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2017年 12月 24日

中国シェアサイクル路上廃棄問題をマナーと結びつけるのは偏向報道だと思う

昨日、テレビ朝日が以下の中国シェアサイクルの路上廃棄問題を伝えました。
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人気の「シェア自転車」 路上に放置で「歩けない」(テレ朝ニュース2017/12/23)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000117350.html

(一部抜粋)町で気軽に自転車を借りたり、乗り捨てたりできるサービス「シェアサイクル」。日本でも無料通信アプリの「ライン」が、来年前半をめどにこのサービスを始めると発表しました。しかし、発祥の地とされている中国では、マナーの悪さなどが社会問題となってきています。

このニュース、いまごろ?という感じの新鮮味のない情報であることもそうですが、同局のアナウンサーがやたらと中国人の「マナーの悪さ」を強調しているのは大いに疑問です。そもそも「どこでも乗れて乗り捨て自由」という中国のシェアサイクルのルール自体に問題があったというべきで、こうなることは最初からわかっていたと思います。物事の本質を隠し、固定化したイメージを視聴者に植えつけようとする偏向報道といってもいいのではないでしょうか。

そもそも日本ではこんなルール考えられませんが、もし仮にそうなったとしたら、同じことは日本でも起こるでしょう。すでに駅前の駐輪問題が起きているわけですから。

テレ朝のアナウンサーが煽るべきは中国人の「マナー問題」ではなく、なぜこのようなことが起きているのか、その背景を伝えることでしょう。

今月に入ってようやく日本のメディアも、中国ではすでに報道されていたシェアサイクル企業倒産のニュースを報じています。

中国のシェア自転車、廃棄車両の山 破綻や経営悪化続く(朝日新聞2017年12月5日)
https://www.asahi.com/articles/ASKD141DZKD1UHBI00T.html

中国で爆発的にヒットしたシェア自転車の運営が曲がり角を迎えている。一部は日本など海外にも進出を果たすほどだが、現地では過当競争で利益が上がらず、破綻(はたん)や経営悪化が相次ぐ事態に。大手も例外でなく合併が話題に上る。無秩序な駐輪に頭を痛める地方政府が規制を始め利便性も減少。交通の邪魔になる車両は「墓場」と呼ばれる保管場に運び込まれている。

「大変申し訳ない。終始薄氷を踏むようだった」

青色の車体で親しまれた小藍単車(ブルー・ゴー・ゴー)の創業者李剛氏は11月半ば、公開書簡で倒産を表明した。外国進出も果たしたが、サービス開始から1年での退場。競争の厳しさを切々とつづった。

業者の倒産が相次ぐようになったのは、今年半ばからだ。背景には、収益性の構造的な低さがある。

シェア自転車は利用料と利用データの販売という二つの収益源がある。だが利用料は、草分けで大手の摩拝単車(モバイク)でさえ30分0・5元(約8・5円)からと格安。競争力の低い他社では無料をうたうケースもある。そのうえ、データも地方政府の都市計画に使える程度といい、収益力は強くない。経営悪化で、登録時に払った保証金がユーザーに返らない問題が頻発している。

経営の難しさは大手も例外ではない。モバイクともう1社の大手ofoの合併説が根強く流れている。中国イノベーションの旗手として投資を集めた両社が収益を上げる手っ取り早い手段が合併というわけだ。

地方政府による自転車の駐輪規制も影を落とす。急速な広がりと過当競争で自転車が街角にあふれ、通行の妨げになった問題を重く見た。だが、どこでも止められる利便性が普及に大きな役割を果たしたため、規制が厳しければ魅力を損なうことになる。

「環境にいい」という印象に傷がつく事態も起きている。交通の邪魔になる車両を地方政府が回収し、保管場に次々と運び込んでいる。その結果、各地の保管場は、シェア自転車の「墓場」と呼ばれている。
日本でも広がりつつあるシェア自転車。だが一大市場となった中国での持続性には今、大きな疑問が投げかけられている。(北京=福田直之)


実際、シェアサイクル大量放棄問題は、今年夏くらいから中国のネット上では問題提起されていました。日本ではようやく中国のシェアサイクルの先進性が広く話題になり始めていた頃の話です。

こんなネット記事もありました。

厦门出现壮观“共享单车”山丘:ofo亮了(アモイに出現した壮観なシェアサイクルの山)
https://mbd.baidu.com/newspage/data/landingsuper?context=%7B%22nid%22%3A%22news_9780158454380636161%22%7D&n_type=0&p_from=1
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これは中国福建省アモイのシェアサイクル廃棄場をドローンかなにかで撮ったものでしょう。すごいことになっていますね。

ここまでに至る背景には中国人の「マナー問題」があったというより、このシェアサイクル事業のビジネスモデルとともに、中国政府の姿勢(あるいは読みの甘さ)があったというべきでしょう。

その点について、ぼくは以下のForbesJapanの記事で少し解説しています。

日本のシェアサイクルはツーリスト向けに徹するべき?(ForbesJapan2017/11/08)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18335

最初に言っておくと、この記事は「盛況が伝えられる中国のシェアサイクルを日本はどう受けとめればいいだろうか」という観点から書いたものです。

(一部抜粋)では、この画期的な中国式シェアサイクル事業は日本で支持されるだろうか。

まず中国企業はどうやって収益を得ているのか。中国の友人によると「最初に利用者から預かる保証金の金利ビジネスですよ」とのこと。これほど安価でサービスを提供するビジネスが超スピードで拡大したのも、どれだけ利用者を集められるかに事業の成敗がかかっていたからだという。昨今の中国では投資規模が破格だからこそ実現できたわけだが、低金利の日本ではちょっと考えにくい。

さらにいえば、いまの中国の経営者の考え方も強く反映されている。新興企業の経営者は新しい市場が生まれると、いち早く参入し、そこそこのシェアを獲得しておけば、どこかの時点で大企業に買収してもらえると考えているふしがある。そうすれば、事業自体に利益が出ていなくても、売り抜けてひと財産築ける。

一方、資金力のある大企業も、最初は利益度外視で市場拡大にひた走る。そのうち大半の中小企業はふるい落とされ、結局は大手の寡占状態となるから、利益を取るのはそれからでいい……。このように中国のビジネスシーンが展開していくさまは、一時は群雄割拠だった配車アプリも「滴滴出行」が一強になったことからわかるだろう。


要するに、昨今の金余り中国での投資依存のビジネス手法が背景にあること。さらにいえば、世界に自らの先進性を誇りたい中国政府が、今年3月上旬に開かれていた全国人民代表大会の記者会見で「共享単車(シェアサイクル)」の支持を強く表明していたように国家の後押しがあったことも、もし批判されるとすればされるべきでしょう。
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それからもうひとつ、このテレ朝のニュースを見て思ったことがあります。確かに上海などの大都市圏では過剰な自転車の配給によって日常的に路上駐輪問題が起きているのですが、地方のもっと小さな都市ではどうかというと、たとえば吉林省朝鮮自治区延吉では、ようやく10月下旬にシェアサイクルが始まったと聞きます。そのような地方都市も多いのです。ですから、「中国では」とひと括りにすることは偏向報道になりやすいのです。

中国の国土は広く、投資マネーが集まりやすい大都市では問題が起きていますが、地方ではほどほどの感じでシェアサイクルが進んでいく可能性もあります。つまり、ビジュアル的にインパクトの強い、野放図な廃棄自転車問題が中国の大都市で起きているからといってシェアサイクルビジネス自体が頓挫してしまうかというと、そうとはいえないのです。

