2017年 11月 26日
先週末、知人の紹介でシェアエコノミーをテーマにした小さな集まりに出席しました。(あとで述べる理由もあって)具体的な団体名などは記しませんが、民泊をはじめ不動産の運用を実践していたり、始めてみたいと考えているみなさんの情報交換のための集まりでした。 民泊(事業者)のみなさんの生の声を聞くことができて、とても参考になりました。実際には、住宅分野のシェアエコノミーの実践事例は民泊だけでなく、むしろその一部といった方がいいほど広がっているのですが、彼らの多くの発言から伝わる自治体とマスコミに対する不信感がこれほど強いのかと思ったことが印象に残りました。 あるスピーカーは開口一番「日本はシェアがしにくい国です。社会というのは、数多くの事例が生まれてこそ、法律を変えようという動きが起こるものですが、日本では規制が多すぎて、事例が生まれにくいため、現実に合わせて法律を変えるのも時間がかかりすぎる」と話し、60数年間も古い法律が野放しにされていた通訳案内士法の事例などを挙げます。まったくそのとおりです。 世界のシェアエコノミーには、共同社会のありようを目指すヨーロッパ型と、投資と連動したアメリカ、中国型のふたつに分かれるといい、日本は「日本らしい」シェアエコを目指すべきと語ります。 さらに、シェアエコには利用者の自己責任も問われることも忘れてはならないとそのスピーカーは言います。それ自体はもっともな発言だと思われますが、おそらく日本の自治体やマスコミは、日本的な“情緒”を背景に、自己責任から生じるさまざまな懸念や問題の発生の防止を重視するため、監視を強めたり、来年6月に施行される新しい民泊のルールについても、自治体レベルの個別の条例を加えることで、民泊解禁の流れに大きなブレーキをかけようとしている。そう彼らは感じているようです。 ここでいう「自治体&マスコミ」の姿勢がよくわかるのが、今朝の日本経済新聞の報道です。 増殖するヤミ民泊 京都の「観光裏事情」 政策 現場を歩く(日本経済新聞2017/11/26) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23791560S7A121C1000000 11月上旬、京都市の祇園に近い東山地区のワンルームマンション。5階建ての一角に、めざす宿泊施設があった。チェックインカウンターはない。カギはマンション入口の郵便ポストに入っていた。民泊の物件だが、本人確認はなにもない。後にかなり高い確率で、ヤミ民泊だと感じることになる。 訪日客の関連取材で京都を訪れた。口コミ旅行サイト「トリップアドバイザー」で部屋を探すと、大手ホテルは1泊約2万円する。そこで、初めて民泊の世界最大手・米エアビーアンドビーの仲介サイトを真剣にのぞいてみた。宿泊予定を入力すると、物件が続々と出てきた。祇園に近い東山地区を売りにしている物件があり、価格も1泊7400円と手ごろだ。民泊を初体験しようと思い、サイト内でクレジットカードによって支払いを終えた。 ■管理人には話しかけるな 数分後、ふと、我にかえった。「あれ、待てよ。この物件はどこにあるんだろう?」。サイトには詳しい住所の記載がない。支払いを終えると、個人のメールあてに複数の物件情報が英語で届いていた。1つは住所。2つめはダイヤル式のカギの開け方。3つめは施設利用に関する注意事項だ。 住所がわかったため、現地に行くまでカギと注意事項の確認は後回しにした。マンションの前でメールをみると、カギはダイヤルを3回まわして、帰る際にも同じ場所に戻すようにと書いてある。セルフチェックイン・アウト形式だという。 面食らったのは、注意事項の書きぶりだ。例えば「入り口に管理人がいるが、話しかけないように。トラブルになります。もし部屋番号を聞かれたら、違う番号をいってください」と常識では考えにくい内容だ。 日本の法律についても言及がある。「日本の法律はとても厳しい。誰か来ても、ドアをあけないで。部屋のオーナーは友達で、無料で泊まっていることにして。そうすれば、トラブルを避けられます」。これは明らかにヤミ民泊の物件だとうすうす感じた。部屋に入ると、それは確信に変わる。 部屋は、普通のワンルームマンション。ただ、異なる点がある。室内のインターホンにガムテープが貼られ、「さわるな」という表示がやけにめだつ。外部から問い合わせがあっても、絶対に応対できないようにしているのだ。これはヤミ物件だろう。 宿泊して朝8時ごろに部屋を出ると、携帯電話にショートメールで「滞在はどうでしたか? 5つ星のレビューを下さい!」と何度も連絡が来た。うんざりさせられたが、物件のオーナーと会うことは一度もなかった。 京都市の調べでは、2016年の外国人旅行客は661万人となり、15年に比べ37%増えた。そのうち、16%が「京都に泊まりたいが泊まれない」と答えている。調査結果だけをみると、人気観光地の京都は深刻な宿泊施設不足に陥っている。ところが、調査は「無許可の民泊施設は含まない」としている。実態は判然としない。 日本では現時点で、民泊をするためには旅館業法の認可が必要だ。もしくは民泊特区では施設の要件を満たせば営業ができる。 ■客室の稼働率が落ちた 京都・東山地区である旅館の経営者に話を聞いた。「今が京都の紅葉シーズンなのに、稼働率が落ちたのは今年が初めて。急増しているヤミ民泊の影響に違いない」との見解を示す。約10年前に民泊を始め、今は正式な旅館営業の認可を得た。だが、ここ1~2年でスマートフォンを片手にワンルームマンションのヤミ民泊に向かう訪日客の姿が急増しており、客足が鈍っているという。 東山地区のシャッター街だった商店街は、町家のゲストハウスや民泊が増え、にわかに訪日客で活気を取り戻している。日本の伝統文化の象徴ともいえる京都は、訪日客を引き付けてやまない。 日本では18年6月に民泊が新しいルールのもとで運用が始まり、仲介業者や家主は国や自治体の登録制となる。ただ、旅館業法の改正案が宙に浮いており、ヤミ民泊の違反業者を自治体や保健所が取り締まれるかどうかが問題になっている。施設への立ち入り権限が限られると、これからもヤミ民泊を排除できない可能性が残る。ある観光庁幹部は「特に中国系の物件は監視が難しい」と嘆く。 本人確認がルーズなヤミ民泊は薬物や性的暴行など犯罪に使われるケースも出ている。正式な認可を得ている事業者は税負担などの面でヤミ民泊と不公平感がある。観光庁の初調査では、今年7~9月期で訪日客全体の12%が民泊を利用した。政府は20年に4000万人の訪日客誘致をめざしている。民泊を健全な宿泊施設の受け皿にするためにも、ヤミ民泊の監視強化は欠かせない大きな課題だ。(馬場燃) この種の論調は、いまとなっては日本のマスコミの主流となっていて、さして新しい発見のない記事ではありますが、これが主流となるのも、日本では全体の8割がヤミ民泊である以上、いたし方がない面もあると思います。この記事でもひかえめに指摘しているように、台頭する「中国民泊」の実態は、彼らが日本法人を立ち上げたところで、実態は情報公開されていないため、世間の懸念が深まるのは当然といえます。 一方、この集まりに出席していたみなさんのように、法や条例の動向に敏感で、「日本らしいシェアエコ」を目指す人たちというのも当然いて、彼らの声を届けるマスコミはまだ少ないようです。 実は、彼らの議論を聞いていて、ぼくは余計なひとことを発言してしまいました。「なぜみなさんは、もっとマスコミを活用しないのですか」。 ぼくからすると、これからの日本の社会の新しいあり方を模索し、正しい民泊を目指しているのに、ただ内輪で集まったり、個別の自治体関係者や議員との関係を深めることで、実際に自分の地域で民泊をする際、縛りとなる上乗せ条例による新たな規制をされないようにと努力していることはわかるのですが、やはりこの問題は「公論」としてマスコミにも取り上げてもらう必要があると感じたからです。 ただし、この発言に対しては沈黙しかないようでした。 いったいこの人たちのマスコミ不信の根深さは何なのだろう? と最初は思ったほどです。 しかし、その後ぼそぼそと交わされるコメントの中からその理由がわかってきました。民泊新法が施行される前のいまの段階で、また民泊に対する厳しい視線のなかで、表舞台に出ることは、かえって世間を刺激し、現状ではグレーゾーンとならざるを得ない民泊従事者である自分たちが摘発の対象になるのでは、というおそれがあるからのようでした。 実際、ある自治体で民泊の条例制定に向けたパブリックコメントを求められても、推進者たちからのコメントの数は少なく、反対意見ばかりが多いそうです。そうなるのも「いま下手なことを言って、保健所に目を付けられたら…」。そんな思いがあるからだというのです。 なんという残念なことでしょう。 日本のあるべき民泊を推進するためには、ヤミ民泊事業者の摘発強化は欠かせないとはいえ、正しいあり方を目指そうと考えている人たちが、ここまで萎縮せざるを得ない状況というのは、どういうものでしょう? そろそろマスコミや自治体も、日経の記事にあるような負の実態だけでなく、日本の社会のありようを少しずつ変えていく可能性のあるシェアエコノミーの現場の声も取り上げないといけないのでは、と思います。 一方、シェアエコ推進の方たちも、ただ「いい子ちゃん」でいるだけではどうなのか。もっと「公論」に訴えかけていく気概も必要な印象を持ちました。なぜなら、法など気にしない外国人も含めて8割がヤミ民泊という非情な現実を前にして、あまりにきれいごとで装いすぎていて、これでは現実を変えられないのでは、と思わないでもないからです。 こんなことを書くと「現実の苦労も知らないで、勝手なことを言うな」と言われてしまいそうですが、日本のシェアエコを考えるうえで、とても勉強になったことは事実です。 ■
