ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2017年 12月 27日

新しい中国人観光客像の5つの傾向とは?

今年もトップを走る訪日中国人は過去最高の年間700万人を大きく超えそうな勢いだ。訪日外国人の4人に1人を占める彼らの日本旅行の内実は、我々の理解が追いつかないほどの多様化と先進化を見せている。従来どおりの古いイメージだけで見ていると、対応にも間違いを起こしがちだ。日本を訪れた彼らのさまざまな声を聞いてみたい。

12月上旬、中国黒龍江省新世紀国際旅行社日本部の呼海友部長は、映画『男はつらいよ』の舞台である葛飾区柴又にいた。
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↑柴又駅前の寅さん像と今年3月にできたばかりのさくら像

彼は毎年この時期、東京に1週間ほど出張に来て、旅行会社回りの営業をするかたわら、訪日旅行のテーマ探しをするのがもうひとつのミッションになっている。なぜ彼は柴又に視察に訪ねることにしたのだろうか。「お定まりのコースしかない格安弾丸ツアーに飽きた中国の中高年のお客さんを寅さんの町に連れて来たいから」という。

寅さんの自由な生き方は平和な日本の象徴

訪れたのが朝9時と少し早かったせいか、帝釈天の参道は人通りも少なく、まるで映画のセットのようだった。境内の裏手の『邃渓園』と呼ばれる日本庭園で和み、中国には少ない法華経の説話を描いた帝釈堂の木彫りを鑑賞後、寅さん記念館に足を運んだ。
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↑さくらの主人の博が勤めるタコ社長の印刷所のセット

館内には、寅さんの実家である「くるまや」の店内セットやミニチュア模型など、映画を構成する象徴的なシーンが再現されている。中国の人たちは、寅さん映画のどんなところが面白いと思っているのか。

呼部長はこう話す。「寅さんがいつもあちこち旅をし、自由に生きているところです」。

いまの40代以上の中国人にとって寅さんは善良で平和的な日本人のイメージを象徴しているという。この映画が中国で観られるようになったのは1980年代以降だが、それまでの「日本といえば日本兵」という悪のイメージを払拭し、相対化するうえで、この映画が果たした役割は大きかったといえる。

今日、中国の若い世代が日本のアニメ作品『君の名は。』(岐阜飛騨市)や『スラムダンク』(神奈川県鎌倉市)のロケ地を訪ねる話はよく聞くが、中高年の中国人がよく知る日本人は寅さんであり、彼らにとっての「聖地巡礼」でもあるというのだ。

「中国にはこんな静かでのどかな下町はない」と呼部長はいう。「帰国したら、少人数で柴又を訪ねるツアーを企画します。中国にはファンが多いですから」。

新しい中国人観光客像に見られる5つの傾向

中国人の訪日団体旅行が解禁された2000年から10数年、これまで我々が思い描いていた中国人観光客のイメージを大きく変えなければならなくなっている。それは世間でよくいう「モノからコトへ」「買い物から体験に移っている」という話でもあるが、実際には、もっと中身は深化している。

今年、中国人観光客に見られた新しい傾向として以下の5つのポイントが挙げられる。

1.特定の文化的テーマで目的地を選ぶ
2.日本の田舎を楽しみたい
3.女子旅から親子旅へ
4.日本より進んだSNSによる濃密な情報環境の実現
5.肌で感じる日本社会の中国人嫌いに対する不安


それぞれについて、これから解説していく。

旅行体験共有会が個人旅行客の情報収集の場に

まず、「1.特定の文化的テーマで目的地を選ぶ」について。背景にはリピーターの増加にともなう日本に対する理解や関心の深まりがある。彼らがいま日本にどんな関心を持っているかについては個人によって千差万別で、ひと口では言えない。それを知るには、たとえば日本政府観光局(JNTO)や全国の自治体が中国各地で開催している旅行体験共有会がひとつの参考になる。

旅行体験共有会(中国語「旅游体验分享会」)は、普段はゆるいSNSで結ばれた特定の旅行テーマに関するファンたちが集まるオフ会で、個人化の進む中国におけるプロモーションとしてよく採用される手法のひとつだ。そこで集まるファンたちが核になり、SNSを通じて情報や話題が伝播されていくことで、日本国内のまったく無名の場所でさえ、誘客の効果が生まれているのだ。

日本のパワースポットめぐりを楽しむ中国のOLも

11月下旬、上海で開催された中部地方(東海、中央高地、北陸の9県)の旅行体験共有会では、この地域を実際に旅した3名の中国人がスピーカーとして登壇し、50名の参加者たちとの質疑応答が繰り広げられた。
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↑11月に上海で開催された旅行体験共有会「深体験 魅力遊 日本中部旅行分享会」

会場にいた上海在住OLの張麗さん(仮名)によると、面白かったのは『櫻追う』というブロガー名の女性の話。彼女は桜の季節に日本を訪れ、Yahoo!アプリで桜の開花した場所を調べて各地を旅して回ったという。「私のようなOLは自由に休みが取れないから、彼女のように無計画な旅ができるのがうらやましい。この会に来ると、いろんな旅をしている人の話が一度に聞けるから面白い」。

張さん自身も日本旅行のリピーターで、神社が好きという。「中国のお寺と違って、神秘的な雰囲気が魅力。2015年に伊勢神宮でご朱印を手にしたことをきっかけに、今年は諏訪神社と穂高神社に行きました。来年は出雲大社を訪ねる計画です」。

ここで注意したいのは、いま中国で日本のパワースポットめぐりが流行っているという話ではないことだ。個人化した中国人はさまざまな個別の動機と目的を持って日本国内のあらゆる場所に出没しているのである。

LCC深夜便を活用して訪日する上海の若い女性たち

なかでも今日の訪日中国客の主役は若い女性の個人客だ。

ある上海のアパレル企業に勤めるOLは、スカーフのおしゃれな巻き方を身につけるコーディネイターの資格を取るため日本に旅立った。中国にないこの種の日本の資格は、仕事の現場に活きるからだという。このようにレジャーや買い物目的を超えた個人的な趣味や職業上のスキルアップまで含めたさまざまな訪日動機が生まれており、情報収集にも余念のない一定層のリピーターがすでに存在しているのだ。

こうしたOLたちの気軽で多彩な訪日旅行を支えているインフラのひとつが、羽田空港や関西空港への中国からの格安深夜便の増加である。

たとえば、羽田・上海深夜便は、日系のピーチアビエーションに加え、春秋航空や上海航空、吉祥航空が運航している。これらの便は多くの場合、往復ともに深夜便なので、金曜夜に上海を発てば、土曜早朝に羽田に着き、1泊して日曜夜に羽田を発てば、月曜早朝に上海に戻れる。彼女らのアクティブな行動力には驚くばかりだ。
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左:ピーチアビエーションの羽田・上海の深夜便は中国客の利用も多い
右:上海浦東空港から日本に向かう中国人の女子旅

中国の若い世代が思い描く「日本の田舎」とは?

そうはいっても、「余暇を過ごす」ために日本を訪れるという中国人は若い世代ほど多い。最近、彼らに「日本のどこに行きたいか」と聞くと、たいてい最初に出てくる言葉が「日本の田舎」である。

彼らがそう語る真意はどこにあるのか。

中国の若い世代の「日本の田舎」志向を理解するうえで参考になる本がある。1986年生まれの史詩さんというブロガーが書いた日本を個人旅行するためのガイド書『自游日本(自由旅行日本)』(南海出版公司 2015年1月刊)だ。
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↑『自游日本(自由旅行日本)』は16年、17年と3冊目が出ている人気シリーズだ

今日中国では多くの旅行書が刊行されているが、同書が類書と異なるのは、彼女が自分の足で訪ねた日本の名所旧跡や日常食が写真入りで細かく紹介されていること。

一方、買い物に関する情報がほぼないのも特徴といえるだろう。

ここでいう「日常食」とは、日本人がふだん食べているカレーやラーメン、とんかつ、天ぷら定食といった料理のこと。基本的に冷めた食事を好まない中国人らしからず、駅弁と鉄道旅行の情報が詳しいのもユニークだ。

安全だからこそ楽しめる、地方の列車旅

この本の表紙として選ばれた一両きりのローカル線の車両と高く広がる青空の写真から、彼女の世代の想いが読み取れる。林立する高層ビルの中でストレスフルな競争社会を生きるいまの中国人にとって癒しとなるのは、こういう日本の澄み切った青空に違いない。

彼らの「日本の田舎」志向の背景にはもうひとつの理由がありそうだ。前述した張さんは「ローカル列車で若い女性が旅に出られるのも、日本が安全だから。中国で同じような地方の列車の旅に出る勇気は私にはない」。いかにも都会育ちの若者的な発言だが、日本の事情に精通したリピーターたちは日本と中国の社会の違いを知りぬいている。

「女子旅」から「親子旅」へ、子連れ旅行を指南する若い母親ブロガー

最近、都内の繁華街でベビーカーを押して歩く外国人ファミリー客の姿を日常的に見かけるようになった。当然、その中には中国客もいる。「3.女子旅から親子旅へ」についても見ていこう。

個人客として日本を訪れる中国の若い女性たちは一人っ子政策の申し子であり、すでに多くは母親になっている。

彼女たちの指南書として刊行されたのが、子連れ旅行ブロガーの王晶盈さんが書いた『日本东京亲子游(日本東京親子旅行)』(人民邮电出版社2017年1月刊)だ。
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↑『日本东京亲子游(日本東京親子旅行)』は姉妹編の関西版もある