前述のForbesJapanの記事で、ぼくは以下のように書いています。

今年7月までに中国全土で1600万台もの自転車が街に投入されたというから、街頭での自転車の氾濫を引き起こしていることも確か。だが、中国はかつての「自転車大国」。通りも広く、自転車専用道路もそこそこあり、歩道上に駐輪用スペースも多く設けられている。我々に比べ「小さなことは気にしない」彼らの感覚ではそれほど深刻な問題でもなさそうだ。

我々に比べて「小さなことは気にしない」彼らの感覚とあえて書いたのは、ためしに身近な中国の知人にこの件について尋ねてみてはどうでしょう。おそらく彼らの多くは「でも、どこでもそうではありません。シェアサイクルは便利ですよ」と答えるかもしれません。そして、心の中で「また日本のメディアは中国の悪いところばかり報道している」と感じているに違いないでしょう。

さて、以上のことをふまえたうえで、考えたいのは、日本においてシェアサイクルをどう進めていけばいいかということです。

以下の記事は、日中のシェアサイクルの現状の違いをとてもわかりやすく説明しています。

シェア自転車、なぜ中国は急増、日本は停滞?(サステナブル・ブランド ジャパン2017.11.16)
http://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1189521_1534.html

この記事が指摘する中国シェアサイクル盛況のポイントは「料金と使いやすさ」「SNSで利益度外視のキャンペーン」「自治体が積極的に後押し」「中国の投資ブームと『走りながら考える』メンタリティ」です。

それをふまえ、ぼくが思うのは、日本のシェアサイクルは中国のような住民向けではなく、国内外のツーリスト向けに特化した方が動き出すのではないか、ということです。

今年、中国のシェアサイクル大手が鳴り物入りで日本に参入しましたが、彼らは中国式のビジネス手法を持ち込むだけで、法律も都市環境も異なる日本で、誰のためにサービスを提供しようとしているのかよくわからないところがあります。でも、もし国内の観光地にあるホテルや(場合によっては)民泊先で、中国式のシェアルサイクルが気軽に使えたら、外国人観光客にとってもそうですし、日本人にとっても便利です。要は、訪日外国人の数が世界でいちばん増えているというインバウンド成長大国である日本の事情に合わせたルールづくりをしたうえで、中国式の“いいとこ取り”だけするのが賢いやり方です。

そんな国内外のツーリストをターゲットに絞り、全国の宿泊施設に導入できるシェアサイクルサービスをはじめたのが、ツアーバイク社です。

ツアーバイク
http://www.tourbike.jp/

先日、同社の営業担当者と会う機会があったのですが、彼らは中国大手とは違い、国内の宿泊施設や民泊オーナーを対象にシェアサイクルを提供しようとしています。今後の彼らの動きに注目しています。
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by sanyo-kansatu | 2017-12-24 11:55 | 気まぐれインバウンドNews
2017年 11月 26日

民泊(事業者)と自治体&マスコミとの関係がここまで悪いのはなぜか?

先週末、知人の紹介でシェアエコノミーをテーマにした小さな集まりに出席しました。(あとで述べる理由もあって)具体的な団体名などは記しませんが、民泊をはじめ不動産の運用を実践していたり、始めてみたいと考えているみなさんの情報交換のための集まりでした。

民泊(事業者)のみなさんの生の声を聞くことができて、とても参考になりました。実際には、住宅分野のシェアエコノミーの実践事例は民泊だけでなく、むしろその一部といった方がいいほど広がっているのですが、彼らの多くの発言から伝わる自治体とマスコミに対する不信感がこれほど強いのかと思ったことが印象に残りました。

あるスピーカーは開口一番「日本はシェアがしにくい国です。社会というのは、数多くの事例が生まれてこそ、法律を変えようという動きが起こるものですが、日本では規制が多すぎて、事例が生まれにくいため、現実に合わせて法律を変えるのも時間がかかりすぎる」と話し、60数年間も古い法律が野放しにされていた通訳案内士法の事例などを挙げます。まったくそのとおりです。

世界のシェアエコノミーには、共同社会のありようを目指すヨーロッパ型と、投資と連動したアメリカ、中国型のふたつに分かれるといい、日本は「日本らしい」シェアエコを目指すべきと語ります。

さらに、シェアエコには利用者の自己責任も問われることも忘れてはならないとそのスピーカーは言います。それ自体はもっともな発言だと思われますが、おそらく日本の自治体やマスコミは、日本的な“情緒”を背景に、自己責任から生じるさまざまな懸念や問題の発生の防止を重視するため、監視を強めたり、来年6月に施行される新しい民泊のルールについても、自治体レベルの個別の条例を加えることで、民泊解禁の流れに大きなブレーキをかけようとしている。そう彼らは感じているようです。

ここでいう「自治体&マスコミ」の姿勢がよくわかるのが、今朝の日本経済新聞の報道です。

増殖するヤミ民泊 京都の「観光裏事情」
政策 現場を歩く(日本経済新聞2017/11/26)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23791560S7A121C1000000

11月上旬、京都市の祇園に近い東山地区のワンルームマンション。5階建ての一角に、めざす宿泊施設があった。チェックインカウンターはない。カギはマンション入口の郵便ポストに入っていた。民泊の物件だが、本人確認はなにもない。後にかなり高い確率で、ヤミ民泊だと感じることになる。

訪日客の関連取材で京都を訪れた。口コミ旅行サイト「トリップアドバイザー」で部屋を探すと、大手ホテルは1泊約2万円する。そこで、初めて民泊の世界最大手・米エアビーアンドビーの仲介サイトを真剣にのぞいてみた。宿泊予定を入力すると、物件が続々と出てきた。祇園に近い東山地区を売りにしている物件があり、価格も1泊7400円と手ごろだ。民泊を初体験しようと思い、サイト内でクレジットカードによって支払いを終えた。

■管理人には話しかけるな

数分後、ふと、我にかえった。「あれ、待てよ。この物件はどこにあるんだろう?」。サイトには詳しい住所の記載がない。支払いを終えると、個人のメールあてに複数の物件情報が英語で届いていた。1つは住所。2つめはダイヤル式のカギの開け方。3つめは施設利用に関する注意事項だ。

住所がわかったため、現地に行くまでカギと注意事項の確認は後回しにした。マンションの前でメールをみると、カギはダイヤルを3回まわして、帰る際にも同じ場所に戻すようにと書いてある。セルフチェックイン・アウト形式だという。

面食らったのは、注意事項の書きぶりだ。例えば「入り口に管理人がいるが、話しかけないように。トラブルになります。もし部屋番号を聞かれたら、違う番号をいってください」と常識では考えにくい内容だ。

日本の法律についても言及がある。「日本の法律はとても厳しい。誰か来ても、ドアをあけないで。部屋のオーナーは友達で、無料で泊まっていることにして。そうすれば、トラブルを避けられます」。これは明らかにヤミ民泊の物件だとうすうす感じた。部屋に入ると、それは確信に変わる。

部屋は、普通のワンルームマンション。ただ、異なる点がある。室内のインターホンにガムテープが貼られ、「さわるな」という表示がやけにめだつ。外部から問い合わせがあっても、絶対に応対できないようにしているのだ。これはヤミ物件だろう。

宿泊して朝8時ごろに部屋を出ると、携帯電話にショートメールで「滞在はどうでしたか? 5つ星のレビューを下さい!」と何度も連絡が来た。うんざりさせられたが、物件のオーナーと会うことは一度もなかった。