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| 2017-11-26 11:07
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2017年 11月 02日
ついに中国「白タク」の逮捕者が大阪で出たようです。 「中国式白タク」容疑で逮捕 訪日客狙い、各地で問題化(朝日新聞2017年11月1日) http://www.asahi.com/articles/ASKB0541SKB0PTIL011.html 訪日中国人客を相手に無許可でタクシー営業をしたとして、大阪府警は31日、無職唐家栄容疑者(28)=大阪市東成区=ら中国籍の男3人を道路運送法違反(無許可一般旅客自動車運送事業経営)の疑いで逮捕し、発表した。こうした営業は、空港や観光地で訪日外国人客(インバウンド)相手の「中国式白タク」と呼ばれ、各地で問題になっている。 国際捜査課によると、他に逮捕したのは、運転手の男2人。唐容疑者らは国土交通相の許可を得ずに6~9月、7回にわたって関西空港から大阪市内などに観光客計約40人を料金を取って運送した疑いがある。唐容疑者は「来日した友達をホテルや観光地に送っただけで、金はもらっていない」と容疑を否認。運転手2人は「唐容疑者の依頼で報酬をもらい送迎した」と容疑を認めているという。 同課は、唐容疑者らの車が、多くの荷物を持つ訪日客を乗せて関空と大阪市内を何度も行き来するのを確認し、白タクとして営業していると判断したという。さらに、唐容疑者が中国語の配車アプリを介し、訪日客からの依頼を受けて営業していたとみている。アプリ上では、関空から大阪市内の片道料金は約1万3千円に設定され、決済もできる仕組みという。 国交省によると、中国式白タクは訪日客が多い沖縄や東京でも確認されているが、台数などの詳しい実態はわかっていない。正規のタクシーと違って二種免許を持たないため運転技能が担保されていないほか、任意保険への加入がない場合もあるため、事故時の補償が不十分になる恐れがあるという。 先月中旬、沖縄に続き、関西方面の「白タク」問題を産経新聞が報じていましたが、やはりこの日が来ましたか。 奈良公園周辺にも「中国式白タク」進出 主要観光地で横行か、スマホで予約・決済、摘発難しく… (産経WEST2017.10.13) http://www.sankei.com/west/news/171013/wst1710130046-n1.html これが全国に波及すると、けっこう大騒ぎになるかも。興味深いのは、彼らを逮捕したのは大阪府警の「国際捜査課」だということ。確かに、通常の捜査では摘発は難しいことから起用されたのでしょう。 先日、ForbesJapanの連載で「彼らを営業車として登録させ、管理する方向に呼び込むか、ツーリスト相手に限りグレーゾーンの存在としてこのまま泳がせるのか。違法営業であるという前提がある限り、今後、日本の社会が中国「白タク」の横行になんらかの制限を加えようとするのは当然だろう」と書いたばかりでしたが、そのとおりになったようです。 野放し「中国人白タク」で見えた、日本の遅れ(ForbesJapan2017/10/26) https://forbesjapan.com/articles/detail/18241 ただし、九州に寄航する中国発大型クルーズ客船の中国人闇ガイドのときもそうだったように、一度摘発したところで、ほとぼりが冷めると実態はまったく変わらないという話になるかもしれません。 じゃあ徹底して取り締まるかといっても、実はそんなに簡単ではありません。ひとまずは「日本では違法」という認識を中国人ドライバーたちに周知することにはなったでしょうが、彼らの国では「法の裏をかくのが賢い人間」と考えるのが普通のことです。それは彼らが悪人だからそうなのではなく、民主的な社会ではないから、法に対する認識が違うだけです。中国では法は常に上から突然下りてくる理不尽極まりないものだからです。 やはり、同時に中国客に限らず、日本を訪れる海外の個人客のニーズに応えられる代替サービスを作り出さなければならないと思います。それは簡単なことではありませんが、そこに知恵を働かせなくては。また「彼らを営業車として、登録する方向に呼び込む」ことも考える必要があると思います。 ■
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| 2017-11-02 09:29
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2017年 10月 30日
今朝、面白いニュースが飛び込んで来ました。中国配車アプリ大手の「滴滴」が来春、日本に進出するというのです。 中国配車アプリ「滴滴」、来春にも日本でサービス 第一交通と組む (日本経済新聞2017/10/30) https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22855700Z21C17A0MM8000/ タクシー配車とライドシェア(相乗り)サービスで世界最大手の中国・滴滴出行が日本に進出する。タクシー国内最大手の第一交通産業と組み、2018年春にも東京都内で配車アプリを使ったサービスを始める。シェア自転車やアリババの電子決済など中国発のサービスが相次ぎ日本に上陸。規制などのハードルもあって日本企業が手をこまぬいているうちに、中国など新興国企業の後手に回る懸念も強まっている。 スマートフォン(スマホ)のアプリを使った新サービスでは中国勢が急成長しており、日本への進出も相次いでいる。モバイクが8月から日本で事業を始めたシェア自転車など、日本企業が出遅れている事業も多い。 滴滴の配車アプリの登録者数は約4億4000万人。米ウーバーテクノロジーズの中国事業も買収しており、1日当たりの利用は2100万回以上と、配車サービスで世界最大手に位置する。 配車サービスは、アプリの地図で出発地と目的地を指定すると、事業者に登録した運転手が迎えに来る仕組み。利用者はアプリを介して料金を支払う。日本では自家用車の有料配送が「白タク」行為として原則禁止されているため、滴滴は配車アプリでタクシーの利用客を囲い込む。 まずは保有台数約8700台と国内最大手の第一交通と組み、18年春にも都内で約500台を滴滴のアプリで配車できるようにし、将来は数千台規模に増やす。各地のタクシー会社とも連携して全国規模で展開することで、日本でもネットを使った配車網の主導権を握る考えだ。 滴滴にはソフトバンクグループも出資しており、日本法人の設立なども視野に入れる。滴滴の配車アプリは現在、中国語版の利用が中心だが、日本語にも対応するとみられる。 第一交通は滴滴との提携で、中国からの訪日客のタクシー需要を取り込む。第一交通と滴滴は手数料や具体的な運用方法など細部を詰めている。 配車アプリではウーバーもすでに日本に上陸し、都内でタクシーやハイヤーの配車サービスを手掛けている。一部の過疎地では自家用車を配車するが、法的には例外扱いとなっている。 ついに中国のシェアエコノミーを代表する配車アプリ企業が日本のタクシー会社と組んで事業を始めるそうです。こちらは営業車のサービスですから法的になんら問題ないし、日本のすでにある配車サービスを凌駕する利便性を発揮できれば、日本人相手でも可能性があるのかもしれません。 