同書は、親子で楽しめる東京の遊園地や動物園、水族館、レストラン、ホテル、キッズ&ベビー用品店、児童書店といった情報が満載だ。

体調が変わりやすい小さな子供を連れて日本を旅行する際の留意点や公共交通機関でのベビーカーの利用方法なども書かれている。

母親ブロガーが、親子旅行の様子を共有

2017年3月、上海で開催された長崎県主催の旅行体験共有会のテーマも「親子旅行」だった。登壇したのは、女性旅ブロガーの柳絮同学さん。

3歳の息子と一緒に長崎県に旅行に出かけた体験の報告だった。彼女は東京や大阪なども子連れで訪ねており、2回目の旅行先が九州。息子を連れて長崎県内の動物園を訪ねたり、天草でイルカをウォッチングしたり、日本旅館に泊まって手作り団子の体験をしたりと親子旅行を満喫したという。

日本は中国に比べ、小さな子連れ旅行をしやすい環境が整っていると彼女はいう。中国にはまだない便利なサービスやインフラも多い。彼女は日本を訪れて知った経験の数々をブログに紹介している。そこには中国人から見た日本の隠れた魅力や発見があふれている。
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左:長崎の日本旅館に泊まった柳絮さんと息子さん
右:上海で開催された、長崎県の旅行体験共有会に参加したみなさん

どの自治体も外国人ファミリー客向けの情報発信やサポートはまだ十分とはいえないが、自らの子連れ体験を発信する中国人がそれを補ってくれているのだ。

行先や目的を超えて行われる、SNS上での濃密な情報交換

これまで以上に、個人旅行化が進む中国人旅行客。彼らがいつどこで何をしているか、実際のところつかみようがない。そんな彼らを相手に、これまでと同様にパンフレットやサイトをつくって多言語化するだけのプロモーション手法では通用しなくなりつつある。微博(ウェイボー)や微信(ウィーチャット)といったSNSのアカウントを開設しても、ただ一方的に情報を発信するだけでは効果はない。

では、諦めるしかないのだろうか。実はそうではない。日本を訪れた彼らのニーズを捕捉するためのひとつの手がかりを与えてくれるのが、中国の海外渡航者用Wi-Fiルーターレンタルサービス事業者「北京環球友隣科技有限公司(Beijing Ulink Technology Co., Ltd. 、以下ULINK)」が採用しているグループチャットの運営である。

北京環球友隣科技有限公司 http://www.uroaming.com.cn 

同社のサービスがユニークで他社を圧倒しているのは、出発日ごとにまとめられた微信のグループチャットを運営していることだ。

このグループチャットに参加しているのは、たまたま同じ日に中国各地から日本各地へ向かう見ず知らずの個人客同士で、目的地も宿泊先も行動も違う。
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↑誰かが質問を投げると、すぐに誰かが答えてくれる

グループチャット上で飛び交う質問はあらゆる内容に及ぶ。

たとえば「関空にどうやって行くの?」「どのコンビニでアリペイが使える?」「SUICAはどこで買える?」など。なかには「SUICAの余ったお金はどうする?」といった具体的な質問も多い。

確かに、成田や羽田のJRトラベルサービスセンターはいつも外国人観光客で長蛇の列。多くの中国人観光客はSUICAの存在を知っており、もっと簡単に買える方法を知りたいというのだ。

「タビナカ」の中国人への情報提供が可能に

日々交わされるチャットの内容をみていると、いま彼らの周辺で何が起き、何に困っているのか。何をどこで買いたいのかといったことが具体的に見えてくる。

実は似たようなサービスを中国のいくつかのオンライン旅行社も実施しているが、北京環球友隣科技有限公司のグループチャットが優れているのは、本社サイドに管理人がいて、1日100通を超えるチャットの整理を行うかたわら、日本のクライアントからのPR情報の提供も随時行っている。
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↑管理人が随時、日本の小売店や飲食店などの特典情報を伝えている

同社の営業代理店である株式会社日本遊の田熊力也部長は「微博や微信のアカウントを開設している日本企業や自治体は多いが、それだけでは個人客の動向をグリップすることはできない。弊社ではこのグループチャットにお得なクーポン券などの情報をいま日本にいて、まさに観光や買い物をしている中国の個人客に提供できる」と力説する。

このような、不特定対数の同胞同士による「SNSを通じた海外でのリアルタイムの情報交換」の存在を知る日本人は多くはない。「4、日本より進んだSNSによる濃密な情報環境の実現」というのは、そういうことだ。

団体から個人へ、旅行形態の変化とともに発生する様々な課題

いま日本を訪れる中国客の地域的構成をみると、地方在住で団体ツアーでしか日本に旅行する手段のない人たちの比率が年々減少して約4割。残りの6割以上は、これまで見てきたようなツアーに参加する必要のない上海や北京、広州などの経済先進地域の個人客だ。

背景には、今秋中国政府が一部地域で始めた日本を訪れる団体客への渡航制限もある。現地関係者の声をまとめると、対象となっているのは黒龍江省や遼寧省、山東省などだ。これらの省では、まだ団体客が多く、かつての「爆買い」を思い起こさせる購買意欲の高さから、当局は各旅行会社に年間の取扱客数の上限を通達している。これが中国の観光行政の実態の一面である。

こうした事情に加え、より自由に個人で旅行したいという中国人のニーズの高まりから、今後もますます個人化やリピーター化に拍車がかかるだろう。

中国客の個人化は、その一方で在日中国人による「白タク」や違法民泊(※これは中国人に限らない)を増加させた。多くのメディアが報じるとおりである。外国人観光客の増加が日本の社会にもたらすのは経済効果のような良いことばかりではないことを多くの人が知ることになった1年だった。

中国人旅行客の民泊志向が高い理由

なぜこうしたことが起こるのか、中国の旅行関係者に聞いてみた。

前者の「白タク」については、日本の社会が中国に比べてライドシェアが遅れており、リーズナブルで利用しやすい移動手段がないため不便を感じていること。日本のドライバーには中国語が通じないため、同胞が運転する「白タク」のほうが安心なのだ。また、後者の民泊についてはどうだろうか。旅行形態の個人化に伴い、一都市の滞在日数が延びたことで、ホテルより使い勝手のいい民泊に流れがちであることだという。

前述の呼部長(黒龍江省新世紀国際旅行社)も「一カ所に連泊する場合、毎日外食だと飽きてしまうので、キッチンがあると便利。ホテルより民泊を選びたいと考える中国人は多い」と話す。ここ数年の大都市圏のホテル価格の高止まりの影響もあるだろう。これらの問題は来年にも持ち越されることは必至で、日本のインバウンド市場の健全な促進にとって懸念材料となっている。

「中国人は嫌われている!?」

気になる声もある。それは「5、肌で感じる日本社会の中国人嫌いに対する不安」である。

ある中国の旅行関係者は、今年中国人観光客を連れて数回大阪を訪ねたが、数年前に比べて日本人の中国人に対する風当たりの強さにショックを受け「中国人は嫌われている!?」という不安を感じることが増えているという。「私が初めて出張で日本に来たのは2000年だが、当時日本の方は本当に優しかった。道に迷っていると、どこまでも案内してくれる親切な人も多く、お世話になった。だが、最近は商店街を歩いているだけで、中国人に対して厳しい目つきや言葉を浴びせる人が多くなったと感じている」と話す。

彼女はなおも言う。「理由はわからないではない。かつて自分たちより貧しいと思っていた中国人が豪勢に買い物をしているのをみて面白くないのだろう。実は、同じことは中国にもある。不動産開発によって一部の農村の人たちが急に金持ちになって都会に遊びに来るようになったが、このような人たちをマナーが悪いと都会の中国人も嫌っている」。

日本をよく理解した旅行関係者だからこそ、こうした日本社会の変化とその理由に気づいているが、初めて日本を訪れる観光客は彼女と同じようには受けとめないだろう。

別の関係者はさらに気になる指摘をする。最近、関西方面の繁華街で中国客を狙ったスリが増えているというのだ。ある大阪心斎橋にあるビジネスホテルの中国人スタッフは言う。

「中国のお客様が外出する際には必ずスリに注意するよう呼びかけています。東南アジア系の外国人による中国客を狙った事件が増えているからです」。
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↑大阪心斎橋商店街は外国人観光客であふれているが、新たな問題が起きている

こうした実情は日本人には見えにくいが、ホテルやコンビニエンスストアで働く中国人らによる口コミで中国客の間では相当広まっているようだ。

こんな指摘をする中国の旅行関係者もいる。最近、ホテルの退出後に忘れ物が出てこないケースが増えているというのだ。

「あるお客様が日本で購入した高価な美顔器を洗面室に忘れて帰ったことに空港で気がついたのでホテルに連絡したところ、見つからないと言われました。以前なら、日本のホテルはお客様の忘れ物は預かっていたはずで、そんなことはあり得なかった」と話す。

一般に日本のシティホテルでは、ゲストの退出後、ゴミ箱に入っているもの以外はすべて一定期間預かっておくというのが常識だった。原因を特定するのは難しいが、外注の清掃業者へのチェックを怠ってはいないだろうか。そう前述の関係者は指摘する。