京都市の調べでは、2016年の外国人旅行客は661万人となり、15年に比べ37%増えた。そのうち、16%が「京都に泊まりたいが泊まれない」と答えている。調査結果だけをみると、人気観光地の京都は深刻な宿泊施設不足に陥っている。ところが、調査は「無許可の民泊施設は含まない」としている。実態は判然としない。
日本では現時点で、民泊をするためには旅館業法の認可が必要だ。もしくは民泊特区では施設の要件を満たせば営業ができる。

■客室の稼働率が落ちた

京都・東山地区である旅館の経営者に話を聞いた。「今が京都の紅葉シーズンなのに、稼働率が落ちたのは今年が初めて。急増しているヤミ民泊の影響に違いない」との見解を示す。約10年前に民泊を始め、今は正式な旅館営業の認可を得た。だが、ここ1~2年でスマートフォンを片手にワンルームマンションのヤミ民泊に向かう訪日客の姿が急増しており、客足が鈍っているという。

東山地区のシャッター街だった商店街は、町家のゲストハウスや民泊が増え、にわかに訪日客で活気を取り戻している。日本の伝統文化の象徴ともいえる京都は、訪日客を引き付けてやまない。

日本では18年6月に民泊が新しいルールのもとで運用が始まり、仲介業者や家主は国や自治体の登録制となる。ただ、旅館業法の改正案が宙に浮いており、ヤミ民泊の違反業者を自治体や保健所が取り締まれるかどうかが問題になっている。施設への立ち入り権限が限られると、これからもヤミ民泊を排除できない可能性が残る。ある観光庁幹部は「特に中国系の物件は監視が難しい」と嘆く。

本人確認がルーズなヤミ民泊は薬物や性的暴行など犯罪に使われるケースも出ている。正式な認可を得ている事業者は税負担などの面でヤミ民泊と不公平感がある。観光庁の初調査では、今年7~9月期で訪日客全体の12%が民泊を利用した。政府は20年に4000万人の訪日客誘致をめざしている。民泊を健全な宿泊施設の受け皿にするためにも、ヤミ民泊の監視強化は欠かせない大きな課題だ。(馬場燃)


この種の論調は、いまとなっては日本のマスコミの主流となっていて、さして新しい発見のない記事ではありますが、これが主流となるのも、日本では全体の8割がヤミ民泊である以上、いたし方がない面もあると思います。この記事でもひかえめに指摘しているように、台頭する「中国民泊」の実態は、彼らが日本法人を立ち上げたところで、実態は情報公開されていないため、世間の懸念が深まるのは当然といえます。

一方、この集まりに出席していたみなさんのように、法や条例の動向に敏感で、「日本らしいシェアエコ」を目指す人たちというのも当然いて、彼らの声を届けるマスコミはまだ少ないようです。

実は、彼らの議論を聞いていて、ぼくは余計なひとことを発言してしまいました。「なぜみなさんは、もっとマスコミを活用しないのですか」。

ぼくからすると、これからの日本の社会の新しいあり方を模索し、正しい民泊を目指しているのに、ただ内輪で集まったり、個別の自治体関係者や議員との関係を深めることで、実際に自分の地域で民泊をする際、縛りとなる上乗せ条例による新たな規制をされないようにと努力していることはわかるのですが、やはりこの問題は「公論」としてマスコミにも取り上げてもらう必要があると感じたからです。

ただし、この発言に対しては沈黙しかないようでした。

いったいこの人たちのマスコミ不信の根深さは何なのだろう? と最初は思ったほどです。

しかし、その後ぼそぼそと交わされるコメントの中からその理由がわかってきました。民泊新法が施行される前のいまの段階で、また民泊に対する厳しい視線のなかで、表舞台に出ることは、かえって世間を刺激し、現状ではグレーゾーンとならざるを得ない民泊従事者である自分たちが摘発の対象になるのでは、というおそれがあるからのようでした。

実際、ある自治体で民泊の条例制定に向けたパブリックコメントを求められても、推進者たちからのコメントの数は少なく、反対意見ばかりが多いそうです。そうなるのも「いま下手なことを言って、保健所に目を付けられたら…」。そんな思いがあるからだというのです。

なんという残念なことでしょう。

日本のあるべき民泊を推進するためには、ヤミ民泊事業者の摘発強化は欠かせないとはいえ、正しいあり方を目指そうと考えている人たちが、ここまで萎縮せざるを得ない状況というのは、どういうものでしょう?

そろそろマスコミや自治体も、日経の記事にあるような負の実態だけでなく、日本の社会のありようを少しずつ変えていく可能性のあるシェアエコノミーの現場の声も取り上げないといけないのでは、と思います。

一方、シェアエコ推進の方たちも、ただ「いい子ちゃん」でいるだけではどうなのか。もっと「公論」に訴えかけていく気概も必要な印象を持ちました。なぜなら、法など気にしない外国人も含めて8割がヤミ民泊という非情な現実を前にして、あまりにきれいごとで装いすぎていて、これでは現実を変えられないのでは、と思わないでもないからです。

こんなことを書くと「現実の苦労も知らないで、勝手なことを言うな」と言われてしまいそうですが、日本のシェアエコを考えるうえで、とても勉強になったことは事実です。
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by sanyo-kansatu | 2017-11-26 11:07 | “参与観察”日誌
2017年 11月 24日

中朝最大の物流ルートの丹東・中朝友誼橋が一時的に閉鎖されるようですが、こういうことはよくあります

今朝、ネットで以下のニュースを知りました。中朝最大の物流ルートである遼寧省丹東市と北朝鮮新義州をつなぐ中朝友誼橋が一時的であるにせよ閉鎖されるようです。

北国境の橋、中国が閉鎖…貿易制限で北に圧力か(読売新聞2017年11月24日)
http://www.yomiuri.co.jp/world/20171123-OYT1T50091.html

(一部抜粋)【瀋陽=中川孝之】中国の政府当局が24日から、中国遼寧省丹東と北朝鮮の新義州を結ぶ鉄橋を一時閉鎖することがわかった。

丹東の税関関係者が本紙に明らかにした。鉄橋は中朝貿易の主要ルート。表向きは補修工事が理由だが、北朝鮮との貿易を一定期間制限することで、北朝鮮に圧力を加える意図があるとみられる。

一時閉鎖されるのは中朝国境の鴨緑江に架かる「中朝友誼ゆうぎ橋」。全長約940メートルの橋上を車道と線路が並行している。税関関係者は「補修工事のため、車道部分を10日間の予定で閉鎖する」と説明した。

丹東は中朝貿易の7割が通過する最大拠点。輸送には船舶も利用されるが、農業用機械や食糧など北朝鮮向け貨物の大半はこの鉄橋を往復するトラックで運ばれており、一時閉鎖は事実上の「貿易制限措置」となる。


これが中朝友誼橋です。どれだけ中朝関係が緊張しているといっても、橋のたともには中国国内や韓国などから来た観光客がくつろいでいます。
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鴨緑江の上流にあたる左が中朝友誼橋で、右にあるのが1909年に造られた「鴨緑江橋梁」で1950年に米軍の爆撃機によって破壊されたため、現在では「鴨緑江断橋」として観光スポットになっています。
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今回の報道で、中国側が中朝友誼橋を一時的に閉鎖したとのことですが、この橋はかなり老朽化しているため(日本時代の昭和18年に造られたので)、この種の閉鎖はよくあります。昨年夏も1ヵ月近く、これは北朝鮮側の事情で車両の通行が停止していました。