日本で仮に自家用車によるライドシェアが解禁されたとしても、昼間に学校や職場に行かないで車を走らせることのできる人などどれほどいるでしょう。オーストラリアでUberをやってそこそこ稼いでいる知人がいますが、彼はチェコ人。要するに移民労働者なんです。このサービスは移民が担う傾向が強いように思えます。中国でも基本地方から来た出稼ぎの人たちです。ここにシェアエコの問題があるように思われます。 とはいえ、タクシーのような営業車が配車アプリのサービスを強化することは日本でも求められていたはずです。中国企業の参入をいい刺激と受け止めて、サービスの利便性をもっと高め、PRする必要が出てくるとしたら、悪い話ではありません。 ただし、これまで人知れずやっていた訪日中国人相手の在日中国人ドライバーの運転する自家用車=「白タク」問題はどうするのでしょう? 野放し「中国人白タク」で見えた、日本の遅れ(ForbesJapan2017/10/26) https://forbesjapan.com/articles/detail/18241 中国人には使い慣れているサービスだけに、はたして記事にあるように「中国からの訪日客のタクシー需要」を取り込むことができるのか。訪日中国客が必要としているのは、タクシーではなく、ワゴン車ではないのか。だとしたら、すでにある中国「白タク」を利用してしまうのではないか…。 いろいろ思うところのある記事ですが、今後の行方が興味津々です。 ■
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| 2017-10-30 08:50
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2017年 10月 15日
一昨日、関西で中国「白タク」問題に警鐘を鳴らす以下の記事が報じられました。 奈良公園周辺にも「中国式白タク」進出 主要観光地で横行か、スマホで予約・決済、摘発難しく… (産経WEST2017.10.13) http://www.sankei.com/west/news/171013/wst1710130046-n1.html アジアを中心としたインバウンド(訪日外国人客)が急増する中、在日中国人が自家用車を使って有料で中国人観光客を運ぶ無許可の「中国式白タク」が、各地に広がっている。関西では関西国際空港のほか、奈良市の世界遺産・東大寺や奈良公園周辺でも横行していることが判明。バス停や交差点内で利用者を乗降させるなどの違法行為も目立つ。沖縄では摘発例もあり、近畿運輸局は実態把握に乗り出した。(神田啓晴) 各地の空港で横行 「友達を乗せている」と言われたら摘発難しく… この中国式白タクは、中国の業者が運営するインターネットサイトやスマートフォンのアプリに登録した在日中国人が、日本国内では無許可のまま、自家用車で有償で客を輸送するシステム。訪日客の増加に伴い、関空や成田空港など日本各地の空港で横行、今年6月には中国籍の男2人が道路運送法違反容疑で沖縄県警に再逮捕された。 だが、予約から支払いまですべてがモバイル決済可能で証拠がつかみにくい上、職務質問された運転手が「友達を乗せている」と答えれば、白タク営業として摘発するのは難しい。 関係者によると、奈良市内で中国式白タクが確認され始めたのは今年6月ごろから。世界各国からの観光客でにぎわう東大寺や奈良公園周辺で、特定のミニバンが中国人の一行を乗降させている様子が確認されているという。 正規タクシードライバー、苦々しい思い 近畿運輸局「対策急ぐ」 日本の正規タクシードライバーも苦々しい思いだ。関空で客待ち中の男性運転手(68)は「そもそも現金のやり取りがないと取り締まりできへんのやから、手の打ちようがない」とあきらめ顔。別の男性(70)も「ここ1年で特に増えた。白タクなのか、ほんまに友達の送迎なのかは分からない」。奈良市の大手タクシー会社の男性取締役(68)は「こちらは国の許可を得て責任を持って仕事しているが、白タクは事故に遭っても補償もない。外国に来たとき、母国語が通じるのが安心なのは分かるけど…」と話す。 近畿運輸局は「情報は入っており、早く対策を取りたい」。県の担当者も「警察に相談するなど対策を講じたい」としている。 やりたい放題? バス停・交差点で中国人が次々と乗降 先月下旬。「中国式白タク」が横行しているとされる東大寺大仏殿バス停周辺で取材を試みると、手持ちぶさたに座り込む中国人の一行を見つけた。 バス停にバスが止まっても、乗ろうとはしない。バスが発車して約10分後、1台のミニバンが停車。すると、1人の男性が「来了、来了(来た、来た)」と仲間を呼び、続々とミニバンに乗り込んだ。ナンバーは白、つまり自家用車だ。 平日のこの日、午後1時半から同3時半までの間、記者が確認しただけでも11台の白ナンバーのミニバンが、このバス停に駐停車。同様に中国人観光客の一行を乗せていった。バス停周辺は今月12日まで整備工事をしており、バスとタクシー以外は駐停車禁止だったが、現場で交通整理にあたった男性作業員(66)は「駐停車する車はいずれも白ナンバーで、乗降客はほぼ中国人」と証言する。 東大寺大仏殿に近い「大仏殿交差点」内で中国人観光客を乗降させている白ナンバーの車も。観光シーズンには常に渋滞する交差点内での悪質な行為は、違法行為であるのに加え、さらなる渋滞にもつながりかねない。 中国では昨年11月、「配車サービス」として自家用車で客を有償輸送するビジネスが合法化されており、最大手の「滴滴出行」の登録ユーザーは3億人超とされる。中国の配車業者のサイトやアプリには、奈良観光コースとして東大寺や奈良公園周辺が記載されており、中国企業による違法な白タク行為が横行しているのは明らかだ。 昨年から奈良市内で中国人白タクを見かけるようになったという大手タクシー会社の男性運転手(54)は「どこでも車を止めるから通行の邪魔やし、中国人はやりたい放題や」と憤った。 これまで本ブログで何度も書いてきたように、この問題の実態は基本的にこの記事にあるとおりです。 ただし、問題の解決を考えるとき、漠然とした中国への反発のみをベースにした議論を煽るのは賢いやり方とはいえません。なぜなら、配車アプリやシェアサイクルなどの新しいマッチングサービスの社会における普及と実践面において、日本は圧倒的に中国に遅れを取っているからです。もちろん、日本の社会は中国よりはるかに進んでいることのほうが多いのですが、この方面についてはうまくいっているとは言い難く、それをまず認める必要があります。 それをふまえていうと、遅れている社会の側が法やルールを通じて現場を仕切ることで、自国の利益を守ろうとするのは当然のことです。中国はこれまで発展途上国という言い訳を使って、どれだけ国際的なルールを反故にし、自国のやり方を通してきたことか。いま日本の社会が中国「白タク」の横行になんらかの制限を加えようとするのは無理もないことだといえます。 とはいえ、やみくもに摘発を強化するというような乱暴なやり方には実りがありません。そもそも産経の記事にもあるように「友だちを乗せているんです」と言われればどうしようもないところがあります。土地勘のない海外で自国民のドライバーによるワゴン車のサービスを簡単に予約でき、モバイル決済できるという利便性を知ってしまった彼らに対して、どう制限を加えるかという問題は、相当理論武装したうえで、合理的な説明が必要でしょう。 そもそも国際的にみて、新しい時代の波に乗り遅れている日本としては、ライドシェアをどう実現していくかについての青写真をきっちり描いたうえでモノ申さなければ、みっともない話といえるのではないでしょうか。何が良くて何が良くないかを判断する基準を、将来を見据えて決めておく必要があると思うのです。 そのためには、ITや金融、交通行政、法の専門家、タクシー業界などの関係者に加え、中国の事情に詳しい人間の知恵の結集が欠かせません。なぜ中国はこれほど進んだサービスを実現できたかについて公平な理解や今後の見通しが必要だからです。 まずそれぞれの専門家の立場からこの問題がどう見えるのか。どうすれば解決につながるのか。意見を重ね合わせていくことが大切です。原則論だけでは問題の解決にはなりません。それぞれが専門的な見地から解決策を提示しつつも、当座の施策は妥協の産物でもかまわないので、どこまでを許容し、どこまでを禁じるかを決める必要があると思います。 この問題は、おそらくいずれ他の国々でも話題になるはずです。日本は中国に近いぶん、どうしても問題が先駆けて起こってしまうのです。 ![]() ■
