出して業態転換を促せないか模索」(朝日新聞2014年8月4日 大阪版)したと報じられています。

ところが、関係者によると「進展はなかった」ようです。ラブホテルは個人経営者が多く、新規施設の投資や多言語化の対応などに難があるためです。

こうしたなか、いわゆるラブホテルではなく、清潔でくつろげる客室やカラオケ、ジャグジーバスなどのエンターテインメント設備を備えたレジャーホテル(ファッションホテル、ブティックホテルともいう)の中に、外国客の受入に取り組む施設が現れています。もともとこの種のホテルでは、カップル利用だけでなく、ファミリーやビジネスマン、さらには女子会といったシティホテル的な使われ方もしていました。

関西を中心に47軒のチェーンを展開する「ホテルファイン」(株式会社レジャー計画・大阪市)では、ここ数年順調に外客の取り込みに成功し、宿泊客数を倍々ゲームで伸ばしています。

ホテルファイン
http://www.hotels-fine.com/

今年1月、ぼくは同社を訪ね、以下のレポートの中で一部紹介しました。

訪日客増加で客室も足りない!?  多様化する宿泊ニーズに対応した新サービスや業態転換はどこまで進むか
http://www.yamatogokoro.jp/report/2015/report_11.html

そして先月、同社を再訪し、関則之会長にあらためて話を聞くことができました。

ここでひとつの誤解を解いておく必要があります。同社が展開する「レジャーホテル」という業態は、一般にラブホテルが風俗営業法の管轄にあるのとは違い、一般のシティホテルと同じ旅館業法の管轄の施設です。ただし、立地はたいていラブホテル街などの歓楽地や郊外のロードサイドにあるため、世間は両者を同じジャンルの業態とみなしがちです。これはやむを得ないことだと思いますが、興味深いことに、外国客にはその種の誤解や先入観がないため、受入に際しても影響はまったくなかったといいます。

以下、会長とのやりとりです。

―ホテルファインの外国客取り込みのきっかけや経緯を教えてください。

「弊社はレジャーホテル以外にリゾートホテルの運営もやっている。2008年頃、すでにリゾートホテルではネットで海外のお客様がぽつぽつとお見えになっていた。この年、政府が観光庁を設立させ、これからは海外のお客様を取り込む機運が盛り上がると思った。

そこで、2011年ホテルファインでも自社HPを立ち上げ、一部の客室のネット予約を開始した。当時、この業界では予約を取るという発想はなかった。ウォークインで来るお客様を1日何回転かさせるというのがビジネスモデル。いったん予約を取ってしまうと、部屋を押さえておかなければならない。これは機会損失につながるのではないか、という危惧もあった。だから、全室ではなく、まずは1割程度からネット予約に対応してみようかということでスタートした。

多くの方に誤解されていると思うが、レジャーホテルはラブホテルのように風俗営業の届出をしている施設ではない。ところが、国内の旅行会社やオンライン旅行会社は我々との商談に乗ってくれない(一部取引は始まっている)。関西では「ホテルファイン」という名前が広く知られているのも問題なのだと思う。

その点、海外のホテル予約サイトは理解があった。自社サイトを立ち上げると、エクスペディアやBooking.comなどの営業担当者がすぐに訪ねてきて、登録した。その結果、外国客の予約が入ってくるようになったというわけだ」。

―外客の受入を始めるにあたってどんなご苦労がありましたか。

「最初は外国客のフロントや電話応対が難しかった。外国客は予約を入れた後、よく問い合わせてくる。もちろん、外国語でだ。たとえば、荷物を事前にホテルに送っていいか、ホテルへの行き方など。最初のうちはもたもたしていたが、2年前くらいからようやく対応できるようになった。

海外からどんどん予約が入るが、決済は旅行会社経由の場合もあれば、フロントの場合もある。当然、為替のことを知る必要が出てくる。支払いは事前決済とカードの現地決済があるが、決済トラブルはゼロに近い。海外のサイトでは予約時にクレジットカードを入力する必要があるからだと思うが、むしろ国内客のほうがノーショーがある。

これまでのように、毎日同じ価格で出せなくなった。シーズンや曜日によって価格調整しなければならない。こういった受入態勢づくりはスケールメリットがないとできるものではない。従業員教育やシステム構築には時間とコストがかかるからだ。幸いうちは本社機能があるので、専属でインバウンド担当、予約担当などを配置できた。

こうしたことから、一般のラブホテルやレジャーホテルで外客受入ができるのは一部に限られるだろう。この業界は大半が個人企業。受入には初期コストがかかるし、社員教育が大変。宿泊客が病気になって、病院の手配をしなければならないとき、フロントで外国語対応ができるか。外国客はフロントにいろいろ聞いてくる。近くにおいしいレストランはないか。松坂牛の食べられる店はどこか…。そういうコンシェルジュ機能も求められる」。