この写真は一見怪しげですが、昨年7月末、バスが利用できないため、中国客が歩いて新義州に渡っているときのものです。さすがに中朝関係が悪化した今年は、新義州に遊びに行く中国人は激減したようですが、昨年まではこんな光景も見られたのです。
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実は、これは北朝鮮側から見た中朝友誼橋と丹東の街並みです。
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以前、ForbesJapanの連載で以下の記事を書いたことがあります。

なぜ中国は制裁中でも北朝鮮とつなぐ橋を架けるのか(2017/10/16)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18081

今回の閉鎖もいつまで続くのか、中国側もどこまで本気なのかはわかりません。
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by sanyo-kansatu | 2017-11-24 10:36 | ボーダーツーリズム(国境観光)
2017年 11月 02日

ついに中国「白タク」の逮捕者が出ちゃいました

ついに中国「白タク」の逮捕者が大阪で出たようです。

「中国式白タク」容疑で逮捕 訪日客狙い、各地で問題化(朝日新聞2017年11月1日)
http://www.asahi.com/articles/ASKB0541SKB0PTIL011.html

訪日中国人客を相手に無許可でタクシー営業をしたとして、大阪府警は31日、無職唐家栄容疑者(28)=大阪市東成区=ら中国籍の男3人を道路運送法違反(無許可一般旅客自動車運送事業経営)の疑いで逮捕し、発表した。こうした営業は、空港や観光地で訪日外国人客(インバウンド)相手の「中国式白タク」と呼ばれ、各地で問題になっている。

国際捜査課によると、他に逮捕したのは、運転手の男2人。唐容疑者らは国土交通相の許可を得ずに6~9月、7回にわたって関西空港から大阪市内などに観光客計約40人を料金を取って運送した疑いがある。唐容疑者は「来日した友達をホテルや観光地に送っただけで、金はもらっていない」と容疑を否認。運転手2人は「唐容疑者の依頼で報酬をもらい送迎した」と容疑を認めているという。

同課は、唐容疑者らの車が、多くの荷物を持つ訪日客を乗せて関空と大阪市内を何度も行き来するのを確認し、白タクとして営業していると判断したという。さらに、唐容疑者が中国語の配車アプリを介し、訪日客からの依頼を受けて営業していたとみている。アプリ上では、関空から大阪市内の片道料金は約1万3千円に設定され、決済もできる仕組みという。

国交省によると、中国式白タクは訪日客が多い沖縄や東京でも確認されているが、台数などの詳しい実態はわかっていない。正規のタクシーと違って二種免許を持たないため運転技能が担保されていないほか、任意保険への加入がない場合もあるため、事故時の補償が不十分になる恐れがあるという。


先月中旬、沖縄に続き、関西方面の「白タク」問題を産経新聞が報じていましたが、やはりこの日が来ましたか。

奈良公園周辺にも「中国式白タク」進出 主要観光地で横行か、スマホで予約・決済、摘発難しく… (産経WEST2017.10.13)
http://www.sankei.com/west/news/171013/wst1710130046-n1.html

これが全国に波及すると、けっこう大騒ぎになるかも。興味深いのは、彼らを逮捕したのは大阪府警の「国際捜査課」だということ。確かに、通常の捜査では摘発は難しいことから起用されたのでしょう。

先日、ForbesJapanの連載で「彼らを営業車として登録させ、管理する方向に呼び込むか、ツーリスト相手に限りグレーゾーンの存在としてこのまま泳がせるのか。違法営業であるという前提がある限り、今後、日本の社会が中国「白タク」の横行になんらかの制限を加えようとするのは当然だろう」と書いたばかりでしたが、そのとおりになったようです。

野放し「中国人白タク」で見えた、日本の遅れ(ForbesJapan2017/10/26)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18241

ただし、九州に寄航する中国発大型クルーズ客船の中国人闇ガイドのときもそうだったように、一度摘発したところで、ほとぼりが冷めると実態はまったく変わらないという話になるかもしれません。

じゃあ徹底して取り締まるかといっても、実はそんなに簡単ではありません。ひとまずは「日本では違法」という認識を中国人ドライバーたちに周知することにはなったでしょうが、彼らの国では「法の裏をかくのが賢い人間」と考えるのが普通のことです。それは彼らが悪人だからそうなのではなく、民主的な社会ではないから、法に対する認識が違うだけです。中国では法は常に上から突然下りてくる理不尽極まりないものだからです。

やはり、同時に中国客に限らず、日本を訪れる海外の個人客のニーズに応えられる代替サービスを作り出さなければならないと思います。それは簡単なことではありませんが、そこに知恵を働かせなくては。また「彼らを営業車として、登録する方向に呼び込む」ことも考える必要があると思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-11-02 09:29 | 気まぐれインバウンドNews
2017年 10月 30日

日本のシェアサイクルはツーリスト向けにサービスを特化したほうがいいのでは

今夏、中国のシェアサイクル大手のMobike(摩拝单车)やofoが日本に進出するニュースが流れ、話題になりました。

自転車シェア中国「モバイク」、日本で10カ所展開へ
23日から札幌でサービス (日本経済新聞2017/8/22)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22HZZ_S7A820C1EA2000/

ソフトバンクとの協業で日本進出するケースもあります。

ソフトバンクC&S、Ofoと共同でシェアバイク事業を開始――まずは東京・大阪で9月から
http://jp.techcrunch.com/2017/08/09/20170809ofo-softbank-japan-dock-less-bikesncidmobilenavtrend/

中国語で「共享单车」と呼ばれるシェアサイクルは、確かに中国の都市部を中心に驚くほどのスピードで普及しました。去年の秋ごろから一気にです。

今年3月に上海に行ったときも、街中でシェアサイクルが走っている光景を見て、かなり驚きました。
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南京でも同様の光景を見かけました。
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外国人も利用していました。思うに、この種のサービスは外国人やよその土地から来た人にとって重宝するもので、出張中のぼくも利用したいと思ったのですが、中国に銀行口座をつくり、WeChatPayのような決済アプリと紐づける必要があり、時間がないので断念しました。
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これらのシェアサイクルには、QRコードが付いていて、利用者はスマホでスキャンして鍵を開けます。
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興味深いのは、中国では都市の一般住民が利用していることです。地下鉄駅から職場までの「最後の1km」が合言葉で、そのようにちょい乗りされることが多いそうです。いちばん驚くのは「好きな場所で借りて、どこでも乗り捨てできる」ことです。
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その仕組みは、中国の人たちの意識を変えるとも言われています。なぜなら、すべての自転車の位置と利用者の情報を配車アプリ企業は握っている以上「盗んでも意味がない」ため「悪いことはできないから」です。

中国を席巻するハイテク「シェア自転車」~仕組みで意識を変える試み(NECwisdom2017年02月02日)
https://wisdom.nec.com/ja/business/2017020201/index.html
中国で「シェアエコノミー」が大爆発中のワケ
「シェア自転車」人気の背後には何があるのか(東洋経済オンライン2017年06月14日)
http://toyokeizai.net/articles/-/175441

ほかにも中国でシェアサイクルが普及した理由はいろいろありそうですが、個人の自転車を路上に置くと、鍵をかけても悲惨な状況になりがちで、だったらシェアサイクルのほうがいいや、となるのかもしれません。
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このサービスを支えるために、夜になると、大型トラックが自転車の再配置のために市内を走りまわっているようです。より利用の多い地区に、夜のうちに自転車を運び去ってしまうとは。ここまでやるというのはすごいと思いました。
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こうしたことから、世界に自らの先進性を誇りたい中国政府も、ちょうど3月上旬に開かれていた全人代で「共享单车」ビジネスの支持を表明していました。
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上海で見かけたシェアサイクルは以下の5社でした。大手はMobikeとofoです。日本に進出したMobikeは日本語サイトもあります。
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Mobike(摩拝单车) https://mobike.com/cn/
Mobike Japan https://mobike.com/jp/
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ofo http://www.ofo.com/
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享骑电单车 http://www.xqchuxing.com
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小鸣单车 https://www.mingbikes.com/
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永安行单车 https://www.youonbike.com/