これらの好ましくない日本の評判は気がかりである。これまで日本は治安がいい、おもてなしの国だと言われてきたが、さすがにこれだけ外国人観光客が増えると、その評判を貶めるさまざまな問題が起きてくるのも当然かもしれない。

訪日客が抱える「不便解消」のための対応も必要

最後に、もうひとつだけ、新しい中国人観光客を理解するうえで知っておくべきことに触れておきたい。

これは多くの中国の旅行関係者が口を揃えて言うことだ。「多くの日本人は日本を訪れる外国人は日本が好きだから来てくれたと思うかもしれない。でも、必ずしもそうとはいえない。今日中国人は世界中どこにでも海外旅行に出かけており、日本はそのひとつの国に過ぎない。誰もが日本を好きだから来るわけではない」。

これも言われてみれば当然の話かもしれない。日本に来るのは日本好きなリピーターばかりではないのだ。だとすれば、モバイル決済への対応や免税店化促進など、彼らに気持ちよくお金を使ってもらえるような利便性の追求だけでなく、移動を快適化するためにSUICAや公共交通機関の1日乗車券などの入手場所を増やしたり、日本の事情に合ったライドシェアを進めるなど、彼らがいま、日本で不便に感じていることの解決に努めたいものだ。これは中国人観光客相手に限った話ではないが、彼らの声にどれだけ早く気づき、対応できるかが問われる時代になっている。

※やまとごころ特集レポート第70回 2017.12.24
https://www.yamatogokoro.jp/report/20489/
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by sanyo-kansatu | 2017-12-27 06:20 | 最新インバウンド・レポート | Comments(0)
2017年 10月 16日

「日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃない」と海外のお客さんに伝えてほしい

9月下旬、中国語通訳案内士の水谷浩さんがガイドを務めるマレーシアからの華人グループは大雪山系にいました。日本でいちばん早い紅葉が見られるスポットとして知られる大雪山では、例年9月中旬から下旬が見ごろといいます。
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水谷さん率いる中国語通訳のプロ集団である彩里旅遊株式会社では、中国本土のみならず海外在住のVIP華人からの訪日旅行手配を扱っています。ここ数年、9月下旬から10月中旬にかけては北海道でのガイド業務の引き合いが多いといいます。紅葉を見たいという華人客が増えているからです。

口コミで同社の評判を聞いた海外の華人から「日本の極上の紅葉が見たい。水谷、案内してほしい」と直接指名がかかるそうです。同社は顧客それぞれの要望に合わせて一からコンテンツを組み立てる企画旅行が専門です。

彩里旅遊株式会社
http://www.ayasato.co.jp/

日本を訪れた外国人は日本の紅葉をどのように楽しみ、何を感じているのか。先週まで北海道にいた水谷さんに話を聞きました。

―今回いくつかのグループを案内したそうですが、主にどこを訪ねたのですか。

「札幌から入ってトマムや富良野、旭川をめぐる。紅葉の見どころは富良野や大雪山。日本でいちばん早く紅葉が見られるというのがポイントです」

―マレーシアのお客さんは日本の紅葉についてどんなイメージを持っているのですか。

「やはり非日常感でしょうか。彼らは熱帯に暮らしている人たちですから。冷たく新鮮な空気と艶やかな色彩に包まれた場所で写真を撮って、そこに自分が写り込みたいという願望が強い。ですから、いちばんいい状態の紅葉を見せたい。たいてい散り際が真っ赤に染まって美しい。いい写真を撮るには晴天がいい。太陽の光の向きも重要です。でも、これが難しい。紅葉のピークは同じ場所でも気候によって変わるからです。去年良くても今年いいとは限らない」
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―桜もそうですが、紅葉も年によって見ごろの時期が変わりますものね。

「ひとつメディアのみなさんにお願いがあります。日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃないと伝えてほしいことです。なぜなら、一般に国内外の旅行会社やメディアが発信する日本の紅葉は真っ赤に染まった写真を使うことが多く、外国のお客さんはそれを期待して日本に来たところ、実際には黄色や緑も多く、必ずしも赤一色ではない。それでガッカリされる人がけっこういるのです。

もちろん、私はその方たちに日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃない。黄色や緑や色とりどりの美しさがあると説明するのですが、先入観があるぶん、腑に落ちない気分になるようです。

実際には、中国語でいう“五彩缤纷”(たくさんの色が豪華絢爛で豊かに見える様)というべきで、最初からそのように伝えてあれば、そんなにガッカリされることもないと思うのです」

―なるほど、紅葉は「紅」と書きますから、赤一色と思いがちですね。でも、ガッカリされるのは期待値の高さから。桜とは違い、バリエーションも豊富なぶん、日本を代表する自然現象である紅葉について、もっと我々自身が深く理解し、説明することばを持たなければなりませんね。

※この点欧米のメディアは比較的バランスが取れていて、紅葉=赤一色という伝え方はしていないようです。たとえば、世界最大の現地発ツアーサイトであるviatorでは、東京の紅葉ツアーのトップページに以下のような写真を使っています。
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外国客はどうやって紅葉の時期やスポットを知るのだろう?
http://inbound.exblog.jp/27344010/

こうした説明の大切さは、相手が富裕層であれば、なおさらのことですね。

「海外のVIPほど、こうしたこだわりが強いのです。彼らはそれがいいか悪いかは常に自分で判断したがります。気に入らないと『不要(いらない)』とはっきり言う。食事も高級な料理店に連れて行けば満足するというのではなく、状況や気分によって地元の庶民的な場所で食事がしたいと言い出すかと思えば、逆のときもある。まったくうるさいことこのうえない客です。

でも、きちんと合理的な説明ができれば、彼らも納得します。そのためには、相当の知識と経験が必要です。そして、いったん満足してくれると、次回もまたお願いしたいという話になる。それが彼らのネットワークの中で口コミで伝わり、別のお客さんを呼んでくれる。それが富裕層旅行の世界です」

本州に紅葉前線が南下し始めるまでにはもうしばらくかかります。「日本の紅葉はマッカッカ(真っ赤っ赤)だけじゃない」。肝に銘じて、今後情報発信するように務めたいと思います。
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日本を訪れる外国人観光客は春より秋のほうが多いって知ってましたか?
http://inbound.exblog.jp/27325956/
どんな紅葉ツアーが外国人に人気なのか?
http://inbound.exblog.jp/27327434/
隠れたトレンドメーカー『香港ウォーカー』『Japan Walker』が伝える最新「紅葉」情報
http://inbound.exblog.jp/27354643/
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by sanyo-kansatu | 2017-10-16 09:53 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 09月 09日

鳥取市の外国人向け大阪行きバス1000円は賢い施策だが、宣伝できていなくて残念

今朝、ぼくはFacebookで先月の広島行きの交通手段についてこんな書き込みをしました。

「今回広島にはLCCのスプリングジャパンを使いました、成田第3ターミナルまでのバス代は東京駅八重洲口発で1000円(ネット予約なら900円)、広島空港から市内までのリムジンバスは1370円です。これなら新幹線や高速バスより安く広島にいけそうです」

今回の旅は、外国人観光客の立場になって、なるべくお金をかけないで楽しもうと考えていたので、ちょっとした報告のつもりでした。
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すると、ある友人から以下の返信がありました。

「広島空港からのバスが高いなと、以前からやや不満に思っています。他に手段がないんですよね...」

広島空港は市内から少し離れているので、そのくらいの料金はかかっても仕方がないとぼくは考えていたので、

「1時間くらいかかるので、まあ仕方がないかも。成田のように競合するバス会社はないでしょうし」と書き込んだら、

「何度か行きましたが、空港バスは1000円位までがありがたいですね。特に外国人目線であれば!」との返信。

そうか…。この友人は海外在住の人なので、「外国人目線」になると、そうかもしれません。なるほどと思いつつ、ぼくは再度こう書き込みました。ほとんど返しになっていませんが。

「ただ10月からシンガポール線が広島に飛ぶこともあり、バスの増便はしているようです」

それからしばらく。空港までのバス代1000円といえば、東京駅・成田空港間だけではないことを、ぼくは思い出しました。そして、再び書き込むことにしました。

「実は、鳥取市は大阪との高速バスを外国人に限り1000円(ふつうは3700円)にする助成をしています。まだ十分知られていないようで、利用者は少ないと聞きました。こういうことに助成をするのは、とても賢いやり方だと思います。PRに多額の税金を使うのに比べれば、安いものだからです。ただこんなに日本人の一般客と差をつけられてしまうのはどうなんだろう、という声もあるかもしれません。」
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外国人観光客限定超割引鳥取-大阪1000円高速バス
Only for foreign tourists! Special Price Bus!
http://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1492568317584/index.html
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これによると、今年6月から来年3月31日までの期間限定で、通常3700円の鳥取・大阪間の高速バス代が、市の助成により、外国人限定で1000円になっていることがわかります。

鳥取県には県庁所在地の鳥取市と東部の米子市に空港があるのですが、鳥取空港は羽田便のみの運航で、国際線はありません(米子空港はソウル便、香港便がある)。

つまり、鳥取県東部に外国人を送り込むには、米子空港以上に、関西国際空港から呼び込むのが効果的です。同じことは、国際線があるとはいえ、岡山や兵庫、徳島などでも実は同様です。