―大阪市からラブホテル業界で外国客の受入ができないか相談があったそうですね。

「うちにも大阪観光局の人が来た。そのとき、私はこう説明した。ラブホテルやレジャーホテル業界の経営は、1室月額いくらの売上で組み立ている。それには1日2回転させることも計算に入れている。これらのホテルは初期投資がビジネスホテルより圧倒的にかかる。部屋の広さやお風呂、エンターテインメントの設備などが充実しているからだ。ビジネスホテルの売上額ではとうてい成り立たない。いくら市が施設投資に補助金を出したところで赤字になる。

しかも、うちがいまやっているような運営ができるラブホテルがどれだけあるか。社員教育はどうするのか。

外客受入を始めるとなると、館内案内も多言語化のため全部新しく揃えなければならない。うちもあらゆる表示物を英語と中国語に多言語化した。「トイレは紙を流してください」といったこれまで必要のなかった表示も用意した。食事の問題もある。ベジタリアンやハラル対応だ。外国客は食に対するリクエストが多い。そこで、食事メニューも変更した。うちでは24時間ルームサービスをやっているし、宿泊客には朝食がつく。メニューの種類を増やすことになった。

24時間電話の通訳サービスも始めた。通訳と3者通話ができるシステムだ。フロントにはタブレットも用意した。

外客受入のためには、我々自身が変わらなければならない。経営者が率先して受入態勢をつくっていかないと。海外からお客様がどんどん来るから、なんでもいいから客を取るではいずれしっぺ返しが来る」。

―取り組みを始めて4年、成果は出ているようですね。

「4年前に比べスタッフの語学力が格段に上がっている。最初はクレームも多かったが、最近は店長に宿泊客からお礼の手紙が来るようになった。これまで礼状をもらうなんてことなかった。外国客のリピーターも増えている。

2012年から今年にかけてのネット経由の月ごとの売上、販売客室数をみると、倍々ゲームで伸びている。特に今年3月は単月で約7000室、1室単価も上がり、1万7000円を超えている。
 
ネット予約の8割が外国客だ。やはり桜と紅葉シーズンの売上が高い。特に京都の桜のシーズンは1室単価が4~5万円でも満室になる。というのも、いまの京都の桜シーズンはシティホテルでも1泊10万円がざらになる。それに比べればうちはリーズナブルだからだ。鈴鹿サーキットのときも、ほぼ外国客で埋まる。1週間連泊する客もいる。

これからは限られた部屋をどれだけ高く売れるかが課題だ。レベニューマネジメントの専門スタッフがいて、日々細かく価格調整している」。

―ホテルファインが外国客に人気の理由は何だと思いますか。

「Booking.comでは顧客評価8点以上(10点満点)の施設にアワードを与えているが、うちは多くの施設でいただいている。チェーン47軒のうち外客受入は現在25軒のみ。大阪や京都、滋賀、奈良などだが、少しずつ増やしている。
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考えてみれば、外国客の評価が高いのは当たり前かもしれない。彼らには日本人のような固定観念や先入観はない。スペックそのもので評価するわけだから。なにしろお風呂はジャグジー、室内の音響施設はスピーカー6台装備、100インチのプロジェクタースクリーンがあり、カラオケ、マッサージチェアなど、至れり尽くせりだ。ルームサービスの飲食代も安い。冷蔵庫のドリンクもコンビニ価格。外国客の飲食の利用は多い。

外国客の特徴は連泊が多いこと。たいてい3~4日だが、なかには30日連泊の人もいる。ビジネス出張で利用されているようだ」。

―最近の外国客に新しい傾向は見られますか。また新たなサービスは何かありますか。

「レンタカー利用が増えている。レジャーホテルの特性のひとつが郊外のロードサイド型店舗があること。関西国際空港に14社のレンタカー会社があり、そのうち13社は外国客対応を始めている。そのため、空港からレンタカーに乗ってチェックインされるアジア客が現れるようになった。

日本の交通マナーは世界一。運転しやすい。日本の新車を運転したいというニーズもあるようだ。とにかくレンタカーは安い。関西の場合、大阪を中心に京都や神戸、奈良など各方面に観光地があるが、車で移動すると便利だし、2、3人が乗って移動すると、交通費はかからない。ナビゲーションも多言語化しているので、問題ない。市内に比べ、郊外立地のレジャーホテルは客室料金も安い。駐車場も広くて無料。買い物好きのアジア客は荷物が増えるが、車だと困らない。あとはLCCで来れば、日本の旅行がとことん安くなる。

これからLCCで大阪に来て、レンタカー利用でホテルファインに泊まろうというセットの旅行商品をPRしたいと思う。

また今年に入って中国からのカップルツアーを受け入れている。いわゆるハネムーン旅行で、中国のオンライン旅行会社のC-trip経由で毎月250~300組も予約が入る。中国でも個人旅行が動き出しているのを感じる。