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| 2017-10-15 13:39
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2017年 09月 27日
先週終わったツーリズムexpoジャパンですが、22日(金)の業界日にもうひとつのセミナーがありました。 対馬を訪れる韓国客40万人。理由はexpected unfamiliarity(似てるけどどっか違う)という国境特有の体験 http://inbound.exblog.jp/27141258/ 訪日外国人の増加にともなう制度変更が懸案となっていた、来年から施行される新しい通訳案内士制度やランドオペレーター登録制度に関する観光庁からの説明です。 ![]() 膨大なパワポの資料が提示されたので、面白そうなものだけ挙げてみましょう。 まず「言語別通訳案内士登録者数」です。圧倒的に英語に偏っています。 ![]() 次に「都道府県別通訳案内士登録者数」。東京、神奈川などの首都圏の一極集中です。 ![]() その結果、「言語別通訳案内士1人あたりの訪日外国客数」では、中国語、韓国語、タイ語の通訳が著しく少ないことが示されます。 ![]() こうした現状は10年以上前から変わっていないのですが、その対策として「地域限定通訳案内士制度」を立ち上げています。 ![]() そして、今回の規制緩和のキモは、いわゆる「業務独占の廃止」。すなはち、国家資格の通訳案内士でなくても、有償で通訳ガイドの仕事ができるようになったということです。ただし、国家資格を持たない通訳ガイドとの差別化のために「名称独占規制」は存続します。まだ仮称ですが、「全国通訳案内士」と呼ばれることになるそうです。 ![]() この問題については、すでに関係者らの間で何年も議論してきたことですし、市場の大きな変化に対応した規制緩和だといわれれば、そうなんだろうなあという感じしかありません。結局のところ、フリーランスの職業である通訳ガイドの場合、語学能力だけでなく、さまざまな営業能力もあってこそ、続けられるものであるのは、いまも昔も変わりません。 問題なのは、むしろ「ランドオペレータ登録制度」の実効性でしょう。 なぜなら、「訪日旅行の手配構図の例」「ランドオペレーターに関する外国人のクレーム」で観光庁も説明するように、「ブラック免税店」と「闇ガイド」が結託した法外な値段の買い物強要が、外国客のいちばんのクレームとなっているからです。 ![]() ![]() で、その解決策について、新制度ではこれまで誰がやっていたかすら把握していなかったランドオペレーターの登録を進め、ツアーパンフに通訳案内士同行の有無を記載することを義務付けることなどが挙げられています。同行の有無は、そのツアーの品質を保証することになるという理屈でしょうけれど、う~ん。 ![]() 実態から言えば、この程度のことで問題解決とは気の遠くなるような話です。 しかし、現在における訪日外国人の受け入れに関する問題の焦点はもっと別の次元に移っているというべきでしょう。なぜなら、訪日外国人における団体客の比率はだんだん下がり、個人客に移行しているからです。 では、どこに新たな問題が生まれているかというと、たとえば、中国事情に詳しいライターの高口康太さんが書いた中国の「白タク」の実態です。通訳案内士やランドオペレーター制度の規制緩和の話より、事態はもっと進んでしまっているのです。 日本各地で暗躍する中国版白タク「皇包車」の実態(Wedge2017.9.25) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10613 この問題は本ブログでも何度も指摘していますし、ぼく自身も以下の記事を書いています。 日本人が知らない、中国人観光客受け入れの黒い歴史(Newsweek2017年09月02日) http://www.newsweekjapan.jp/nippon/season2/2017/09/198804.php 高口さんの記事が面白いのは、彼が実際に羽田空港や成田空港の現場を訪ね、中国の配車アプリサービスを利用して、日本国内で「白タク」に乗ってみるという体験取材をしていることです。利用者の立場に立てば、とても優れたサービスだと彼は書いています。 記事では「政府は、その実態や規模を全く把握できていない」と書かれていますが、実際はそんなことはないでしょう。日本より中国のシェアエコノミーの進化が早いため、対応できないだけのこと。じゃあしょうがない? でも、これじゃ日本のライドシェアをまじめに育てる意欲はなくなってしまいませんか。過疎地域の足など、いろんなニーズがあるはずなのに。 さらにいえば、「経済効果のリーケージ(漏出)」という問題があります。つまり、こんなに外国客が増えても、営業実態だけはあって、日本にお金が落ちず、経済効果を持ち去られてしまう。もちろん、これは規模の問題でもあるのですが、今日シェアエコノミーを軽んじるのは間違いでしょう。 だから、「知らなかった」ではすまないと思うのですが、とぼけてたほうが楽なのか。なんだかこの話、「ブラック免税店」や「闇ガイド」の存在を知りながら、ずっとやり過ごしてきた観光行政の姿勢と似ている気がします。 ■
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by sanyo-kansatu
| 2017-09-27 10:00
| “参与観察”日誌
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2017年 09月 11日
訪日外国人の数は増えているのに、宿泊者数が伸び悩んでいる。なぜなのか。日本のホテルはすでに供給過剰なのだろうか。議論は分かれるが、民泊の影響も否定できない。民泊新法が施行される来春をふまえ、日本の宿はどうあるべきなのか考えたい。 「訪日外国人の数は増えているのに、外国人宿泊者数が伸び悩んでいる。なぜ?」 これは、昨年からすでにインバウンド関係者の間でささやかれていた話である。 3年後に迫った東京五輪、政府が掲げる訪日外国人客数4,000万人の目標から、ホテル不足解消のためにさまざまなタイプの宿泊施設の開業が、いま最盛期を迎えている。最近まで老朽化していたビルがビジネスホテルやカプセルホテルに転換するケースもよく目にする。 にもかかわらず、これはどういうことなのだろうか。 宿泊統計のリアルな実態 観光庁が集計する宿泊旅行統計調査(2016年版)によると、東日本大震災の翌年の2012年以降、好調に推移していた外国人の延べ宿泊者数の伸び率が、15年(46.4%)から16年(8.0%)にかけて大きく落ちているのだ。16年の訪日外客数の前年比は21.8%増にもかかわらず、である。 さらに、同年の国別訪日客数トップ5の伸び率と延べ宿泊者数の前年比は以下のとおりである。 1位 中国 27.6%増 3.3%増 2位 韓国 27.2%増 15.7%増 3位 台湾 13.3%増 1.3%増 4位 香港 20.7%増 8.2%増 5位 アメリカ 20.3%増 14.3%増 (左:訪日客数、右:延べ宿泊者数) どの国も訪日客の伸びに比べ延べ宿泊者数の伸びは心もとない。とりわけ中国の乖離は大きいようだ。 だから、15年頃まで外国客の利用比率が高かった大都市圏のホテルほど、客室を埋めるのに苦心するという事態が起きている。むしろ、これらのホテルでは宿泊料金の「高止まり」ではなく、ディスカウント合戦が始まっていると聞く。 こうした実態について、今年5月下旬、朝日新聞は以下の興味深い記事を配信している。 「ユー、夜はどこに? 訪日客は増加でも宿泊者は伸び悩み」(朝日新聞デジタル2017年5月24日) http://www.asahi.com/articles/ASK5R55GBK5RULFA01M.html 記事では、なぜこうしたことが起きたのか、その背景についてさまざまな観点から検討している。訪日外国人の多くが、もし一般の宿泊施設以外の場所を利用しているのだとしたら、それはどこなのか ――。 いまやLCCを使えば、近隣アジアの国々から片道5,000円で日本を訪れることができる時代。なるべくお金をかけずに日本旅行を楽しみたいというニーズは高まるばかりである。 ![]() 記事で挙げられているのは、外国客が利用する「深夜の成田空港のロビー」「都内の(宿泊可能な)温浴施設」「深夜に走る高速バス」などだ。 