その意味では、拠点空港からのバス代を行政が助成するという施策は、実に賢いことです。広告代理店やコンサル会社に多額の税金を渡してPRしたところで、たいした効果がないし、個人旅行の時代、いちばん大事なのはアクセスのコストの軽減だからです。

ネットでざっと見たところ、岡山や徳島からの大阪行きバス料金は、鳥取県のような助成はやっていないようです。

もっとも、Facebookにも書いたように、ひとりの乗客として、自分は3700円払わなければならないのに、外国人は1000円というのは不公平? そんな気分がないわけではありません。そこで、鳥取市のバスセンターのカウンターのスタッフに、外国客の利用状況について聞くと「1日数名くらいでしょうか」というものでした。ほとんど活用されていないのが実態でした。

宣伝がほぼできていないせいだと思われます。バスセンターのラックにチラシが置かれていましたが、これでは目につきませんし、そもそもいまどきチラシをつくっても、外国人の手には届きません。鳥取に来てもらうためには、日本に来る前にこの割引運賃を知っておかなければ、旅行計画の材料にもなりません。
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鳥取市役所のHPの外国語ページをみても、載っていないようです。

鳥取市役所の外国語ページ
http://www.city.tottori.lg.jp/foreign/index.htm

せめて関空の外国語のアクセスページに載せていれば見る可能性もあるのでしょうが、鳥取市としては広告まで出す考えはないのでしょう。

関西国際空港の英語のアクセスページ
http://www.kansai-airport.or.jp/en/index.asp

こういうところに日本の自治体の限界が見えるというか、PR手法をもっとネットに集約すべきなのに、やることが中途半端で効果を生み出せていない実例にもなっている気がします。担当者が訪日外国人の実態をリアルに把握していないからでしょう。

とはいえ、これは自治体だけの問題というよりも、日本のIT力が国際的に圧倒的に弱いせいで、海外に通じる情報のプラットフォームをほとんど生み出せていないことがいちばん大きな問題でしょう。Live Japanの惨憺たるありさまはそれを象徴しています。

残念です。
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by sanyo-kansatu | 2017-09-09 11:07 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 03日

下田発グルメミステリー『伊豆下田料理飲食店組合事件簿』の実在登場人物、真理子さんに会ってきた

今回伊豆下田に来て、古い友人で地元在住作家の岡崎大五さんに町を案内してもらったことはすでに述べましたが、そのとき彼は街場の飲食店に貼られた1枚の小さなポスターを見せてくれました。
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伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと
http://inbound.exblog.jp/26831205/

そこには「伊豆下田料理飲食店組合事件簿(連載中)」と書かれています。翌日、ひとりで下田の町を歩いたときも、あちこちでみかけました。飲食店だけでなく、お茶屋さんや八百屋さんにも貼ってあります。
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これどういうこと? なんで大五さんの新刊案内のポスターが町中に貼られているんですか?

実はこういうわけです。なんでも下田で人気の旅行サイト「伊豆下田100景」で彼の小説が連載されるからだそう。このサイトは下田温泉旅館協同組合と料理飲食店組合が運営していて「下田の魅力を〝旅行者目線〟で発信します!」がモットー。

伊豆下田100景
http://shimoda100.com/

この旅行サイトに連載される大五さんの書き下ろしユーモア・グルメ・ミステリーは「小説に登場するのは下田に実在の人物、店、料理。次期組合長の座をめぐるドタバタ事件を老舗そば屋の女将が街中を駆け巡り、名物料理を食べながら真相を追う!」という設定。

タイトルは『伊豆下田飲食店組合事件簿』。全11回の連載を読むには、以下のページから各回100円でダウンロードするか、地元飲食店・書店などで200円で購入することになります。
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伊豆下田料理飲食店組合事件簿
http://shimoda100.com/jikenbo/

で、事件の発端を告げる序章「むさし・天城そば」が4月25日に公開されたばかり。舞台は、下田駅前にあるそばとうどんの店「むさし」です。
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むさし
http://shimoda100.com/restaurant/musashi/

これを読んだぼくは、思わず「むさし」を訪ねてみたくなりました。この連載小説の主人公ともいうべき、同店の店主、別の名を「下田のパパラッチ」こと真理子さんに会ってみたいと思ったからです。

店はごく普通のおそばやさんでした。席に座ると、注文を取りにきたのは、大五さんに聞いていたとおり、アルバイトのフィリピン人のおばさんでした。
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小説にも出てくる「天城そば」を注文。老舗らしく、店内は常連さんが多くいました。

この店のそばは、自分でわさびをするのが決まりです。小説に出てくる新米刑事の新庄誠のように、ぼくもわさびをすりすりしながら、そばを食べました。
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常連さんが会計をしたとき、店の奥から真理子さんがついに現れました。ぼくは思わず「おお、この人か」と思い、会計がすむと、声をかけてしまいました。

「ぼく、この小説を見て来ました」

すると、真理子さんはまんざらでもないというにんまり笑顔で「でも、これフィクションなんですよ」。そう言って足早に厨房に戻るのでした。

4月25日に序章が公開された、この超ローカルな、町の実在店主が登場するミステリー小説は、これから半年かけて、隔週で公開されます(9月25日が最終回)。

この企画は、地元の若いウェブデザイナーらと岡崎大五さんが話し合って実現させたそうです。

この企画の話を聞いて、ついにシーズン6に突入してしまった『孤独のグルメ』(テレビ東京)や喫茶店文化を誇る名古屋ローカルの『三人兄弟』(メ~テレ)などのご当地グルメドラマを思い出しました。

孤独のグルメ http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/
三人兄弟 http://www.nagoyatv.com/3ninkyodai/
http://www.nagoyatv.com/3ninkyodai2/

食が人を呼び込む決定打になる時代です。ネットで調べていたら、こんなグルメイベントもある時代です。

全国ふるさと甲子園公式サイト http://furusato-koshien.jp/

こうしたなか、人口2万3000人にすぎない下田で、こんな企画が生まれるなんて、いい話だなあと思いました。大五さんによると、伊豆下田100景のサイトの運営もそうですが、今回の連載小説企画も、下田の飲食店のみなさんからのささやかな運営費でまかなっているのだそうです。

大五さんは言います。「下田も少子高齢化で若い人は少ない。シャッター商店街だよ、本当に。仕方がないじゃない。全国どこでもそうなんだから。でも、若い人が全然いないわけではない。下田のような小さな町にも、主婦をしながらデザイナーをしてくれる若い人材もいるし、彼女もこれで食えてるわけではないけれど、地元のために何かやりたい気持ちはある。そういう思いで生まれた今回の企画、登場人物の名物店主の全員にお会いして、話を聞きがら物語のあらましを伝えて、小説にしてもいいかと聞いたら、いいよという話になった。みんな魅力的な人たちなんだ」。

その話を聞きながら、こういうことってできるんだなと思いました。大五さんはこんなことも言ってました。ネタバレにならない範囲で、書いてしまいます。

「ミステリー仕立てにするとなると、殺人事件というのが相場なんだけど、実在人物を登場させると、いくらフィクションといっても、殺人はどうかとなった。だいたい伊豆では、事件といっても、せいぜいオレオレ詐欺くらい。でも、登場人物の当の本人は、それでもいいと言ってたんだけどね」

ネットで調べると、確かに最近、伊豆周辺でオレオレ詐欺が続出しているそうです。

・79歳女性110万円被害 “息子”にオレオレ詐欺(伊豆新聞2017/01/27)
伊豆市の女性(79)が25日、息子を名乗る男からの電話で110万円をだまし取られたと大仁署に届け出た。
・伊豆の60代女性 200万円詐欺被害(2016/07/08)
伊豆市の無職女性(67)が8日までに、息子を名乗る男からの電話で現金200万円をだまし取られた。

特殊詐欺防止へ本腰 静岡県警、きょうから注意喚起人形貸し出し(産経ニュース2017.4.1)
http://www.sankei.com/region/news/170401/rgn1704010062-n1.html
オレオレ詐欺被害が発生しています!|伊豆市 くらし・仕事・市政情報
http://www.city.izu.shizuoka.jp/gyousei/gyousei_detail005188.html

伊豆下田ではいま、こんなことが始まっています。地元を元気にするための方法は、お金がなくても、いろいろ考えられるのだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-03 19:35 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 03日

昔と比較して考えるからマズいんじゃないか

前回、伊豆下田に来て感じた日本のインバウンドの現場に共通する問題点として「国内レジャー市場とインバウンド市場の違いを明確に区別していないこと」について書きましたが、もうひとつ強く感じたことがあります。

伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと
http://inbound.exblog.jp/26831205/

それは、全国の関係者に共通することで、特に年配の方たちにいえることですが、昔といまを比較して考えてしまうところが、実は問題ではないかと思うことです。
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今回、ある地元の方との世間話のつもりが、こんな会話の流れになりました。

-下田はいいところですね。海はきれいだし、外国の方も町でよく見かけましたよ。

-みなさん、こちらにいらした方はそうおっしゃるんですけどね。こっちに住んでる者にとってはねえ…。

そして、こちらが尋ねてもいないのに、こんなネガティブトークが始まるのです。

-下田のビーチには、この時期若いサーファーが多いんですね。みんな楽しそう。

-そう思われるかもしれませんが、昔はもっと多かったんですよ。

-いつ頃のお話をなさっていますか。

-バブルになる前の頃。バブルになって日本人がどっと海外に旅行に行くようになる前のことですよ。

-それは1970年代後半から80年代にかけてのサーフィンブームのことですね。

-バブル以降は、みなさん海外の海に行ってしまい、こっちにはもう戻ってきませんからねえ。ここ何年か外国の方もお見えになるようになったといっても、たいした数ではありませんしね。