Hotel Fine Garden Juso Osaka (大阪十三精品花园情侣酒店)
http://hotels.ctrip.com/international/686502.html?CheckIn=2015-07-29&CheckOut=2015-07-30&Rooms=2&childNum=2&PromotionID=&NoShowSearchBox=T#ctm_ref=hi_0_0_0_0_lst_sr_1_df_ls_11_n_hi_0_0_0

今年から館内で免税販売も始めた。ホテルのアメニティ、シャンプーや化粧品、香水などの商品に限っているが、客室にカタログを置いている。今後は売り方を工夫する必要がある」。

―今後新規開業などの計画はありますか。

「京都と十三に計画中だ。ただし、ここ数年の土地価格の上昇、特に建築コストの高騰を考えると、採算が合うかどうか頭が痛いところがある。五輪スタジアムが話題になっているように、いまゼネコンはすごい強気になっている。きちんとした技術を持った職人さんの数に限りがあることも影響している。この高値水準は2~3年は続くといわれている。

こうしたことから、新たに土地を買ってゼネコンに頼むと、いまの日本のホテル価格では採算が合わない。世界の主要都市に比べると、東京や大阪はいまでもホテル価格が安いほうだ。ニューヨークやパリでは高級ホテルは10万円台が当たり前。5万円では二流ホテルという感じだ」。

―今後の展望についてお聞かせください。

「結局、ホテルの運営は人の問題だ。施設はつくればいいが、維持管理・運営は難しい。いまの日本には投資したい人間は多いが、運営できる人材が少ないことが問題といわれる。

現在、ホテルファインでは85~90%が国内客(カップルやビジネス利用)、10~15%がインバウンドという比率だが、現在は海外サイトだけと契約している。いまだに国内の旅行会社は色眼鏡で見ているからだが、我々の実績をみれば、いずれ変わっていくだろう。今後我々もさらに変わり続けていく必要があると思っている」。
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ホテルファイン十三店は、大阪市淀川区十三のラブホテル街の一画にあります。
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フロントに置かれたメッセージボードに書かれた外国客による手書きのコメントを見ていたとき、ひとりのブロンドの若い女性がチェックインしてきたのを目撃しました。思わず「あっ」と声を上げそうになりましたが、確かにここは外国人ツーリストがふつうに泊まっているのです。

またホテルのスタッフに客室を案内してもらっているときも、大きなザックを背負ったバックパッカー風の欧米青年が廊下を歩いているのを見ました。実は、十三店にはシングルルームもあり、1泊約5000円で泊まれるのです。しかも、館内には外国客専用のラウンジが用意されています。ここでは食事もできるそうです。
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そもそもこの業態のホテルにフロントがあること自体、ちょっと面白い話ですが、フロントの裏にはスーツケースがいくつも並べて置かれていました。外国人ツーリストたちはチェックアウトした後、昼間は観光に出かけるので、荷物を預かってもらうからです。
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客室は広く、関会長が語るように、大型スクリーンやカラオケ設備、ジャグジー付きの風呂など、至れり尽くせりの環境です。大阪で最高級とされるザ・リッツカールトンやインターコンチネンタルなどの客室と比べても広いうえ、各種スペックに関しては凌駕しているといえます。
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ぼくが20代の頃、北欧から来た友人とその仲間たちが日本のラブホテルは面白いと聞いて、地方に旅行したとき、よく利用していたことを思い出します。彼らはラブホテルという空間に用意されたさまざまな設備や遊び心満点のユニークかつおとぼけデザインを楽しんでいました。

ホテルファインに対する外国客たちのコメントを見せてもらいましたが、多くの人が「ラブホテル」だという認識を持っているようでした。中国のCtripでも、ホテル名は「大阪十三精品花园情侣酒店」。日本名にはない「情侣(カップル)」ということばが添えられています。

たとえば、こんなコメントがありました。

「そう、ここはラブホテルです! しかし、不潔なことは全くありません。宮殿のような客室にプロジェクターが付いています。カラオケと完璧なサウンド設備。テレビの隣にはジャグジーがあります。立地は最高。地下出口のすぐ隣にあります」(梅田店)

コメントの書き手は、それこそ多国籍の人たちで、英仏独語に中国語、ハングル、タイ語もありました。一般に日本のホテルの客室は狭いことで知られているせいか、部屋の広さや設備、アメニティなど好評価のコメントが目立ちました。なかには「立地を除くすべてが良かった」(豊中店)というコメントもありましたけれど。これはラブホテル街という立地をうんぬんしているのではなく、最寄り駅からのアクセスがわかりにくいという意味です。