日本のホテルは供給過剰? こうしたことから、早くもインバウンド業界からもれ聞こえてくるのは「ホテルは供給過剰では?」という声だ。 観光庁は民泊の影響だけではないというが、日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客統計」と同庁の「宿泊旅行統計調査」の今年の推移を見比べると、その影響はやはり大きいのではないかと考えざるを得ない。 というのも、今年2月、訪日外客総数が前年比15.7%の増加に対して、延べ宿泊者数の前年比は4.5%のマイナスだったからだ。伸び悩むどころか減っているのである。 なかでも中国客は前年同月比で17.0%も増えているのに、延べ宿泊者数は-14.1%。この数字の開きは相当大きい。いくら中国客に占めるクルーズ客が多いからといって、それはずいぶん前からこと。その後、3~5月にかけても中国客の延べ宿泊者数だけが前年を割り続けているのだ。 2017年3月 中国客数 +12.0% 延べ宿泊者数 -13.4% 2017年4月 中国客数 +9.6% 延べ宿泊者数 -15.6% 2017年5月 中国客数 +8.0% 延べ宿泊者数 -7.0% 中国人の日本旅行の内実は大きく変化した。2000~10年は上海や北京などの沿海先進地域の大都市圏中心の団体旅行の時代、10年から個人旅行が始まり、14年以降は内陸の地方都市からの団体客が急増。 ところが、昨年秋頃より内陸客は伸び悩み、大都市圏からの個人客やリピーターなど「安近短」組が過半を占めるように構造変化している。団体客が減り、「安近短」の客が増えれば、トータルの日本の滞在日数(延べ宿泊者数)は減少するのも道理だろう。 昨年は国内で少なくとも370万人が民泊を利用したとされる米国発の仲介サイトAirbnb(エアービーアンドビー)は、現在5万件超の民泊物件を掲載している。 これに急迫する勢いで、途家・自在客・住百家といった中国発の民泊サイトが成長している。彼らは日本での実績を公開していないが、今年に入って相次いで日本法人を設立している。来春に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)への対応と考えられる。 日本の宿は外国人観光客のニーズとミスマッチング? では、なぜこれほどの勢いで外国人観光客の宿泊先の民泊への移行が進むのか。 考えられるのは、日本の宿と今日の外国客のニーズのミスマッチングが顕在化している、ということだ。 最近、観光庁は国内の旅館に対して部屋料金と食事料金を別建てとする「泊食分離」の導入を促していく方針を明らかにした。日本の旅館は「1泊2食付き」が主流だが、日本の多彩な食文化を楽しみたい長期滞在の外国客のニーズに合っていないためだ。 旅館業界「泊食分離」導入を=長期滞在客対応、モデル地区指定へ-観光庁(時事通信2017年8月16日) https://www.jiji.com/jc/article?k=2017081600733&g=eco 似たようなことが、都市部のシティホテルやビジネスホテルについてもいえるのではないか。 団体から個人へと移行したアジアからの観光客は、家族連れや小グループで日本を訪れることが多いといわれる。これは欧米客も同じである。たとえば、彼らは夫婦と子供2人でシティホテルに泊まろうとすると、たいてい2室を予約しなければならない。 一方、民泊の場合、部屋がたとえ狭くても、家族一緒に利用すれば、ホテルの客室を複数室利用するのに比べると割安になるだろう。 日本では家族水いらずで利用できる宿泊施設は、行楽地に限られることが多い。日本人の場合、家族で連泊するニーズはリゾートホテルや旅館にしかないからだろう。 だが、外国客は行楽地でも都市部でも家族やグループと一緒に旅をしている。 日本の都市部には、リーズナブルな価格帯で家族やグループ旅行の連泊に適した宿泊施設が少ないといえるかもしれない。これが民泊に流れるもうひとつの理由ではないだろうか。 こうした市場の急変が、宿泊施設の経営者にも影響を与えている。民泊は明らかに日本の宿泊相場を押し下げる要因となり始めているからだ。 なかでも、いまや全国に1,000を超えるといわれている、若い外国人観光客向けにリーズナブルな価格帯の宿を提供するホステルやゲストハウスの経営者たちは、これまでにない逆風にさらされ始めている。 若いオーナーたちが目指す新しい日本の宿 ◆古民家を改装したゲストハウス:toco. 2010年10月に台東区下谷の築90年の古民家を改装したゲストハウスtoco.を開業したBackpackers’ Japanの宮嶌智子さんも「民泊の影響は必ず出てくるだろう」と話す。 toco. https://backpackersjapan.co.jp/toco/ 大学時代の友人4人で設立した同社では、都内に3軒と京都に1軒の個性的な宿を運営している。 宮嶌さんは1号店のtoco.を開業する前に3ヵ月かけて海外のゲストハウスの調査の旅に出ている。印象に残っているのは、ブルガリアの首都ソフィアのホステルだそうで「マネージャーやスタッフのゲストに対する声かけが心地よかった」という。ホステル経営で大事なのは「ゲストに安心感を与えること」と彼女は語る。 同社の宿のゲストの8割は外国客だという。海外のゲストハウスと同様に、複数の見ず知らずのゲストが寝起きを共にする2段ベッドが並ぶドミトリー式の部屋と個室の2タイプがある。 だが、最も特徴的なのは、単なる宿泊施設ではなく、さまざまなイベントを通してゲストと日本人が交流できる共有スペースを有していることだ。 ◆バーが併設、生演奏も聞ける宿:CITAN 今年3月に東日本橋に開業したホステルCITAN(シタン) では、地下1階をバーとして運営し、ライブ演奏などのイベントを定期的に行っている。 ![]() CITAN https://backpackersjapan.co.jp/citan/ 7月末の週末の午後、ハーモニカ奏者によるライブがあった。そこでは、ゲストではない日本人客とともに、同ホステルのゲストである若い欧米客も演奏に耳を傾けていた。若いオーナーらによる、これまで日本になかったタイプの新しい宿が生まれているのだ。 ![]() ◆次の目的地が決められる宿:Planetyze Hostel 今年2月、同じく東日本橋に開業したホステルPlanetyze Hostel(プラネタイズホテル)もユニークな志向性と理念を掲げた宿だ。支配人の橋本直明さんによると、この宿の特色は「次の目的地が決められる宿」であること。どういう意味だろうか。 Planetyze Hostel https://planetyzehostel.com/ja Planetyze Hostelのターゲットは欧米のバックパッカー。彼らの日本の滞在日数は平均2週間から6週間と長く、じっくり日本を旅してくれる人たちだ。ところが、彼らの多くは日本のどこを訪れるのか、ノープランのケースも多い。日本に来てから、面白い場所を探して旅に出かけるという人が多い。 そこで、オンライン旅行ガイドブック『Planetyze.com』をベースに、日本中の観光地の動画を作成。それをホテル内のモニターを使ってみることができる。ここで自分の行きたい旅先を決めてもらえるようになっているのが、最大の特徴だ。 ![]() 橋本さんが代表取締役を務める株式会社トラベリエンスは、2013年に通訳案内士と外国客のマッチングサイトである「Triplelights.com」(トリプルライツ)を立ち上げている。 同サイトでは、外国客が自分に合った通訳ガイドを選択できるように、登録ガイドの紹介動画を用意し、それぞれのガイドは趣向を凝らしたオリジナルなツアーをサイト上に紹介。そのツアーに興味を持ってくれた外国人からサイト経由でメールの問い合わせが届くと、日程を調整し、仕事を受けることになる。 たとえば、スノーモンキー(野生のサルが露天風呂に入ることで有名な長野県下高井郡山ノ内町の地獄谷温泉)のような外国人には訪れずらい場所でも、いったん広く知られると、どっと彼らは訪れる。 このことからわかるように、アクセスは問題ではない。どうやって彼らにそれを見つけてもらうか、そのための情報をきちんと届かせるためのチャネルとなることが、ホステルを開業した目的だったとのこと。 同ホステルでは、英語と日本語に堪能な外国人スタッフが宿泊客の旅程相談に乗ってくれるという。同じ若い世代同士、ゲストのニーズに合った日本全国の観光スポットを紹介してくれるというわけだ。 ![]() 空き家活用プロジェクトで生まれたゲストハウス ◆とんかつ屋がゲストハウスに⁉:シーナと一平 豊島区椎名町の商店街に昨年3月に開業したゲストハウス『シーナと一平』も、長く空き家だった元とんかつ屋をリノベーションしてゲストハウス兼カフェとして開業させたというから、相当ユニークな宿だ。 ![]() シーナと一平 http://sheenaandippei.com/ 豊島区の空き家率は15.8%と23区で最も高く、区は空き家の再生で地域の魅力を高める構想を進めている。同ゲストハウスは、豊島区の「リノベーションまちづくり」事業の一環で開かれたリノベーションスクールに参加した男性が始めたものだ。 面白いのは、2階は外国客向けの宿泊施設なのだが、1階をカフェとして利用していることだ。カフェの活動を担当する藤岡聡子さんによると「都内一といわれる空家率の背景に、豊島区における30代(子育て世代)の流出がある。いかに子供を育てやすい環境をつくるかという観点も、この施設の運営にとって大切」という。 ![]() 椎名町は池袋に近い徒歩圏内でありながら、昔ながらの商店街が(以前に比べると縮小しているが)いまだに残っている。個人経営の食堂も多い。「うちに泊まった外国のゲストが、近所の商店街で焼き鳥を買って、カフェスペースでビールを飲んだりできる。そんな宿にしていきたい」(藤岡さん) こういう滞在のあり方が本当は日本らしい町の楽しみ方なのかもしれない。 地域ぐるみで彼らを支援できないか 『CITAN(シタン)』のライブを観るため、週末の東日本橋を訪ねたとき、そこが無人の街と化していたことに驚いた。平日はそんなことはないだろうが、通りを歩いているのは外国人観光客だけなのだ。ここは本当に東京なのだろうかと思ったほどだった。だが、これが東京東部の下町と呼ばれた地域の実態なのである。 こうなると、少子高齢化の影響は、もはや都心も地方も変わらないのではないかと思えてくる。 こうした状況の中で、街のにぎわいを取り戻すことに貢献できるのは、ホテルなのではないか。 民泊の運営の中には、どこか刹那的で短期間に利益を回収するのが目的というような打算が動機という側面もあるように感じる。 ホテルのような人的なホスピタリティは不要と考え、むしろ「かまわないでほしい」という人たちが一定数おり、そのニーズとマッチしたことが、民泊市場拡大の要因の一つではないかと思う。 旅の楽しみは人との交流にあると思うのだが、これもひとつの好みであり、スタイルなのである以上、いたしかたないところがある。 一方、今回登場した若いホステルやゲストハウスのオーナーたちは、収益のためだけではなく、自分たちの暮らす地域を活性化するために何ができるかを問いながら、あるべき日本の近未来の宿の姿を模索しているように見える。 このような動きをもっと広げられないだろうか。地域ぐるみで若い宿泊施設のオーナーたちを支援できないだろうかと思う次第である。 ※やまとごころインバウンドレポート http://www.yamatogokoro.jp/report/6951/ ■
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by sanyo-kansatu
| 2017-09-11 17:16
| 最新インバウンド・レポート
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2017年 09月 09日
今朝、ぼくはFacebookで先月の広島行きの交通手段についてこんな書き込みをしました。 「今回広島にはLCCのスプリングジャパンを使いました、成田第3ターミナルまでのバス代は東京駅八重洲口発で1000円(ネット予約なら900円)、広島空港から市内までのリムジンバスは1370円です。これなら新幹線や高速バスより安く広島にいけそうです」 今回の旅は、外国人観光客の立場になって、なるべくお金をかけないで楽しもうと考えていたので、ちょっとした報告のつもりでした。 ![]() ![]() すると、ある友人から以下の返信がありました。 「広島空港からのバスが高いなと、以前からやや不満に思っています。他に手段がないんですよね...」 広島空港は市内から少し離れているので、そのくらいの料金はかかっても仕方がないとぼくは考えていたので、 「1時間くらいかかるので、まあ仕方がないかも。成田のように競合するバス会社はないでしょうし」と書き込んだら、 「何度か行きましたが、空港バスは1000円位までがありがたいですね。特に外国人目線であれば!」との返信。 そうか…。この友人は海外在住の人なので、「外国人目線」になると、そうかもしれません。なるほどと思いつつ、ぼくは再度こう書き込みました。ほとんど返しになっていませんが。 「ただ10月からシンガポール線が広島に飛ぶこともあり、バスの増便はしているようです」 それからしばらく。空港までのバス代1000円といえば、東京駅・成田空港間だけではないことを、ぼくは思い出しました。そして、再び書き込むことにしました。 「実は、鳥取市は大阪との高速バスを外国人に限り1000円(ふつうは3700円)にする助成をしています。まだ十分知られていないようで、利用者は少ないと聞きました。こういうことに助成をするのは、とても賢いやり方だと思います。PRに多額の税金を使うのに比べれば、安いものだからです。ただこんなに日本人の一般客と差をつけられてしまうのはどうなんだろう、という声もあるかもしれません。」 ![]() 外国人観光客限定超割引鳥取-大阪1000円高速バス Only for foreign tourists! Special Price Bus! http://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1492568317584/index.html ![]() これによると、今年6月から来年3月31日までの期間限定で、通常3700円の鳥取・大阪間の高速バス代が、市の助成により、外国人限定で1000円になっていることがわかります。 鳥取県には県庁所在地の鳥取市と東部の米子市に空港があるのですが、鳥取空港は羽田便のみの運航で、国際線はありません(米子空港はソウル便、香港便がある)。 つまり、鳥取県東部に外国人を送り込むには、米子空港以上に、関西国際空港から呼び込むのが効果的です。同じことは、国際線があるとはいえ、岡山や兵庫、徳島などでも実は同様です。 その意味では、拠点空港からのバス代を行政が助成するという施策は、実に賢いことです。広告代理店やコンサル会社に多額の税金を渡してPRしたところで、たいした効果がないし、個人旅行の時代、いちばん大事なのはアクセスのコストの軽減だからです。 ネットでざっと見たところ、岡山や徳島からの大阪行きバス料金は、鳥取県のような助成はやっていないようです。 もっとも、Facebookにも書いたように、ひとりの乗客として、自分は3700円払わなければならないのに、外国人は1000円というのは不公平? そんな気分がないわけではありません。そこで、鳥取市のバスセンターのカウンターのスタッフに、外国客の利用状況について聞くと「1日数名くらいでしょうか」というものでした。ほとんど活用されていないのが実態でした。 宣伝がほぼできていないせいだと思われます。バスセンターのラックにチラシが置かれていましたが、これでは目につきませんし、そもそもいまどきチラシをつくっても、外国人の手には届きません。鳥取に来てもらうためには、日本に来る前にこの割引運賃を知っておかなければ、旅行計画の材料にもなりません。 ![]() 鳥取市役所のHPの外国語ページをみても、載っていないようです。 鳥取市役所の外国語ページ http://www.city.tottori.lg.jp/foreign/index.htm せめて関空の外国語のアクセスページに載せていれば見る可能性もあるのでしょうが、鳥取市としては広告まで出す考えはないのでしょう。 関西国際空港の英語のアクセスページ http://www.kansai-airport.or.jp/en/index.asp こういうところに日本の自治体の限界が見えるというか、PR手法をもっとネットに集約すべきなのに、やることが中途半端で効果を生み出せていない実例にもなっている気がします。担当者が訪日外国人の実態をリアルに把握していないからでしょう。 とはいえ、これは自治体だけの問題というよりも、日本のIT力が国際的に圧倒的に弱いせいで、海外に通じる情報のプラットフォームをほとんど生み出せていないことがいちばん大きな問題でしょう。Live Japanの惨憺たるありさまはそれを象徴しています。 残念です。 ■