なるほど、とぼくは思いました。その方は伊豆の海がサーフィンブームで盛り上がった30年以上前の話をしているようなのです。

地元の事情をよく知らない、外から来た人間に「いいところですね」と言われても、素直に「そうですね」と言えない心理はわからないではありません。ではなぜそうなのか。ご本人の認識では、いまより過去のほうが良かったと考えているからでしょう。

でも、その発想から抜けられないこと、昔と比較して考えてしまうことがマズいのではないでしょうか。

下田開国博物館の展示に、エンドレスで流される映像があります。これは同館がオープンした昭和60年(1985年)につくられたもので、その後のバブル期に向かって新しいリゾートホテルなどが建設されつつある下田の現況と21世紀に向けた未来への期待が語られる内容です。

下田開国博物館 http://www.shimoda-museum.jp/
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30年前の映像が未だに館内で流されていること、当時の期待がかなわなかったことに、皮肉を言うつもりはありませんが、いまの地方に暮らす年配の多くの人たちはこんなことになるとは思ってもみなかったのだろうと思います。

ただ、いまの若い人はそんな時代を知りません。だから、過去に比べてどんなに停滞しているように年配の人たちには見えても、彼らはそんな風には考えません。当時のことが忘れられないのは、年配の方々だけなのです。

おそらくこうしたことは、日本全国、地方に限らず、都会でもどこでも見られることでしょう。

この種の年配の人たちに対して批判的だからといって、「平等に貧しくなろう」と無神経に呼びかける脱成長派に組するつもりはありません(そういえば、この人も年配の日本人でした)。昔と比較して考えるのは自分たちだけで、世の中の人間はそうでもないことに気づいてほしいと思います。

過去に囚われずに、一から始められるという意味で、インバウンド市場への取り組みは面白いと思うんです。ところが、安易に、そして無自覚に過去のやり方を踏襲してきたこと、「国内レジャー市場とインバウンド市場の違いを区別」しないできたことがうまくいかない理由だと考えるべきです。なぜなら、相手がまったく違うからです。

そんなことをあれこれ思っていたら、地元在住作家の岡崎大五さんと若い世代の人たちがこの町で新しいことを始めているようです。その話は次回。
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下田発グルメミステリー『伊豆下田料理飲食店組合事件簿』の実在登場人物、真理子さんに会ってきた
http://inbound.exblog.jp/26831661/
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by sanyo-kansatu | 2017-05-03 17:29 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 05月 03日

伊豆下田のユニークな歴史が持つインバウンドの可能性と気になる2、3のこと

その日、伊豆急行下田駅を降りると、改札に岡崎大五さんが待っていて、そのまま2時間ほど、街を案内してくれました。大五さんは『添乗員騒動記』(旅行人)で作家デビューした元海外旅行添乗員ですから、街歩きガイドは手馴れたもの。

伊豆下田でよく見かけたインド人ツーリスト、なぜここに?
http://inbound.exblog.jp/26828882/

下田の街歩きのテーマは歴史です。幕末の日本の開国後の細かい約束事を決めた下田条約が締結されたことは知っていても、当時の日本の様子やその頃、唯一外国人が自由に歩き回ることのできた数年間の下田でどんなことが起きていたのか。いわば、江戸期以降の日本人の欧米人との最初の生身の接触と交流の場であり、それを物語る実在の舞台があちこちに点在しているのです。

駅から南に向かって10分ほど歩くと、1854年3月に日米和親条約が締結され、ペリー艦隊が下田に入港した後、彼らの応接所兼幕府との交渉場所となり、下田条約(同年5月)が結ばれた了仙寺があります。子供の頃、歴史の教科書に載っていたかもしれない『ペリー陸戦隊了仙寺調練の図』(1856年)が寺に飾られていて面白いです。
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了仙寺 http://www.izu.co.jp/~ryosenji/

次は、下田開港後、入港してくる外国船の乗組員たちに薪・水・食料などの「欠乏品」を提供する拠点として使われた欠乏所跡。大五さんによると「日本最初の免税店」だそう。こういうたとえは面白いですね。
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それからペリー一行が入港地から了仙寺に向かう水路沿いの参道だった現「ペリーロード」を抜け、長楽寺へ。実はここは、同じ年の12 月、ロシア使節海軍中将プチャーチンとの交渉の末、日露和親条約が調印された場所。日本はアメリカだけでなく、同じ年にロシアとの国交を始めていたんですね。
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長楽寺 http://shimoda.izuneyland.com/chorakuji.html
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この条約によって日露の北方領土(択捉以南は日本、以北の千島列島はロシア)が確定し、樺太は日露雑居を認めることが決まったわけで、大五さんによると「日本政府の北方四島が日本に属するとの主張はこれを根拠にしている」とのこと。
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それからペリーロードを港に向かって歩くと、ペリー艦隊上陸の地に着きます。彼の正式な肩書きはアメリカ海軍の東インド艦隊司令長官。周辺はヨットハーバーになっていて、ベビーカーを押した欧米人カップルが歩いていました。
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そこから大五さんの奥さんの運転する車で、最初の駐日アメリカ領事館として使われた玉泉寺に行きました。最初の総領事はハリスで、唐人お吉の物語の舞台でもあります。寺院内には遭難したアメリカの水兵の墓があります。
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玉泉寺 http://shimoda.izuneyland.com/gyokusenji.html
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その日の散策はここまで。それにしても、外国とのゆかりを持つ寺がこんなにある町は珍しいのではないでしょうか。当時、遠来の客を迎えることができる施設はお寺くらいしかなかったということでしょうか。外国人から見た日本の住宅環境の問題は、当時もいまも変わらない気がしますね。しかも、その後の国運を決める国際的な条約を締結した歴史的な場所でありながら、そんなこともすっかり忘れ去られたかのように、いまはのどかな港町にすぎないことが不思議な気がしてきます。

翌朝、ひとりで下田開国博物館と了仙寺の境内にある黒船ミュージアムを訪ねました。
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下田開国博物館 http://www.shimoda-museum.jp/
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黒船ミュージアム http://www.mobskurofune.com/

展示の中身については、各ウェブサイトを参照していただくとして、この2館を訪ねたことで、昨日大五さんに案内された下田の歴史背景があらためてよくわかりました。なかでも面白かったのは、黒船ミュージアム内のシアターで観た映像でした。

黒船来航を日本人が描いた絵巻物や肉筆画、錦絵やかわら版など使って当時の様子をわかりやすく解説しているのですが、アメリカ人の中には芸者の写真を撮ろうとしたり、彼女らを何人もはべらして酒を飲む水兵がいたり、とにかく彼らのやることなすこと、身につけているもの、手にしているもの、そのすべてを当時の日本人は面白おかしく絵にしているのです。彼らがどれほど好奇のまなざしをアメリカ人に向けて、彼らとの交流を楽しんでいたかわかるのではないでしょうか。昔学校で習った教科書の内容とは違い、庶民の間ではペリーと黒船は必ずしも怖がられていなかったというのです。その例として挙げるのが、ミュージアムの入り口にある、当時人気だった西郷隆盛似にされてしまったペリーの肖像画です。
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同館のキャッチフレーズは『日本人が見た外国人、外国人が見た日本』。アメリカ人絵師が描いた当時の下田の様子も面白いです。アメリカ人の周りに群がる地元の子供たちもそうですが、背中に赤ん坊を負った若い母親も、じっと彼らを見つめています。こういう絵を観ると、昔、自分がインドやバングラディシュに旅行に行ったときのことを思い出します。

この映像は、英語と中国語のバージョンもあるそうですが、外国人にウケる面白い素材ではないかと思いました。YOU TUBEで100年以上前の日本の風物を外国人が撮った写真がアップされるのをよく見かけますが、この種の写真は日本人のみならず、外国人にも魅力的で、一緒に観ていると、ほのぼのします。なぜなら、外国人にとって、目の前にいる21世紀の日本人と150年前の日本人の間に、我々が気づかない共通点を見つけたりするものだからです。そして、無邪気に外国人と交流する日本人の姿が好ましく思えるのです。

これはインバウンドにとって格好の素材といえます。

その本家本元が下田なのですから、このユニークな歴史を外国人相手にもっと前面に出したほうがいいのでは、と思いました。

駅前の観光案内所に置かれていた英語版の伊豆下田のパンフレットを見て思ったことがあります。本編全26ページのうち、表紙もそうですが、最初の12ページまでがビーチリゾートで、13ページ目がキンメダイに代表される下田のグルメ、15ページ目の見開きで初めて下田の歴史が紹介され、次の17ページは黒船祭り。以後は再び地元のローカル文化の紹介という構成になっています。

何を思ったかといえば、これでは日本国内客向けのPRをただ英語版にした焼き直しに見えてしまうことです。国内向けには、ビーチを前面に出す、この構成でいいのかもしれません。しかし、それでは下田の本当のユニークさが外国人相手に伝わらないのではないでしょうか。確かに、下田はビーチの美しい。それは国内向けには通じても(あるいは、日本在住欧米人やインド人には)、海外から日本を訪れる人たちには、ほとんど差別化になっていません。