訪日客の増加で客室不足に悩む大都市圏では、レジャーホテルという業態が外客受入に貢献することが期待されています、ただし、いまの時代、海外予約サイトに登録すれば、予約は入るでしょうが、実際の受入態勢をつくっていくのは、並大抵のことではないことが関会長の話から伝わってきます。

だとしても、この業界にはさまざまな可能性が秘められているのでは、とあらためて思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-15 13:43 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2015年 06月 07日

ロボットレストラン、まだまだ進化中

週末の夜、新宿歌舞伎町のロボットレストランにまた行っちゃいました。仕事仲間にどうしてもと言われて案内することになったんです。これで3回目になります。

歌舞伎町の「ロボットレストラン」はなぜ外国客であふれているのか?
http://inbound.exblog.jp/21470518
【続編】「ロボットレストラン」はなぜ欧米客に人気なのか?
http://inbound.exblog.jp/21477338/
1年ぶりに再訪。ロボットレストランの客層が変わった!?
http://inbound.exblog.jp/23664029/

去年の9月以来でしたが、演目もそうですし、システムや料金、客層もそこそこ変わっていたので、この際ですから報告してしまいます。

何が変わっていたかというと、まず料金です。当初は弁当付きで5000円だったのに、いまはショーのみでひとり7000円です。

けっこう取るなとも思いましたが、客層の大半は外国人。ここ数年の円安でこの程度の値上げは関係ないかもしれないと思いました。7000円って50ドル相当でしょう。つまり、2年前と変わらないともいえるのです。
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これが入り口です。以前とは入る場所が違います。多国籍語のwelcome表示があります。アラビア語やロシア語、タイ語まであります。いろんな国の人が来ていることがうかがえます。
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まず待合室に入ります。そこに現れたのは、日本語を話す外国人の女の子でした。

キンキラのいかれた内装の待合室は変わりません。21時50分開演のその日最後のショーだったせいか、若い欧米人がほとんどでした。昨年9月はけっこう年配の外国人も多かったけど、時間帯によるのではないかと思われます。
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待合室では、ダンサー兼シンガーの女の子が洋楽を歌っています。ここはまるでマニラやバンコクの欧米人向けバーの世界と変わりません。

開演10分前にステージのあるフロアに案内されます。客層はこんな感じです。欧米客が大半で、たまに東南アジア系のカップルが交じっています。
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男ふたりで並んで見ているのは、なんか間抜けな感じもします。
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東南アジア系のカップルは、1000円のおすしを注文したようです(チケット代とは別)。食事に関しては、いろいろ試行錯誤しているようです。
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ロボットレストランロゴ入りのTシャツやお土産菓子などもありました。こういうノベルティグッズは売れるのかどうか? やれること、思いつくことは何でもやってみようという姿勢もうかがえます。
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ショーの司会も外国人になっていました。アメリカのTVコメディショーに出てくるようなタイプの男です。彼は「ようこそ、クレージーショーへ」とあいさつしてました。
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最初の演目は日本太鼓で、去年と同じでした。まずは和風ショーから始めて、ジャパニスクを堪能してもらうことが狙いでしょうか。おかしいのは、ロボットショーのテーマソングが流れていて、その曲調は演歌なのです。まあショーの中身とはマッチしているのかもしれませんが、面白いものだと思いました。
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次はおいらんショーでした。これは初めてみました。六本木のおいらんショーレストラン「六本木香和 -KAGUWA-」みたいだったので、ちょっと意外でした。やはりこういうのが欧米客にウケると判断したのでしょうか。
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六本木香和 -KAGUWA-
http://www.kaguwa.com/

3つめは当初からあった「太古の森」を舞台にしたロボット対戦(森の住人と宇宙から来たロボット軍団との戦い)でした。
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そしてフィナーレは、おなじみの女性型ロボット「ロボコ」と女性ダンサーの共演です。ロボット軍団がバージョンアップしているように見えます。
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でもまあ、ロボットに乗って女の子が踊るというバカバカしさは変わりません。
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そして、あっけなく終演。以前のようなロボットとの撮影タイムはありませんでした。
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久しぶりに訪ねて、あいかわらず外国客であふれていましたが、いろいろ試行錯誤していることがうかがえました。外国人スタッフが一気に増えていたのは、当然だったのでしょう。

同行した編集者も「こんなに外国人がいるとは思わなかった。よくできているなあ」と感心していました。やはり、客の反応を見ながら臨機応変にやり方を変えているのでしょう。

ところで、どうでもいい話ですが、その日、ロボットレストランにも近い新宿花園神社の境内で唐組の赤テントの興行をやっていました。本当はこういうのにも外国客に行ってもらいところですが、この世界を解説するのは一苦労だなあと思ってしまいます。
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新宿歌舞伎町は外国人の来訪によって変わりつつあります。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-07 20:43 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)