それぞれ保証金(利用の登録時に最初に払うデポジット)や料金が違います。また自転車のデザイン性ではofoが人気だとか、料金の安さでは小鸣单车(0.1~0.5元/30分)とか、電動自転車の享骑电单车だとか、微妙に差別化しながら個性を競い合っています。

それにしても、このようなサービスでどうやって企業は利益を得ているのでしょう。中国の友人によると「最初に利用者からもらう保証金(99元~299元)の金利ビジネスですよ」とのこと。これほど安価なサービスを提供するビジネスが超スピードで拡大したのも、どれだけ利用者を集められるかに事業の成敗がかかっていたからでもあるのです。低金利の日本ではちょっと考えられません。

さらにいえば、いまの中国の経営者の考え方も反映されていて、新しい市場が生まれると、いち早く参入し、そこそこの市場シェアを獲得しておけば、どこかの時点で大企業に買収してもらえる。そうすれば、事業自体に利益が出ていなくても、売り抜けてひと財産築ける。大企業側も最初は資金力を活かして利益度外視で市場拡大にひた走る。そのうち大半の中小企業はふるい落とされ、結局は大手の寡占状態となる。利益を取るのはそれからでいい…。このようにビジネスシーンが展開していく例は、配車アプリでいま「滴滴」が一強になったことからもわかるでしょう。

もっとも、市場の拡大は街への自転車の氾濫を引き起こします。今年7月までに、すでに1600万台の自転車が街に投入されたというのですから。

中国のシェア自転車、急増で「悲惨な運命」(WSJ2017 年 4 月 4 日)
http://jp.wsj.com/articles/SB10352219306287233570804583063854080347428

中国はかつて「自転車大国」で、通りも広く、自転車専用道路もそこそこあるため、大きな問題にはなっていないといえるのかもしれませんが、このサービスを日本に導入するのはかなり難しいだろうと言わざるを得ません。

その点について、中国事情に詳しいルポライターの安田峰俊さんも指摘しています。

シェア自転車の"上陸"を阻む日本特有の壁
福岡で"モバイク"が始まらない理由(プレジデントオンライン2017.10.24)
http://president.jp/articles/-/23406

同じことは台湾にもいえるようで、シンガポールのシェアサイクル企業が進出したところ、迷惑駐輪が多発しているそうです。

台湾各地に進出の「oBike」、迷惑駐輪多発 台北市が法整備へ/台湾(フォーカス台湾2017/07/11)
http://japan.cna.com.tw/news/atra/201707110001.aspx

そもそも日本の一般の人たちにとってシェアサイクルはどれほどのニーズがあるのでしょうか。たいてい自分の自転車は持っていて、生活圏ならそれを利用するでしょうし、職場の近くでは…そりゃあったら便利とはいえるでしょうけれど、いつ乗ればいいのでしょう。先日、都心のオフィス街でサラリーマン風の男性がレンタルサイクルに乗って横断歩道を渡っている光景を見ましたが、ちらほら見かけるというのがせいぜいです。
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むしろ、このサービスはツーリスト向けではないかと思います。外国人もそうですが、日本人だって旅行先で自転車に乗って観光地をめぐれたら楽しいものです。中国と日本の社会の違いを考慮せず、そのまま同じサービスを導入しようとしても、うまくはいかないものです。それはお互い様です。

ですから、これは進出してきた中国企業に限らず、日本のすでに始まっているシェアサイクル事業に関しても、いち早くツーリスト向けのサービスに特化していくような発想の転換をすることが利用者の支持を広げることにつながるのではないかと思えてなりません。そのためには、多言語化うんぬんもそうですが、外国人にも日本人にも徹底してわかりやすいレンタルシステムを提供する必要があります。

その意味で、中国の仕組みは(モバイル決済の普及が前提となっていますが)非常にわかりやすく、優れているといえるでしょう。日本の現状のレンタサイクルはポート式とならざるを得ないため、自転車を返却しようとしたらポートが埋まっていてできなかったり、ポートに行っても自転車がすべて使われていたりで、GPS連動で1台単位で管理し、決済もスマホのみで完結する中国式には利便性ではとても及びません。

日本の場合、GPS連動やモバイル決済はすぐには無理でも、せめて全国ネットで地方の観光地を同じプラットフォームで管理でできれば、利便性も上がると思います。つまり、東京で登録すれば、地方都市でも使える。そうなれば、プロモーション費用の効率化やシステムの共有化につながり、シェアサイクルの促進に貢献するのではないでしょうか。
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by sanyo-kansatu | 2017-10-30 10:35 | “参与観察”日誌
2017年 10月 30日

中国配車アプリ大手「滴滴」が日本に進出だそうだけど、訪日中国人向け「白タク」はどうなるの?

今朝、面白いニュースが飛び込んで来ました。中国配車アプリ大手の「滴滴」が来春、日本に進出するというのです。

中国配車アプリ「滴滴」、来春にも日本でサービス
第一交通と組む (日本経済新聞2017/10/30)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22855700Z21C17A0MM8000/

タクシー配車とライドシェア(相乗り)サービスで世界最大手の中国・滴滴出行が日本に進出する。タクシー国内最大手の第一交通産業と組み、2018年春にも東京都内で配車アプリを使ったサービスを始める。シェア自転車やアリババの電子決済など中国発のサービスが相次ぎ日本に上陸。規制などのハードルもあって日本企業が手をこまぬいているうちに、中国など新興国企業の後手に回る懸念も強まっている。

スマートフォン(スマホ)のアプリを使った新サービスでは中国勢が急成長しており、日本への進出も相次いでいる。モバイクが8月から日本で事業を始めたシェア自転車など、日本企業が出遅れている事業も多い。

滴滴の配車アプリの登録者数は約4億4000万人。米ウーバーテクノロジーズの中国事業も買収しており、1日当たりの利用は2100万回以上と、配車サービスで世界最大手に位置する。

配車サービスは、アプリの地図で出発地と目的地を指定すると、事業者に登録した運転手が迎えに来る仕組み。利用者はアプリを介して料金を支払う。日本では自家用車の有料配送が「白タク」行為として原則禁止されているため、滴滴は配車アプリでタクシーの利用客を囲い込む。

まずは保有台数約8700台と国内最大手の第一交通と組み、18年春にも都内で約500台を滴滴のアプリで配車できるようにし、将来は数千台規模に増やす。各地のタクシー会社とも連携して全国規模で展開することで、日本でもネットを使った配車網の主導権を握る考えだ。

滴滴にはソフトバンクグループも出資しており、日本法人の設立なども視野に入れる。滴滴の配車アプリは現在、中国語版の利用が中心だが、日本語にも対応するとみられる。

第一交通は滴滴との提携で、中国からの訪日客のタクシー需要を取り込む。第一交通と滴滴は手数料や具体的な運用方法など細部を詰めている。

配車アプリではウーバーもすでに日本に上陸し、都内でタクシーやハイヤーの配車サービスを手掛けている。一部の過疎地では自家用車を配車するが、法的には例外扱いとなっている。


ついに中国のシェアエコノミーを代表する配車アプリ企業が日本のタクシー会社と組んで事業を始めるそうです。こちらは営業車のサービスですから法的になんら問題ないし、日本のすでにある配車サービスを凌駕する利便性を発揮できれば、日本人相手でも可能性があるのかもしれません。

日本で仮に自家用車によるライドシェアが解禁されたとしても、昼間に学校や職場に行かないで車を走らせることのできる人などどれほどいるでしょう。オーストラリアでUberをやってそこそこ稼いでいる知人がいますが、彼はチェコ人。要するに移民労働者なんです。このサービスは移民が担う傾向が強いように思えます。中国でも基本地方から来た出稼ぎの人たちです。ここにシェアエコの問題があるように思われます。

とはいえ、タクシーのような営業車が配車アプリのサービスを強化することは日本でも求められていたはずです。中国企業の参入をいい刺激と受け止めて、サービスの利便性をもっと高め、PRする必要が出てくるとしたら、悪い話ではありません。

ただし、これまで人知れずやっていた訪日中国人相手の在日中国人ドライバーの運転する自家用車=「白タク」問題はどうするのでしょう? 