なぜなら、日本でビーチリゾートといえば、沖縄なのです。下田のビーチの美しさは首都圏では定評がありますが、海外の特に欧米系や英語圏の人たちは、東アジアからの観光客のようなリピーターは少ないので、まず日本列島全体をみて目的地を決めますから、ビーチで売ろうとするのは厳しいのです。むしろ、下田にしかない別の顔を見せるべきでしょう。

その意味でも、1934 年に始まり、毎年5月に開催される黒船祭りは、下田のユニークな歴史を象徴するイベントです。

黒船祭り
http://www.shimoda-city.info/event/kurofune.html

問題は、それを海外に伝えるPRの発想の転換が必要なんだと思います。たとえば、先ほどの英文パンフレットの黒船祭りのページには、簡単な祭りの由来の英文と武士にコスプレした市民やペリー像の前に立つ米軍仕官の写真などが散りばめられていますが、残念ながら、これだけの説明では、祭りの意味を理解できる人は少ないのではないでしょうか。外国人のみならず、日本人にとってもそうなのでは。理解できなければ、訪ねてみようという気は起こりません。

この際、下田はインバウンド向けPRに限って、このユニークな歴史を伝えることに徹底したらいいのではないでしょうか。国内向けとはまったくPRの発想と中身を変えるのです。ビーチとグルメと宿の話は、最後に触れるだけでいい。あとは東京からの伊豆急行などの観光電車を使ったアクセスと。そうすることで、下田という町のオンリーワンの個性が明確になると思います。

もしその結果、多くの外国人が下田を訪れるようになったとき、初めて国内客向けと同じPR手法に変えていけばいいのです。現状では(国内向けと同様に)海もある、グルメもある、歴史もあるでは、個性が明快に伝わらないのです。「そんなの日本の他の地方と同じでしょう」と外国人には見られてしまうからです。
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ただし、外国語の説明文を新たにつくる場合、日本語の直訳ではダメです。一般の外国人には日本人が普通に知っている幕末開国の基礎知識がほぼないからです。説明の仕方も、日本人好みの人物や歴史ネタばかりでなく、あらすじをわかりやすく丁寧かつ簡潔に整理しなければならないため、一から外国語で文章をつくる必要があります。

「外国人目線を大切に」というわりには、最も基本的な情報発信の面で、日本のインバウンドは根本的に問題があると思います。それは、国内レジャー市場とインバウンド市場の違いを明確に区別していないことから起こるのです。
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by sanyo-kansatu | 2017-05-03 15:00 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 04月 20日

バケーションレンタルって何?

昨晩のワールドビジネスサテライト(テレビ東京)で、バケーションレンタルの世界最大手HomeAwayの日本進出が報じられました。

出張の会社員向けも… ユニークな民泊ビジネスが続々(2017/04/19)
http://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/newsl/post_130526

きょうから日本市場への本格参入を発表した、米・民泊仲介大手ホームアウェイ。都心を中心に少人数向けの物件が多い、同じく業界大手のエアビーアンドビーに対し、ホームアウェイは大人数向けに地方の一棟貸しをするのが最大の特徴です。リピーターが6割という訪日観光客が地方へと足を伸ばしているのに合わせ、民泊解禁と共に需要取り込みに期待を寄せます。3月から始まった民泊予約サイト「トリップビズ」は、審査を通過した企業だけが利用できるビジネスマンの出張に特化した仲介サービスで、約20社が契約しています。インバウンドの増加などでホテルの予約が取りにくい中、手ごろな料金で泊まれると言います。「トリップビズ」を展開するのはメガネチェーン大手のオンデーズ。自社の社員の出張が多かったため、宿泊施設確保の時間や費用を削減するため作りました。


昨日午後、都内のHomeAway日本支社で以下の記者会見もありました。
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世界最大級のバケーションレンタル会社 X 日本最大級のDMO HomeAwayとせとうちDMO、インバウンド観光推進で業務提携~歴史的な資源を活用した広域インバウンド誘致を目指す~(記者会見リリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000024333.html

この記者会見のポイントは、HomeAwayが瀬戸内海に面した7県の観光地経営推進組織「せとうちDMO」と提携して、この地域の古民家を外国人観光客にPRを始めるという話です。ワールドサテライトでも「地方の古民家丸ごと貸し出す!? 世界最大級の“民泊会社”が日本に」と報じていました。

提携したのは以下の両者です。
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HomeAway(日本語版)
https://www.homeaway.jp/
せとうちDMO
https://www.setouchi-bc.co.jp/setouchi-dmo

この記者会見は短時間でよくポイントがよくまとめられたものでした。その内容を紹介する前に、そもそもバケーションレンタルって何? という話から始めたいと思います。

解説してくれるのは、HomeAway日本支社の木村奈津子社長です。

彼女はバケーションレンタルを「オーナーが部屋を使用しない期間、物件を旅行者等へ短期間貸出するレンタルサービス」だといいます。ゲストハウスやシェアハウス、ホームステイなどの「個室」を扱う民泊はバケーションレンタルの一部にすぎないとも。そして、同社が注力するのは、「個室」ではなく、一軒家や別荘、古民家、マンション、ヴィラ、ロッジなどの「貸切り」だといいます。
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背景には、訪日外国人が利用する宿泊施設のニースの多様化があります。このデータはどこまで信憑性があるのかわかりませんが、訪日客の60%がリピーターであることから、新しいタイプの宿泊施設が求められているとも。
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ここで彼女は今日の宿泊施設を「サービスの充実度」と「ホストとの交流/プライベートへの志向」というふたつの軸で以下のようにマッピングします。もちろん、これはバケーションレンタルをメインにすえたものですから、ホテルや旅館といった既存の施設の多様性には触れません。興味深いのは、同社ではサービスの充実度よりセルフサービス寄り、ホストとの交流よりプライベートな空間を求める「ペンション、ヴィラ(1~3名)」「町屋、古民家(2~10名)」「家主不在型民泊 マンション(1~6名)」「家主不在型民泊 一軒家(2~20名」を重視していることです。
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これらの説明は、ここ数年民泊市場を席巻してきたAirBnBとの差別化を強く意識したものと思われます。彼女は両者の違いについてこのように説明しています。

         HomeAway     AirBnB
利用者の年齢層  中年層が中心    若年層が中心
宿泊人数      家族・グループ    一人旅
物件の立地     地方・リゾート地   都市部
予約単価・日数   平均1032$・6日間 平均584$・4日間
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つまり、都市部を中心に少人数向けの物件を提供するAirBnBに対し、大人数向けに地方の物件を一棟丸ごと貸し出すのがHomeAwayというわけです。

ここで示されるターゲット層や利用の状況については、アメリカで放映されているHomeAwayのCMをみるとよくわかります。
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Get HomeAway from it all(Home Away CM)
https://www.youtube.com/watch?v=G19cDebTd2s

このCMに見られるのは、おなかの出た中年のお父さんがパンツ一丁で登場するような、徹底的な大衆性です。家族がプライベートな空間を気取らず楽しむイメージであふれています。これでは到底若い世代にはウケませんが、それでいいのです。

今年に入って訪日外国人数は増えてはいるものの、その伸びが鈍化していることもあり、そもそも問題の多い「家主不在型民泊」で市場を席巻してきたAirBnBが伸び悩んでいると聞きます。

訪日外客数(2017 年3 月推計値)
◇ 3 月 : 前年同月比9.8%増の220 万6 千人(JNTO)
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/170419_monthly.pdf

訪日客の大半を占めるアジアからの旅行者の団体から個人への移行が進むなか、彼らの多くは一人旅やカップルというより、家族や小グループでの旅行を好むため、都市部のワンルームマンションのような狭い物件は使いづらくなっていることが考えられます。訪日客のニーズの変化とAirBnBが主に提供する物件のミスマッチングが起きているのです。

3月上旬、上海で現地の旅行関係者からこんな話も聞きました。「昨年まで中国の個人客は、安く上げられることを理由に民泊に夢中でしたが、日本のマンションは狭すぎるので、もう利用したくないというんです」。

だからこそ、民泊ではなく、これからはバケーションレンタルでしょう。そう同社は訴えているのです。

こうした動きに乗ったのが、日本のインバウンド市場では後発だった瀬戸内海周辺の関係者でした。

今回の記者会見でも、せとうちDMOはHomeAwayとの提携の経緯について語っていましたが、そのひとつの理由が、全国に150万軒あるという江戸後期から近現代にかけての古民家の保存・再利用をきっかけにした地域振興でした。なんでも瀬戸内には30万軒もの古民家があり、その大半は朽ち果てていくのを待つばかりの状況だそうです。

今回の提携に基づく最初の取り組みとして、愛媛県の古民家を再生した宿のHomeAwayによる海外市場へのPRが始まります。
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記者会見会場には、けっこう多くの取材陣が集まっていました。昨年メディアで論議が盛り上がった民泊の次のステージを告げるバケーションレンタルに対する関心の高さからでしょうか。
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質疑応答のとき、週刊朝日の記者がいい質問をしていました。「古民家のオーナーたちはどれだけコストを負担する必要があるのか」。

せとうちDMOの関係者によると、理想的には行政からの補助なども含め、オーナーのコスト負担はなしを原則にしたいが、実際にはオーナーが物件の所有者なのか事業者となるかなど、ケースによって異なるとのこと。そして、以下のような目標も掲げていました。