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by sanyo-kansatu
| 2017-09-09 11:07
| “参与観察”日誌
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2017年 08月 27日
今朝のネットニュースで以下の記事が報じられています。 中国人白タク 横行 来日前予約、空港にお迎え スマホ決済、検挙困難(毎日新聞2017年8月27日) https://mainichi.jp/articles/20170827/ddm/041/040/129000c 【上海・林哲平】旅行熱が続く中国からの観光客を当て込んだ「中国式白タク」が、成田空港や関西国際空港など日本各地の空港で横行している。「中国人による送迎・ガイド」をうたい、中国の業者に登録した在日中国人が自家用車を運転。集客から支払いまでスマートフォン上で完結するため、取り締まりを免れるケースが大半だ。急速なキャッシュレス化が進む中国。日本側の対応が追いついていないのが現状だ。 ◇来日前に予約 空港にお迎え 中国式白タクは、運営する中国業者のスマホアプリで客が出発地と目的地、利用時刻を選べば、業者から日本にいる運転手に手配が届く仕組みだ。運転手が中国系のため、客は同胞意識と言葉が通じる安心感を抱く。 関西方面を旅行した際に利用した男性によると、飛行機が関西空港へ着陸すると、スマホに中国語で「あなたの運転手です。外でお待ちしています」というメッセージが届いた。指定された送迎用エリアでは、黒いワンボックス車の前でスーツ姿の男性が出迎えてくれた。空港から新大阪駅までタクシーでは1万8000円程度かかるが、白タクなら630元(約1万円)だ。 日本旅行の際によく利用するという上海の医師(46)は「便利だから使う。中国で日本人運転手がいれば使いませんか?」という。中国ではスマホを使った決済が市場でも使われるなど生活に浸透しており、自家用車を使った送迎サービスのアプリも人気だ。 関西国際空港タクシー運営協議会の川崎孝治専務理事は「中国の生活空間が日本の中にそっくり移ってきたようなもの」と指摘。中国の大手業者のアプリには東京1800人、大阪1200人など、日本各地で数千人の在日中国人らが運転手として登録している。 日本での中国式白タクの目撃情報は数年前から集まり始めた。有償で客を運ぶのに必要な国の許可を得ておらず、道路運送法違反にあたる疑いが強い。川崎専務理事は「タクシーは客の命を預かっている。保険がなく、事故があっても客や相手方が守られない」と取り締まりを求める。 また、日本での売り上げを中国で計上する業者も多いとみられ、日本で納税されることはない。近畿運輸局などは今年2度、対策会議を開き、成田空港会社も「警察との情報共有を進めている」と明らかにした。 ただ、支払いを含めてやりとりはすべてスマホ上で進められ、日本では客を運ぶだけ。警察の職務質問に運転手が「友人を乗せている」と答えれば、それ以上の追及は困難だ。 沖縄県警は今年6月、白タク行為をしていたとして、中国籍の男2人を道路運送法違反容疑で逮捕した。中国式白タクの初検挙だった。ただ、県警によると、別の事件で逮捕された両容疑者の口座などを調べる中で証拠を確保できた珍しいケースだった。近畿運輸局は「実態把握が難しい」と指摘している。 実は先月、ぼくは産経新聞の記者の方にこの問題で取材を受けています。 その記事は産経新聞8月3日の社会面に出ています。 ![]() 中国人観光客向け 在日「白タク」横行 東京富士山~格安1人8000円 ガイド付きも(産経新聞2017年8月3日) (一部抜粋)在日中国人による無許可の「白タク営業」が空港や観光地で横行していることが2日、関係者への取材で分かった。主に観光で日本を訪れる中国人を対象にしているといい、人気観光地の沖縄では旅行シーズンを前に業者が摘発された。ただ、国内での金銭の受け渡しがないため、警察当局による摘発や全容解明は容易でないという、専門家からは「中国人観光客のニーズに適応しきれていない日本側にも問題がある」との指摘も上がっている。 同紙の取材でぼくはこう答えています。「摘発も大切だが、日本側が中国人観光客の受け皿となるサービスを充実させることも急務だろう」。ちょっぴり優等生すぎる発言にまとめられてしまっていますが、まあそういうことでしょう。 これまで本ブログでもこの問題は何回かに分けて説明してきました。 成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!? http://inbound.exblog.jp/26867015/ 日本国内で増殖している中国の配車アプリとはどんなサービスなのか? http://inbound.exblog.jp/26867237/ 中国でライドシェア(配車アプリサービス)が一気に普及した理由 http://inbound.exblog.jp/26874125/ 中国配車アプリを利用した「越境白タク」の何が問題なのか? http://inbound.exblog.jp/26876191/ タクシー運転手に聞く「日本のライドシェアが進まない理由」と今後すべきこと http://inbound.exblog.jp/26891045/ 今後の議論の行方を注視していきたいと思います。 ■
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by sanyo-kansatu
| 2017-08-27 11:13
| 気まぐれインバウンドNews
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2017年 08月 20日
今年に入って訪日中国客が伸び悩んでいることはすでに報告しましたが、観光庁が集計する「宿泊旅行統計調査」や日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客統計」のデータを見比べると、奇妙なことに気づきます。 2017年7月、訪日客トップは中国が返り咲き。でも、中国客の伸びの減速は明らか (2017年08月18日) http://inbound.exblog.jp/27057304/ 調査国すべてが訪日客が増加するのとほぼ比例して延べ宿泊者数を伸ばしているのに対し、中国客だけが数は増えているのに、2月以降、ずっと延べ宿泊者数が前年度比マイナスなのです。 宿泊旅行統計調査(観光庁) http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html 訪日外客統計(JNTO) http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/ 以下、今年の月別の訪日外客数と中国客数の伸びと同じく延べ宿泊者数の伸びの前年同月比較を書き出してみます。 2017年1月 訪日外客数 +24.0% 延べ宿泊者数 +11.0% 中国客数 +32.7% 延べ宿泊者数 +14.9% 2017年2月 訪日外客数 +15.7% 延べ宿泊者数 -4.5% 中国客数 +17.0% 延べ宿泊者数 -14.1% 2017年3月 訪日外客数 +13.6% 延べ宿泊者数 +3.0% 中国客数 +12.0% 延べ宿泊者数 -13.4% 2017年4月 訪日外客数 +16.4% 延べ宿泊者数 +15.5% 中国客数 +9.6% 延べ宿泊者数 -15.6% 2017年5月 訪日外客数 +17.3% 延べ宿泊者数 +16.3% 中国客数 +8.0% 延べ宿泊者数 -7.0% 2月に関しては、訪日外客総数の伸びに対して延べ宿泊者数がマイナスになっていますが、なかでも中国客は前年同月比で17.0%も増えているのに、延べ宿泊者数は-14.1%。この開きは相当大きいといわざるを得ません。 これはいったいどういうことでしょう。 いかにも訪日中国市場の特殊性を感じさせるデータですが、理由としてひとつ考えられるのは、今年に入って中国内陸部の地方都市からの団体客が伸び悩み、沿海経済先進地域からの個人客が増えていることから、「安近短」志向の旅行者の比率が高まっているということです。そうなると、当然1人当たりの滞在日数は短くなります。 訪日中国客にはもともと九州に大量寄港する中国からのクルーズ客が多く含まれており、彼らは船上に泊まっているため、いくら数が増えても延べ宿泊者数を押し上げることがありません。