野放し「中国人白タク」で見えた、日本の遅れ(ForbesJapan2017/10/26)
https://forbesjapan.com/articles/detail/18241

中国人には使い慣れているサービスだけに、はたして記事にあるように「中国からの訪日客のタクシー需要」を取り込むことができるのか。訪日中国客が必要としているのは、タクシーではなく、ワゴン車ではないのか。だとしたら、すでにある中国「白タク」を利用してしまうのではないか…。

いろいろ思うところのある記事ですが、今後の行方が興味津々です。
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by sanyo-kansatu | 2017-10-30 08:50 | 気まぐれインバウンドNews
2017年 10月 25日

中国のバイク便兄ちゃんの事故が多発する気の毒な事情-背景に地方出身者に対する戸籍差別がある

ここ数年、中国、特に上海などの経済先進都市に行くと、街にバイク便があふれている光景を見かけます。
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いま上海で通りに並んでいるのは、シェアサイクルの自転車か、各社のバイク便ばかりです。
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中国のECは世界でいちばん進んでいると言われますが、それが可能となるのも、バイク便兄ちゃんの数が世界でいちばん多いからともいえます。

日本より進んでいる中国ECサービス 支えているのは誰か? (2016年03月28日)
http://inbound.exblog.jp/25584174/

第19回中国共産党大会が終わり、今日はこんな報道もありました。

「ネット出前」中国爆走 遅配は罰金、配送員の事故多発(朝日デジタル2017年10月25日)
http://www.asahi.com/articles/ASKBM4SR2KBMUHBI014.html

習近平(シーチンピン)政権が2期目を迎える中国経済。24日に閉幕した共産党大会の期間中に発表された2017年7~9月期の国内総生産(GDP)成長率は、年間目標の6・5%前後を上回り、国家統計局は「経済は穏やかさを増している」と自信を深める。消費主導の経済への移行が順調に進むが、新たなひずみも目立ってきた。

お昼時の北京。赤、青、黄色のジャンパーをまとった人々が街中を電動バイクで駆け抜ける。スマートフォンで注文したレストランの料理を配達してくれるネット出前の配送員だ。

16年時点でネット出前の利用登録をしているのは全国で2億人を超える。スマホで決済まで完結できる便利さが受けている。

配送員の収入も悪くない。中国中央テレビによると、1回6~7元(102~119円)の配送を1日30~40回繰り返し、1カ月休まず働けば、業者が保証する賃金4千元程度と合わせて収入は1万元を超える。働いただけもうかる仕組みに、地方から出稼ぎに来た人々が飛びついた。

しかし、配送員の表情は浮かない。

「遅配や苦情があれば、給料から罰金を引かれる。バイクも自分で用意しなければならない」。東北部出身の20歳代の男性は、取材にそう語った。一定時間内に届けられないと20元、苦情があれば500元の罰金をとられるという。

遅配を避けたい配送員が猛スピードで運転するため、交通事故が頻発している。新華社ネットによると、江蘇省南京市では今年1~6月、出前によるバイク事故が3242件起き、3人が死亡。2473人がけがをした。

■習政権推進の新ビジネス、「格差」前提

ネット出前は、1期目の習政権が推進してきた技術革新による経済成長を象徴する新ビジネスだ。16年は全国で1千万人以上が配送員として登録していたとされ、大量の雇用を生み出している。

新ビジネスの発展について、李克強(リーコーチアン)首相は9月の政府の会議で「経済発展の新たな原動力をもたらしただけでなく、雇用をしっかり支えた」と称賛した。

とはいえ、低賃金で配送を請け負う出稼ぎ労働者がいて初めて成り立つネット出前は、「格差」が前提だ。大手の管理部門に勤める若手社員は、「安い労働力がないと成り立たない」とこぼす。

強まる批判を受けて、大手の一角の美団外売は9月、上海紙の取材に、配送員の労働環境を改善すると表明した。配送員の受け持つ量を減らし、バイクのスピードを監視するという。

「我が国の主要な社会矛盾は、日増しに増大する素晴らしい生活への人民の要求と発展の不均衡、不足との矛盾に変化している」

18日に開幕した共産党大会では、習総書記(国家主席)が今後5年の方針を示す政治報告でそう分析し、「より質が高く、より十分な雇用を図る」との目標を掲げた。

成長がもたらす新たなひずみにも配慮できるか。ネット出前の労働環境の行方は、習体制2期目を占う一つの指標になりそうだ。(北京=福田直之)


この記事では、中国のEC市場の拡大は「格差」前提の新ビジネスに支えられていると指摘しています。つまりは、「低賃金で配送を請け負う出稼ぎ労働者がいて初めて成り立つ」のが出前&宅配ビジネスなのです。では、彼らが背負う「格差」はどこから来るかといえば、中国の地方出身者に対する戸籍差別にあるといっていいと思います。これは共産党が建国当初から続けてきた政策によるものです。差別によって国を統治するのが彼らの伝統的なやり方です。

今年3月、上海を訪ねたとき、街を疾走するバイク便兄ちゃん(もちろん、中高年のおじさんもいます)の姿を知らず知らずのうちに追っていたので、その一部を紹介します。

朝早く通りを歩いていると、ブルーのジャケットを身につけた集団がいます。
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朝礼のようなことをしているようです。
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彼らこそ、朝日の記事に出てくる出前サイト「饿了吗(おなかすいた?)」の配達人です。
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饿了吗
https://www.ele.me/home/

これは市内のどこにいても近所の飲食店からお弁当や飲み物などを宅配してもらえるECサービスです。さすがは「食の国」中国らしく、地方都市でもかなり普及していて、いまや中国は「出前パラダイス」です。
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配達人の姿は真新しいショッピングモールの中でもよく見かけます。ショップ店員さんたちが注文しているからです。
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ある麺屋さんに入ったときも、その店では「饿了吗」と契約して出前をやっていました。上海ではほとんどの飲食店が「饿了吗」に限らず、なんらかの出前サービスと契約しているようです。
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オレンジ色のジャケットは、中国検索サイト大手「百度」の運営する「百度外卖」。
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黄色は「美団外卖」。町の食堂のような店でもどこかと契約しています。
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これらの出前サービスは、当然WeChatPayやアリペイで支払われます。この中国の2大決済アプリは現在、猛烈な加盟店獲得競争を続けているため、売上に応じて店にチップを渡すなどのインセンティブ合戦が起きており、町の果物屋さんでも「支付宝(アリペイ)」が使えるようになっています。
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これがよくいう「中国がキャッシュレス社会になっている」といわれるゆえんです。もちろん、地方に行けば、ここまで普及しているとはいえませんけれど。