HomeAwayとせとうちDMOが提携、21年までに年間5.5万人泊(Travel Vision2017年4月19日)
http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=77361

ここ数年、HomeAwayの親会社であるexpediaをはじめとした海外の宿泊予約サイトの日本市場参入によって、インバウンド宿泊市場は活性化してきました。どんな無名の宿泊施設でも、サイト上でうまくPRすれば外国客が押し寄せるという状況が生まれていたのです。その意味では、今後インバウンドのメインステージとなる地方でバケーションレンタルという新機軸を掲げるHomeAwayの展開には期待が持てます。

その一方で、どれだけ有望な施設を提供できるのか。せとうちDMO関係者の話では、新施設を開業させるのはそんなにたやすい話でもなさそうです。

実をいえば、すでに多くのマッチングサイトがこの市場に参入しています。バケーションレンタルというのは、そんなに新しいものではなく、日本人も以前からハワイでコテージなどを貸し別荘として利用するなどしていました。同じことを国内で外国人向けに始めようという話です。HomeAwayでも、たとえば、愛媛県のページをみると、すでにいくつかの物件が紹介されています。
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はたして日本のインバウンド向けバケーションレンタル市場は今後どう動いていくのでしょうか。

来月下旬には、バケーションレンタルのイベントもあるようです。巻き返しを図るべくということなのか、AirBnBも出展するとか。

バケーションレンタルEXPO
http://minpaku-expo.com/visitor/
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by sanyo-kansatu | 2017-04-20 12:17 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 04月 09日

街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示

このたび、ある中国の友人とこんなブログを始めることにしました。
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街で見かけた 《お恥ずかしい》 中国語表示
http://ramei.exblog.jp

これまで本ブログでも何度か指摘してきましたが、外国人観光客が増えるのにともない外国語による案内表示が街に増えているのですが、ずいぶん間違いが目につくようなのです。

これはやばい!? 日本にはおかしな中国語表示があふれている
http://inbound.exblog.jp/24370756/
日本にあふれる「恥ずかしい中国語」をついに中国人に指摘されてしまいました
http://inbound.exblog.jp/26343657/

そこで、ぼくも中国語の勉強を兼ねて、街で見かける中国語表示のチェックを始めてみようかと思ったのですが、実際のところ、どこがどう間違っているか、よくわかりませんでした。間違いに気づくには、それなりの語学力が必要です。その話を友人にしたところ、中国人留学生なども巻き込んで、「間違い中国語探し」を始めてみようかということになったのです。

以下は、そのブログの代表である羅鳴さんの口上です。※同ブログより

日本を訪れる中国人の気持ちに気づいてほしい

僕は羅鳴と申します。広東出身で、来日してもうすぐ30年になります。

日本に来たばかりの1980年代後半、東京にはすでに多くの中国人がいましたが、今日のように街で中国語の案内表示を見ることありませんでした。その頃の日本の社会では、中国人はまだ貧しく、来日するのも出稼ぎのためと思われていて、そのような人たちに買い物や観光の案内が必要だとは誰も思っていませんでした。確かに、その当時、多くの中国人は僕のような留学生か、不法滞在者ばかりで、生活のためだけで精一杯、遊ぶ余裕も時間もありませんでした。

そんな中国人も、この30年間の改革開放政策のおかげで、経済大国になるほど成長を遂げました。国民もだんだん経済力を持つようになり、以前は夢のようだった海外旅行にも行けるようになりました。いまでは世界のあちこちに中国人観光客がいて、日本でも、銀座や新宿などでは、中国語がうるさいほど聞かれます。

中村さんとは古いつきあいです。ある日、彼から「おかしな中国語表示が増えていることに気づいていましたか」と聞かれたので、思わず苦笑してしまいました。「もちろんですよ」。そう答えた僕は、以前ある公衆トイレに貼られていた中国語表示をスマホで撮った写真を見せました。「やっぱり、そうですか…」。彼はやれやれというような困った顔つきになりました。

僕はもう日本に長く住んでいるので、こうした中国語を見ても、そんなに驚いたり、ガッカリする気持ちはありません。むしろ、多くの日本人が中国人観光客のために中国語表示を用意している姿を想像すると、悪い気分ではありません。もちろん、多くの場合、中国人にたくさん買い物をしてもらいたいからという理由からなのでしょうが、それは当然だと思うし、日本人の側から発せられるメッセージとしては、つたないぶん、微笑ましくもあるのです。

これを機会に、日本を訪れる中国人の気持ちに気づいてもらえるとうれしいです。 

                                                
そして、以下は同ブログマネージャーとなったぼくのあいさつということで。

【マネージャーからのひとこと】
中国語の勉強のつもりで始めました


私は中国語の初心者で、毎週1回、都内の小さな語学教室に通い、中国人留学生の先生に中国語を教えてもらっています。あまりまじめな生徒ではないので、すぐにテキストとは関係ない世間話を先生とするのですが、ここ数年日本の街角でよく目につくようになった外国人向けの案内表示やポスター、パンフレットなどで使われる、ちょっとおかしな中国語のことがよく話題になります。

正直なところ、私はそう言われても、どこがおかしいのかよくわかりませんでした。先生によると、単語の使い方や文法が間違っている以上に、日本語的な発想で中国語を使ってしまっている例や外国人が知らない日本人だけが了解している事情を説明なしに、そのまま翻訳してしまっているという例が多いそうです。あとは、安易に翻訳ソフトを使いすぎではないのかとも。

これまでそんなことを考えてもいなかったので、私は街角の外国語表示が急に目に入ってくるようになりました。日本人がつい間違えてしまう外国語表示とは、それすなわち、自分自身が普段使っている英語や中国語であり、それがいかにあやしげなものか、気になるようになったのです。

そんな話を古い友人の羅鳴さんにしたところ、当然のことかもしれませんが、日本に長く住む彼はとっくに気がついていました。そのうち、お互い街でおかしな中国語表示を見かけたら、写真を撮って、それを勝手に添削してネットで報告するブログを始めてみようか、という話になりました。聞きようによっては、意地悪なたくらみに思えるかもしれませんが、逆をいえば、このことについて日本を訪れる中国系の観光客の大半はすでに気がついていたわけで、それを知らなかったのは我々日本人だけだったのです。しかも、これは中国語に限った話ではありません。英語はもちろん、最近増えてきたタイ語も同様です。

中国語の勉強のつもりで始めたブログですから、誰かの揚げ足を取ったり、貶めようとする意図はまったくありません。もしよろしければ、皆さんもおかしな外国語表示を見つけたら、ご一報いただけるとさいわいです。
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by sanyo-kansatu | 2017-04-09 09:57 | “参与観察”日誌 | Comments(0)
2017年 02月 10日

中国客の『君の名は。』聖地巡礼が起きたのも、岐阜県の地道な取り組みが実を結んだ結果

先日、ネットに岐阜県が舞台の『君の名は。』聖地巡礼の話が出ていました。実は、そろそろこの話が出てくる頃だろうと友人と話していました。

ここは岐阜県飛騨市、JR高山本線の飛騨古川駅だ。昨年8月に公開されて大ヒットを記録した映画『君の名は。』のヒロイン・三葉が住む山里のモチーフのひとつになったことで、「聖地巡礼」(アニメの舞台となった土地をファンが実際に訪ねる旅行)の観光客が増加している。

作中で主人公が利用した図書館のモチーフになった飛騨市図書館も「巡礼地」のひとつだ。飛騨市によると、『君の名は。』展示がおこなわれている同図書館内で写真撮影を申請した人数は、昨年8月26日から12月31日までの約4ヶ月間で3万6200人に達した。

そのなかに少なからず含まれているのが、台湾・香港・中国など東アジア各国からのファンである。特に昨年12月に中国で作品公開がはじまり、同国の日本アニメ映画興行記録の歴代1位となる大ヒットを記録したことで、中国大陸から飛騨古川を訪れる人も増えた。


『君の名は。』聖地に“リア充”中国人集団が殺到中(文春オンライン2017/02/08)
http://bunshun.jp/articles/-/1325

この記事によると「春節期間前後の中の1月25日から2月3日まで、市内の『まちなか観光案内所』を訪れた外国人客の合計は566人」。内訳は以下のとおり。

台湾人……218人
中国人……134人
香港人……134人
シンガポール人……28人
タイ人…‥25人
韓国人……15人
マレーシア人……12人

やっぱり、台湾客がいちばん多かったのですね。映画の公開が早かったこともあるでしょうけれど、この種の話題にいち早く食いつくのは、台湾の人たちです。

興味深いのは「食堂のノートに残された正しき「巡礼」の足跡」という話です。

「市内の食堂に置かれたメッセージノートのページをめくると、英語や中国語・韓国語・広東語の書き込みも目立つ。自作のイラストを描いている人もおり、正しき「聖地巡礼」の姿を感じさせた」

そして、実際の書き込みの写真が載っています。中国のネット上にはこの種の書き込みはあふれていますが、生書き込みを見ることは少ないので、面白いです。

記事はこう結ばれています。

「爆買い現象が一段落し、さらに今年の春節では中国人ツアー客の大幅な減少を伝える報道も出ている。そんななか、地方のインバウンド誘致の新しいパターンとして、飛騨古川の事例はなかなか興味深い話と言ってよいのではないだろうか」