そのぶん、他国と比べる際、差し引いて考えるべきなのですが、だからといって伸び率がマイナスになる理由にはならないでしょう。 今年5月下旬、朝日新聞が興味深い以下の記事を配信しました。 ユー、夜はどこに? 訪日客は増加でも宿泊者は伸び悩み(朝日新聞デジタル2017年5月24日) http://www.asahi.com/articles/ASK5R55GBK5RULFA01M.html この記事について、ぼくも以下の分析を試みましたが、今回あらためて中国客の延べ宿泊者数のデータをみる限り、民泊の影響がとりわけ中国市場に強いことを確信しました。 「夜に消える? 訪日客」。背景には民泊による宿泊相場の価格破壊がある(2017年05月24日) http://inbound.exblog.jp/26877980/ 流行りものに弱い中国客ですから、来年のいま頃はまったく違う話になっている可能性もありますが、他の国々の人たちと比べても、ホテルから民泊への流れが強まっていることを実感します。どおりで中国系民泊サイトが次々と日本法人を設立しているわけです。 中国系民泊サイトが続々出展「バケーションレンタルEXPO」って何? (2017年05月29日) http://inbound.exblog.jp/26889680/ ■
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by sanyo-kansatu
| 2017-08-20 20:01
| 気まぐれインバウンドNews
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2017年 07月 29日
先週、東京ビッグサイトで開かれていた展示会「インバウンドジャパン2017」に行ってきました。 インバウンドジャパン2017 http://expo.nikkeibp.co.jp/ibj/2017/ 日経BP社主催の同展示会には、越境ECや各種訪日客向けサービス、マーケティング系の企業が百数十社出展していました。全国の自治体などが多く出展する9月のツーリズムexpoジャパンとは違う、あくまでB2Bのイベントです。 さまざまな出展企業があり、それぞれ面白いのですが、注目はやはり、中国モバイル決済の雄であるアリペイ(支付宝)とWeChatPay(微信支付)の日本市場におけるシェア競争だったのではないでしょうか。日本の小売業界へ中国系モバイル決済の導入を進めるための代理店が何社も出展していたのです。 彼らのブースは入口正面右手にありました。 まずアリペイ系。謳い文句はこうです。 「インバウンド顧客の『爆買い』を呼び込むトータルソリューション アリペイ決済最強ツール! Cpay for Alipay in Japan」(日本恒生ソフトウェア)。 ![]() 加盟店のレジ処理の際の決済端末で、中国客の手にしたスマホのQRコードを読み込めばレシートが出て終わりというものです。 日本恒生ソフトウェア http://www.hundsun.co.jp アリペイの本家本元アントファイナンスの日本法人ブースもありました。 アントファイナンスジャパン https://www.antfin.com/index.htm?locale=ja_JP そのブースの中にはANA系の金融サービス会社もあります。 ANA Digital Gate http://www.ana-dg.com アリペイ系の関係者に聞くと「今後、アリペイの決済は中国だけでなく、タイなど東南アジアにも普及するので、中国以外の訪日客でも利用が広がることでしょう」。 一方、WeChatPay系は「モバイル決済額はまだアリペイより小さいが、こちらは微信というSNSと連動した決済サービス。いずれシェアはアリペイを超えるといわれています」。 ![]() 以下のような関連企業が出展していました。 インタセクト・コミュニケーションズ http://www.intasect.com/ アプラス(新生銀行グループ) https://wechatpay.aplus.co.jp/ WeChatグループで、中国版食べログの「大衆点評」の日本法人も出展していました。 大衆点評 http://www.dianping.com/ 同サービス東京のページ http://www.dianping.com/tokyo ![]() ざっと見た限り、まだ飲食店よりもショッピング施設の情報量のほうが多そうですが、ここでも中国国内向けのサービスがどんどん海外に「越境」していることがわかります。要するに、日本の飲食店も「大衆点評」に広告を出せば、中国客を集客できるというわけです。 今後、決済額でもアリペイをWeChatPayが超えるだろうという指摘は、以下の日本経済新聞でも報じられています。 スマホ決済 中国8億人に ネット大手テンセント 脱現金 利用者が急増 16年の市場倍増600兆円 (日本経済新聞2017/3/24) http://www.nikkei.com/article/DGXLASDX23H1S_T20C17A3FFE000/ (一部抜粋)「もともと中国でスマホ決済の主役は、電子商取引最大手のアリババ集団だった。自社で展開するネット通販の商品購入時に「アリペイ(支付宝)」と呼ぶ決済機能を使ってもらうことを中心にユーザーを増やしてきた。 ところが、そこにテンセントが9億人近い微信ユーザーを連れ、昨年から本格的に攻めてきたのだ。自社のスマホ決済「微信支付」を主力に、すでに昨年9月末時点で8.3億人の決済ユーザーを獲得。同4億人のアリババの「アリペイ」を、あっさり抜き去った。 決済金額ベースでは、高額商品も扱うネット通販向けが主力のアリババにまだ及ばないが、2014年に79%あったアリババの市場シェアは昨年50%まで低下。逆にテンセントが38%を獲得し、猛烈な追い上げを見せている」 こうした中国での覇権争いが日本にまで波及しているわけです。ここに日本の金融サービスが見当たらないところは残念ですけれど、いまインバウンド市場において最もホットな話題といえるでしょう。 ところが、今年に入って訪日中国客が伸び悩んでいます。先週、日本政府観光局(JNTO)が公表した「訪日外客数(2017 年6月推計値)」によると、今年上半期(1~6月)の中国客の伸びは前年に比べ6.7%増にすぎないこともそうですが、6月に限ると、前年比わずか0.8%増。ここ数年、毎年倍増ゲームのように訪日客を増やしてきたことを考えると、大きな変化といえます。これほど伸びが縮んだのは震災以来、初めてかもしれません。 4年ぶりに中国を抜き、韓国が訪日外客数トップ! 中国は伸び悩み http://inbound.exblog.jp/27007721/ さらに、観光庁が今年1月中旬に公表した2016年の「訪日外国人消費動向調査」によると、こちらも異変が起きています。「国籍・地域別にみると、オーストラリアが最も高く(24万7千円)、ついで中国(23万2千円)、スペイン(22万4千円)の順で高い。中国においては、1人当たり旅行支出が前年比18.4%減少し、全国籍・地域の中で最大の減少幅となった」。 つまり、もはや中国客は個人レベルでみると、日本でいちばんお金を使ってくれる人たちではなくなっているのです(数が多い分、全体ではトップですけれど)。 「モノ」から「コト」消費へ移行というのはデータからみれば、俗説じゃないかしら http://inbound.exblog.jp/26654584/ はたして、こうした客観情勢の中で、中国系モバイル決済サービスの導入はどこまで進むでしょうか。かつて「爆買い」の恩恵を受けた百貨店や量販店、免税店の大手はほぼ導入が進んでいます。コンビニでも、ローソンがアリペイを全店導入。ファミリーマートでも一部店舗で導入を始めているそうです。 最後に、会場で知った情報を少し。まず今月、世界遺産になったばかりの宗像・沖ノ島(福岡県)の展示があり、現地の詳しい地図を入手しました。今後は沖ノ島への上陸自体が難しくなりそうですが、それ以外にもいくつかの美しい島があります。 ![]() インバウンド展示会は、世の中で次々といろんなことが起きていることを教えてもらえ、勉強になります。 ■
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by sanyo-kansatu
| 2017-07-29 16:43
| “参与観察”日誌
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