とはいえ、中国のEC社会の実態はこんな場面にも現れています。たまたま通りを歩いていて、運送会社の前を通ることがありました。配送前の荷物が地面に放り出されており、これでは相当きちんと荷造りしないと大変です。
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バイクの後ろにこんなに荷物を積めば、事故も起きるでしょう。
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これなんか、走っていて荷崩れしないのかしら。
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最後に、これもたまたま上海駅近くの食堂で見かけたバイク便兄ちゃんたちの食事の光景です。
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みなさんスマホは手にしています。
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この種のローカルな食堂では、一品10元も出せばすみます。
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上海など大都市部の建設労働がひと段落した後、地方からの出稼ぎ労働者を待っていたのはバイク便兄ちゃんになる道だったというわけです。

【追記1】
以下のネット記事には、配送人たちの姿を映した動画が配信されていました。まさにこんな感じですね。

<上海だより>悲惨な労働環境の“闇”──激戦、中国宅配業界の配達員事情(The Page2017.05.12)
https://thepage.jp/detail/20170512-00000001-wordleafv

【追記2】
配送人の置かれた環境は、中国に限らず、欧州でも同じようです。欧州では周辺国から来た移民労働者が、中国では他の省や農村から来た都市戸籍を持たない外地人がこの仕事を担っているわけです。その意味で、中国をはじめとしたEC市場の拡大は彼らの存在抜きでは考えられないのです。

欧州のイケア運転手、トラック内で長期生活 低賃金で(BBC Japan2017年03月16日)
http://www.bbc.com/japanese/39276687
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by sanyo-kansatu | 2017-10-25 11:23 | のんしゃらん中国論
2017年 10月 20日

中国政府による訪日ツアー客への数値制限と国慶節の中国メディア報道

中国の国慶節休暇が10月8日に終わり、中国メディアは今年の海外旅行動向を報じています。これらの記事を簡約して伝えるレコードチャイナなどから紹介します。

まず、あいかわらずの民族大移動を大げさに伝える話。

中国の「スーパー連休」、延べ7億人が国内を大移動(レコードチャイナ2017年10月10日)
http://www.recordchina.co.jp/b193189-s1-c30.html

(一部抜粋)中国で建国記念日にあたる国慶節と中秋節を祝う超大型の8連休が8日に終わった。中国国家観光局データセンターによると、期間中に延べ7億人が国内を移動し、観光収入は5836億元(約9兆8924億円)に上ったという。

携程旅行網(シートリップ)は、連休期間中に旅行に出かける人のうち、「親子旅行客」と「家族旅行客」がそれぞれ32%、42%を占めるとする予測。

国家観光局や携程旅行網のデータによると、8連休中に海外旅行に出かける人は延べ600万人を超えるとされ、うちツアー客は64万1900人に上ると推計されていた。国内の約300都市から88カ国・地域の1155都市に出かけ、人気の旅行先は、国別ではロシア、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシアと続き、都市別では、モスクワが最多で、以下、サンクトペテルブルク、バンコク、パタヤの順だった。


この時期、家族や親子旅行が多かったことを記事は指摘しています。さらに、人気の旅行先としてアジアの国を中心に挙げていますが、意外だったのはロシアが入っていることと、日本がないことか。

一方、別の記事は日本での消費額はあいかわらず大きいと言っています。

国慶節休暇中の訪日中国人の消費金額は1000億円以上に?―中国ネット(レコードチャイナ2017年10月10日)
http://www.recordchina.co.jp/b185947-s0-c20.html

(一部抜粋)中国のポータルサイト・今日頭条に、国慶節休暇(10月1日〜8日)に日本旅行へ行った中国人の消費金額について伝える記事。

16年の国慶節では、訪日中国人数は50万6000人となり、この傾向からすると今年の国慶節の訪日中国人数はさらに増えたと考えられるとした。

最新の統計によると、国慶節期間中に訪日中国人が消費した金額は、合わせて1000億円を超えるという。統計によると、訪日中国人のうち、買い物が目的と回答した人が7割を占め、観光はわずか3割だったという。


これ本当なんでしょうか。

次は興味深いニュースです。2014年9月の雨傘革命以降、中国政府が渡航に制限を加えていた香港で、今年は過去最高の中国客が訪れているという話です。なるほど、学生運動家らも逮捕し、中国政府のいう「動乱」は解決したから、そのご褒美に大勢の観光客を送り、消費に貢献させようという腹でしょうか。それがみえみえです。

香港、中国の大型連休で観光業が大幅回復(レコードチャイナ2017年10月10日)
http://www.recordchina.co.jp/b193020-s10-c20.html

(一部抜粋)特区政府入境事務処発表の統計では、10月1日に大陸部から香港を訪れた観光客は過去5年で最多の延べ20万6000人(前年同期比9.4%増)で、最も多いのは個人旅行だった。

香港観光の目玉は今もショッピングだ。人気ショッピングエリアの銅鑼湾では、多くの店が「大型連休イベント」「建国記念日セール」などの宣伝文句を簡体字で掲げている。大陸部の銀聯カードや「微信支付」(ウィーチャット・ペイメント)で決済し、特別割引を得られる店も少なくない。

香港観光発展局の統計では、今年1〜8月に大陸部から訪れた観光客は前年同期比1.9%増の延べ2900万人に達した。


一方、こんなニュースもあります。国慶節中にアメリカに行く中国客が減っているというのです。

なぜ?「国慶節連休の中国人観光客が減った」と米観光業者(レコードチャイナ2017年10月11日)
http://www.recordchina.co.jp/b193297-s1-c30.html

(一部抜粋)600万人を超える中国人観光客が海外を訪れると期待された今年の国慶節(建国記念日)連休だが、米カリフォルニア州の観光業者からは「中国人客の数は例年より少なかった」との声が上がっている。

米中間を行き来する航空機でも中国人団体客の利用が減ったことが指摘されており、ある旅行会社の関係者は連休中の航空料金の高さやビザ取得が困難になったこと、米国の治安に対する旅行者の不安を原因として挙げる。また、「ピーク時を避けたいという考えが(国慶節シーズンの)団体客減少につながった」と話すバス会社の関係者は「連休中、個人客は比較的多かったが中国人観光客が増えたという実感はない。ただ、連休が終われば団体客も増え始める」「庶民の海外旅行にとって航空料金は大きな問題」などとコメント。


これはどういうことでしょう。国慶節休暇中は航空運賃が跳ね上がるので、団体ツアー客のような安価な料金で海外旅行したい層が、この時期をはずして連休後に移動しているということでしょうか。もしそうなら、市場の動きとしてはそれなりに健全な話です。

ところが、韓国の災いは続いているようです。いいかげん、中国は弱いものいじめはやめるべきではないでしょうか。

中国人の韓国ボイコットはここまで!大型連休中の団体客はゼロ=中国ネット「この時期に行くわけがない」「団体客は全部日本に行ったとか」(レコードチャイナ2017年10月12日)
http://www.recordchina.co.jp/b188859-s0-c30.html

(一部抜粋)10日付の中国・海外網によると、連休中の訪韓中国人観光客について韓国メディアは「THAADの影響下で団体客は依然としてゼロ。免税店の売り上げ減は避けられず、中国人消費者のロッテ免税店での購入額(1〜7日)は昨年の国慶節連休に比べ25%減った。国内の消費者をターゲットとしたセールも実施されたが期間全体の売り上げは前年同期に比べ15%縮小」などと報道。さらに今年1〜8月のデータとして訪韓中国人の数が前年同期の52.6%(延べ302万2590人)にとどまった。