全体にちょっとはしゃぎすぎのようにも思えますが、いま日本各地で起きていることをわかりやすく伝えています。

というのも、この種の中国客の「聖地巡礼」の話題は、これまでも『スラムダンク』の鎌倉高校とか前例はいろいろあるからです。

「スラムダンク」の舞台『鎌倉高校前駅』―中国・台湾観光客のやりすぎ記念撮影(JCASTテレビウォッチ2015/8/12)
http://www.j-cast.com/tv/2015/08/12242532.html

先月、本ブログで紹介した台湾人監督による短編映画がきっかけで、北海道の無人駅を訪ねる中国客が現れて、ちょっと困っているという一件も、「聖地巡礼」系の話でしょう。

北海道のローカル駅の線路に入る「危ない訪日客」が出没する理由がわかってしまいました (2017年 01月 14日)
http://inbound.exblog.jp/26555234/

さて、アニメヒット作のおかけで、にわかに岐阜県の注目度がアップしているように思われた方もいるかもしれませんが、実はそれだけではなかったという話を簡単にしておきたいと思います。

岐阜県のインバウンド誘致の取り組みには、以前から定評があったんです。背景には、岐阜県の弱みがありました。端的にいうと、国際線が乗り入れている空港がなく、都市部から時間がかかるというアクセスの悪さです。その一方、飛騨高山の古い街並みとそこに住む人々、世界遺産の白川郷のような他にはない強みがありました。

大事なのは、その弱みを逆手にとって、自分なりのやり方でプロモーションをしようと考える人材が岐阜県にはいたことです。その方が始めたのは、地元が十分受け入れ可能で、本当に来てほしい層を呼び込むのに有効なSTPマーケティング(セグメント、ターゲティング、ポジショニングを設定した手法)の具体的な実践でした。

その一連の話をぼくは最近書いた日経BPネットの以下の連載で紹介しています。

知名度がなくアクセスも悪い観光地をどうプロモーションするか(日経BPネット2016年12月27日)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/122600027/
知名度がなくても始められる「旅行体験共有会」という手法(日経BPネット2017年01月30日)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/012700028/
個人旅行の時代には口コミの核になるファンを集めよう(日経BPネット2017年01月31日)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/012700029/

記事では、岐阜県が2010年頃から地道な取り組みをしていたことを紹介しています。岐阜県の担当者と二人三脚でプロモーションに取り組んだ上海側のPR会社の日本人がどういうことをやってきたか。ぜひ目を通していただけるとさいわいです。

こういう下地があってこそ、今回の話につながったのだと思います。

いま岐阜県が、このテーマで記事に出てくる「旅行体験共有会」をやったら盛り上がりそうですね。
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by sanyo-kansatu | 2017-02-10 07:42 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)
2017年 01月 11日

2016年の訪日外国人数は2400万人超ですが、もう数の増減だけの議論はやめてほしい

1月10日、石井国土交通大臣は記者会見で、2016年の訪日外国人数の推計値が2403万人であることを明らかにしました。日本政府観光局(JNTO)による各国別も含めた訪日外国人数(推計値)の公表は、来週の17日(火)の予定ですが、過去最高となる数値を政権与党としてはいち早く発表したかったものと思われます。日本の経済指標で二桁、しかも20%超で成長している分野は少ないことから、訪日外国人市場への取り組みを政権の看板政策のひとつとして見せたいのかもしれません。

NHKは以下のように伝えています。

去年の訪日外国人旅行者 2400万人超 過去最高更新(NHK1月10日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170110/k10010833931000.html

去年(平成28年)1年間に日本を訪れた外国人旅行者はアジア各国との間で航空路線が増えたことなどから推計で2403万人余りとなり、過去最高を更新しました。

国土交通省の発表によりますと、去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者は推計で2403万9000人となり、これまでで最も多かったおととし(平成27年)の1973万7409人より430万人余り、率にして21.8%増えて過去最高を更新しました。

これは、アジア各国との間で航空路線やクルーズ船が増えたことに加え、中国やベトナムからの旅行者向けのビザの発給要件が緩和されたこと、さらに外国人旅行者に対する免税制度が拡充されたことが主な要因です。

政府は、空港や港などのインフラ整備や地方の観光資源の掘り起こしなどを通じて日本を訪れる外国人旅行者を2020年に年間4000万人に増やすことを目標にしています。

石井国土交通大臣は閣議のあとの記者会見で「クルーズ船のさらなる受け入れに向けた環境整備や、富裕層などをターゲットとしたプロモーション活動などを戦略的に進め、目標の達成に向け政府一丸で取り組んでいきたい」と述べました。

官房長官「2020年に4000万人実現を」

菅官房長官は閣議の後の記者会見で「安倍内閣としては、観光を地方創生や成長戦略の切り札と位置づけ、ビザの戦略的緩和や免税制度の思い切った拡充など、大胆な取り組みをやつぎばやに実行しており、それが大台につながった。ことしも訪日外国人の勢いが止まることが無いよう、さまざまな対策をしっかり行って、2020年に4000万人を実現したい」と述べました。


朝日新聞も次のような記事を配信しています。

昨年の訪日客、2403万9千人 過去最多更新(朝日新聞2017年1月10日)
http://www.asahi.com/articles/ASK1B3CJBK1BULFA009.html

朝日の記事のポイントは「増加は5年連続だが、伸び率は15年(47%増)より鈍化」したと指摘していることでしょうか。ネット記事のタイトルは上記のとおりでしたが、11日の朝刊記事では「訪日2400万人 鈍る勢い 昨年最多 欧米富裕層にPRへ」となっているように、石井国交相の「目標に向かって堅調な伸びを示している」との認識を伝える一方、15年に比べ増え方が鈍ったことや1人あたりの消費額も前年割れする見通しを伝えています。また、とってつけたように「欧米の富裕層へのPRに力を入れる方針」にも触れています。

一方、日本経済新聞は前向きな捉え方をしています。

16年の訪日客2400万人超、最高を更新 5年連続の増加(日本経済新聞2017/1/10)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS07H0M_Z00C17A1MM8000/

(一部抜粋)中国や韓国からの観光客が堅調だった。ただ、全体の伸び率は、円安やビザ発給要件の緩和などで前年比約5割増だった15年に比べて緩やかになった。一時の円高傾向や熊本地震、中国経済の減速などが響いた。

一方、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムなど東南アジア各国からの観光客が大きく増えた。現地で実施した誘致のためのキャンペーンや新たな航空路線の開設などが寄与した。

政府は訪日客のさらなる増加に対応するため、受け入れ体制を整える。17年度予算案では、観光庁予算を過去最大の256億円としたほか、首相官邸主導で他省庁の予算でも観光関連分を拡充した。菅義偉官房長官は17年に取り組む重点施策の一つに観光分野を挙げており、特に地方経済の活性化につなげたい考え。

農林水産省は従来の農山漁村の振興交付金に50億円の「農泊」枠を新設した。政府は皇居や御所など全国の皇室関連施設の公開拡大も進める方針で必要な運営経費を新たに計上する。テロなど治安対策に向けては、国土交通省はボディースキャナーなど高性能な保安検査機器を19年までに国内の全ての主要空港に整備する。


東南アジア客の増加を強調しているところなど、朝日とは少し見方が違うようです。また受入態勢の整備への予算増や治安対策などについても触れています。

各国別推計値については、昨年12月に出た1~11月の訪日外国人数の推計値をみる限り、東南アジア各国からの観光客も増えていることは確かですが、トップ2の中国と韓国がダントツです(来週わかることですが、おそらく中国約650万人、韓国約500万人といったところ)。この政治関係の良好とはいえない二国がトップ2であることは、いつまでこの「堅調な伸び」が続くかを考えるうえで小さくない懸念材料です。

では、今年はどうなるのでしょうか。数日前の産経ニュースによると「旅行大手JTBは29年の訪日客数予想を2700万人とし、小幅な伸びにとどまると分析」していうようです。「小幅な伸び」(伸び率としては16年の半減)という現実的な数字を挙げているとはいうものの、昨年より300万人増加させるということですから、そんなに簡単ではないかもしれません。

28年の訪日客数は「2400万人前後に」 石井啓一国交相 前年比2割増 プロモーションやクルーズ船増で(産経ニュース2017.1.6 ) 
http://www.sankei.com/politics/news/170106/plt1701060037-n1.html

いずれにせよ、大手メディアは訪日旅行市場の数字について、政局とからめて論じたがるところがあるようなので、2400万人を達成しても「鈍る勢い」などと書きたくなるのでしょうけれど、もう増減をめぐる評価はいい気がします。またネット上でも、訪日中国客の伸びが昨年に比べて鈍化したことを「中国経済の減速」と結びつけて、大げさにもの言いする人をたまに見かけますが(要は、中国経済はもうダメだと言いたいだけ)、2015年が訪日旅行市場にとって特別の年であり、パイが増えれば伸び率が少し落ちるのも当然なのに、そういう全体像が見えていないがゆえのおっちょこちょいに思えてしまいます。

そもそも国際関係を含めた国内外のさまざまな要因が影響する訪日旅行市場は、時によって増えもすれば減りもします。特に今年は国際情勢の変化が気になります。である以上、政府もメディアも、そろそろ市場の具体的な中身や訪日客の増加がもたらす日本社会への影響などに議論を移してほしいものです。
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by sanyo-kansatu | 2017-01-11 09:08 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)