しかし、同じ矛先は日本にも向かい始めています。9月下旬、日本のメディアが中国による日本ツアーの数を制限するよう自国の旅行会社に通達を出したと報じました。

いったん中国メディアはそれを否定しましたが、中国の複数の旅行会社に確認したところ、通達は確かに出ていたことが確認できました。理由についてはいろんな説があり、後日整理して報告したいと思います。

中国はついに日本への渡航制限を始めるのか? (2017年 09月 22日 )
http://inbound.exblog.jp/27130164/
中国メディアがTBS報道「中国、訪日旅行に制限」に反論! とはいうものの… (2017年 09月 25日)
http://inbound.exblog.jp/27147682/

中国メディアは通達のことなど知らぬふりで中国人の日本旅行が「買い物から体験にシフト」したといい、人気都市として「パリ、香港、大阪、東京、バンコク」を挙げています。

中国人600万人が国慶節に海外旅行  消費スタイルは買い物から体験へシフト(人民網日本語版 2017年10月16日)
http://j.people.com.cn/n3/2017/1016/c94475-9280429.html

今年の国慶節も終わり、数値制限の通達以降、訪日中国旅行市場はどう推移していくのか。要するに、これまでの訪日ツアーの代金が安価だったからこそ「行ってみてもいい」「行ってみようか」と参加してきた地方都市を中心とした客層が、通達以降、2倍近い料金になっても、これまでどおりツアーに参加するだろうか、ということではないかと思います。

今週、日本政府観光局(JNTO)が公表した今年9月の統計では、中国客は「前年同月比29.9%増の678,300 人で、9 月として過去最高」と好調だったことを伝えています。

訪日外客数(2017 年9 月推計値)
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/171018_monthly.pdf

この時期、まだ通達の影響はないのですが、今後については中国側と情報交換しつつ、行方を探っていきたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-10-20 16:27 | 気まぐれインバウンドNews
2017年 10月 06日

外国客のレンタカー利用が増え、事故も増加。その防止対策に注目

外国人観光客が増え、団体から個人へ移行すると、自らハンドルを握って日本を旅したいニーズがふくらみます。当然、レンタカーを利用する人たちも増えていきます。ただし、海外での運転を経験したことのある人であればわかることですが、自国の運転ルールや常識が通じないことも多く、事故につながりやすいのは無理もない面があります。

ついに起きてしまった。運転できないはずの中国人レンタカードライバー事故(2017年08月21日)
http://inbound.exblog.jp/27062548/

国土交通省によると、レンタカーを利用する訪日外国人は、2011年から2015年の5年間で約4倍(17万9000人→70万5000人)に増加し、レンタカー利用者全体でみると死傷事故件数は減少しているものの、外国人レンタカー利用の死傷事故件数は増加(14年:28件→16年81件)。特に利用の多い沖縄県では物損事故を含む外国人レンタカーの事故件数は2014年から2016年(9648件)の3年間で約3倍に増加しているそうです。
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訪日外国人観光客レンタカーピンポイント事故対策について(国土交通省2017年8月23日)
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000882.html

この勢いであれば、昨年はすでに年間100万人近い利用者がいたのではないでしょうか。今年はさらに増えているのかもしれません。

そこで、国土交通省は、訪日外国人観光客のレンタカー利用による事故を防止するため、レンタカー事業者や警察、観光部局と連携し、ETC2.0の急ブレーキデータを活用して、外国人特有の事故危険箇所を特定した上で、ピンポイント事故対策を講じる取り組みを開始するそうです。

訪日外国人によるレンタカーでの事故防止対策 今秋から実施(Response2017年8月23日)
https://response.jp/article/2017/08/23/298868.html

実験地域は新千歳空港、中部国際空港、関西国際空港、福岡空港、那覇空港のそれぞれを中心とする5つです。

外国人観光客のレンタカー交通事故対策、国内空港周辺の5カ所で実験へ(2017年9月7日)
https://response.jp/article/2017/09/07/299501.html

事故の原因は、自国との交通ルールの違いや標識の理解不足にあるといわれています。レンタカー利用の多い沖縄県や北海道では、貸し渡し前にオリエンテーションを行うなど独自の取り組みを続けてきましたが、利用者の全国的な広がりの中で、今後は国レベルでの取り組みを始めることになります。

外国客がレンタカーを利用することは、市場が縮小していたレンタカー関連業界にとっての朗報でしょうが、それ以上に、日本全国に張り巡らされた道路インフラを広く活用してもらうことで、今後の維持や質の向上につながることにこそ、意味があると思います。日本人の交通事故の数は昔に比べ、相当減っています。それだけに、外国客の運転する車による死亡事故が起こると、大きなニュースになることが考えられます。それだけに、こうした取り組みは本当に大事だと思います。
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by sanyo-kansatu | 2017-10-06 17:36 | 気まぐれインバウンドNews
2017年 10月 06日

「樺太には樹木がない」と書いた林芙美子と旧敷香王子製紙工場廃墟

ポロナイスクでは、旧敷香王子製紙工場の廃墟も訪ねています。昭和10年(1935年)に操業を開始した、樺太で最後に造られた工場のようです。

以下、写真家の佐藤憲一さんの写真を見ていきましょう。
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ところで、昭和9年(1934年)に樺太を訪ねた林芙美子は「樺太への旅」にこんなことを書いています。

「この豊原に来るまでに、一時間あまり車窓を見て驚いた事は、樺太には野山という野山に樹木がないことでした。(中略)どのように樺太の山野を話していいか、まるで樹の切株だらけで、墓地の中へレールを敷いたようなものです。

私は大泊までお迎えに来て下すった友人たちに、「いったい、これはどうしたのですか!」と驚き呆れて訊いたものです。

行けども行けども墓場の中を行くような、所々その墓場のような切株の間から、若い白樺がひょうひょう立っているのを見ます。名刺一枚で広大な土地を貰って、切りたいだけの樹木を切りたおして売ってしまった不在地主が、何拾年となく、樺太の山野を墓場にしておくのではないでしょうか。盗伐の跡をくらます為の山火や、その日暮しの流れ者が野火を放って、自ら雇われて行くものや、樺太の自然の中に、山野の樹木だけはムザンと云うよりも、荒寥とした跡を見ては、気の毒だと思います。樹が可哀想です」

かなりショッキングな記述です。林芙美子が敷香を訪ねた年、まだこの工場は操業していませんでしたが、建設中の巨大なシルエットを目にしていたはずです。彼女は樺太の日本領の北限の町までやって来る道中、車窓を眺めながら、ずっと「樺太の山野」の不幸について考えていたようです。

当時は、こういった植民地批判を書くと、当局から目をつけられかねない時代でした。

製紙工場の迫力ある廃墟を見ながら、これが全力で操業していた時代は、どれほどの樹木を伐採していたかと思うと、空恐ろしい気がしてきます。

大鵬以外にもいるポロナイスク(敷香)と縁のある日本人の話(間宮林蔵、鳥居龍蔵、馬場脩、林芙美子)
http://inbound.exblog.jp/27234045/
先住民とロシア人、日本人の関係を物語るポロナイスク博物館の展示
http://inbound.exblog.jp/27257855/

もっとも、この工場を引き継ぎ、その50年後、操業停止に至ったロシア人たちの心中もまたいろいろです。

旧落合王子製紙工場跡の管理人は「こうなったのはゴルバチョフの頃だ」と話す
http://inbound.exblog.jp/27258111/
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by sanyo-kansatu | 2017-10-06 14:43 | 日本に一番近いヨーロッパの話